二次創作小説(新・総合)
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- あなたを 第2章 絶賛連載中! ハリーポッター 親世代
- 日時: 2022/06/06 19:56
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
イギリスのとある駅の柱に向かってたくさんの荷物を乗せたカートを押して飛び込む、一人の少女の姿があった。
名をレイニウム・アンジョーナという。
茶髪に丸い眼鏡をかけて、いつも下を向いている、それが彼女の特徴だった。要するに内気な少女だった。
柱に飛び込んだ彼女は、ぶつかることもなく柱をすり抜けた。後ろにいた母親もそれに続く。するとそこには赤い列車が線路にとまり、黒いローブを着た子供と大人でごった返していた。
列車の一番前の入り口に向かい、荷物をカートから降ろす。若干引きずる形ではあるが、人混みにまぎれこめばそれは異様な光景には見えなかった。それにこれが普通なのだ。この世界では。一人の少女がたくさんの荷物を引きずりながら歩く姿なんて。
列車の中に頑張って荷物を入れた彼女は、心配そうに見つめる母の姿をその瞳で捉える。優しいアメジストのような輝きを持つ母の瞳と同じ色の眼を、少女は持っていた。
すると、列車が出発する合図の汽笛を鳴らした。慌てて他の子供が乗り込んでくる。少女は邪魔にならないように、と傍に避けた。
母の手を握り、心配するな、と諭す。厳かな顔を母は一瞬見せたが、すぐに柔らかい笑顔へと変わり、娘を送る。
「大丈夫よ、だってあなたは私の子供なのだから。」
母のその言葉を聞いた娘は、緊張して硬かった表情が緩んだ。心なしか、とても心に響いた。
そしてゆっくりと列車は走り出す。
名残惜しい中、母娘は手を振りながら別れを惜しんだ。
- あなたを 第1章 7話ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.8 )
- 日時: 2022/04/02 09:22
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
Raynium side
ずっとずっと、世間知らずのお嬢様として生きてきた。家庭教師を呼んで、所作を覚えさせられて、ふわふわのドレスを着せられて黙って嘘くさい笑顔を浮かべる。
貴族とはどんなものだったのか。
まだ物心がついて間もない頃はまだこの生活にはなんとも違和感を感じていなくて。
CDでリピートされているかのように、魔法族発祥のおとぎ話をずっとずっと繰り返し聞かされた。
けれど、母だけは違った。
イギリス人の純血貴族、シャックルボルト家の分家出身。
ここの家は純血主義ではない、と謳いながらも、結局は純血の女性を妻に迎えている一族、アンジョーナ家。
ベルギーの強家15族の下の立場である、純家8族。その中でも、アンジョーナ家はオーディアンス家とは親密な関係だった。
幼馴染もオーディアンス家の女の子だった。可愛い子だった。同じ年だった。
11歳になったら、一緒にボーバトンに行こうね、と約束していた。
けれど私が7歳の頃にドラゴン疱瘡で亡くなった。
亡くなる数ヶ月前には会えなくなった。何度もなんども頼んだけれど、父は受け入れてくれなかった。使用人も、しもべ妖精も、おばさまも。
でも、母だけは違った。直接は会うことはできなかったけど、母の人脈のおかげで文通をすることができた。
たった三週間だったけど、私にとっての心の救いだった。亡くなる一週間前には手紙が書けなくなるほど重症だったらしい。その時にはもう心の準備はできていた。母のおかげだ。
それに、イギリスに引っ越すことを機に、いろいろなことも許してくれた。髪を短くすることや、スカートではなく、ズボンを履いてもいいこと、所作を気にせず生活をすること。
この三つから解放されただけで、私の世界は広がった。
母になぜ好きにさせてくれるのか聞いたことがある。
「私はね、あなたにそっくりな御転婆女だったわ。だからね、レイニウムの気持ちがよくわかるの。髪なんか鬱陶しい、スカートなんてひらひらして嫌、所作なんかどうでもいい、ってね。私は本当に我慢してた。ずっとね。だから私だったらこうなりたい、私だったらこんなのは嫌だ、と思ったことはやらせなくていいと思うのよ。我慢するのは本当に嫌。私の気持ちをあなたには味わせたくないのよ。まあ、ベルギーの純血王家であるアンジョーナ家の宗家当主夫人がそんなこと言ってはいけないんだけれどね。」
あの時母は笑っていたけど、今考えてみればとても勇気がいるだろう。嫁いできて早13年。でもほんの13年と捉える頭のお堅い爺婆がいる。
まだ嫁いで13年の若い娘が昔ながらの教育方針を変えようとするなんて烏滸がましいにも程がある、とでも思っていたのだろう。
引っ越す一か月前、母の顔色が悪かったのは傷つくような暴言を言われていたからかもしれない。
それでも態度を変えない母の潔さを私も受け継ぎたい。
今考えれば、それは甘やかしだったのかもしれない。
誰もが優しい世界。これは、母と父が作り上げた箱庭の中に私がいただけなのかもしれない。
最初は嬉しかった。ホグワーツに行くことが。校則の中に私が禁じられていた事は一つもなかった。まあ、制服がスカートなのは少し嫌だけど。
でも、髪型は短くても大丈夫、所作なんかなくても大丈夫。夢見た世界。
友達もできて、箒も、学業も順調だった。
だったのに。
あの日から。あいつと、シリウス・ブラックと喧嘩してから、この幸せは崩壊した。
バシャアアァァァ
まただ。
ゴツン!
まただ。
バシッ
まただ。
また、また、また。
なんなの。私が一人のところを狙って悪戯をしてくる。もういじめの域である。
これを止めてくれる人はいる。けど一人だと意味がない。この1か月、これは日常と化した。
周りは、
『ああ、またか。』
と思っているだろう。毎日毎日私ともう一人に執拗な嫌がらせをしてくる。
周りは誰も助けてくれない。見られて、ヒソヒソと噂話をする。
「またあの子ね…。」
「近付いたら私たちも狙われるんじゃないの?」
「迂闊に近づけねぇな……。」
自分のことがそんなに大事か。人がいじめられているのを見ても何も言わないのか。これを見逃している教師たちは何をしているんだ。私に声をかけて、慰めてくれる人は誰もいないのだろうか。
私の八つ当たりだ。ノアも、スラーも、エルも、見ていないから。見ていないから止められないのに。私は3人が無視しているように錯覚した。
だから、距離をとった。ルーティンの朝と昼、夜の食事時間の合流から、私は抜け出した。要するに、避けたのだ。時間がかぶらないように。朝早くに起きて、厨房に行って、ご飯を1日分もらう。保温呪文がかけられているから、冷める事はないし、長く保つ。
そのせいで、いつもの四人で行動する事はなくなった。3人が一緒に歩いているのも見た。見たけど、いつも通りだった。そんな3人に腹が立った。また八つ当たりだ。
私はこんなにも懐が狭かったんだ、と思い知った。
それに、私と一緒にいたら、彼らが新たな悪戯の対象になりえない。私はそれが怖かった。
もう、いやだ。
死ねたらどれだけいいだろう。でも死ねない。私はアンジョーナ家の一人娘だ。私が死んだら本家の血筋が途絶えてしまう。これは、アンジョーナ家にとっても、ベルギーにとっても大変なことだ。その重大さがわかるからこそ、私は死ねない。
私はともかく、もう一人のいじめの対象者は何も悪くなさそうだ。なのに、『スニベルス』呼びで辱めを受けている。
だからそんな彼と、
セブルス・スネイプと仲良くなることは、必然だったのかもしれない。
今日も変わらずポッターもといクソ眼鏡とブラックもとい黒髪野郎から頭に水をまっすぐ食らった私は、さっさと乾燥呪文をかけて歩き出した。
湖に向かった。
ひとりになりたかった。
もちろん、人と話すのは楽しい。けれど、私は一人が似合ってる。それに今は話してくれる人なんて一人もいない。
すると、一人先客がいた。黒いベトベトそうな髪に、緑のローブ。スリザリンのようだ。
彼の隣に座って声をかけた。
「ねえ、なんでここにいるの?」
「………誰だお前。」
「レイニウム・アンジョーナ。ハッフルパフの一年よ。」
「なんだ、落ちこぼれの寮の生徒か。」
「あら、心外だわ。教科書の『幻の動物とその生息地』の著者のニュート・スキャマンダーはハッフルパフ出身よ。」
いつもだったらここで反論していた。けれど、いじめのせいで何となく物理の方が心に刺さることがわかった。言葉はまだマシだ。
「………そうなのか?」
「ええ。前図書室で経歴を読んだわ。あなたが読んでいるのは、魔法薬学の本?」
「………あぁ。魔法薬学は面白い。」
「!!そうよね!魔法薬学は緻密で高度で!面白いわ!私も魔法薬学が一番得意!」
「………!ほんとか。」
「ええ!ほんと!」
「最近は生きる屍の水薬の作り方について調べている。」
「ええ!?それって6年生で習うのよ?すごいわ!一年生でそれを調べているなんて!」
「それほどではない。スリザリンにはこんなやつゴロゴロいる。」
「スリザリンって優秀なのね。」
「………何でだ?闇の魔法使いだって輩出している。」
「きっと本意でなった人は数少ないわ。親の圧力とか、家族の関係を保つため、とか。服従の魔法をかけられて、とかね。
それに、そもそもグリフィンドールだって輩出してるわよ。
本意でなった人だって、心の闇と光のバランスが闇に傾いただけ。逆もまたありよ。光が正義だと思う人もいれば闇が正義だと思う人もいる。けれど、どっちが本当の正義なのかは誰もわからないわ。ダンブルドアにもね。それぞれに言い分はある。
でもね。もし、闇に行ってしまった人が本当に後悔しているのなら、私はそれを全力で助け出す。心を改めて、自分の行動を本当に悔いているのなら。
そんなのでいいじゃない。誰がどうしようと私があれこれ言える立場じゃないわ。その人の人生はその人のものだもの。」
「!!そうか。」
「ええ。だから、あのクソ眼鏡と黒髪野郎に何をされようが何を言われようが堂々としてればいいわよ!と私は思う……あ、い、今のは私の話!忘れて忘れて!」
「もしかして、ポッターとブラックか?」
「そうよ……。え?あなたも傍観者?」
心なしか声が低くなった。彼も同じようにただ見ているだけの傍観者なのだろうか。
「いいや、僕もお前と同じようにあいつらに……認めるのは心底悔しいが…辱めを受けている。」
「てことは…。私の仲間?」
「おま…君もか?」
「きっかけは分かっているの……。けど私が悪いわけじゃないと思うの。だって嫌がらせを受けたのよ?だからガツンと言ってやったの!!そしたら逆ギレ!ほんと意味わからない!!」
「僕もだ。幼馴染と一緒に汽車のコンパートメントにいただけなのにこの有様だ!あいつらは何を考えているのかさっぱりわからん!」
「その通りよ!なに?自分たちが悪いのにそれを他人になすりつけるわけ?そのまま澄まし顔?ふざけんな!!!!シリウスって同じ名前だなーって!ミドルネームと名前が一緒だなーって!親近感湧いた私が馬鹿だったわ!中身はクズでゴミで魚の骨よ!!!」
「お、おい、君は一応貴族の出身ではないのか?アンジョーナだろう?」
「学校での家柄なんて通用しないわよ!実力主義!!」
「!そうか。スリザリンでは絶対に聞きいれられない言葉だな。」
「そういうあなたが聞き入れてくれるじゃない。スリザリンの未来は明るいわ。成績は、眼鏡は千歩譲る!けど黒髪野郎!あいつは越してやる!!!」
「僕もそれを目指そう。」
「あ、そういえばあなたの名前は?」
「切り替えが早いな…。セブルス・スネイプだ。よろしくな。」
「よろしく、セブルス。一緒に頑張りましょ。明日の休日空いてる?」
「え、あ、ああ。空いているが…。」
「じゃあ図書館集合ね!十時に!DADA教えて!あなたすごく得意でしょ。合同の時見てたわ。」
あの時に、目立ちはせずとも頑張っていた。何方かというと闇の魔術に対する防衛術は苦手な方だ。反純血主義なのに申し訳が立たない。
教えてもらうと助かる、と思い、提案してみる。
話し方から察するに、少し気難しい人かもしれない。今日会ったばかりの他人に勉強に付き合えと言われても無理な話だ。
「よく見てるな…。まあいい、教えてやんこともない。10時だな。」
「え?いいの?」
「ああ。」
「ありがとう!よろしく!じゃあね!これからニフラー探さないといけないの!」
「いや、なんでだよ。」
盛大に突っ込まれたが、まあいいか。彼がこの話に興味を持ってくれたみたいだ。
「ハグリットが募集してた。今、友達いないから暇でさー。応募してみた。」
「友達なら僕がなってやる。」
え????本当?見ず知らずの他人だよ?今日会ったばっかだよ??いや、私だって汽車とボートで初めてあったのにあの3人とは仲良くしてたな……。
「え?!本当に?ありがとう!!!」
「ああ。」
あ、本当らしい。
「そうそう、リリーによろしく!」
「?!」
憶測だが、彼の幼馴染はきっとリリーだ。いや、絶対リリーだ。基本一人行動な彼が珍しく二人行動になる時がある。その相手は決まってリリーだ。
他寮のハッフルパフ生に話しかけてくる勇気を持ち合わせているのだ。スリザリンにも同様なんだろう。
でも、私にとっての幼馴染の、
あの子はもういない。
そんなことを考えながら、私は足早に去っていった。
- あなたを 第1章 8話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.9 )
- 日時: 2022/03/30 16:48
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
セブルスとの勉強会は成功した。
私がわからないところはセブルスに教えてもらって、セブルスは他の人の考えを聞きたい時に私に質問を投げかける。winwinの関係で勉強すすめると、とっても捗った。セブルスの教え方も本当にわかりやすくて、教師に向いている、と言ったところ、嬉しそうにしていた。
今度リリーも呼ぼうかな。
いや、私に話しかけられるなんてリリーはいやだよね…。
最近、いじめのおかげで見事に自己生肯定感が右肩下がりだった。
おかげでろくに食べ物も喉を通らない。まあ、勉強には支障をきたさないのでいいことにする。
見た目がガリガリになっても勉強はできる!……少し人の目が痛いけど。
そう、ただいま、私はそういう状況なのである。ご飯なしの日もある。その時はジュースで我慢、することはないけど。ジュースは飲んでる。野菜の。だから一応栄養はとれてる。
今日も今日とて勉強に勤しむ私。私の最近の脳内は、7割勉強、1割セブルスとの勉強会(どうやってリリーを誘えばいいか考え中)、1割虐められている、という感情、1割が食欲、という状況だ。いや、食欲はないと言ったら嘘になるし、ホグワーツのご飯はとっても美味しそうだ。いや、美味しい。けど、なぜか食べる手が止まる。
人はストレスを感じると過食症になったりするらしいが、私は逆なのかもしれない。
もう日常になった早起きと厨房生活はもう、私とは切っても切れない関係になっていた。
今日はパンと牛乳だ。ほんの少しパンをかじる。パンのこんがりとした風味が口に広がる。美味しいなあ。
けど食べたいとは思えない。
しかも、すぐ食べたら吐く。
最近私はほんっっっっっとにすぐ吐く。
けどさっきのような食事が主なため、吐いても胃液しか出てこない。
毎日毎日喉が痛い。ガラガラだ。喉が干ばつしてる。
………とまあ、こんな生活だからどんどん痩せていった。自分でも一回、
『大丈夫かしら、これ……。』
と思ったほどだった。今では放置だが。
体重計に乗ってみたら30キロを切っていた。まあ、これがダイエット!私はスレンダーになる!と思って目を瞑った。
一回セブルスに、
「なんでこんなに痩せている!今日何を食べた!」
と聞かれたことがあった。
一応、パン、とは答えた。全部じゃないけど。
「パンだけか?!オートミールは?野菜は?肉は?!」
「ぱん、と、ぎゅーにゅーのんだけど。あ。あとやさいじゅーす。」
「だめだ!栄養を取れ!じゃないと点滴で入れてやるぞ!」
「え、いいの?じゃあてんてきがいいな〜。」
って言ったらドン引きされた。
なんで?効率化を求めた結果なんだけど。食べる時間を勉強にあてるという。どうしても食べたくないと言ったら、薬を調合してくれた。
で、私は大広間にはここ最近は一度も行っていなかった。
しかし事件が起こる。
ハッフルパフ生が大広間に召集されるらしい。
何かやらかしたのかな?
まあ、私が最近大広間に行っていないのは周知の事実だろうし。まあ視線が痛いけど大丈夫か、と思った。
けど私はある意味違うことで注目を引いた。
それは大広間について机の間を通っていた頃だ。まだ昼食の時間だったから、人はたくさんいた。
そしてあそこを通り過ぎようとした時。そう、メガネと黒髪の横を通り過ぎようとした時、足を引っ掛けられた。
いつものことだ。
大丈夫。
そう思ってた。
けどだんだん体の自由がきかなくなっていく。
倒れるから手を前に出して体を支えようと思ったのに、体が動かない。手が出ない。
だんだんまぶたも重くなってきた。
地面とゴッツンコする時には、もう私の意識はシャットダウンしていた。
Remus side
だんだんジェームズとシリウスの悪戯が過激になってきた気がする。
前までは軽い悪戯だった。廊下をクソ爆弾で爆発させたり(通行人は居なかった。)、ロープの色が真っピンクに変わったり。
あの頃は僕も、くすり、と笑えるような、些細な悪戯だった。
けれど。
スリザリンのセブルス・スネイプ
ハッフルパフのレイニウム・アンジョーナ
この二人に対しての執拗な悪戯が今日も続いている。
頭から水をかぶらせたり、突然爆発したり、落とし穴に落としたり、呪文をかけたりする。
明らかに悪戯ではない。
僕は止めた。
『そんなことをして何になる』と。
けれど彼らはこういった。
『僕らのためにさ』
意味がわからなかった。自分のために他人をいじめる?何故?自己中心的すぎる。
レイニウムは悪戯されたことに怒って少しきつく言っただけだ。何もここまでの仕返しなどなくていい。
スネイプはエバンズとホグワーツ特急のコンパートメントに一緒にいただけだ。何も悪くはないのに。
無力な自分が憎い。
止められない自分が憎い。
自分もそうなってしまうかもしれないと思うのが憎い。
彼らの友達だからそっちに偏ってしまう自分が憎い。
今日も僕は僕に絶望した。たった一回の行動なのに。止めて、って庇うだけなのに。僕はそれができない。
とんでもない臆病だ。
我が身が可愛さに見て見ぬ振りをしているんだ。それじゃあ周りと一緒だ。
だから、今日こそ。
今日こそ。
今日も早く起きた。3日前に満月が過ぎた。今ではもう全回復だ。でも傷はヒリヒリと痛む。今のところ、まだ瘡蓋にはなっていない。
ぱっぱと着替えて大広間へ向かう。生徒は少ないが、もう食品は出ていた。三人の分まで席を取ろうと思う。
一人で糖蜜パイをムシャムシャ食べていると、三人が来た。ちょうど大広間も賑やかになってきた。
しかし、何故かハッフルパフだけ座っていない。机の前で年齢関係なく集まっている。
何かあったのだろうか。
やっぱりあの三人はレイニウムとは一緒に行動していない。三人が突き放したのか、レイニウムが突き放したのかは分からない。けどみんな顔色が優れていない。
きっとレイニウムが心配なんだろう。仲良くしたいと思っているんだろう。そう考えると、レイニウムから突き放した可能性が高い。
やがてどんどん集まってきて、机の前がどんどん膨れ上がった。前のどこを見ても黄色だ。
すると、レイニウムが現れた。
大広間に来るのは久しぶりだ。だいたいいつも図書館か寮にいる。授業中しか歩き回っていない。
それは、姿を見るのも久しぶり、ということだ。合同授業は最近、天文学しかないため、レイニウムはよく見えない。
それに、ピーターと共に、だいたい行動していて、最近ジェームズとシリウスとはそんなに移動中一緒にいない。
だから驚いた。
彼女がとてもやせ細っていたことに。
まるで棒のようだ。骨が見えている。でも角ばってボコボコだ。女性本来の丸みを帯びた体はどこにもない。
それに顔色も悪い。痩せているなら顔色が悪いのも当然だが、度合いが違う。顔面蒼白真っ青の顔だ。あの顔で生きているのが不思議だ。
ちゃんと食べているのか?最近大広間に来なくてやせ細ったのか?もう彼女は1ヶ月も来ていない。
人間は1ヶ月食事をしないまま生きることはできない。彼女は吸血鬼ではないし。
じゃあなんで…。
様々なことが脳内に流れ込んできた。
さすがに大広間のみんなも騒ぎ出す。最近はホグワーツのみんなが彼女を避けていたからこんなにやせ細っていることも知らなかったのだ。ジェームズとシリウスとハッフルパフを除いて。
流石にこれは痩せすぎだと判断したのか、マクゴナガル先生も席を立ち上がった。彼女の方に向かっている。
やがて僕らの前も彼女は通り過ぎようとしていた。しかし、シリウスが足をレイニウムに引っかけた。レイニウムは驚くこともなく、無表情だった。彼女は前に倒れそうになった。
ここで大広間の全員が彼女の異変に気付いた。
人は反射神経で倒れる時は手が勝手に前に出るようになっている。しかし彼女は手が前に出ることがない。目も閉じている。
そして彼女は起き上がることはなく、意識が飛んでいたのだった。
マクゴナガル先生も急いでやってくる。教職員も騒ぎ始めた。マダムポンフリーもやってくる。焦っているようだ。
僕とピーターは急いで近寄った。
レイニウムはピクリとも動かない。
「レイニウム!!返事して!」
「僕らの声聞こえる?!」
聞いてもレイニウムは動かなかった。
「Mr.ブラック!!!何をしているのです!ポッターもですよ!止めなかったのですね?!グリフィンドールがこのようなことをするとは思いませんでした!!ポッター、ブラック!!あなた方には失望しました!グリフィンドール80点減点!!」
マクゴナガル先生が早口で捲したてる。
もっともだ。
大広間でも他の生徒が「そうだそうだ!」と言っている。グリフィンドールの席からでさえも。特にエバンズが怒り狂っていた。
流石にジェームズとシリウスもしゅんとなって肩身が狭くなっている。
当然だ。
女の子をここまで弱らせて痩せさせるような奴がやっと罰せられた。これでも生ぬるくないだろうか。
「ポピー!早く!」
マクゴナガル先生がポンフリーを呼ぶ。杖を振って担架を出す。レイニウムを浮かせて担架に乗せ、急いで医務室へと行ってしまった。
先生とポンフリーが居なくなってから、ざわりと大広間が煩くなった。
「流石にここまで痩せるとは思ってなかった。」
「やばいんじゃね?一年だろ?あいつ。あの体では…。」
「ベルギーの純血貴族の子女があのようになられてはベルギー魔法界も大変だぞ。」
「やっぱり無視していたのが悪かったのよ!あんな小さい子を!」
などなど様々だ。
僕とピーターもここぞとばかりに二人をじと目で睨んだ。
ここまで反対されることはなかったため、ジェームズもシリウスも涙目だった。親友である僕らにも責められて(目線で)流石にメンタルが崩壊するだろう。これくらいがちょうどいい。
僕とピーターはさっさとご飯を片付けて、医務室へ向かった。
僕たちがついた頃には、レイニウムはベットで寝ていた。
何本という管が腕に繋がれている。顔をもう一度よく見ると、本当に痩せている。ほぼ肉がない。骨で全身が角ばっていて、あの頃とは大違いだ。顔色も悪くて、何も食べていないようにしか見えない。見ていて痛々しい。
すると、マダムとマクゴナガル先生がやってきて、
「何故このようなことに?」
と尋ねられた。
先に話し始めたのはピーターだった。
「僕たちのせいなんです。僕たちが止めなかったから!!」
「どういう事です、Mr.ペティグリュー。」
「ジェームズとシリウスの悪戯を僕らが止めなかったから…。」
「悪戯と何か関わりがあると?」
「はい、そうです。きっと。でもあれは悪戯じゃない。イジメだよ…。」
「そうなんです。ピーターの言っている通りです。あれは悪戯じゃない。しかも女の子に対して、水をかぶらせたり、髪を燃やしたり、ローブを消滅させたりしていました!」
僕もピーターの声に重ねながら擁護した。
「まぁ、なんと!!Ms.アンジョーナがローブがなくなった、と言ってポモーナに頼んでいなのはこの事だったのかもしれませんね……。今、彼女はかなり危険です。深刻な栄養失調です。なんでここまで……。」
マクゴナガル先生の目から光が消えた。瞳孔が開いている。かなり動揺しているようだ。
「えぇ、そうなのです。目を覚ましたとしても三週間の入院で起きあがれるかどうか…。」
マダムポンフリーもマクゴナガル先生に同調した。
その言葉で、僕たちは今までやってきた事の事の重さを知った。
僕たちは自分の為に人の命を危険にさらしていたというのか。
「それにしても、ポッターとブラックには人の命を奪いそうになったという自覚を持ってもらわねば!!」
頭が取れそうなほど頷きながら、見て見ぬ振りをしていた事を咎められ、8点減点された。
当然の報いだ、と思いながら、僕らは部屋を去った。
- あなたを 第1章 9話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.10 )
- 日時: 2022/03/30 22:05
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
あれから数週間がたった。まだ、レイニウムは目覚めない。
放課後、いつも一緒に行動していた三人が見舞いにやってきていて、僕とピーターと鉢合わせた。
レイニウムを見るなり、三人は顔色が変わり、涙ながらに事情をスライネが話してくれた。
「私たち、いっつもレイニーと行動していたの。けど、このいじめが始まってから、レイニーから避けられて。一回問い詰めてみたの。でも、『危ないから関わらないで』の一点張りで。
だから徹底的について行ったりしたんだけど、朝の朝食に来なくなってしまったの。私たち、全員部屋が違うから合流するのはいつも大広間で。だから完全に一緒にはいられなかったの。
それに、私はレイニーの部屋に行けるから行ってみた事もあったわ。けどベットにずっとこもっているらしくて。さすがにカーテンを開けるのは不躾でしょう?だから言葉をかわすくらいしかできなくて。その時も『危ないから関わらないで』って言われたわ。
しかも、大広間に、朝昼晩、全部こないのよ。
授業中、隣の席に行こうとすると、ほら、最近はグリフィンドールはレイブンクローと合同でしょう?だから、私達はスリザリンと合同なんだけど、スリザリンの男の子と一緒にいて、一番後ろの席にいたから、近く、と言っても席が限られていて。
唯一の外での授業の飛行術でも、開始早々どこかに行ってしまうの。
挙げ句の果てには天文学ではグループ学習がなさすぎて、ここ何週間もレイニーとは一緒のグループにはなれなかったわ。
ごめんなさい、私たちがもっと気にかけていてあげればよかったの!」
と、思いを吐露した。
成る程、それでレイニウムはこの三人と一緒にいなかったのか。
だいたいその四人の関係性はわかった。
三人を見送ると、次に男の子のハッフルパフの三人組が来た。
「あ、君たちも見舞いにきていたの?」
赤毛の男の子に聞かれた。
「あ、うん。君らの名前は?」
ピーターも二人称は『君』のままでは道徳的にどうなのか、と思ったらしい。
「僕はエレン・ロイズ。」
「俺はスタイアン・ムーンダイス。」
「僕はダイアン・アボット。」
「俺とエレンで見舞いに行こうと思ったら、ダイアンと鉢合わせたんだ。一緒に行こう、ってなってさ。」
と、スタイアンが呟く。
「僕はピーター・ペティグリュー。こっちはリーマス・ルーピンだよ。」
「ねぇ、グリフィンドールがお見舞いに来るのは珍しいよね。アンジョーナとなんか接点があったの?」
ダイアンも不思議そうに言った。
確かにグリフィンドールの見舞いに来る人の数はダントツで1番目に少ない。何故スリザリンじゃないかというと、彼女が純血貴族のアンジョーナ家の直系子女だからだ。純血主義ではないが、仲良くしておいて損はないと思ったらしい。下心で見ずに見舞いに来るスリザリン生など、セブルス・スネイプくらいだ。
グリフィンドールが少ないのは、彼女をこのような状態にしたのが自分たちの寮の生徒、という事に、良くも悪くも正義感がある彼らは罪悪感がすごいのだ。正直言うと、僕もそうだ。けど、見て見ぬ振りをしていたのに見舞いにすら来ないなんて、それこそ罪悪感が募る。
それでも、見舞いに来るグリフィンドール生は僕とピーター、エバンズとフィオール、それから五年生の監督生のみだ。
加害者であるあの二人組は学校内では、
『伝説となるあの日』 以外は見舞いになど来ていない。それどころか悪びれる様子もなく、むしろ、もう一人の標的であったスネイプにさらに悪質ないじめをしている。
しかし、吉、と言ってもいいが、先生たちがこの一件であの二人に目を光らせるどころではなく刃物を見せながらギラギラ目を開けているくらい監視しているのだ。
そのせいで管理人のフィルチによく見つかり、マクゴナガル先生たちにチクられる、のがオチになってきている。
因みにあの一件の罰則は80点の減点と、三週間の課題二倍期間、それに伴う自由時間の補習が主な内容で、チクられた分も合わせれば、スプラウト先生の温室での雑用と、スラグホーン先生の雑用などなど、今ではいじめをする暇がないくらいに忙しなく動いていた。
そのおかげで、ホグワーツには平和な日々が続いていた。
「うん、僕らはホグワーツ特急出会ったんだ。しばらく話してなかったんだけど、この件を機にもっと声をかければよかった、って思って。」
「そっか。誰も見て見ぬ振りをしていたんだ。これくらいは当然だよ。」
「そうだよね。」
僕は少しアボットと馬が合うらしい。僕の考えに同感してくれて、嬉しかった。
レイニウムはここ数日ずっと寝ている。そのおかげで、何にも食べていない。
彼女はさらに痩せていった。
いったい彼らはレイニウムがどれだけ痩せればちゃんと心からこの行動を悔いてくれるんだ。
特にシリウス!ジェームズはエバンズに嫌われそうな、まではいい。だってもう嫌われているから。いい加減気づけよ。
『もう顔も見たくないわ!』、だの、『貴方がああなればよかったのよ!』だの言われて結構焦っている。
最近は多忙を極めているが、その合間を縫ってエバンズのご機嫌とりに勤しんでいる。しかもそれを楽しそうに。
恐ろしい。
あ、話がずれた。
シリウスはさっき言ったようにジェームズとは違って全くもって反省していない。いや、ジェームズも反省しているかどうかは微妙なところだけど。
シリウスは『あの機械女に謝るなんて死んでも嫌だ!』だの、『俺のことを話題にした時点でこうなることを予想できなかったあいつが悪い』だの前半はまだ語彙がわかったが、後半は何言っているのかわからなかった。
しかも、伝説のあの日の時も『ごめんなさい』は、頑なに言わなかったらしい。なんなんだ。
僕とピーターは絶賛、二人に対しての無視ボイコットを起こしている。
部屋にいても、無視!話しかけられても、無視!
できたらいいんだけど。結局のところピーターは喋っている。
裏切られたなぁ。
Raynium side
目が醒めると、寮の天井じゃなかった。
顔を横に動かすと、白いカーテンだった。隙間を覗くと、隣にもベットがずらりと並んでいた。壁は白く、あちこちが白いカーテンで区切られていた。ここは医務室らしい。私の他には誰もいなかった。平和なのはいいことだ。
自分のベットの足元には様々な物が置かれていた。主に手紙だが。
他にも箱だの、リボンだの、お菓子だのがずらりとおいてあった。ハニーデュークスの包装のお菓子があった。吐かなくなったら絶対食べよう。
スラーとノアとエルのイニシャルが書かれた手紙が何枚も何枚も連なっていて、心配をかけてしまった、という罪悪感と同時に、嬉しさもこみ上げてきた。
三人はあんなに突き放した私をまだ友として扱ってくれている。
それがとても嬉しかった。
マダムポンフリーが医務室に入ってきたから声をかける……ことができなかった。
声帯が弱っているらしい。どんだけ寝てたんだ。
手を振ろうとしてみたが、こちらも動かない。どんだけ寝てたんだ。すごく筋力が落ちていた。
結構ショック。
すると、ポンフリーが、こちらに駆け寄ってきた。
「あぁ、目覚めたのですね。もう倒れてから四週間ですのよ。」
え”。
話そうにも話せない。頑張って嗄れた声で話した。
「ご心配をおかけしました。え、と、四週間眠っていたのですか?」
「ええ、そうですよ。」
「どうりで声が出なくて体が動かせないわけだ…。」
一人で話して一人で納得した。そんなに寝ていたのか。
「あの、父か母からは何か…?」
「えぇ、ご両親がホグワーツにいらっしゃったわ。大層ご立腹そうだったわねぇ。」
「あ、あぁ、そうですか…。何もやってませんよね?」
「ご両親のこと信用していないのですね。何もやってませんよ。まあ、いざこざはありましたがね。」
「ソ、ソデスカ。」
えぇ…。何やらかしたんだろう…。場合によっては土下座かな…。
「場合によっては土下座ですかね?」
「そんなことないですよ。手は上げてませんから。」
「手『は』、ですか。」
「えぇ。手『は』ですが。」
……………。
「…………おなかすいた。」
久しぶりの食欲だった。四週間ぶりだった。
「まあ!そうよね。四週間もねぇ。急いで持ってくるから待っているのよ。」
「あ、ちょっと待ってください!!」
呼び止めたが聞いてくれなかった。
私は拒食症だ。
食欲はあるのに食べたくなくなる。これは意図的になのかもしれない。私はストレスがたまるとやけ食いする癖があるから。
だから食事の時間も勉強に費やした。その結果、見事に拒食症になったわけだ。
しかし、拒食症は吐かない。過食症は吐くが、拒食症は吐いた試しがない。
また違う何かなのかもしれない。
私は要するに、食べても吐いてしまうからいらない、と言おうとしたのだ。
大切な資源である食糧をダメにしてはいけない。それに、私自身、食欲はあるのだが、食べたい、とは思っていない。
けど食べる以外にやることもないし、足元にある手紙を見るために動く筋力もない。
だから、大人しく待つことにした。
しばらく待っていると、足音が聞こえてきた。マダムポンフリーだ。あぁ、食欲が…。でもたべたくな、ん”ん”っ、まちがえた、タベタイナー。
と思ったらマダムじゃなかった。
誰かと思ってみた先には、宿敵、シリウス・ブラックがいた。
- あなたを 第1章 10話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.11 )
- 日時: 2022/04/01 11:11
- 名前: やまら (ID: qrfsNuOz)
「なんの、よう?」
嗄れた声だから煽られるかもしれないなあ。そう思いながら尋ねた。
ブラックは一瞬驚いた顔をしたが、また真顔にすぐ戻った。近くに寄ってくる。
「リーマスとピーターがうるせーんだよ!行け行け言われて。」
「そう。」
リーマスとピーター、心配してくれたのね。今度なんかお詫びしなくちゃな。
「ジェームズはエバンズのところ行ってたから来ねえぞ。」
「そう。」
リリーにもごめんね、って謝らなくちゃ。そうね……。何あげればいいかしら。
「あ。ねぇ、今、何月何日?」
「は?11月31。」
「えぇぇぇ!!!!!そんな!」
「な、なんだよ!」
じゅ、11月31日?!?!さらっとクィディッチが終わっている!!!なんてこった!!!
私は声が出にくいにもかかわらず、大声をあげた。私がホグワーツに入った動機の一つにクィディッチがあったのに……!!
ボーバトンは上品な方々が多いからクィディッチは野蛮なんて言う人も多い。それに対しては少々不満を感じるが、それを除けばボーバトンは素晴らしい学校だ。けど私はクィディッチがしたい!!そんな動機もあり、私はホグワーツに入学した。
けど。
第一シーズンが気絶のせいで終わってしまった!!
でもあの時は日にちなんて考えずに勉強していたからな…。
今は何月何日って確認する時間がもったいないから勉強しようっておもっていた。我ながら馬鹿だ。
このままだとガリ勉一直線、これからの学校生活が青色の青春ではなく、灰色の青春で終わってしまうところだった。
倒れると自分を見つめなおせるのかもしれない。今までの行いを悔いるから?私の場合はそれが勉強のしすぎ、なんだろうけど。
多分二学期までの予習は終わってるから、四週間経っても…。え?
「まだクリスマス休暇じゃないのよね?」
「何言ってんだ?そりゃそうだろ?」
「よかったぁぁぁ!!」
私の家に、本家にはクリスマス休暇には帰らなければいけない。しかも家には厳格な祖父母がいる。本当にこの人たちから生まれたのか?と思うくらい、祖父母と父の性格は違う。
クリスマス休暇に帰らずに、しかもその原因が栄養失調だと知ったら祖父母はなんて言うだろうか。否、罵る。
『アンジョーナ家たるもの、栄養失調になどなってはいけません!』とか、
『栄養失調になっても倒れるのは我慢しなさい』とか、
『お前は体調管理ができないくらい馬鹿なのか』とか、
『お前は本当に何もできない!』とか散々言われるに決まっている。
しかも親は何も言わない。いや、言えない。一応当主は父だが、圧倒的な権力を持っているのは祖父だ。母と祖母も姑と嫁、という関係で緊迫状態にある。
しかも、祖母の旧姓はユーオヴァニアだ。アンジョーナの次に権力を持つ家の本家子女である。イギリスで言うマルフォイ家のようなものだ。
それに対しては母は、イギリスのシャックルボルト家の分家の子女。立場的にも、家柄的にも圧倒的に劣っている。そんな母が私が罵られている時、唇を噛みながら震えていたことを私は知っている。
こんな立場じゃなかったら、こんな関係性じゃなかったら母は庇ってくれていた。
私は祖父母のおかげで、いや、のせいで、社会の理不尽さを知った。私が当主になったら絶対にあんな奴にはなりたくない、と決心したのはいつだっただろうか。
いや、感傷に浸っている時間はな…いや、あった。今絶賛暇だった。
でも待てよ、私今、当たり前のことを黒髪野郎に聞いたな…。
あいつが居るのにクリスマス休暇はまだだよね?なんて。
は、恥ずかしい……。
私は恥ずかしさで俯いた。きっと今、顔真っ赤だ。
「え?は?何やってんだ?お前。」
ほら、自分で考えて自分で赤くなって。こいつも困惑してる。ここのところ誰かと喋ることなんてセブルスとくらいだったから自問自答が増えている。セブルスとは違う寮だから意図的にしか会わない。
さっきだってあんな感じで自分で考えて自分で答えを見つけていた。やっぱり孤独だ、と感じた。
「ごめ、失態を見せた「Ms.アンジョーナ!持ってきましたよ!」
私の声にマダムの声が重なった。あいつはバツが悪そうに足早に去って行った。マダムは気づいていない。あの技術はなんなんだ。
あいつが去っていく時に一瞬こちらを向いた。
私が変な質問をしたのに馬鹿にはされたがきちんと答えてくれた。笑わなかった。それに少し、ほんの少し嬉しくなった。
だから口パクで、
『ありがとう』
と言っておいた。薄笑いを付属につけることも忘れずに。
口パクだから伝わるはずもない、と思っていたのだが、そんなことはなく、あいつは驚いたような顔をしていた。
私は驚いた顔を内心でいじりながら、視線をマダムに向けた。
「あ、ありがとうございます。」
「ええ、まずはスープから。だんだん硬いものを食べていってくださいね。胃腸を慣れさせたいのです。」
今だ!そう思った。
「えと、マダム。実は私が痩せていたのは、1ヶ月ほど前から拒食症、だったから、でして、」
「な、なんですって?!?!」
マダムの悲痛な声が医務室に響いた。
「そ、れで、食欲はあるけど理性が食べ物を拒んでる、みたいな状態で。ひとくちしか食べない日が続いてて、魔法薬でフォローしていました。たまにセブル……Mr.スネイプが点滴を打ったり、魔法薬を調合してくれたりして、今日まで保ってきました…。」
「まあまあ、なんでそんなことに!なぜ言わなかったのです!」
「先生に言ったら負けだと思って。勝手な強がりだったんです。すみません。」
「そこには感心しませんね。しかし、魔法薬でフォローしていたとはどういうことです?」
「はい、じつは効果促進の魔法薬をセブルスに違う薬を調合される前には作っていました。野菜ジュースを飲んだ後にそれを飲むと栄養をフォローできたんです。」
私はその時、セブルスといったこと日は気づかずに話していた。
「なるほど…。そのようなことが…。ふふっ」
「?なんで笑ったんですか?まあいいか、セブルスが処方してくれたのは、わかりません。彼から聞いてみてもらえますか?私はただの栄養薬だ、としか…。でもすごく効き目があってしばらくは生き生きとしていたと思います!自分で言うのはなんですけど。」
「…あなたが何故数週間も大広間に来ていなかったのか、何故それで生きて入られたのかがわかりました。」
「倒れた日はたまたま飲むのを忘れてしまったんです…。効果促進の方を。こっちを切らすとまずいんですよ…。前は一週間に一回だったんですけど、その一週間が終わったら数日に一回になって…。やがて1日に一回になりました。
あの日は動揺していたんです。ハッフルパフ生が何故呼ばれたのか。」
「あぁ、そのことですね?実はハッフルパフ生が禁じられた森に前の夜、入って行ったとの目撃情報がハグリットから上がりましてね。次の日にハッフルパフ生が全員いるかどうかの確認をしたのですよ。」
「結果はどうだったんですか?」
「全員いましたよ。前日の夜にはもう帰ったようです。しかし、そのことを話した時に挙動不審になったグリフィンドールの生徒が1名いましてね…。真実薬を飲ませたらその生徒が犯人だったことがわかりましたよ。なんでもローブの色を黄色にしてハッフルパフのようにしていたそうなんです。」
「そうだったんですね…。酷いわ…。グリフィンドールが本当に正義なんですかね?!マダム!!」
「はいはい、まずそれよりもあなたは拒食症の改善ですよ。今日の昼食はスープのみです。ただし、全部食べきってくださいよ?食べないと無理やりねじ込みますからね。」
「で、でも、食べたら吐いてしまうんです。」
「魔法で口を閉ざします。」
「え"。」
おっと、ここで強硬手段に出る先生。さすがに引いた。でも生徒愛のある方だと思っている。
「わ、わかりました…。」
「それと、抗嘔吐作用の魔法薬も調合しますね。食事後は必ず飲むのよ。忘れたら口を塞ぎますからね。」
「はいぃ…。」
だんだん追い詰められて語尾が小さくなっていくのは気のせいだろうか。いや、気のせいではないな…。
「いただきます…。」
「いいえ、まだ起き上がれないでしょう?これをお飲みなさい。筋肉の活動促進の薬です。これで一時は大丈夫。効き目は一時間半ほどです。その間に食べきってくださいね。」
「はい!」
そういって、マダムは手のひらにあった小瓶のコルクを開け、私に飲ませた。
体が熱い。けれど動けないほどではないかも。それになんだか動きやすく感じる。
試しに起き上がってみようとすると、見事にできた。魔法薬の力はすごい!
やっぱり私は魔法薬学が好きだ。
弟子入りしたいくらい様々な調合をやってのけるマダムに尊敬の心を覚えた。
「食べなさいね。私は今からミネルバとご両親に連絡しますから。」
「はい、お願いします。」
そういってマダムは去って行った。
私は視線をスープへと戻した。これから私とスープと壮絶な戦いが始まる!!
こんにちは!更新出来る時にしておこうと思ったので2日空きの投稿です。
不定期投稿って言った割には何言ってんだ、と思うかもしれませんが。
100回閲覧?!ひゃーー!ありがとうございますっ!!これからも頑張るのでよろしくお願いします!
- あなたを 第1章 11話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.12 )
- 日時: 2022/04/16 11:19
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
むむぅ…。
今、私はスープとにらめっこをしている。何故なら私が拒食症だから。食べることが嫌になる、心のストレスからくる病気だ。
そのため、私はスープを食べたくない、という気持ちと、マダムに食べろ、と言われた記憶に苛まれている。
答えは 食べる だった。
マダムが置いていった小瓶を手に取り、飲み干す。
これは食べてもすぐ吐く私に、抗嘔吐作用のある魔法薬をマダムが作ってくれたのだった。
なんだか喉元がすっきりした。
そのお陰で、食欲が唆る。
でも、食べたくないいい!!
今までもそうだったんだから!!きっと大丈夫!少しくらい食べなくても人間は生きていける!!
ればいいのにね。なんでこうなるんだ…。
自分には倒れた前科があったんだったーーー!
こ、ここは腹をくくるしかないのか?!
で、でも!!
イヤ、ククレェェ!!!
押忍!!
二人の自分が格闘した末、勝ったのは食欲だった。
スプーンで手がぶれるのを我慢しながらスープを口に運んだ。
コーンポタージュだ。トウモロコシの甘みに舌鼓を打つ。
「おい、しい。」
久し振りだった。こんなに美味しいと思うなんて。
これで吐くのは勿体無い。
私はスープをゴクゴク飲んだ。
しあわせ………。
ご飯を食べることってこんなに幸せだったのか…。
ろくに最近何も食べてない私は、食べ物のありがたさを知った。
見事スープを飲み終えると、開いていた窓から紙飛行機が飛んできた。何故?
どこかに落ちるのかなー?と思ったが、その紙飛行機は弧を描いて私の手のひらに落ちてきたのである。
紙飛行機は一見普通だ。
手紙なのか?
けど名前が書かれていない。
一応開いて見てみることにした。
『ごめん』
たったの一文だった。
それだけでも、私にはとっても伝わった。
こんなこと書く奴は一人しかいない。
きっと、"あいつ"だ。
いっそ清々しかった。
手紙だということには少し憤りを感じるけど。意気地なしめ。
反省してくれたことに少し嬉しくなって微笑んだ。少しくらい、誰も見ていないんだったら。
嫌いな人くらいに笑ってもいいじゃないか。
本当に嫌いな人とは顔も合わせたくなくなる、と母は言った。
嫌いだった。
そう、嫌い『だった』。
もう、私にとって、彼は嫌いではない。
けど普通の人ではない。
きらい、ではなく、
いやなひと、にランクが下がった。
よかったねー。
そう簡単に『普通の人』認定なんかできるかっ!!!
私を痩せさせて倒れさせて、笑っていた人に易々と『普通の人』?!
そんなに私は大らかじゃない!!!
普通の人に戻りたいならまずはセブルスと仲良くすることね!!!
私の友達がいじめられているところを見るのなんて嫌だ。
気づいた人もいると思う。
一応私は今まで敬語に『〜〜だわ』みたいな口調を使っていた。
けど、いじめを受けてからは崩れた口調になった。
いや、受けてからじゃない。
本来の私がこれだから。
私はアンジョーナ家の人間だから。
貴族だから。
本来お転婆だ、と言われる私に『ですわ、ですのよ』口調は似合わないし使いたくもない。だから、最低限の『だわ』口調は!!と言われてその口調が義務付けられていた。
家族だけの時だったり、しもべ妖精に対しての口調は今のような口調だ。
本当に吹っ切れた。
精神的に。
いじめが精神に与える影響は大きい。
わたしにとって、それは拒食症であると同時に、本来の自分を曝け出す勇気を養っていたのかもしれない。
もう言葉が一度崩れたら治るのは難しい。
これはわたしの経験談だ。
5歳まではずっと『ますわ』口調だった。
けど、6歳からお転婆に目覚め始めた。
木に登るわ、走り回るわ、マグルの街に一人で駈け出すわ、ふらりとどこかへ消えて親が散々探し回った後にケロリとしながら帰ってきたりした。
あの頃は楽しかった……。
それと同時期に言葉も崩れ始めた。
「ですわー。」が「だよ。」に変わった。
だってダサいんだもん。
うちは反純血主義。
だからマグルの店に行ったって如何の斯うのは言われない。
それをいいことに、わたしはマグルの趣味、文化、生活、食事などなど。
マグル界について一通り知った。そこで目にしたのは、ラジオに出ているお金持ちのおばさまの口調が『ですわ』で、役者のおかげなのかはわからないけど、とんでもなくダサく聞こえた。
時代遅れだ、と感じた。
そうと決まればこんなダサくて古い言い方なんてやめてしまおう、と思ったのだ。
それ以来、身内(と言ってもごく一部)に対しては崩れた口調を使うことにした。
しかし転機が訪れる。
それが、ホグワーツ入学だった。
ホグワーツは魔法族しかいない、ベルギーの魔法界について知っている人もいるかもしれない。
様々な懸念事項があった。
だから、父に口調を治すように言われた。もちろん嫌だった。必死に抵抗し、なんとか『だわ』口調に落ち着いた。本当に頑張った…。
けれど、どうやっても崩れた口調がふとした瞬間にこぼれ出る。本当に、何気ない会話、リラックスしているとき。
自分でも内心焦った。このままでは治らないのではないかと。
結果的にはなんとかなったが、今でも細心の注意を払って言葉を発している状況だ。
話を戻す。
だから私は、ひどいことをした人においそれと普通の人認定できるほど聖女じゃないのだ。
と、そこにマダムが帰ってきた。ダンブルドア校長も一緒だ。
内心驚いた。なにせ偉大なる魔法使いと面と向かって話すことなんてないと思っていた。
「あら、ちゃんと食べたようですね。」
「はい、嘔吐の予兆もゼロです!!」
「それは良かったわ。ダンブルドア先生がお話ししたいことがあるらしいですよ。私は席を外しますから。」
「はい。」
そういってマダムは行ってしまった。
「フォッフォッフォッ。そんなに緊張せずとも良い。ちょいと話をしに来ただけじゃ。」
「は、はい!!」
「そうじゃのう…。君はベルギー出身の魔法族だと聞いたがどうなんじゃ?」
「そ、その通りです!ベルギーの魔法界に1年前までは住んでいました!」
「…そうかそうか、君は傲慢な人間ではないようじゃのう。」
「へ?なんでですか?」
「言動に現れておった。」
「そ、そうなんですか。」
どこがどのように?ベルギーにいたんだよね?って聞かれて、そこに住んでいたよ、って言っただけだけど…。
「じゃあ本題に戻るとするかのう。君は今、心身が弱っている状態じゃ。このまま普通の通りに学校で学ぶことはできん。」
「え、私!大丈夫です!我慢できます!それに、謝罪の言葉も一人からは貰いました!」
「ああ、全部見ておった。じゃがのう、君の想いと精神は繋がっていないのじゃよ。君は食欲があるのに食べたくない、と思っておった。それと一緒じゃ。食欲は想いじゃ。しかし、食べたくない、と思う心が精神なのじゃよ。」
「え、あ、なるほど…。」
「じゃからのう、君が大丈夫だと思っているが、それは君の想いなだけであって、精神は拒絶しているのじゃ。そんな状態で戻ってもさらに君の心は蝕まれてしまう。」
「ええ…。」
「だからじゃ。今日からクリスマス休暇まで、君にこれを授けよう。」
そういってダンブルドア校長は一つの指輪をくれた。
「これは?」
「人避け指輪じゃ。これは特定の人から避けれるようになる指輪なのじゃ。これにわしがジェームズとシリウスが対象になるように魔法をかけておいた。これを持っているといい。」
「あ、ありがとうございます!!」
「それを持って基本行動するのじゃ。なくしてはいかん。」
「はい。そのときはアクシオを習得します!」
「良い心がけじゃな。感心じゃ。これで『普通の』生活ではなくなるじゃろう。」
「ありがとうございます!ダンブルドア校長!」
「じゃあの、わしは行かねばならぬ。養生するのじゃぞ。」
そういってダンブルドア校長は姿を消した。
そうして、ダンブルドア校長の気配がなくなったことを察したマダムが入ってきた。
「ご両親にも連絡しておきました。今移動キーを魔法省に作ってもらうところです。明日にはお母様がいらっしゃられるはずですよ。お父様は魔法省の云々があるらしく、これないとのことです。」
「何から何までありがとうございます!」
「ええ、本当にこれからも何から何までやらせてもらいますよ。まずはリハビリです。この状態だと筋力がなさすぎます。まず、物をつかむ練習、次は腕を振る練習、起き上がる練習、足を動かす練習、最後に歩く練習です。これで基礎的な筋肉はつきます。次は声帯です。地声から裏声まで出してみて、改善していきましょう。」
「は、はい。よ、よろしくお願いします…。」
え?結構スパルタ??
「ではまず物をつかむところから!次のステップではもう魔法を使えますからね。さっさといきましょう!」
「はいぃ!」
「はい!このチェスの駒をつかんで!」
「っ!!掴みました!」
「掴めてませんよ!」
「え??!!力入れてるのに!!」
「あなたの筋力はこんなものですよ!!」
「ひぃぃぃ!!」
そんなこんながあって、二週間が経った。
次の日母さまがやってきて、心配した、と言ってくれた。本当に久しぶりに愛を感じた。
その日から私は頑張ってリハビリをした。三週間で起き上がれるかどうか、と言われていたが、私は二週間で人の手を借りれば歩けるくらいにまでなった。
勉強は拒食症の時からセブルスと一緒に予習復習をしまくっていたから大丈夫だった。
ノアとスラー、エルもきて、謝ってくれた。
私が突き放したのに謝ってもらうなんて私は……。
仲直りもした。これからも一緒に遊んだりしようね、と言われて嬉しかった。
エレンとスタイアンもきた。なんとか私を元気にさせてやろうとお笑いをしていて、エレンのボケのセンスが皆無なことがわかった。
リーマスとピーターも来てくれた。ごめん、ごめん、と謝られるものだから、私も何をして欲しいのかわからなかった。
セブルスとリリーも来た。
二人とも勉強がどこまで進んでるか教えてくれたり、他愛のない話をしてくれて、心が安らぐ時間だった。ダンブルドア校長に貰った指輪の話をしたら、いいなーと本当に羨ましげな目で見られた。セブルスは当分私と行動したい、とまで言っていた。
リリーは嫌になったら私を探す、と言っていた。
たまにエルがマージーンさんを連れてきた。クリスマス休暇の遊びに行く計画を話してくれて、とても心が躍った。
いつも、が戻った気がした。