二次創作小説(新・総合)

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【ポケモン】Pokémon and 7 trainers
日時: 2020/11/25 22:46
名前: さぼてん (ID: ysp9jEBJ)

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一つの死をきっかけに、七人の運命は交錯する
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─▼目次▼────────────────
序章………………………………………
第一章:ある獣の残骸…………………>>0037
第二章:闇に契る学徒…………………
第三章:水没都市の戦い………………
第四章:英傑・豪傑・女傑……………
第五章:伝統校防衛戦…………………
第六章:龍の極み………………………
第七章:原初と終焉の光………………
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─▼補足▼────────────────
注意事項…………………………………>>0038
用語解説…………………………………>>0030
登場人物一覧……………………………>>0014
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─▼挨拶▼────────────────
はじめまして、さぼてんと申します。
ポケモンの二次創作を悠々と書いていきます。
皆さまの暇つぶしになれば幸いです。
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Re: Pokemon and the Seven Trainers ( No.7 )
日時: 2020/07/18 17:10
名前: 謎の女剣士 (ID: .6mQrr9F)

こんにちは。
先程こちらに来てくださりありがとうございます。
こちらの様に、記憶重視か失うかは私自身の考えで行きますので宜しくお願いします。

リクエスト、1つあるんですが次回までに考えて来ても構いませんか?

それでは、私の所も宜しくお願いしますね!

Re: Pokemon and the Seven Trainers ( No.8 )
日時: 2020/07/18 20:30
名前: さぼてん (ID: KsKZINaZ)

 
 謎の女剣士様

こんばんは~。
リクエストというのは、
私が書くということで合っていますでしょうか?
それでしたら、ごめんなさい。
この物語をある程度書いていきたいので、
今のところリクエストは受け付けておりません。
大変申し訳ないです。
落ち着けば、そういうのもやってみたいなと思っております。

 第一話「忘却」 ( No.9 )
日時: 2020/09/12 16:27
名前: さぼてん (ID: KsKZINaZ)

 
 *
 
 秒針を見つめる。
真上に行ったところで目覚まし時計がぴりりと鳴る。
時計を止めて、伸びをしながら上半身を起こした。

「……早めに寝床に入ったんだけどな」

 そわそわして眠れなかった。
まぁ、二ヶ月も寝てたことだし、こうしてすぐに体を動かせることが奇跡とか言われたな。
 横で寝ているイーブイを起こして自室を抜けると、母はもう朝ご飯の支度を済ましており、

「もう出来てるわ、冷めないうちに食べなさい。あ、顔をちゃんと洗ってからね」

 冷たい水を顔に浴びせた後、一緒にご飯を食べる。

「持ち物はもうスクールに置いてあるだろうから、特別持っていくものは……、無いわね」

「小遣いは?」

 そう聞くと、

「あなた、もうお金は稼いでいるでしょ。あ……、うん。それについてはそのうち分かるわ」 

 と言って苦笑いした。
今の含みは良い意味なのか悪い意味なのか、どっちなんだ。

「まぁいいや。で、何時に出発するの?」

「何時って、大目に見て数時間は掛かるだろうから…………。余裕をもって、そろそろ出発したほうがいいかもね」

「え? それじゃまるで、母さんは行かないみたいな言い方じゃないか。送ってくれるんじゃないの? 場所なんか覚えてないけど……」

 俺が慌てて言うと母はクスっと笑った。

「ゴーゴートが覚えてるわよ。入学当日だって一緒に行ったからね」

 そうだったのか。
ライドポケモン、ゴーゴート。
立派な角と首周りにある草の毛皮が特徴で、人を乗せて走るのが得意だ。
二ヶ月前の入学当初の俺は、どうやらゴーゴートに乗って登校していたみたいだ。
 でもまだ疑問があり、

「毎日数時間掛けて行くのは、流石にゴーゴートも疲れるんじゃない?」

「あら、言ってなかったっけ。イツキはスクール内の寮で生活しているのよ」

 なんて言われたから納得するしかなかった。
聞いてないよ。……そういうことは先に言っといてくれないと。

 何だかんだで食事も終わり、自室に戻って出発の支度をする。
クローゼットを開け、制服を取り出す。
上は白いワイシャツ、下は焦げ茶のアーガイル柄のスラックスだ。これまたアーガイル柄の赤いネクタイを締め、髪を整える。
最後に、鞄の中のモンスターボールを確認して、玄関を出た。
 テレビの前にいた母は見送りにやってきて、今日は晴れだから絶好の登校日和ね、と言って手を振った。

「あまり無理しちゃダメよ、体調管理はしっかりとね。スクールでの出来事、定期的に母さんに連絡してね」

 怒涛の出発文句に、内心はいはいと思いつつも、

「うん、分かったよ。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 外で待っていたゴーゴートに跨って、俺も手を振った。

「頼んだぞ。ゴーゴート」

 そう言うとゴーゴートは、俺の目を見てコクリと頷き、走り出した。



 *



 回りに目をやる。
車や自転車で移動している人もいるが、俺みたいにポケモンで移動している人もいる。
遠くの方では、空を飛ぶポケモンに乗る人も見えて気持ちよさそうだなと思った。
 
 ある程度時間が経つと、昨日見た街並みが見えてきた。
ここがトヤノカミシティだろう。このおよそ中心地にスクールは建っている。

「ゴーゴート、大丈夫か。もうすぐだからな」

 ゴーゴートの体調の心配を適度にしながら、家を出て数時間が経とうとした時、ようやくスクールが見えてきた。
やっと着いたんだ。長い道のりだったが、ここから俺の日常が戻るんだろう。
 
 校門には見たことがない二体のポケモン像があって、ここの外部侵入を護っているように見える。
その校門から、俺と同じ制服を着た人たちがぞろぞろと中に入っていく。
倣って俺も足を踏み入れる。
校庭は長く、建物は大きく、そうとう広いみたいだ。
 
 でも、あれ…………。ここからどこに行けばいいんだ。ゴーゴートも困っている。
流石に教室までは分からないか。

「うーん、困ったな。肝心なことを聞くの、忘れてた」

 途方に暮れていると後ろから声がした。

「おーい、イツキさん!」

「ん?」

 振り返るとそこには黒縁のメガネをかけた──背は俺より少し低めだろうか──黒い長髪の青年がいて、ピカチュウサイズの電子端末を持ちながら、

「噂には聞いてました。いやぁよかったです、目覚めたみたいで」

 と言った調子で青い瞳を輝かせながら、どしどしとこちらに駆け寄って来た。
だが、当然俺はこの子を知らない。

「えっと、ほんと悪いんだけど、君は誰だっけ? 俺、記憶喪失でさ……」

 青年は頷きながら言った。

「あ~、なるほど。その件についても本当なんですね。じゃあ改めて、自己紹介です。ボクはエイジ、トヤノカミ中央トレーナーズスクールの一年生で、イツキさんと同じ寮のルームメイトです」

 ルームメイト……。よくぞ来てくれた。
どこに行けばいいか分からず内心凹んでいたところに、救世主が現れた。
嬉し泣きしそうなところをぐっと堪えて、

「エイジ、また一からになるけどよろしく」

 照れ隠しのために、ちょっと格好つけて右手を差し出す。
 
「はい、もちろんですよ!」

 エイジも握り返してくれた。良い子だ、エイジ。俺はどうやら良い友達を持っていたみたいだ。

「授業はもうすぐですね。ひとまず、教室に行きますか。案内しますよ」

「ありがとう」

 その後聞いたことだが、エイジはどうやら同学年らしい。そりゃそうか、俺も一年生だし。
敬語を使っているから下級生かと思ってしまった。
呼び捨てにしてしまったけど、反応を見る限り、間違いではなかったみたいだ。
 エイジと少し会話をしながら教室のほうに歩いて行った。

 #3
 

 第一話「忘却」 ( No.10 )
日時: 2021/01/03 20:40
名前: さぼてん (ID: ysp9jEBJ)

 
 *
 
 やはりここ、トヤノカミ中央トレーナーズスクールはとんでもなく広い。
教室に辿り着くまで随分と時間が掛かかったみたいだ。しかし、ただ疲れただけではない。
歴史を感じさせる建造物に、たくさんの緑、そして見たことないポケモンを連れている生徒や先生たち。
それらとすれ違う度に、俺の気持ちは昂るようだった。
 俺はここで学んでいたんだな。そしてこれからも学ぶんだ。

「イツキさん、このスクールのことも覚えてないんですよね?」

「あぁ、何も覚えてないんだ。分かるのは自分の名前とポケモンくらいかな」

 エイジが続けて口を開く。

「このトヤノカミ中央トレーナーズスクールはポケモン界屈指のエリート校の内の一つです。三年制で、将来トレーナー関係の職業に就く人にはもちろんのこと、そうでない人でも様々な授業を通して学問や技術、修養を積むことが出来ます。何でも、チャンピオンを歴代で一番多く輩出したスクールとして有名なんですよ。ほら、現チャンピオンのシ──」

 エイジは一度口を開けると止まらない。情報としては有難いことなんだけどな。
 俺が言葉を遮る。

「なぁ、俺達ってどこの教室だ?」

「あ、一年生は六クラスあってですね。ほら、胸ポケットのところ」

 そう言って俺の胸ポケットを指差す。
そこには二つ、銀色のバッジが付いていた。エイジの方にも同じ数だけ付いている。

「これがクラスを表す目印のようなものです。クラスはAからFまで。ボクらは二つ付いているのでクラスBってわけです。ほら、見えてきました」

 廊下の突き当たりには中庭に面した一つの教室があった。あそこか。
少し緊張してきた。俺は恐る恐る足を進めながら教室に近付く。
エイジに誘導され教室に入ると、みな一目散に俺の顔を見た。

「イツキ、久しぶりだな」

「イツキ君、元気そうで良かった」

 皆口々に話しかけてくれた。
エイジだけじゃなかった。みんな凄い優しいな。
流石に涙が出そうになった。それでも尚、残念なことに俺はクラスメイトを誰一人覚えていない。
 横でエイジが口を開いた。

「皆さん、聞いてください。……噂通りイツキさんは色んな記憶を失っているみたいです。イツキさんにとっては初めてのことだらけです。なので、これからボク達で協力してあげましょう」

 みな頷き合い、俺の方を見て笑ってくれた。
 俺も笑顔で返す。

「エイジが言ってくれたように、俺は記憶喪失なんだ。でも俺は二ヶ月前までここで学んでいたと聞いて、ここに来れば何か思い出すかもしれないと思った。皆とはもう一度最初からやり直しだけど、こんな俺でよかったら協力してほしい……」

 どうにも俺はぶっきらぼうらしい。
 でも、みんなはちゃんと応えてくれた。
皆笑顔で笑いあった。嬉しかった。体が軽い。不安な気持ちもどこかに消えたみたいだ。
 すると、クラスメイトの中から一人、男が前に出てきた。背が高く、茶髪の無造作ヘアーで、凛々しい目つきが特徴だ。

「俺はソウ。ここ、クラスBのクラスリーダーをしている。イツキ、キミにまた会えて嬉しいよ。ここは良いクラスだろ。分からないことがあったらいつでも相談してほしい」

「ありがとう、ソウ。そしてみんな。ほんとに良いクラスだよ」

 俺達は握手をして、抱き合った。ソウの肩が濡れる。
とうとう涙がこぼれてしまった。嬉し泣きだ。皆はそれを見てまた笑った。



 *



 数分後鐘が鳴る。みなそれぞれ席に着く。授業の合図だ。
するとすぐに、髭をたくわえ眼鏡をかけた茶髪の先生が入ってきた。
白いシャツの上にグレーのチョッキを羽織り、グレーのズボンを履いている。
ここに来るまでに、グレーの服装でまとめた人たちと何人もすれ違ってきた。
おそらく、職員の制服なのだろう。ということは、あの人がクラスBの監督の先生だろうか。
猫背だが、明るく覇気のある整った顔立ちだ。

「みんな、おはよう。俺だ、アゲラだ。もう知っての通り、イツキが戻ってきてくれた。クラスBにとって大事なピースのうちの一人だ。記憶は失っているそうだが、みんなで支えあっていこう。……手短だがこれくらいにして、と。じゃあ、イツキのためにまたみんなで自己紹介のコーナーだ。新学期みたいで懐かしいだろ?」

 すこしハニかんで、先頭の生徒から挨拶するように促した。なかなかフランクな感じで話しやすそうだ。
皆は入学以来二回目の自己紹介で照れくさそうにしている。まぁ俺も二回目なのだが。
申し訳ないと思いつつ、みんな自己紹介を済ませた。

「何か俺、転校生みたいな気分だ」

「ボクらにとっては当たり前の日常が帰って来た、って感じですよ」

 隣の席のエイジと少し喋っていると、瞬く間に授業が始まった。

「じゃ、自己紹介も終わったところだし、授業再開していくぞ。ポケモン生態学だ。七十ページを開いて。ダンゴロを例にして地中に住むポケモンの生態に行動原理、及び食物連鎖について解説していくぜ。イツキ以外、みんなちゃんと予習したか。昨日の続き、当てていくぞ」

 難しい。授業はほとんど分からなかった。
でもエイジはなかなか賢く、どんな問題もビシバシ答えていく。
当分の間、エイジに頼るしかなさそうだ。

 #4
 

 第一話「忘却」 ( No.11 )
日時: 2020/11/21 09:57
名前: さぼてん (ID: ysp9jEBJ)

 
 *

 なんとか午前中の授業が終わった。
生態学に、ポケモン史、進化学や捕獲術など色んな授業を受け、物凄く疲れてしまった。
思い出した記憶は何もなく、ただひらすら新しいことを脳に植え付けていく。
名門校と言われるだけあって講義の内容はハイレベル。これはだいぶ自習しないとついていけないな。
運よくクラスメイトでありルームメイトであるエイジには、勉強を教えてもらえるように話をつけた。
 
 午後からは、他クラスと合同で実践のバトルをするらしい。
その時なんだか期待される目で見られたが、気のせいだろうか。
そんなことを思いながらエイジと一緒にカフェテリアに向かう。
しばらく歩くと目の前に丸いドーム状の建物が見えてきた。

「あそこですよ」 

 これだけ大きいと生徒も全員入れるんじゃないだろうか。
デカいとは思ったが、もう大きさだけでは驚かなくなってきた。感覚が麻痺している。
 しかし、中に入ると度肝を抜かれた。

「何だここ…………」

 うんと伸びた木々やゴツゴツとした岩場、揺らぐ水面に乾いた砂場。自然が建物内に形成されているのだ。
それぞれの場所にちゃんと椅子や机も備えられていて、手持ちポケモン達と一緒にご飯を食べている人たちが見える。
ポケモン一匹一匹に適した生息環境を与えることで、ポケモンがストレスなく食事をすることができるという狙いらしい。

「初めてこれを見た人はみんな同じ反応しますね、トヤノカミ中央名物の一つです。お腹空きましたね。さぁ、行きましょう」

 俺達は食事を受け取り、近くの席に着いた。

「なぁ、エイジ。授業中でもポケモンって傍に出してていいんだよな? 他のクラスメイトも出してる人見かけたからさ」

「えぇ、大丈夫ですよ。教室以外は何匹でも、座学の時でも一匹だけなら出してもいいようになってますからね」

「エイジは出さないのか? エイジは何のポケモン持ってるのかな、と思ってさ」

 そう聞くとエイジは立ち上がり、制服のポケットに手を入れる。

「あ……、気になりますよね。一匹なら良いって言いましたが、大きさは一メートル以内って決まっているんです。ボクの相棒は少し大きいですからね。ほらっ、お昼ご飯の時間ですよ」

 空中にボールを二つ投げる。
 中からはメタング二匹が飛び出してきた。青銅色の鋼のボディが特徴で、二本の腕が生えている。

「メタングか。なかなか珍しいポケモンを持ってるんだな」

「あともう一匹います」

 そう言って次はパチリスを出した。
するとすぐにエイジの肩に乗り、動き回る。電気リスポケモンだっけ。大きな尻尾をエイジの顔に押し付けて遊んでいる。

「このパチリスは入学にあたって、父からもらったポケモンです。なかなか抑えがきかなくって、暴れ回るのが玉にきずですがね」

 俺も手持ちを全員出した。ポケモンたちの食事も配り、いざ昼食だ。
あつあつのカレーを頬張る。やっぱり皆で食べると旨いな。
 そうしながら、次の授業について聞いてみる。

「昼からの実践バトルってのは何をするんだ?」

「その名の通り、ポケモンバトルです。しかも他クラスとの。普段の授業では、対戦での戦術や護衛、応用を学ぶのですが、今日からは違います。……迫る夏季行事最大のイベント“トヤノカミ中央決闘試合”の前練習が始まるんです」

 トヤノカミ中央決闘試合。
聞くところによると、クラスを代表した三名の生徒が一匹ずつポケモンを持ち合わせて共闘し、学年内での優勝を目指すポケモンバトルのイベントのことらしい。
なんでも校内外を巻き込んで全生徒が盛り上がるお祭り行事で、優勝したクラスには豪華賞品が与えられるという。
そして頂点の三人は“英傑”と呼ばれるようになり、成績等が優位になるようだ。
 何だよ、ヒーローになれるイベントか……。羨ましいな。
 そう思っていたのだが、

「イツキさん、ボクらの分も頑張ってください!」

 なんて言われるもんだから、思わず聞き返してしまった。

「イツキさんはクラスBの代表の一人なんです。何てったって、守護職にも就いてますし、バトルの強さはお墨付きですからね。優勝はボクらクラスBが勝ち取ってやりましょう!」

 エイジは拳を突き上げる。二匹のメタングも同じように真似する。パチリスはまだカレーに貪りついている。
え、俺って強いのか? それを覚えてないなんてどうかしてる。エイジの言う通りなら、俺にもヒーローになれるチャンスがあるってことだ。
 俺にバトルのセンスがあったなんて…………。

「あぁ、任せてくれ。で、その守護職ってのは何だ────」

 そう聞こうとしたとき、

「あ、もうこんな時間ですね、話はまた後でしましょう。さぁ、その実践バトル、及び試合の前練習に行きましょう!」

 エイジが時計を見ながら言った。もう次の授業が始まる。
話しているといつの間にかこんな時間になっていたらしい。
俺たちは慌てて駆け出した。



 *



 実践授業の場所となる“とこしえのスタジアム”に入る。カフェテリアホールからそう遠くなくてよかった。
本番の決闘試合もこのスタジアムでやるみたいで、ここは数多のトレーナー達が闘い、勝敗を争ってきた歴史ある場所らしい。
 クラスBのみんな、そして他クラスも来ている。相手は胸ポケットにバッジが一つあるからクラスAだろう。
 
 スタジアムの扉が開くと、中から厳しい顔つきの女性が入ってきた。
長い赤毛のストレートで、人差し指の赤い宝石が目立つ。季節外れの真っ赤なコートに身を包み、高いヒールをコツコツと鳴らしながら歩いてくる。

「あの人が実践の担当、ランタナ先生です。……ちょっと怖いので、注意です」
 
 横でエイジが囁いた。続けてそのランタナ先生も腕組みをしながら口を開ける。

「三人の代表、前へ」

 出番です、とエイジに背中を押され、一歩踏み出す。
クラスBの他の二人、クラスAの代表も前に集まる。
ランタナ先生は六人の顔を眺めて少し考えた後、少し声を低くして呟く。

「ではまずイツキさんとムツミさん。使用ポケモン一匹の勝負です」

 いきなり俺か。
ムツミと呼ばれた男は、片方の目が隠れた黒髪で、表情は読めない。
赤い瞳で俺を見つめる。
何を考えているか分からないが、まぁなんとかなるだろう。クラスの皆の応援が聞こえる。
 
 ボールを手に取り、リングマを出す。
茶色い体毛で覆われた、お腹に黄色い円の模様があるポケモンだ。
俺のリングマは通常の個体と比べて少し大きい。体にいくつもある傷跡は、たくさんの敵と戦ってきた証拠だろう。

 ムツミもポケモンを出す。
相手のポケモンは…………。何のポケモンだ? 見たことがない。
翼のようなトサカがあって、尾の部分に当たるのはヒレ。頭に仮面のようなものを付け、別々の形状の前脚と後ろ脚を持った、四足歩行のポケモンだ。
空気が一瞬、止まったような錯覚を抱く。

「それでは、はじめ!」

 両者がポケモンを出したのを見て、先生が高らかに声を上げる。



 ────勝負は一瞬だった。

 #5 第一話「ぼうきゃく」END
 


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