二次創作小説(新・総合)
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- あなたを 第2章 絶賛連載中! ハリーポッター 親世代
- 日時: 2022/06/06 19:56
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
イギリスのとある駅の柱に向かってたくさんの荷物を乗せたカートを押して飛び込む、一人の少女の姿があった。
名をレイニウム・アンジョーナという。
茶髪に丸い眼鏡をかけて、いつも下を向いている、それが彼女の特徴だった。要するに内気な少女だった。
柱に飛び込んだ彼女は、ぶつかることもなく柱をすり抜けた。後ろにいた母親もそれに続く。するとそこには赤い列車が線路にとまり、黒いローブを着た子供と大人でごった返していた。
列車の一番前の入り口に向かい、荷物をカートから降ろす。若干引きずる形ではあるが、人混みにまぎれこめばそれは異様な光景には見えなかった。それにこれが普通なのだ。この世界では。一人の少女がたくさんの荷物を引きずりながら歩く姿なんて。
列車の中に頑張って荷物を入れた彼女は、心配そうに見つめる母の姿をその瞳で捉える。優しいアメジストのような輝きを持つ母の瞳と同じ色の眼を、少女は持っていた。
すると、列車が出発する合図の汽笛を鳴らした。慌てて他の子供が乗り込んでくる。少女は邪魔にならないように、と傍に避けた。
母の手を握り、心配するな、と諭す。厳かな顔を母は一瞬見せたが、すぐに柔らかい笑顔へと変わり、娘を送る。
「大丈夫よ、だってあなたは私の子供なのだから。」
母のその言葉を聞いた娘は、緊張して硬かった表情が緩んだ。心なしか、とても心に響いた。
そしてゆっくりと列車は走り出す。
名残惜しい中、母娘は手を振りながら別れを惜しんだ。
- あなたを 作者からハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.3 )
- 日時: 2022/03/30 22:11
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
こんにちは。作者のやまらと申します。この度は、あなたををご覧くださりありがとうございます。この時代、コアなハリポタファンがいてくれることを嬉しく思います。
さて、今回の舞台はハリーポッターの親世代の物語。基本的に救済ものです。
オリキャラが多数っていうか大多数、登場します。実はお恥ずかしながらポッターモアをチェックしていません…。ほとんどウィキペディアやポッターウィキからの情報で作成しているものです。そのため、マローダーズとリリー、スネイプ以外はほぼオリキャラのみで構成されています。他に、公式で登場する同学年のキャラクターを見つけることを半ば諦めたので…。オリキャラに徹しました。
一応同学年、(マローダーズ、リリー、スネイプ、主人公たちも合わせて)64人の名前と性別、寮についての設定を作ることに成功しました。第2話の組み分けでアルファベット順の名簿表がないと小説を書けないことに気づき、なんなら全員作ってしまおうと。
なのでまたどこかで彼ら彼女らは登場するかもしれません。
一応、主人公と同じ寮の子達は一度でいいから登場させたいのですが……。叶うのだろうか。
ここで注意点です!まず一つ目。私は、オリキャラの名前をその時その時の雰囲気で作っていますので、語呂がよかったりした苗字を取り入れています。そのため、本当には実在しない苗字までも勝手に作っています。(主人公たちがいい例です。)名前も同様です。名前は比較的自由なので何にしようか考えた結果、苗字以上に暴走してしまいました…。本当にごめんなさい。
二つ目です。ポッターモアを見ていないと先述しましたが、ウィキペディアとポッターウィキでは載っていなかった、ジェームズポッターとセブルススネイプのミドルネームですが、勝手に考えさせてもらいました。
ジェームズのフリーモントはジェームズの父、フリーモントポッターから。
セブルスのトビアスはセブルスの父、トビアスからいただきました。
以上がこの作品を見る上での注意点でした。こちらをご理解頂ければこの作品もわかりやすく見れると思います。
頭のなかでの構成はなんとなくできていて、一応四年生くらいまであります。ぼんやりですが。
実はこの作品、ある方の小説に大変影響を受けていて、私がその小説を読んで感銘を受け、その勢いで書いたのがこの作品です。
事情によりその詳細は明かせませんが、とても良い小説なので私もその人のような小説が書けるように頑張ってまいります。
卒業した後のヴィジョンもほんの少しだけ考えています。
今後の流れにもよって救済の仕方は変わってくるかもしれませんが。
というわけで、長々とおつきあいいただきありがとうございました。
これからも順次更新していきますが、生活面の影響で、更新が遅くなることもあると思います。しかし、週一のペースで書けたらな、と思っているので頑張ります。
一応送信したら、どんな内容か確認するのですが、それでも意味がおかしかったり誤字脱字があった場合には対応しますので、お待ちください。
それから、配信の方法を間違いましたが、イラスト小説の方でも情報を更新していますので是非見ていってください。
今の所、レイニーとスラーとノアの似顔絵描いていますので。
下手ですが見てくれると嬉しいです。
それでは今日1日あなたに良いことが起こりますように。
追記
生活面が余裕が出てきたので3日に一回投稿でも良くなりました!お楽しみに!
3/9
このお話を漫画にしてわかりやすくしようプロジェクトが今進んでいます!!漫画描くのが初めてだし、小説専門だし、アナログだし、と、ダメダメです。
投稿している端末の問題もあり、デジタルが不可なんです。すいません。
それでもよろしい方は閲覧してくれれば嬉しいです!
サイトに投稿し次第、URL貼り付けますのでお待ちください!小説が全く更新されてませんが絶賛書き途中なので…。
小説は3日に一回、漫画は4ページまとめてを一週間に一回くらいであげていこうと思います。
3/10序章をアップしました!ぜひ読んでください!
3/21すみません!生活面で忙しく、更新がだいぶ遅れてしまいました……。ほんとうにすいません。これからもどんどん書いていきますので完結までよろしくお願いします!
3/30お久しぶりです!9話でも書いた通り、6日お休みしていたので、二話一気に投稿することになりました。そこらへんよろしくお願いします。9話は大幅に加筆しました。
これから、生活面が忙しくなりそうなので不定期投稿になります。そんな作者でもよければ、長くご自愛してくれると嬉しいです。これからも【あなたを】をよろしくお願いいたします!そろそろ第1章完結になりそうです。第2章はレギュが出てくるよー。
- あなたを 第1章 3話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.4 )
- 日時: 2022/03/10 22:26
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
夢を見た。
顔は見えない。けど男性だったと思う。四人、くらい。それに女性がいた。赤毛の子だった。まるで組み分けのあの子のような、燃えるような赤毛。
男性の方はよく、見えなかった。
顔をもやがかかっているようだった。女性はかろうじて髪が見えただけだった。
今言った五人は、こちらに向かって手を振っていた。まるでもう会えないかのように。直感でそう感じた。足が動かない。いや、動けない。だれかに足首を掴まれているかのような。
足に何かがぶつかってきた。足元を見ると、一人の赤ちゃんがいた。男の子だった。
彼の顔ははっきり見えた。
癖っ毛で、アーモンドのような形をした目をしていた。色はエメラルドグリーンだった。
そして、
額に稲妻のような傷が付いていた。
起きると、一筋の涙が伝っていた。
「おはよー。」
別のベットから声が聞こえた。
彼女はスピリーナ・グリーンスット
同じ寮部屋の同学年だ。
ブロンドの髪に緑色の目をしている。
彼女の家は代々緑色の目が特徴的な一族だったそうだ。
深緑色の、どこまでも見透かされそうになる瞳だった。
森の守人を昔していた一族で、森に入ってくる異物に気づかれないように、次第に目の色と髪の色が緑になっていったそうだ。
しかしスピリーナは、父親のグリーンの髪ではなく、母親のブロンドの髪を引き継いだらしい。
「おはよう、スニー。」
それに返したのがミカレック・ゴールドレイン
彼女はここらでは珍しい、金色の目の持ち主だ。どこまでも奥で輝き続ける、綺麗な目だった。おまけに髪までブロンドだ。
金の雨、goldrain。彼女の家もまた、金色が特徴の家柄だ。家の紋様にも金色がふんだんに使われているそうだ。
なんでも、伝説の金人の子孫だとか。
金人とは全てが金色の体をした一族のことだそうだ。髪も目も。しかし、長い年月によって混血が進み、いつの間にか髪は以前のような金色の輝きはなくなり、他のブロンドと変わらなくなった。しかし瞳だけは、元の輝きが続いている。
そして、ミカレックとスピリーナは幼馴染だそうで、今回の組み分けは最高だ、と話していた。
もう一人の同室生はアイヴィー・ニンフィー。
彼女は不思議ちゃんで、ヘンテコなものを持っていたりする。昨日見せてもらっただけでも、口から紙飛行機が出てくるカエルの置物や、指につけると汗がダラダラ流れてくる指輪を持っていた。
彼女は朝が弱いらしく、優柔不断な一面があるので中々起きれないそうで、明日は絶対起こしてね、と必死に頼み込まれたのを思い出す。
「おはよう、スピリーナ、ミカレック。」
自分も返して、ニンフィーのベットに行く。
「「おはよーレイニウム!」」
「おはよう、ニンフィー。朝よ、起きて。」
「んん〜、わか、てる…。」
朝が弱いのは本当のようだ。今度は軽く揺さぶってみる。
「んあ?あ!お、おはよう、レイニウム!いやえっと、アンジョーナだっけか?あれ?」
朝起きるとボケるという話も本当のようだ。
「確かに私のファミリーネームは女性の名前のようだけれど、私の名前はレイニウムよ。」
「ええ?じゃあ?レイニウムはミドルネームで?」
「な、ま、え、よ。ニンフィー。」
「じゃあアンジョーナがミドルネームで?」
「ファミリーネームよ。」
「んー?じゃあ、シリウスがミドルネームで?」
「そう。正解。じゃあ起きて!!」
「分かったわ、起こしてくれてありがと、スピリーナ。」
「だからレイニウム〜!!」
彼女は本当に手がかかる。
母のような心情でそう思いながら、彼女を育ててきた保護者を尊敬した。
なんとか制服に着替え、大広間に向かった。すると、スラーとノアとエルはすでにテーブルに座っていて、こちらに手を振っていた。小走りで駆け寄り、スラーの隣の椅子に座る。
「おはよう、スラー、ノア、エル。」
「やあ、おはよう、レイニー。」
「ごめん、遅くなってしまって。同室の女の子を起こしていたら遅くなっちゃった。」
「へえ、どんな子?」
「アイヴィー・ニンフィーよ。不思議ちゃんなの。本当にヘンテコなものを持ってるのよ。」
「「「何々?」」」
みんなも興味津々だ。
「口から紙飛行機が出てくるカエルの置物とか、はめると汗だくになる指輪とか。」
「凄いわ!どんな魔法をかけているのかしら。」
「ホント不思議だね。」
「そうなのよ!……あ!スクランブルエッグだわ!私の大好物!」
そう言ってスクランブルエッグを自分の皿にどんどんもりつける。そのせいで半分はスクランブルエッグになってしまった。
残り半分にベーコンとトマトを入れ、お椀にコーンスープを入れた。コップに牛乳をトポトポいれ、食べ始める。
「ねえ、今日の呪文学はなんの呪文なの?」
スラーが尋ねる。
「基礎中の基礎のウィンガーディアムレヴィオーサだって。教科書の10ページに書いてあるよ。」
エルは持っていた教科書を取り出し、ページをめくる。
「ウィンガーディアムレヴィオーサってどんな魔法なの?」
「ものを浮かせる呪文だよ。これが出来れば家事は大丈夫だし、応用のアクシオのやり方のコツもわかる。」
ノアが説明した。
「授業では羽を浮かせるんだとさ。」
エルがどこ情報が話を始めた。
「ねぇ、エル、それってどこ情報?」
「兄さんからさ。実は僕5歳上の兄さんがいるんだ。寮はレイブンクローだよ。」
「へえ、そうなの?僕には3歳下の弟と妹がいるよ。双子なんだ。」
「いいわね、私は兄弟がいないの。」
「私もよ。」
スラーと口々に言う。
「やっぱり上の兄弟がいるとさ、そっちがいい成績取った時のプレッシャーがすごいから僕は弟と妹に憧れるよ。」
「いいや、それを言うなら僕はエル、君に憧れるよ。妹と弟は生まれて少しして僕みたいに魔力が出始めてさ、山奥の家だったからよかったけど、魔力が跳ねて跳ねて家中ボロボロだったよ。弟だけでも凄いのに妹も入るともう大変だったよ。幼ながらに親心がわかった気がしたね。」
なんて話を始めるものだから、スラーと私は拗ねてがむしゃらにご飯を食べ始めた。ちょうど食べ終わる頃には二人とも兄弟の話はしなくなって黙々と食べていた。
大目に見てやろう、と許し、待つ間にエルから借りた呪文学の教科書を見ていた。
「光を杖に灯す呪文、ルーモス、だって。」
「強化呪文もあるらしいわ。ルーモス、マキシマム?」
「ああ、プロテゴにもマキシマムはあるって聞いたわ。使ったら一週間立てなくなるらしいけど。」
「何それ。」
「防御呪文よ。防御呪文はただでさえ魔力を消費するからマキシマムってことはそれ以上の魔力を使わないとダメ、ってことでしょ?」
「成る程!沢山魔力を消費するってことは、本当に強い防御呪文って事なのね!けど、一週間立てなくなるのは嫌だわ。」
「本当にその通りね。」
そんな和気藹々とした時間から、私のホグワーツ生活は始まっていった。
一番最初の授業は呪文学だった。
「さて、今日覚えてもらうのは、ウィンガーディアムレヴィオーサです。基本的な呪文ですが、その能力は?ミスターアボット!」
「はい、ウィンガーディアムレヴィオーサは浮遊呪文です。」
「素晴らしい。ハッフルパフに3点!初めての授業ですのによく覚えました。その通り、ウィンガーディアムレヴィオーサは浮遊呪文です。今日、皆さんにはこの呪文を習得してもらいます。今お手本を見せますね。杖は
フアッ、ヒューンですよ。そして呪文を唱えます。」
『ウィンガーディアムレヴィオーサ!』
すると、先生の近くにあったロケットがふわふわ浮いた。
「一定の高さで止める事も大切ですよ、心の中で止まれ!と強く思って。では練習時間です。この時間で習得できなかった場合、宿題に出しますからね。あなたたちの目の前にある羽を浮かしてください。では始めなさい。」
すると一斉にあちこちから、ウィンガーディアムレヴィオーサという声が聞こえた。自分もやってみようと思って杖を持つ。
「ウィンガーディアムレヴィオーサー!」
羽は動かない。
「ウィンガーディアムレビオーサ!」
羽は動かない。
「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」
羽がピクリと動く。すると、どんどん上に上昇していく。
止まれ!と強く願うと羽は止まった。
「まあ、素晴らしい!ミスアンジョーナ!みてください皆さん!ミスアンジョーナがやりました!ではミスアンジョーナ、彼らに教えてあげなさい。」
「はい、先生。」
そう言ってまずはエルの近くに行く。
「やあ、凄いねレイニー。」
「偶々よ。教えに来たから、一回やってみてもらえない?」
「わかった。」
「ウィンガーディアムレヴィオーサー!」
羽は動かない。
「ねえ、エル。私原因わかったかも。」
「え?本当に?教えてくれよ!」
「多分最後のレヴィオーサがレヴィオーサーって伸ばしちゃってるからじゃない?杖の振り方は完璧だったし呪文に問題があると思うの。」
「成る程!確かに伸ばしたかもしれない。じゃあそこを気をつけてやってみるね。」
「浮いたら止まれ、と思う事も忘れずにね。」
「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」
すると、エルの羽はふわふわ浮いていき、やがて止まった。
「ありがとうレイニー!僕にもできたよ!」
「よかったわ、エル。じゃあ次にスラーに教えてくるから。」
「ワオ!皆さん!ミスターレベッグバーもやりました!」
私は躍起になって、今度はスラーのところに行った。エルはノアのところに行くようだ。
「ねえ、レイニー、どうやればいいの!」
「一回見せて?」
「わかったわ。」
「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」
羽はふわふわ浮いた。
「え?」
「え?」
「スラー、あ、貴女できるじゃない!」
「本当ね!ありがとう!誰かに見られてる、っていう緊張感がいいように回ったのかも。」
「おめでとう!」
「ありがとうレイニー。」
エルの方を向いてみると、まだ教えきれていないようだ。でもここは信頼しよう。
「素晴らしい!今年のハッフルパフ生は本当に優秀ですね!ミスルドヴァンもやりました!」
次に同じ部屋のニンフィーのところに行く。恥ずかしながら、まだ知り合い以外のところに行く勇気はわかない。彼女は杖の振り方がなっていない。上に上げて下すのではなく、下に下げて上に上げている。発音も素晴らしい、と言えるものではなく、所々辿辿しかった。
「お、おはよう、ニンフィー。目は覚めた?」
「え、ええありがとうレイニウム。ねえ、レイニウムはもうできたんでしょう?私にも教えてよ。」
「わ、わわかったわ。じゃあ一回やってみて。」
「ええ。」
「ウィンガディアムレビオサー」
「えっと、まず杖の振り方。」
「こうだっけぇ?」
そう言ってニンフィーは杖を下に下ろし、上に上げ、また下に降ろす。
「えっと、反対よ、ニンフィー、下から上じゃなくて上から下よ。」
「こう?」
ニンフィーは杖を上から下に下ろし、また上に上げる。
「そう!そうよニンフィー!で、呪文を唱えるの。」
「ウィンガディアムレビオサー!」
ニンフィーは呪文を唱えるが、羽はピクリとも動かない。
「ウィンガーディアムレヴィオーサよ。
ウィンガーディアム、レヴィオーサ。」
「ウィンガーディアムレヴィオサー?」
「レヴィオーサ。」
「レヴィオーサ。」
「そうよニンフィー。それでやってみて。」
「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」
ニンフィーは教えた通りに杖を動かし、正しい発音で呪文を唱える。
すると、ニンフィーの羽はふわふわ浮いた。
が、なんと止まらない。
「ニ、ニンフィー!止まれと強く願って!」
「え?わあ、羽が!」
ニンフィーが気づき、羽は止まった。
力なく羽はひらひらと舞い、机に戻った。
「これってセーフよね。ああ、ありがとう、レイニウム!!助かったわ!」
「えっと、ニ、ニンフィーのお役に立てたのならばうれしい、わ。」
ニンフィーが手を取りそう言ったので恥ずかしくなってうつむきながら私は話した。
結局エルはノアに教えられたようで、ノアの羽も浮いていた。
今回の授業では、私とエル、スラーと、ノア、それにニンフィーが羽を浮かせることができた。
あっという間に時は過ぎ、1日の終わりにさしかかろうとしとしていた。初めてのホグワーツ生活はなれないことばかりだし、動く階段からは落ちそうになったし、教室がわからなくて迷子になったり、外に行って散歩してみたら、危うく禁じられた森に入りそうになった。
夕食の時間になり、寮に教科書を置き、四人で大広間に集まった。
大広間に着くと、もう料理は並んであった。たくさん料理がまとまっているところを陣取り、二人に分かれて座る。
座ると、皿とスプーン、フォークが現れた。
スプーンで、ローストハムとサラダ、それにおたまでキャロットスープを掬い、自分の前に置く。
スラーはコンソメスープにバターを塗ったパンと豆のニョッキを取ったようだ。美味しそうにパンにかぶりつき、もぐもぐと食べ始めた。反対側を見ると、二人とももう食べ始めていたため、遅れないようにと自分も食べ始める。
すると、ノアが口を開いた。
「今日、どうだった?楽しかった?」
「ええ、とってもね。魔法薬学以外は。」
「そ、そうかしら、魔法薬学は今日はおできを治す薬の材料を確認しただけじゃない?」
「僕も魔法薬学は嫌だったなあ。」
「え?なんで?」
「内容はそれほど難しくはないさ。けどあの先生。スラグホーン先生だっけか?覚えてないや。あの先生の態度がちょっとね。」
「僕もノアとは同意見だね。確かにあの先生の態度は少し辛辣だよ。」
「そういう性格なんじゃないの?」
「違うわよ。レイニー。あの先生、スリザリンの寮監よ。どうせ他寮のハッフルパフ生はお気に召さないんでしょ。」
スラーはそう言って教員席をちらりと見る。あの先生はまだ来ていないようだ。
なんとなく暗い雰囲気に耐えれなくなって話題を変える。
「じゃ、じゃあ呪文学はどうだった?」
「呪文学ね。あれ最高だよ!一番好きな教科かも。本当にできると嬉しくなるよね。」
エルが興奮しながら言う。
「本当にその通りよ、エル。そしてレイニー、その節はどうもありがとう。あなたのおかげでできたも同然よ。本当に感謝しかないわ。」
「い、いやそんなことないわ。本当に私は手助けしただけ。できるあなたたちがすごいのよ。」
そう言い合いながら、楽しい夕食は過ぎていった。
- :あなたを 第1章 4話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.5 )
- 日時: 2022/03/06 17:08
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
魔法薬学の授業が終わり、お浚い、という形で作り方のレポートを提出することになった。ただ書くだけではなくて、何故そう作るのかの考察なども書かなければいけないようで、一筋縄ではいかない。その為、図書室で、おできを治す薬の効能とそれに対しての考察が書いてある本をスラーとともに探していた。
図書室は広く、広大だが、厳格なマダムピンスが居る。彼女は図書室での不要な会話は一切禁止、という死語を使ってくる人だった。本を借りたい時には必ずマダムに知らせないといけないし、どんなに小さい声でも、マダムは聞きつけ、制裁を下すらしく、上級生からは怖がられている。
しかし、マダムは無言で黙々と課題をこなすレイブンクロー生がお気に入りで、レイブンクロー生には少し甘いところがあるそうだ。
だが自分たちはハッフルパフ生なので、少し残念なところもあった。
実際、図書室での不要な会話の基準がよくわからないのもある。
本に関することなら良さそうなので、スラーに声をかける。
「スラー、見つかった?」
「まだよ。魔法薬学の本のブースがわからないわ。」
唸りながら二人で探すが、全く見つからない。いま手に取ったのは、三年生の闇の魔術に対する防衛術の中の、ポガート、マネ妖怪についてだった。
「ごめん、私もよ。」
とはいったが、この本が実に興味深い。あとで借りようと思い、手中に収める。
すると、肩が叩かれる感覚がした。驚いて後ろを振り向くと、誰かに似た顔のレイブンクローの上級生がいた。
「君たち魔法薬学のブースを探しているのかい?」
「はい、そうです。」
「魔法薬学のブースは彼処だよ。ほら、あの階段の奥の。右から2番目だよ。そこになかったらあの左の扉の向こうにある時計の真下の本棚も探してみればいいかも。」
「そんなことまで、ありがとうございます!」
「じゃあ俺は行かなきゃ。また会おうね。」
「はい、ありがとうございました!」
彼が帰ると、肩の力が抜けた。上級生に話しかけられるのは3回目だが、慣れるものではない。
「救世主の登場ね。」
スラーがそう呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
なんとか本が見つかり、マダムピンスに許可を取り、本を借りた。勉強できる場所といえば、実は大広間も朝昼夜の食事の時以外は勉強や読書をする場所として貸し出されている。
そこに向かうと、生徒がちらほら見えたが、そんなに多くはなかった。
あまり人が密集していない場所を選び、席に着く。
椅子がかたりと音をたてた。
おできを治す薬についての記述があったのは3冊で、ウィーンデル・バチスタ著書の『魔法薬学の全薬』と、ドルバストン・ヒータールィ著書の『基本のクスリ』と、アブダステルイ・デーンバット著書の『おできを治す薬の奥は深すぎる』だった。ドンピシャに当てはまった、『おできを治す薬の奥は深すぎる』をまず開く。
丁度求めていたことが書き記されてあり有難かった。
寮から持ってきた羊皮紙と羽ペン、インクを机に置き、インクのふたを開ける。羽ペンの先をインクにつけて、書き始める。
思った通りにペンは進まず、途中でペンが止まった。まだ三分の一も出来ていない。
一つの本だけでは無理だったようで、次は『基本のクスリ』を開く。
欲しかったところはなかったが、さっき書いたことにつけたせるような文章が見つかった。
なんとか頑張り、レポートを書き終わると、スラーはまだ四苦八苦しているようだった。
手伝うか、と声を掛けたが、頼りっぱなしは良くない、と断られた。
暇になったので、先ほど借りたマネ妖怪についての著書を開く。
『強くてびっくりマネ妖怪の全貌 作 シレラファス・ガビー』
『マネ妖怪を皆はご存知だろうか。マネ妖怪は、ちゃんとした姿はない。しかし、目の前に居る者の、最も恐怖するものに変身する。母が起こることが一番怖いのだったら、母親が自分を怒る姿に変身する。
そんなマネ妖怪だが、撃退する呪文がある。リディクラス。これが撃退する方法だ。この呪文は、対象物を滑稽なものに変化させる呪文である。』
読めば読むほど引き込まれていって、スラーが終わったよ、と声を掛けてくれなければ夜まで読んでいられそうだった。
「ああ、スラー、終わったのね。じゃあ交換しましょう。おかしなところは教えて。」
「分かったわ。はい、どうぞ。」
そう言って私たちはレポートを交換し合う。
『おできを治す薬について
スライネ・アン・ルドヴァン
おできを治す薬について記述した本を参考にしています。
引用ウィーンデル・バチスタ著書『魔法薬学の全薬』
ドルバストン・ヒータールィ著書『基本のクスリ』
アブダステルイ・デーンバット著書の『おできを治す薬の奥は深すぎる』
が参考文献です。
作り方
〜〜〜』
と続く。特に悪いところはなく、少しだけ.が付いていなかっただけだった。一方私の方は、参考文献の記述がされていなかったことを指摘され、最後の方に、小さな字で引用を書いた。
まだ昼食まで時間があったため、本を読もうということになった。自分は本を持っているが、スラーはまだ読みたい本を持ってきていなかったため、
「すぐ戻るわ。」
といって、席を離れた。
OK!と返事して、さっき読んでいたところを見る。
『例えば、前述した、母に怒られるのが一番怖い者は、リディクラスをすれば、人によって変わるが、母が豚になって泣いているところになったりもする。
このリディクラスは、物を変形させる変形呪文の応用であり、対象生物を、変化させる練習としても使われる。これを基礎とした変形呪文もあるが、さらに混沌を極めるものが多く、習得が難しい。そのため、イギリスの魔法学校であるホグワーツでは、学習期間にこれより上級の変形呪文を教えることは、ほぼない。
話を戻す。このマネ妖怪だが、一番怖い者に変化するのは何故だか皆はご存知だろうか。それは、人の本能に利用するからだ。
本来、マネ妖怪は、昔は人間を試す妖怪としての認知が主だった。何故なら、その人の一番怖い者を目にして、それに立ち向かう勇気がある人間か確かめるためだ。逃げ惑う者は億劫で勇気が足りない者で、逆に立ち向かう者は勇敢で勇気に満ち溢れている人といえよう。
しかし、長い年月とともに、その認識は薄れ、はたから見たら、一番怖い者に変化する、まねようかい、へと変わってしまったのである。
だが、誰が初めてマネ妖怪、と呼び始めたのか、定かなことはわかっていない。
もしかすると、マグルかもしれない。もしかすると小鬼かもしれない。もしかすると屋敷しもべ妖精かもしれない。
今となっては真相は誰にもわからない。
世界一長寿と言われている、ニコラス・フラメルにも話を聞いてみたが、ニコラスが学ぶ頃にはもうマネ妖怪とは呼ばれていたそうだ。
少なくとも、1,000年前にはマネ妖怪はマネ妖怪と呼ばれ、生息していたと考えられる。』
すると、スラーが3冊の本を持って帰ってきた。
スラーの手には、
『クィディッチ今昔』と、
『ドーンロアの冒険談』と、
『霧の泡〜占い学超入門〜』が収められていた。
「クィディッチ今昔を借りたのね。」
「そうなの。グリフィンドールの生徒たちがクィディッチのプロチームはなにがお気に入り?って言ってて。けど私、マグル生まれだからクィディッチのことあんまり知らながったから、これを機にクィディッチについて知ろうかな、って。」
「クィディッチって本当に面白いスポーツよ。見ているだけでも楽しいもの。」
「へえ、そうなのね!やっぱり生で見ると違うのかしら。」
「ええ!あの迫力は凄まじかったわ。近々、またワールドカップが開かれるらしいから行きたいところなのだけれど。チケットも入手できるかの問題もあるわ…。」
「そ、そんなに人気なのね、クィディッチって。確かに見てみる価値はあるかも!」
そういって、スラーは本を読み始めた。スラーを微笑ましく見ながら、自分も本へと目を向けた。
昼食になって、エルとノアと合流して昼食を食べた。二人はフリットウィック先生に質問しに行っていたようだ。
興味深い話が聞けたのか、二人とも興奮しながら話してくれた。
「ウィンガーディアム レヴィオーサって基礎呪文って言われているらしいけど、極めればすごいんだね!!」
「そうらしいね!あの『パック』っていう呪文、いつか習得したい!」
「熟練の魔法使いや魔女が『パック』を使うと洋服が畳まれて綺麗にしまわれるんだって!」
という話を聞かされたが、よく分からなくて頷き返すだけだった。
今日のメニューはオートミールとガレット、ソフトフランスパンに糖蜜パイだった。
オートミールに砂糖をかけていただく。とっても美味しかった。
午後の授業は闇の魔術に対する防衛術だけで、夜に天文学がある。
自分の寮の時間割を見て、確認し、ポケットにしまった。
スラーに時間割を教え、寮に物を取りに行こうと思い、立ち上がった。
歩き始めたら、足首に糸が引っかかった。すると、どこからともなくリンゴが現れ、メガネに一直線だった。ピキ、と音がしたが、メガネのレンズで顔が助かるならいいほうだ、と呑気に考えた。しかし、よくよく考えてみよう。これはいたずらではないか。三人に大丈夫かと心配されたが、メガネが犠牲になっただけといい、誤魔化した。辺りを見回すと、怪しい人が二人いた。私の方を見ながら腹筋が壊れてしまいそうだな、と他人から見ても思ってしまうほど爆笑していた。
顔はよく見えない(メガネが割れたせい)が、男であることはわかる。
何故やったのか疑問だが、それよりも、これからメガネなしでやっていけるかどうかを心配した。今日中にフクロウで両親に眼鏡を送ろうとは思うが、その間の数日間はメガネがないまま生活しなければならない。伊達に視力が落ちているため、隣にいる、スラーの顔ですらぼやける。アンジョーナ家は代々視力が悪い。生まれつきのため、家族で母と祖母以外は全て眼鏡だ。父も、祖父も、叔父も、叔母も、従兄弟も。
一応父は、今マグル界で画期的な発明と言われている、コンタクトをつけている。
また今度のようなことがあったら、何回も何回も眼鏡を壊すわけにはいかない。コンタクトにして正々堂々とした戦いを申し込みたい。
たとえ顔面にドリアンが飛んできても。
しかし、なにがどうであれ、これは悪戯だ。自分が標的にされてしまったことへの嫌悪感と、これからもやられ続けるのではないかという不安感が襲ってきた。
できるだけ、できるだけこのようなことには無縁で生きていたいのに。入学早々恐れていた事態が起こる始末だ。この事を夜になったら手紙に綴ろうと思う。
まずは眼鏡を外すことからだ、と思い、眼鏡を外す。眼鏡をポケットに丁寧に入れると、スラーがまじまじと見つめてきた。
「レイニー、貴女って眼鏡を外すと本当に魅力的だわ。」
顔に自信がない私に彼女の言葉はとても響いた。
「ありがとう。」
と言ってはにかみながら笑った。
夜、レイニウムは眼鏡が壊れた経緯とともに眼鏡ともの直し呪文についての記述がある本が欲しい、と書いた。
平穏な日常生活がこのまま続くと思っていた。しかし、とんだ甘ちゃんだったことを知らされた。
- あなたを 第1章 5話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.6 )
- 日時: 2022/03/10 22:48
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
こんなことが続くとは思いもしませんでした。
そのおかげで友達が増えたのは嬉しいけど、不覚でした。
自分はこんなにも無力だということを思い知りました。
私はいじめられ続けるのだと思いました。
おはよう、と声をかけてニンフィーを起こす。此れが私の習慣になっていた。
なれるとニンフィーは、いつもぼけることは忘れないが、起こしたらすぐに起きてくれるようになった。
大きな進歩だ。
それから制服に着替えて、眼鏡をかける。数日前に壊れた眼鏡は、親に送ると次の日には戻ってきた。大広間に行って、三人と合流する。
しかし今日は、楽しみにしていた飛行訓練の初日のため、みんな目が冴え、いつもより30分程早く合流した。
「おはよう!みんな、今日は早いわね。」
みんなもウキウキで、頭に入った音は筒抜けのようだが、飛行訓練のことならどんな小さい声でも聞き逃さなかった。
「おっはよー!!レイニー!君だって早いじゃないか。昨日より40分早いよ。」
エルは『お』と『は』の間に『っ』を入れるくらいご機嫌のようだ。
それに相反して青い顔のノアは、頭をブンブン振ってほおをパチパチと叩いている。
「僕はみんなとは違う意味で早く起きたよ。箒が苦手だからこの時間は苦痛かもしれないぃ。」
いつも明るい雰囲気のノアがどんよりなのは初めて見たかもしれない。
「なんで箒が苦手なの?」
好奇心半分と、真面目が半分くらいで聞いた。
「小さい頃、2歳くらいかなぁ、父さんの箒に面白半分で触ったんだ。そしたら、箒がビュンビュン飛んでさ。上に行ったと思ったら、力がなくなったように浮かなくなって。挙げ句の果てには若干2歳にして5メートルから箒とともに落下さ。」
そう言ってノアはワイシャツのボタンをとって、鎖骨から胸のあたりまである大きな傷を見せた。今はふさがっているが、当時はとても痛かったに違いない。
「ああ、痛そうね、確かに箒が怖くなるのも無理はないわ。」
スラーも同情した声色で頷いた。少し血の気が引いて、さっきの赤い顔のようではない。少し怖いのだろうか。
しかしエルは、
「大丈夫さ!兄さんすごいんだよ!クィディッチのチェイサーでさ!クアッフルを持ってすごきスピードで飛ぶんだよ。兄さんいつもは家では読書と勉強しかやってないのにクィディッチだけは別腹でものすごく楽しそうにやるんだよ。」
なんて力説した。エルに感化されたのか、ノアも心なしか、少し安心したような顔に見えた。
飛行訓練の時が来た。レイブンクローの魔法史の授業が長引いているらしく、合同授業の予定だったが、急遽ハッフルパフのみとなった。
中庭に着くと、マダム・フーチが箒を並べていた。杖でやっているが、箒が嫌がっているところもあり、顔を見てみると少し苛立っているのが伺えた。
此れは助けるべきでは?となり、マダム・フーチに近づいて声をかける。授業が始まってからご機嫌斜めなマダム・フーチに減点されるのはごめんなのだ。
「マダム・フーチ、私たち、お手伝いします。嫌がる箒は手作業でやりますので。」
私がそう言うと、後ろにいたスラーとノア、エルも同調した。
「僕たちもやります!」
エルが自信気に言った。
すると、マダム・フーチの鷹のような黄色のつり目が柔らかくなり、優しい声色で言われた。
「あら、ありがとうございます。Ms.アンジョーナ、Mr.レベッグバー、Ms.ルドヴァン、Mr.ストロング。では頼みましょうか。その心意気にハッフルパフに10点差し上げましょうね。」
四人でせっせと箒を運んでいると、他のハッフルパフ生も、僕も私もと雪だるま形式のように手伝う者が増えていき、やがて全員になった。後から来る、レイブンクロー生の分があったため、その分もまとめてやった。
ノアは、飛行訓練がどんどん先送りになっていって、機嫌がよかった。しかし、同時に箒恐怖症ということも分かった。
終わりになると、ロープがところどころ破れたり、顔に切り傷ができたりしたが、感動したマダムが、
「ああ、ハッフルパフの皆さん、本当に助かりました。他の方の分までやってくださるなんて、あなたたちは本物のハッフルパフ生ですね。そんな立派な行いをしたあなた方には50点、差し上げましょう!!」
と、言ってくれた。
ここにきて大得点があり、みんなでハイタッチをして喜んだ。その日の夕食にハッフルパフの一年生が上級生に褒め囃されたのは別の話だ。
マダムが杖を振ると、ロープが見事に直っていき、もう一振りで傷も治った。
途端にマダムの顔は険しくなり、目がギラギラと光ったように見えた。
「しかし、それと此れとは違います。それでは飛行術の訓練を始めましょう。さあ、みなさん!箒が杖腕に収まるように並んで!早く!」
揺蕩う人混みが一瞬で列となり、箒の横に並んだ。
「そして、『上がれ!!』と言う!」
一斉に「上がれ!」という声が聞こえた。
「上がれ!」
自分も言ってみた。
しかし、一度では手に収まらないようだ。
何度もなんども上がれと言ってみたが、弱いのか手に触れることができない位置まで上がってはごとり、と落ちる。
だんだんイラついてきて、母国語で、
『上がれっていってるのだけど?!』
と、怒鳴った。すると、すぽりと手に箒が収まる。箒の藁も十分だし、外にバサバサとは出ていない。ところどころ傷があるが、箒はいい箒のようだ。いうことを聞かないことを除けば。
辺りを見回すと、自分以外に数人しか手に箒が収まっていなかった。
同じ部屋のミカレックとスピリーナは、互いに教えあいながら箒をうかせようと頑張っている。
少し離れたところにノアがいたが、ノアの箒が、何というか、正直に言うと、
結構危ない。
というのも、藁の量が少なく、外に飛び出ている者が多い。おまけに箒自身も臆病のようだ。ぶるぶると震えて、同じく震えているノアが、弱々しく「上がれ!」と言っても上がろうとしない。
ノアもだんだんイラついてきて、聞き取れないくらいに流麗な英語で箒を罵倒していた。箒は飛ぶことよりもノアが怖くなったらしく、ノアの手にスポリと収まった。
汗を拭ったノアは何だか晴れやかな表情だった。何かが吹っ切れたらしい。
暫くして、全員の手に箒が収まると、体制を事細かに説明され、箒に跨った。
一人一人マダムの指示を受ける。私もダメ出しされ、ぎこちなかった体制が、マダムの指導により改善が施されると、ストンと落ち着いたように感じた。
みんなが体制を整えると、マダムは一呼吸置き、
「それでは参りましょう。1.2.3の合図で空に飛び上がってください。ではいきますよ、
いち、にー、さん!! はい、飛んで!!」
その瞬間、私は地を蹴った。
すると、面白いほどに箒は浮いて、空へと舞い上がった。高揚感で満たされたが、心配になってノアの方を見る。
わたわたしながら、空に浮いていた。バランスを保ちながら、恐怖に耐えているのが見えた。
スラーは楽しそうに一回転していた。
エルは興奮状態でぐるぐる勢いよく周りながらスピードを上げてわたしの周りを回った。
「はは、やっほー!レイニー!」
上手に飛んでいていいなと思った。
全員が飛んだのを確認したマダムが自主練習の指示を出した。一斉にグループで集まり始めたが、どこよりも早く私たち三人はノアのサポートに回った。
「のあぁぁぁぁ!」
スラーが楽しそうにノアのところに戻り、エルもまたそのように戻った。
私は何となく無表情で戻った。本当に何となく。
「さ、三人とも、じ、じ、じょ、じ、ょうず、にとんでる、ね、うん。」
歯をガタガタいわせて恐怖にさいなまれるノアが少し可愛かった。
「じゃあノア、一回地上に降りましょう?低いところから慣れていくのがあなたに合っていると思うの。」
そう言った瞬間にノアが頭をブンブンさせて頷いたため、ゆっくりゆっくり地上に降りた。ノアが地面に降りるなりへたり込み、腰を地上に乗せてブツブツ言い始めた。
すぐに立ち上がり、
「ご指導お願いします、レイニー先生。」
なんて改まって言われた。確かに地上に降りよう、と、提案したのは私だが、さすがに教えるほど私は今日ではない、と思ったが、スラーとエルも同調して、
「レイニー先生宜しくね!」
と言われて、少し照れた。
「スラーとエルは自主練習していていいわよ。私はノアに教えるから。」
と、自信過剰になったため、得意になっていた。スラーとエルはどこかに行ってしまったので、ノアに教える。
「じゃあ、まずは30センチ。浮いてみようかしら?」
ノアは30センチ浮いた。まだ余裕そうだ。
「じゃあ、60センチ。」
60センチほどまで上がった。まだ余裕そうだ。
「じゃあ、120センチ。1メートル行くわ。」
90センチを飛ばして、120センチまで上がった。少し怖そうだが、大丈夫そうだ。
しかし、怖い顔をしているのは事実なので、その高さで今日は飛行してみよう、と提案した。
ノアも頷いたので、ゆっくりとその高さで飛行する。
慣れてきたそうなので、一回転する。
「怖いからやだよおぉ!」
と言われたが強行した。ぐるりと回るように指示する。ノアも渋々、怖そうに一回転した。
しかし、顔は晴れやかになり、
「そんなに怖くないかも!」
と、嬉しそうだった。
慣れてきた、と口にしたのを私は聞き逃さなかった。さらに上の150センチまで行ってみる。
しかし、ノアの顔がさっきの一回転の影響なのか、ちっとも怖くなさそうだ。むしろ、もっと上へ行きたそうな顔だ。
面白そうなので、2メートルまで上がった。
ノアの顔はまだ恐怖を訴えていない。さらにさらに上がり、4メートルまで上がった。
余裕そうな顔をしているが、私の腹黒な精神が疼き、
「じゃあ回転しながら進もうかしら?」
とハードルを上げた。
ノアは得意そうに、
「いいよ!やってやろうじゃないかい!」
といった、が。
さっきの威勢はどこに行ったのだろうか。
泣きそうになりながら私についてくるノア。
ぐるぐる回っているため、平衡感覚が鍛えられるしいいかな、と思ったが、少しハードルを上げすぎたようだ。
さっきの得意げな顔をしたノアは、気持ち悪そうに涙を浮かべる顔へと様変わりした。
スパルタではないが、一向にやめようとは思わないので、ノアがついてこれるようにゆっくり飛行しながらも、回転することはやめない。
「レイニー!うぷ、す、すとっぷ…。」
と声をかけられては止まらないわけにはいかない。地上に降り立つと、グワングワンした頭のフラフラしたノアが木に寄りかかって吐きそうにしていた。まだ吐いてはいないが、顔が青白くなっていた。さすがにやり過ぎてしまっただろうか…。
少し反省しながらノアに休んでて、と言って、沈んだ雰囲気のまま、スラーとエルのところに行った。
二人は、他のみんなと一緒に箒で競争していたようだ。
五人ほどが横に並んで、スタートの合図で飛び立つ。中庭を三周して早く戻ってきた人が1位らしい。
先ほどは、スラーに、同じくハッフルパフ生のバイナー・デーン、エブリィ・ハストベッド、エルトン・ロウル、オリアンナ・ニロールと競っていた。
結果は、一位がバイナー、二位がスラーとエルトンが同着、四位がエブリィ、五位がオリアンナだったらしい。
楽しそうだなー、と思いながら見ていると、手招きされ、レースに強制参加された。
対戦相手は、スピリーナ、ミカレックと、エレン・ロイズ、スタイアン・ムーンダイスだ。スピリーナとミカレックは箒はほどほどらしい(昨日寮の部屋で聞いた。)ので、エレンとスタイアンがどれほどかによって順位が決まる。
小さい頃から箒に乗り、箒の飛行歴がはや5年になりそうなくらい乗っているので、飛行術は得意な方だと自負している。
さっきはノアに教えていて、全く自由に飛んでいなかったため、開放感でいっぱいの心はスタートが待ちきれない。
「よーい、スタート!!」
と言われた瞬間、私はものすごい速度で飛び出した。過去最速かもしれない。あっという間に一周回ってしまった。
もう、一周回ってしまった、という虚無感と、このまま目立ち続けると、先日のようにイタズラの的になる可能性もゼロではない。そう考えた瞬間、箒は元のスピードに戻った。普通の速度だが、さっき話した距離が大きかったのか、そのまま一位でゴールした。
次にエレン、スタイアン、スピリーナ、ミカレックの順でゴールした。
途端にスラーが飛び込んできた。
「レイニー!凄いわ!飛行術、得意なのね!上手だったわ!」
「レイニー、僕からも称賛するよ。」
エルにも言われた。少し照れたが、一周終わった後に普通のスピードに戻ったのも虚しく、人に揉まれた。
一緒に走ったエレンとスタイアンも褒めてくれたし、ノアも酔いが戻ったのか、上まで上がってきて、凄い、と言ってくれた。
つかの間の中心的存在になれた。
今日は休日だ。何をしてもいい。3年生からはホグズミードに行くことができるが、生憎まだ一年生だ。
宿題をして、読書をして、家に手紙を書くことくらいしかやることがない私は、四人で本を借りて、大広間で宿題をしていた。
今日やる宿題は、闇の魔術に対する防衛術の、ドラゴンについての特徴をまとめて提出する、ミニレポートだった。
自分も知らないことが多いドラゴンは、本がたくさん必要だった。他の三人もドラゴンという存在を知っているだけで、詳細は知らないらしい。
いつにも増して、本を沢山持って大広間に向かった。あまりにも本が多いため、図書館の机では場所が狭すぎる。レイブンクロー生の巣穴でもある図書館は、休日で、平日にも増して人がいる、というのもある。
四人で手分けして本を持っているが、みんな厚い本を何冊も持っているため、見た目は十何冊も持っているように見える。
そして、思わぬ再会もあった。
大広間に向かって、ヨタヨタ歩いている私たちが落とした本を拾ってくれた上級生がいた。
その上級生は、前に、スラーと図書館に行った時に、本の場所を教えてくれた、あのレイブンクロー生だった。
「ありがとうございます。」
と言って、上級生の手から本を貰おうとした時、エルが、
「あーーーっ!!」
と声を上げた。驚いてエルを見ると、上級生の顔とエルの顔が似ていることがわかった。
「兄さん!何でいるの?え?レイニーとスラー、兄さんと顔見知り?」
やっぱり。
レイブンクローの上級生は、エルのお兄さんだった。
「うん、前助けて貰ったのよ。」
スラーもうんうん、と頷く。
お兄さんの方も驚いていた。が、すぐに冷静で温和な顔に戻り、
「なーに?キュリーの友達?よかった!友達できてるか心配だったんだよね。」
とエルにたっぷりの愛情を送った。
とっても仲の良い兄弟だよいうことがよくわかる。
「じゃあ、ノアとは初めてか!紹介するよ、僕の兄のマージーン・レベッグバーさ!レイブンクローの六年生。レイブンクローのクィディッチのチェイサーをやってるんだ!」
「よろしく。君たちの名前を聞いていいか?」
「あ、はい。スライネ・ルドヴァンです。」
「レ、レイニウム・アンジョーナです。」
「ノア・ストロングです!」
「スライネちゃんに、レイニウムちゃんに、ノアくんだね。弟がいつもお世話になってんな。これからも面倒見てくれると嬉しんだけど。
あ、ごめん、キュリー、俺、そろそろデーヴィドと一緒に厨房行く約束してんだ。じゃーな!また箒に乗って遊ぼーな!そうそう、クリスマス休暇うち来ないかい?三人とも!」
と、何とも魅力的なお誘いがきた。
「い、いいんですか!!」
ノアが興奮しながら問いかける。
「勿論、勿論!OKOK!弟の友達なら大歓迎さ!ウチの両親、今海外出張だからさ。家空いてんだわ。俺の宿題、レイブンクローだからどさっと出されてキュリーに構えなくてさ。キュリーも暇そうにしてるし。
1年と6年ってそんなに接点ないから、詳細は手紙にしてキュリーに送るよ。みんなで見てな!」
そう言って、マージーンさんは行ってしまった。
私たち三人は、幸福感に満たされ、大広間まで本を運ぶことに成功した。
本当に廊下で魔法使ってもいいことにならないかな。でも、結構破られているらしいけど。意味あるの?その校則。
そんなことがありながら、ドラゴンのミニレポートをうんうん、唸って書く私たち。
すると、飛行訓練で仲良くなったエレンと、スタイアンが寄ってきて、一緒にミニレポートを書くことになった。
ドラゴンに関する本が根こそぎなかったことから、もしかして、と思って来てみたら正解だったね、と二人が言っていて、少し申し訳なかった。
人数が二人増えただけでも、勉強は捗るものらしく、話し合いながら、どんどんさくさく進んだ。
今日はピクニックじゃー!という、ノアのアイディアによって、湖の前での陽気なピクニックが昼食となった。さっき会った、マージーンさんによると、ハッフルパフの寮への通り道にある、果物の絵の、梨を擽ると、厨房が現れるらしい。
その通りにしてみると、あら不思議。
本当に厨房が出てきた。
中でしもべ妖精たちがわたわたと働いている。その中の一人が、こちらにやってきて、キーキー声で言われた。
「お坊っちゃま、お嬢様、ようこそお越しくださいました!このイーリーめに何でもお申し付けください!
失礼ですが、こちらのお坊っちゃま、先ほどこられた旦那様のご兄弟でしょうか?」
と、エルの方を見て言った。しもべ妖精たちが見ても、その二人は似ているらしい。
スラーは初めて見るしもべ妖精達に興味津々だ。
「ええ、そうよ。お願いがあるのだけど、バスケット二つの中に、サンドイッチを入れてもらえないかしら?」
しもべ妖精をよく見ている私が頼んだ。
「はい!畏まりました!すぐにお作りいたします!ピクニックであらせられますか?」
「そうだよ!最高のピクニックにしたいんだ!君たちのサンドイッチの腕にかかってるんだ!成功するかどうか。」
「ひえぇ、大役を仰せつかりました!とびきり美味しいものをお作りいたします!」
そう言って、イーリーは厨房に消えていった。
1分ほどすると、イーリーと、もう一人のしもべ妖精が、バスケット二つを持って現れた。
ノアとスラーが膝をついて、バスケットを受け取る。
すると、しもべ妖精が、目を潤ませた。
「お坊っちゃまとお嬢様が、イーリーめに膝をついてバスケットをお受け取りなされた!」
「なんてダメなことでしょう、イーリー!
ああ、パディは悪い子!パディは悪い子!」
隣の子はパディというらしい。しかし、頭を床にゴンゴンと打ち付けるのはとっても痛そうだ。
慌てて止めさせると、今度はありがとう、ありがとうと連呼された。ある意味疲れて厨房を出た。
外に出て、湖まで歩いた。ベンチがあって、ちょうど六人入りそうなサイズの、大きなベンチだった。
そこに座り込んで、さっきイーリー達にもらったサンドイッチを食べる。
バスケット一杯に詰めこまれたサンドイッチは、沢山、具の種類があって飽きのこない味だった。
みんなでどんどん啄ばんで行くと、30分ほどでからになってしまった。
美味しかったのでいいことにしよう。
「美味しかったなー、サンドイッチ。」
スタイアンが幸せそうな表情で言った。
「もうちょっと頼んだ方が正解だったかしら。」
「バスケット五つでもいける気がしてくるよ。」
ノアが茶化した。
それから一時間ほど、みんなで黄昏ながら雑談をして、城へもどった。
天文学の授業は、グリフィンドールと合同だった。最近は、レイブンクローとの合同が多いため、グリフィンドールとの合同授業は久しぶりだった。
いつもの四人に、最近はエレンとスタイアンがプラスされて、六人で行動していると、8人ペアを作れとの命が出た。赤毛の女の子と、黒髪が綺麗な女の子が寄ってきた。
「私、リリー・エバンスっていうの。ごめんなさい、二人空いてるところがここしかなくって。入れてくれる?ああ、こっちはアリスよ。」
「今晩は。入れてくれると嬉しいんだけど。」
「「「「「「いいよー!」」」」」」
「「ありがとう!」」
そういって、リリーとアリスが仲間になった。
今日の学習は、夏の大三角の三つの星座についてだった。
「では、夏の大三角はご存知?有名な話ですわね。では、すべての星座を言えますか?……では、Ms.エバンス!」
リリーが立ち上がった。
「はい先生。わし座、琴座、白鳥座です!」
「素晴らしいですわ。グリフィンドールに3点。」
授業は進む。
大三角についての基本的な情報と、神話についてお話しされた。隣を見ると、エルと、スタイアンがすでに眠そうにこくこくと顔が動いていた。
天文学が好きなスラーは、熱心にお話を聞いていて、逐一メモをとっていた。
私はというと、そんなに興味がある話ではなかったため、普通に聞いて、普通にノートをとった。
授業が終わり、配られたプリントを回収することになった。各グループで集めるらしく、私が回収して、先生に提出する事になった。
すると、くしゃくしゃの髪のグリフィンドールの男の子が、羊皮紙を私が回収した羊皮紙に置いて、
「ごめん、グループの人が寝そうで起こしたいからお願いしてもいい?」
と言われた。確かに眠ったら減点になるので、避けたいところだ。意味がわかったので、その子も分までもらった。
なんと、運んでいるときに、羊皮紙が爆発した。おかげで顔が真っ黒になった。さっきの男の子が、同じグループの子と一緒に笑っている。二人だけだけど。
目を凝らして見てみると、ピーターが寝そうになっていて、リーマスが私の方を向いて、青い顔をしていた。
他に二人の男の子がいたが、暗闇に紛れてよく見えなかった。
「ポッター!ブラック!何をやっているのです!グリフィンドール10点減点!」
先生の声が強かになった。
「ちょっとポッター!何しているの!ごめんなさい、アンジョーナ、彼ら、本当に悪戯しかしないの。私が嫌いな人No. 1だわ。」
リリーが反撃しながら気遣ってくれた。
「なにやってんだよ!レイニー、大丈夫?」
ノアも気にかけてくれている。
ハンカチで顔を拭き、髪を綺麗に手で梳いた。
「大丈夫。そんなに気にしてないわ。こんなことする人は精神年齢が幼い人だもの。気にしない、気にしない。」
「!!そうよね!ほら聞いた?ポッター!精神年齢が幼いんだって!」
リリーが暴言のセレクトリーに新規入荷された言葉をバリバリ使う。
「そうだそうだ!」と同じグループのみんなが言ってくれた。
ポッターと呼ばれた男の子は、隣の子のともに、私を恨めしそうに見て、睨んだ。
私は、鼻で笑い、相手にしなかった。
後々後悔することも知らずに。
やっぱり一時の感情でやってしまうのは本当にいけないことなのかも。
- あなたを 第1章 6話ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.7 )
- 日時: 2022/03/21 13:25
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
「あの、」
呼び止められた声で後ろを向く。後ろにいたのは、メガネをかけた黒髪のグリフィンドールの男の子だった。どこかで見覚えがあるが、記憶が甦らない。たくさんの羊皮紙の束を持っていた。
「これ、フリットウィック先生に持って行ってくれない?実は、友達が階段から転げ落ちちゃってさ。たいした怪我じゃないんだけど、頭から血を流してるんだって。」
(いや、たいした怪我なのでは?)
「これから、近くにいた僕が事情聴取受けることになっちゃって。時間がないんだ。頼めるかい?」
「え、あ、はい。大丈夫です!お友達、お大事に。」
羊皮紙の束を受け取る。
最近は、人付き合いになれ、人見知りも減ったと思う。
確か、この時間、フリットウィック先生は、教室でレポートの添削をしているはず。
思案から戻って、もう一度前を向くと、さっきの子はいなかった。
階段を下りながら、途中であった、同じハッフルパフの同級生、ニーナ・オーガスティと、ハレノア・キリスにも手伝ってもらい、なんとか運んだ。
「あなたも災難ね、こんなのを頼まれるんだもの。断ればいいじゃない。」
「そうだけど…。今回の場合は大変だから。」
「アンジョーナってとってもいい人なのね。感心しちゃった。」
「ありがとう。」
そんな話をしていたら、フリットウィック先生の部屋に着いた。羊皮紙をもらって二人と別れた。
羊皮紙をフリットウィック先生に渡した。
そして、さっき言われた、頭から血を流した子の話は、フリットウィック先生にも伝わっているだろうと思い、尋ねたら、
「そんな人はいませんよ。」
と言われた。
騙された!!!
親にも愚痴った。
名前を聞いておくべきだった。
それから数日、騙された野郎を探してみたが、見つからなかった。食事の時は、グリフィンドールの席を睨み、あいつを探す。
自分がこんなにもイラついているのに驚いた。
ホグワーツでのストレスも溜まり、少し、(本当に少し!!)ヒステリックになっていたのもあったのだろう。
グリフィンドールを見ていたら、3人にばれて問い詰められた。
洗いざらい話すと、これからそいつを探すの手伝う!と言われ、心強かった。
あの時の記憶を元に、あいつを探し出す!
またさらに数日、探して探して探して探すと、とある人物が浮かび上がった。
それは、
シリウス・ブラック。
グリフィンドールの同級生。
最近は、天文学の時の事件での、あの、ポッターと共に、悪戯に精を出しているらしい。
しかし、難点が一つ。
リーマスとピーターと共にも、行動しているらしい。
最近表立って、スリザリンの生徒たちに嫌がらせをやっている。私からは少なくとも、『嫌がらせ』に見えるのだが、校長のダンブルドアは面白がって止めようともしない。
校長のグリフィンドール贔屓が目に見えてわかった。
犯人がわかりそうになれば、次は事情聴取だ。彼を知っている人に話を聞く。
一人目は、ピーター。
今日の夜の天文学の合同授業の後、ピーターを飛び止めた。当然同じグループの人も止まるが、無視した。何故なら、ブラックとポッターが居るから。
「ねえ、ピーター。少しお話を聞きたいんだけど、大丈夫かしら?」
ただでさえいたずらをしてくる彼らに、いらぬ勘違いは不要だ。『話がある』だと、冷やかしの種になってしまうかもしれない。私としても、ピーターとしても嫌だろうと思うので、言葉を選んだ。
「え?あれ、レイニー?久し振り!話すのも久し振りだね!あ、うん、大丈夫だよ。」
ピーターは眠い目を擦りながら真剣に話を聞いてくれるようだった。
「おい、お前なんできたんだよ。」
ブラックに言われたが、無視を決め込む。
「それでね、ピーター。」
「おい、聞いてんのか?」
「まあまあ、シリウス、やあ、レイニウム。ピーターになんの話を聞きたいの?突然だね。」
隣にいたリーマスがブラックを宥めていた。正直とてもありがたい。
「うんうん、本当に突然!ここ十何日話してなかったよね。ごめん、勇気がなくて…。
そうそう!本題だよね!何を聞きたいの?」
ピーターも続きを急かした。あまりに急かされると噛むことが…。
「え、っと。まあ、あなたの人間関係よ?」
ちょっと噛んだ。いわんこっちゃない。なんの話かをブラック本人の前で言うのは、いくらなんでも気が引けた。
せめてもの良心だ。親指の爪にも満たないが。
私は演じることが得意ではない。気付けばポロっと真実が飛び出してしまう。気をつけねば。
「えー?そんな風には見えないけど。」
「ううっ…。ご名答よ。あの人のセーカクが知りたいのー。」
そういってブラックを指差す。
ピーターの無垢な瞳にやられた。
あのひと、からは棒読みだった。感情を込めるのすら難い。
「え?シリウス?なんで?えぇ…、まさかレイニー、シリウスのことが?」
「断じて違うわ。」
頑張って笑顔を繕い、ばさりと切り捨てた。ヤバい。目が笑ってない。
しかし、こいつに好意を持っていると勘違いされたくはない。絶対嫌だ。
この場では、一番聞きたかったことを一つだけ聞きたいのだ。
ブラックは驚いていたが、すぐに顔を歪めて私を睨んだ。
「じゃあなんで聞くんだよ。」
「まあまあ、シリウスよ。君はなんでそんなことを聞くのか知りたいけど、答えてはくれなさそうだね。」
今まで傍観していた、ポッターがついに口を挟んだ。
けど無視する。
「この人は、メガネってかけるの?」
またまた棒読み。なんだかしっくりしてきている。この人のことを話す時はこれからいつでも棒読みで行こう。
あの時に羊皮紙を渡したあいつはメガネをかけていた。ブラックは眼鏡をかけるのだろうか。かけていると言われれば操作は進行。逆はまたそれだ。少し、ほんの少し進行する。
「え?シリウスのこと?メガネ?シリウスは眼鏡かけないよね?」
ピーターは困惑していたが、質問には答えてくれた。
「なんで俺が眼鏡かけてるかなんて聞くんだよ、何企んでやがる。」
喧嘩を売られているらしい。
けど無視無視。
しかし、私の頭の中ではさっきの言葉は筒抜けで、物思いに耽っていた。
私の中では謎が深まるばかりだ。
この人がメガネをかけないとするならば、他の誰か、と考えるのが妥当かもしれない。しかし、誰かばれないようにわざとメガネをかけたんだったとしたら…?
その仮説を立てた。
かなり悪質だ。
そこまで隠蔽工作をするような性格には見えない。けれど、隠れて悪戯をしている事を鑑みると、その説も当たっているかもしれない。
「ふうん、そっか…。」
返事を返して、また思案に耽る。
だが、あの時、フリットウィック先生に出す羊皮紙を持っていた。
あれを頼まれたのだ。という事は、グリフィンドール生に、あのレポートを誰に提出したのか聞けばいいだけなのではないだろうか。
「ねえ、レイニウム、なんでシリウスがメガネをかけているかどうか聞きたいんだい?」
「あ、ああ、そのことね、実は前に少し嫌がらせにあったの。だから、いつも悪戯しているMr.ブラックに白羽の矢が立ったのよ。」
「いやなんで俺だけなんだよ、ジェームズだってやってんだろ。」
「あなたは黙ってて。……。ちょっと待って?」
「あ?黙れって言った割にはお前が黙ったなあ?」
やっぱり。
今までイラついていて気づかなかった。あの時のあいつの声はどんなだった?
ブラックの声と似ているのではないか。
もう一度聞いてみなければわからない。
そう思って私は杖を頭に突きつけた。
「?!レイニウム?!何をしているんだい!!」
リーマスが混乱しているが、今は必死なのだ。なぜこんなにも執心しているのかわからない。もしかすると、スリザリンにも向いていたかもしれない。
「や、やめてよ、レイニー!!君にまだ死んでほしくはないよ!」
ピーター、誤解よ。今から私がやるのはね。
「記憶を取るだけ。」
『ヴィジュアーラーイズ。』
呪文を唱える。アンジョーナ家に伝わる、秘術の一つ。対象者の記憶を可視化する。音も同様。その記憶は呪文をかけたものにしか見る事はできない。
この高度な技術を、ベルギーの本家では確実に隠匿していた。
ありとあらゆる忘却術と人よけの呪文を使って。
しかし、この魔法は、呪文が分かるだけでは使用することができない。これはアンジョーナ家の血が入っているものしか使えない。先祖がせめても、と残した守護の魔法だ。
魔法を魔法が守るなんて珍事だけれど。
杖の先に現れたのは、あの時の眼鏡少年だった。声がブラックと一致する。
勘違いではなかった。
あいつはブラックだ。
苛立ちが増した。悔しい。
ブラックの顔を見ると、まだ何があったのか理解していない。まだ頭にハテナを浮かべている。それでいて顔が綺麗なせいで絵になるのが憎たらしい。
その反応も確かにそうだ。いきなり目の前の女子生徒が知らない魔法を使って頭に杖を突きつけて離したと思えば何もないところを見続けて表情がころころ変わるのだから。
隣にいるポッターは、何かブツブツ言っていた。別にどうでもいい。
これからブラックとは関わらないで生きていこう。ノアに聞いたところによれば、こいつは純血主義のブラック家出身だ。なぜ反純血主義の家柄らしいポッターと一緒なのかは知らないが、家がブラックだ。
これからブラック家の人間に関わる時は、よっぽど善人じゃなきゃ態度が悪くなりそうだ。
偏見がひどいが、まあ、これから会う事はないだろう。楽観視しとけば変に気が重くなる事はない。グリフィンドールとの合同の時だけ注意を払えばいい。幸い、リリーとアリスとしかグリフィンドール生とは交流はない。
これがよかった、と言えるわけではないが。
リリーもポッターに付きまとわれて大変だなぁ、と哀れみの感情で溢れるのは気のせいではない。
「やっぱりあなただったのね。こんなのだったらもっと大胆にやることね。糞野郎が。」
いつにもまして辛辣に捲し立てた。ブラックは血気盛んらしい。挑発に乗ってきた。飛んだお子様だ。
「あ?なんだと?話がわからなすぎる!お前も他人のプライベートにズケズケ入ってくんな!芋女!」
「なによ!私が何をしようと何を探ろうとあなたには関係ないわ!たとえそれがあなたのプライベートな情報だったとしても私が有益だと思えばそれは『情報』なの。プライベートなんてどうでもいいわ!」
「どうでもいいだと?じゃあお前が自分の懐にズケズケと知らない男が入ってくるんだったらどう思う?!」
「勝手にすればいいわ。私は生憎恥じる情報は一つもないの。」
「はっ!そうか!じゃあお前がどこから来て、何があって、どんな経緯でここに来たのかなんて知られても何も取り乱さないのか!じゃあお前は芋女じゃなくて機械女だな!」
「素敵なあだ名ありがとう。けれどね、大体アンジョーナ家は機械人間よ。感情を表に出さないわ。母さまは別だけど。
それじゃあね。ピーター、リーマス。リリーとアリスによろしく。」
まだ背後でブラックは何か言っていたが無視してさっさと天文台から帰った。
スカッとしたのもつかの間、彼らの悪戯もとい、嫌がらせはあの日を境にエスカレートして行ったのだった。
Sirius side
一言で言うとイラついた。
あいつが俺が眼鏡をかけているかなんてピーターに聞いたことが始まりだった。
杖を頭に突きつけた時はいい気味だったが、流石に自殺するかと思って少し焦った。目の前で自殺されたら不愉快極まりない。
結局自殺はしなかった。
『ヴィジュアーラーイズ』と唱えると、白い靄が頭から出てきた。生憎、中身を見る事はできなかった。否、見る事はできないのだろう。
ヴィジュアーラーイズ。可視化。こいつは何かを可視化したかったのかもしれない。
しかし、後でわかったことだが、呪文集にそれは載っていなかった。一応7年生まで調べたが、載っているどころかヴィジュアーラーイズのヴィの字もなかった。
おかしいとは思ったが、特に気には止めなかった。その家特有の秘術だろう。ブラック家にもあるが、あの糞親父とババアと家族に従順な弟がいるあの家の秘術なんか使いたくもない。
あいつは何かを見ると、顔をぐしゃりと歪め、俺を睨んで暴言を吐いた。俺は応戦した。
喧嘩の結果、あいつは機械女だった。いや、喧嘩をしている時点で感情が高ぶっているという証拠なのだが、そこは目をつぶって欲しい。
プライベートな情報を知られて嫌な顔一つしないのは流石におかしいだろ。
しかしあいつはアンジョーナ家は全員機械人間だ、なんて言ってきたのだ。母は除くらしい。
少しアンジョーナという家柄について興味を持った。あいつは最後にピーターとリーマスにエバンズとフィオールによろしく、と別れを告げ颯爽と去っていった。
後日、ヴィジュアーラーイズと共に、アンジョーナについて調べた。ジェームズたちは俺が図書館に行く、と言った瞬間心配された。
「大丈夫かい?頭がいかれたのか?」
と言われたら、さすがの俺でもキレる。ローブのフードにナメクジの卵を入れてやった。エンゴージオをかけて。
朝食を食べている時に、ジェームズが言った。
「そういえばさ、最近君がアンジョーナについて調べているって聞いてさ。アンジョーナと同寮の生徒に聞いたんだ。そしたらアンジョーナはベルギーから来たらしいんだ。本来はボーバトンに行くはずだったらしいけど。」
なるほど。ということはベルギーの魔法族について調べればいいのだろう。「アンジョーナ家はーーーー」と言っている時点で、それなりに名門なのだろう。認めたくはないが、あいつはそれなりに成績がいい。それもそのせいだろう。
楽観的に考えた。どうせ純血だろう。スリザリンに行かない時点で純血主義の可能性は低い。しかも、ルドヴァンとエバンズはマグル出身だ。アボットとロウルは聖28一族だが、特別優遇はしていない。ストロングとレベッグバーとムーンダイスは半純血。ロイズは聖28一族ではないものの純血、と、マグル出身、半純血、純血と見事に交遊している人間の血筋は分かれている。
ベルギーには聖28一族と同じような制度が存在するらしい。昔家の本に書いてあった気がする。
図書館でピッタリの本を見つけた。休日だったため、寮で読もう。いじられたくはない。
階段を駆け上がり、太った貴婦人に合言葉を言い、中に入る。
寮の自室まで転がり込み、ページを開いた。
『ベルギーの魔法族
〜世界の魔法族シリーズ第5弾〜
著 パルピオン・ドリーマー
ベルギーの魔法族には、強家15族がある。一般的に考えると、聖28一族と同じようなものである。
ダリア家
ゴーベリオス家
ハールド家
アビオル家
チャンドラー家
フォレスター家
ジュード家
ポールズ家
スラル家
ハブニオ家
ルーガリオ家
イシス家
ユーオヴァニア家
ハッシーカー家
そして、
アンジョーナ家である。
この15族は、純血とされており、魔力が最も高い一族として、ベルギーで名を馳せている。
また、イギリスで言う、聖28一族の筆頭であるブラック家と同様の立場であるのがアンジョーナ家。しかし、ブラック家のように、過度な純血主義ではなく、反純血主義の一族である。しかし、純血主義であるアビオル家、ジュード家、ハブニオ家などの計6家との交流もあり、ベルギー魔法界のバランスを保ってきた重要な家である。
先述したように、アビオル家、ジュード家、ハブニオ家、チャンドラー家、スラル家、ゴーベリオス家が純血主義の家柄、ダリア家、イシス家、ルーガリオ家が中立、ユーオヴァニア家、ハッシーカー家、ハールド家、フォレスター家、ポールズ家、アンジョーナ家が反純血主義である。』
これを見たときは驚いた。まさかあの機械女が名門の家出身のお嬢様だったなんて。
どこか丁寧なところがあったのもこのせいかもしれない。
しかし名門なのになんであんなに地味なんだ?髪を伸ばすことなく丸い黒縁メガネをかけた陰キャではないか。
貴族たるもの、身だしなみは整えるべきだが、まさかの髪は短髪。女性の象徴ともされているのが髪だ。それを、筆頭であるアンジョーナ家の子女が短髪なのだ。いつまでたっても中世の考え方のままのイギリス魔法界の純血貴族だが、確かに、俺の感覚からして短髪は如何なものかと思う。ベルギーの魔法界ではそれが普通なのかもしれない。
しかも短髪の上に、ボサボサだ。これも女としてどうかと思う。
あとものすごい執着する。
たった数回の悪戯であんなにも業を煮えたぎらせていた。メンヘラは嫌われる、とでもいっておく。あとで。
というわけだ。あいつが俺をイラつかせたことには変わりはない。多分ジェームズだって神経がピキピキいっていたはずだ。
これからはあいつを中心にして悪戯していこう。