二次創作小説(新・総合)
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- あなたを 第2章 絶賛連載中! ハリーポッター 親世代
- 日時: 2022/06/06 19:56
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
イギリスのとある駅の柱に向かってたくさんの荷物を乗せたカートを押して飛び込む、一人の少女の姿があった。
名をレイニウム・アンジョーナという。
茶髪に丸い眼鏡をかけて、いつも下を向いている、それが彼女の特徴だった。要するに内気な少女だった。
柱に飛び込んだ彼女は、ぶつかることもなく柱をすり抜けた。後ろにいた母親もそれに続く。するとそこには赤い列車が線路にとまり、黒いローブを着た子供と大人でごった返していた。
列車の一番前の入り口に向かい、荷物をカートから降ろす。若干引きずる形ではあるが、人混みにまぎれこめばそれは異様な光景には見えなかった。それにこれが普通なのだ。この世界では。一人の少女がたくさんの荷物を引きずりながら歩く姿なんて。
列車の中に頑張って荷物を入れた彼女は、心配そうに見つめる母の姿をその瞳で捉える。優しいアメジストのような輝きを持つ母の瞳と同じ色の眼を、少女は持っていた。
すると、列車が出発する合図の汽笛を鳴らした。慌てて他の子供が乗り込んでくる。少女は邪魔にならないように、と傍に避けた。
母の手を握り、心配するな、と諭す。厳かな顔を母は一瞬見せたが、すぐに柔らかい笑顔へと変わり、娘を送る。
「大丈夫よ、だってあなたは私の子供なのだから。」
母のその言葉を聞いた娘は、緊張して硬かった表情が緩んだ。心なしか、とても心に響いた。
そしてゆっくりと列車は走り出す。
名残惜しい中、母娘は手を振りながら別れを惜しんだ。
- あなたを 第1章 一話 ハリポタ オリキャラ注意 親世代 ( No.1 )
- 日時: 2022/02/26 17:38
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
Raynium side
母と別れたレイニウムは、空いているコンパートメントを探す。直ぐに空いたコンパートメントが見つかり、荷物を下ろす。一息つこうとしたのもつかの間、ノックが聞こえた。ふだんは性格のせいで怖がってしまうのだが、これだけははっきりとわかる。自分がいるコンパートメントに対してのノックだということを。恐る恐るドアを開く。
すると、可愛らしい綺麗なブロンドの髪をした女の子と、黒髪を短く切った髪の男の子がいた。
「ごめんなさい、近くに空いているコンパートメントがなくて。ご一緒してもいいかしら?」
「僕からも頼むよ。」
成る程、彼女らはコンパートメントが空いていなくて困っていたのか。確かに自分は人見知りだが、自分の正義感が疼く。そうなれば答えは簡単だ。
「ええ、良いわよ。私はレイニウム。レイニウム・アンジョーナよ。よろしくね。」
できるだけ人見知りなことがばれないように、吃らない等に。ゆっくりゆっくり喋った。
「よろしく、アンジョーナ。私はスライネ・ルドヴァン、こっちはノア・ストロング。」
「僕のことはノアって呼んで!」
「私はスラーでいいわ。」
いきなり愛称で呼んでもいいのかしら、と遠慮気味に思ったが、呼んでくれ、と言っているのならばそれに応えるまでだ。
「じゃあノア、スラー。改めてよろしく。私はレイニーって呼んで。雨って意味だけど気に入ってるの。」
私のことも愛称で呼んでもらおうと思った。レイニーは雨の日、という意味だが、静かな空間が好きな私はこの愛称が気に入っていた。
「素敵な愛称ね!私は雨、好きよ。」
「僕もだ。箒が苦手だから雨の日は乗らなくて済むんだ。」
とノアははにかみながら言う。スラーは雨の時の音が気に入っているそうだ。彼らが雨を好きと言ってくれて、少し嬉しくなった。
自己紹介が終わったところで、二人に座って、という。荷物を椅子の下に滑り込ませると、ノアが話し出した。
「君たちはどこの寮に入ろうと思ってるんだい?」
「寮って何?種類があるのかしら?」
すかさずスラーが聞く。どうやら彼女はマグル生まれのようだ。
「ホグワーツには四つの寮があるのよ。グリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフの四つ。グリフィンドールは勇気のある人たちが入る寮。スリザリンは狡猾な人が入る寮。レイブンクローは勤勉な人が入る寮。ハッフルパフは誠実で忍耐力がある人が入る寮。」
できるだけわかりやすく説明する。聞きながらスラーは自分はどの寮に入るのか考えているようだ。
「ありがとう、レイニー。多分私はハッフルパフかしら、私が誠実で忍耐力があるかどうかはわからないけど、勇気があるわけでもないし、狡猾な方でもないし、それに私、勉強が苦手だもの。」
スラーが饒舌に話す。するとそれに応えるようにノアは、
「僕はレイブンクローかもね、でもハッフルパフかも。知識欲はあるけどそこまで勤勉なわけではないかな。僕は純血主義じゃないし、なんなら半純血だ。けど僕のうちの家庭環境はあんまりよくないから忍耐力は人並みよりはあると自負しているよ。」
「そうなのね、私は…。レイブンクローかしら、毎日のように本を読んでいたから。」
レイニウムも答えた。
「そう言えば、レイニウムってマグル生まれなの?」
「いいえ、純血ではあるけれど、微妙なところね。」
「「微妙なところって?」」
「それはね…」と言おうとした瞬間にドアからノックがした。恐る恐る開けてみると、同い年くらいの男の子が二人立っていた。一人は鳶色の髪の毛にグリーンの瞳の子、もう一人は小柄でアッシュグレーの髪の色の男の子だった。
「突然ごめんね…。彼の、ピーター・ペティグリューの鼠を知らないかい?」
話し出したのは鳶色の髪の子だった。
「いいえ、見なかったわ。ごめんなさい。」
「僕も見ていないよ。」
「わ、私も。力になれなくてごめんなさい。」
「そうか。ごめんね、邪魔しちゃって。」
そう言って二人は去っていった。
ドアが閉められた瞬間、二人の目は一気に私の方を見た。
「「それで?微妙なところって?」」
あまりにもシンクロしたものだから驚いたが、深呼吸して話し出す。
「え、ええ、その事ね、実は私は隣の国のベルギーから来たの。お父さんの仕事の関係で、イギリス魔法省に出入りしないと、い、いけなくなったから、こっちにやってきたの。私たちはベルギー生まれの魔法使いで血をつなげてきたけれど、度々イギリス人の血も入っていたわ。そ、そのイギリス人は迫害を受けてきたらしくて、その人達を私の一族が受け入れたの。い、今となっては彼らの生まれはわからないし、迫害、と言ったから、マグル生まれの可能性も、あって、微妙なところなの。」
「へえ、でもレイニー。君ってすごく英語が得意だね。」
「ありがとう。こっちに来る前、に反吐がでるほど勉強したわ。」
「とっても上手。もう本当にイギリス生まれみたい。」
そんなに褒められると自分の勤勉さもあって良かった、と思う。
「あ、ありがとう。スラー、ノア。けど私、去年イギリスに来たばかりで、あまりイギリスの魔法界について知らないの。ダイアゴン横丁とホグワーツのことしか知らないくらい。」
「それを言うなら私だって同じよ。だって誕生日の日にいきなり手紙がやって来たんだもの。最初は信じなくて何かの悪戯かと思ってその紙を捨てたんだけど、次の日に花の水を変えるために水道の蛇口を捻ったら手紙が出てきて家族みんなで仰天よ。」
スラーが可笑しそうに言う。確かに普通の日常でそんな不可解なことがあったらそんな反応もする。
「それじゃあ一番知っているのは僕なのかな、入学してわからないことがあったら僕に聞いて。頼りになれるかわからないけど。」
「わあ、とっても心強いわ。ねぇ?レイニー。」
「うん!そうね!頼りにしてる!」
「や、やめてくれよ。プレッシャーがかかるから。」
そんな他愛もない話をしながら、時は過ぎていった。
車内販売していたお菓子を買って食べていると、辺りが騒がしくなった。
「ねえ、二人共、そろそろ着替えの時間だよ。制服に着替えなくちゃ。」
「ええ?もうそんな時間?」
スラーが名残惜しそうに言う。
「先に着替えていいよ。僕、通路で待っているから。」
「ありがとう、ノア。レイニー、早く着替えてしまいましょう。」
「ええ。」
そう言うと、ノアはコンパートメントから出て行った。すかさず着替えを取り出すと、サッと着替える。服をたたんでしまうと、ちょうどスラーも着替え終わったらしい。ノアを呼ぶためにコンパートメントから顔を出すと、ちょうどノアがいた。
「ノア、着替えが終わったわ。次どうぞ。」
「わかった。交代だね。」
ノアがコンパートメントに入り、スラーが出る。待つ間に、少し窓から外を覗く。
そこから見えたのは大きな大河がサラサラと流れている光景だった。周りは木々が生い茂り、空気は澄んでいる。深く深く深呼吸をし、窓を閉めた。
すると、あの時の鳶色の髪の男の子とアッシュグレーの髪の男の子を見つけた。
近くに寄るが、なかなか話しかける勇気が出ない。
「ねえ、お友達の鼠は見つかった?」
と声をかけたのはスラーだった。
その二人は振り返ると笑みをこぼす。
「ああ、あの時の。邪魔してごめんね、あのあとすぐに見つかったんだ。ピーターも喜んでいるよ。ね、ピーター?」
そう言うと少年はアッシュグレーの髪の男の子の襟をぐい、と引っ張る。息苦しさで気づいたのか、彼もこちらに振り返る。
「あ、さっきはお邪魔して、ごめんなさい、僕、ピーターっていうんだ。ピーター・ペティグリュー。よければ友達になってくれる?僕学校で友達を作る自信がなくて。寮関係なく仲良くできる友達が欲しかったんだ。」
「勿論よ!私はスライネ・ルドヴァン、こっちはレイニウム・アンジョーナよ。よろしく、ペティグリュー。」
「よ、よろしく、ピーター。私のことはレイニーって呼んでくれると、嬉しいんだけど…。」
「そっか!よろしく!レイニー。僕はピーターでいいよ。ルドヴァンはなんて呼べばいいかな?」
「スラーでいいわ。」
「じゃあ、レイニー、スラー、他に誰か友達がいたらよろしく伝えて!ピーターペティグリューって人が仲良くなりたいって!」
「ああ、それならノアがいるわ。今着替えているのだけれど。」
「僕のこと呼んだ?」
突然コンパートメントから出てきたノアは聞いてきた。ちゃんと着替えているようだ。
驚いて、スラーと顔を見合わせる。一瞬の間見つめ合っていたが、クスリ、と笑い合った。
「紹介するわ、彼がノアよ。」
強引に話を進め始めたスラーに吃驚したが、彼女の声に反応して自分も頷く。
「え?なに?……あ!君さっきの!ああ、鼠は見つかったかい?」
ノアはさっきの男の子だということを認識して質問を投げかける。
「うん、邪魔してしまってごめんね、おかげさまで見つかったよ。僕ピーター・ペティグリューっていうんだ、君はフルネーム、なんていうんだい?」
「僕はノア・ストロング。」
「「僕と友達になってくれない?」」
ぴったりとかぶった声が少し響く。二人は笑いあい、握手した。
ホグワーツはもうすぐそこだ。
- あなたを 第1章 二話 ハリーポッター 親世代 オリキャラ ( No.2 )
- 日時: 2022/03/10 11:34
- 名前: やまら (ID: HSijQ0Up)
汽車の窓を開けるとすぐそこに大きな城が聳え立つ。あの城の名はホグワーツ魔法学校。世界屈指の魔法学校である。
数々の偉大な魔法使いや魔女が卒業し、その名を轟かせた。
そんな魔法学校も、マグルが見ればなんとも思わない。素晴らしいとも、美しいとも思わない。何故ならそれは高度な魔法によって魔法族のみしか見えない、マグル避けを城全体にかけているからである。
この魔法学校は、四人の創設者によって創られた。ゴドリック・グリフィンドール、サラザール・スリザリン、ロウェナ・レイブンクロー、ヘルガ・ハッフルパフである。
彼らは、それぞれの寮を作り、彼らが欲する能力の者を入寮させた。
四人で創ったその魔法学校は、いつしか素晴らしいものへと変わった。
しかし、教育方針の問題が生まれた。それにより、サラザール・スリザリンは魔法学校を去っていった。
ーーーーーそれがホグワーツの大まかな歴史、と記憶している。
そのホグワーツに今年から入学する自分は、どうなるのだろう。虐められたくはない、が、目立ちたいわけでもない。静かで、平穏なものであってほしい。これが自分の切なる願いである。
あれから、まだ話していなかった鳶色の髪の男の子と自己紹介をした。
彼の名はリーマス・ルーピン。今年からホグワーツに入学する、同級生である。
彼は穏やかで、優しかった。友達になってほしいと、辿々しく言うと、彼は笑って了承してくれた。
それから少し、五人で喋ると、ピーターとリーマスは何処かへ行ってしまった。自分のコンパートメントに帰ったのだろう。自分たちもコンパートメントに入り、荷物を纏めた。今更だが、だんだん緊張してくる。
「なんだかとっても、き、緊張してきた……。いい寮に入れるといいんだけど。」
「大丈夫よ、レイニー。きっといい寮に入れるわ。それに寮が離れたって、私たちとは友達でしょう?」
スラーの言葉が身にしみる。
「そうだよ!僕だって不安だけど、君たちが友達でいてくれるならどこでもいいよ!」
ノアの言葉が身に、そして心にしみる。
「ありがとう、二人共。そうよね、私たちは友達よ!」
笑顔を浮かべ、そう言い放った。
汽車を降りると、とても身長の大きい人が大声を出していた。
「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっち!ほらもたもたするな!遅れるぞ!」
彼は手招きを私たちにしてきた。自分たちも急がなきゃ、と汽車を降りる。そして、彼の近くへ集まると、同い年くらいの子がたくさん集まっていた。
「よおし、集まったか!じゃあついてこいや、案内するぞ。」
どかどかと、足音を立てて大男は足を進める。大股な大男についていくために、小走りで、いや、走る。
すると、川辺についた。ボートがたくさん停まっていたが、カヤックは今にも動きがしそうだ。
「一隻に四人が乗れるぞ!詰めて入れよ!ボートはギリギリの数しかないぞ!ほらほら詰めた詰めた!!」
勢いに押された私たちは、空いているボートに乗る。すると、一人の男の子がこっちにやってきた。
「ごめん、乗せてもらってもいいかな?もうみんな乗り込んじゃってて。」
「いいわよ。ほらノア、詰めて。」
「ああ、うん。僕の隣に座りなよ。」
少年はすまなそうにノアの隣へ座る。間もなくボートが動き出した。
「あのさ、僕、キュリエル・レベッグバーっていうんだ。君たちは?」
「わたしはスライネ・ルドヴァン。スラーって呼んで。」
「僕はノア・ストロング。ノアでいいよ。」
「わ、私は、レイニウム・アンジョーナ。レイニーって呼んでもらえれば…。」
「じゃあ、スラー、ノア、レイニー。よろしくね。僕のことはエルって呼んで。」
「「「エル、よろしく」」」
三人でそう言い、順に握手を交わす。
「そういえば君たちのミドルネームは何?」
ノアが聞いてきた。
「わ、私は、レイニウム・シリウス・アンジョーナ。シリウス、は私のお母さん、のお、弟の名前。私のな、名付け親なの。」
「僕はキュリエル・ブレス・レベッグバー。実は僕、結構な難産でさ。息をした時本当に嬉しかったんだって。」
「いい話ね。ぴったりだわ。」
スライネが返す。
「僕はノア・ギルバート・ストロング。ギルバートは父の名前だよ。」
「私はスライネ・アン・ルドヴァン。お祖母様の名前がアンジェラで、その愛称だって。」
お互いの名前のことを話していると、そうこうしている間に、ホグワーツに近づいてきたようだ。
「顔下げろよお!ぶつけたくないんならな!」
大男の声が聞こえた。目の前には小さなトンネルがあった。頭を下げて通り抜ける。
するとそこには、さっき見た美しく、大きい城が聳え立っていた。
時が経つにつれて、どんどん城が大きくなっていく。気づいた頃にはもう首を真上に上げなければ塔の先端が見えない程だった。
「さあ降りろや。これから大事な儀式が始まるからな!」
そう言って大男はボートから降りるように促した。ボートから降りて、少し行くと、城の入り口が見えた。入り口に入ると、開けた廊下が広がっていた。
すると、三角帽子をかぶった女性が歩いてきた。自分たちの真ん中にピタリと止まる。
「ご苦労でした。ハグリッド。こんにちは、新入生の皆さん。副校長のミネルヴァ・マクゴナガルと申します。これから皆さんを歓迎するパーティーが開かれますが、その前に、組み分けの儀式があります。ゴドリック・グリフィンドールが創設したグリフィンドール。サラザール・スリザリンが創設したスリザリン。ロウェナ・レイブンクローが創設したレイブンクロー。ヘルガ・ハッフルパフが創設したハッフルパフ。どの寮にも時代とともに、素晴らしい栄光と輝かしい歴史があります。選ばれた寮は7年間、同じなのです。ですから、貴方方の家でもあり、上級生は家族でもあります。互いに話し合い、考えを深めていってください。
組み分けの際は、『組み分け帽子』を使います。痛くはありません。ただ被るだけです。あなたの性格、行動を読み、あなたにふさわしい寮を選んでくれるでしょう。では参ります。ついていらっしゃい。」
そう言って、マクゴナガル先生は足早に歩き始めた。それに続く。大理石の床を歩き、コツコツと音がなる。歩くにつれて、だんだん騒がしくなってきた。マクゴナガル先生が杖でドアを開けると、たくさんの生徒たちが、四つのテーブルに分かれて座っていた。
「お静かに!!!!」
マクゴナガル先生が音声拡張の魔法を使って言うと、大広間がシンと静かになった。
「これから、新入生の組み分けの儀式を行います。アルファベット順に呼びますから、名前を呼ばれたらこちらへいらっしゃい。」
「では、毎年恒例の、組み分け帽子の歌からです。」
先生が段に立って言うと、どこからともなく椅子と帽子が出てきた。帽子は古びていて、何処か儚かった。しかし、次の瞬間帽子が喋りだした。嗄れた声だった。
「私が生まれた頃には
まだ彼らは生きていた
君らの寮の創設者
大変偉大な人たちで
私は彼女に創られた
ただの帽子に彼女らは
知識と頭脳を詰め込ませ
今日まで君たちに
ふさわしい寮を選ばせた
彼女の手からこぼれ落ちた
私はただの帽子だか
彼らが亡き後私はいまも
頼まれた役目を果たしてる
例えばグリフィンドールだか
彼は勇気を強く持ち
純血主義をものともしない
騎士道精神を忘れずに
生きた彼は素晴らしかった
彼に憧れるものがいるならば
私は君をここに入れよう
次はハッフルパフなのだか
彼女は優しく温厚で
誠実 忍耐凄まじく
誰に対しても
気遣いを忘れない彼女は
まさに女神のようだった
彼女のようなものがいるのなら
私は君をそこに入れる
お次はレイブンクローだか
彼女は機知で勤勉で
勉学で彼女に勝るものはいなかった
死して今尚彼女は
ホグワーツを守る力を持つ
まさにナイトのようなのだ
彼女に劣らぬ頭の持ち主は
私は迷わずここに入れるだろう
最後はスリザリンなのだか
彼は高貴な雰囲気で
見るものすべてを威圧した
目的のためなら手段を選ばぬその姿
私は彼を尊敬したい
狡猾な彼のようなものがいるのなら
私は君に彼の面影を重ねるだろう
私はどんな時でも君たちを歓迎する
さあ、力を抜いて
私にすべてを委ね
祈ってくれれば
私は君に相応しい
最高の寮に入れるだろう
これから始まる組み分けの時
君の運命は決まるだろう
私を見くびらないで
だって私は考える帽子!」
歌い終わると、大広間は拍手で埋め尽くされた。
「さて、組み分け帽子の歌は終わりました。それでは組み分けを始めます。
アボット・ガーネット・ダイアン!!!!」
すると、前にいた男の子の肩がビクッと震えた。恐る恐る彼が前に出ると、椅子に座らされた。すると、組み分け帽子を頭に被せた。
「…うむ。……ハッフルパフ!!!」
帽子がそう言った瞬間、彼は安心した表情を見せ、黄色のローブを身にまとった生徒から拍手を貰った。嬉しそうに彼はハッフルパフのテーブルに向かった。
「アンジョーナ・シリウス・レイニウム!!」
え。ああ、すっかり忘れていた。私のファミリーネームはAだから早いのだった。さっきの彼はどれだけ緊張していたのだろう。そう思いながら帽子の元へ向かった。
「うむ、いやこれは難しい…。理知的だが誠実だ…しかし…うーむ……」
「そんなに難しいのですか?」
「ああ、君は二つの寮の求める力を持っている。ハッフルパフとレイブンクローだ。」
「考える帽子さん。怒らないでね。私、実は興味を持ったことしか本気でやれないの。」
「おお、そうか。ありがとう。そんな君にはこの寮が似合うだろう。」
「ありがとう。」
「ハッフルパフ!!!」
私はハッフルパフの席に向かった。
席に着くと、先に組み分けされた男の子が笑いかけてきた。
「やあ、よろしく。僕はダイアン・アボット。よろしくね。アンジョーナ。」
「こ、こちらこそよろしく。私のことは好きに呼んで。」
「じゃあレニーで。」
「私はあなたのことなんて、呼べばいいかしら。」
「僕はダイアンでいいよ。」
「それじゃあダイアン、7年間よろしく。」
「こちらこそよろしく。レニー。」
そうしてダイアンと私は握手した。
「ブラック・オリオン・シリウス!!」
次の人が呼ばれたが、なぜか大広間は煩くなった。さっきまで話していたダイアンも顔を強張らせる。
段に向かって歩く有名人の彼は容姿端麗な美少年だった。顔のせいなのか、他の何かのせいなのか。煩くなった原因を疑問に思うのは、そう不思議なことではない気がする。
「グリフィンドール!!!」
あの少年の組み分けが決まった瞬間、大広間はさらに煩くなった。
少年は一瞬顔を顰めたが、すぐに笑顔が顔に浮かんだ。
「バーク・レノン・バイオレット!!」
すぐに次の人が呼ばれ、騒がしさは静まった。
「スリザリン!!!」
彼女が新入生初めてのスリザリン生のようだ。彼女は組み分けに満足しているようで、テーブルにいた上級生も、彼女を歓迎していた。
どんどん組み分けは続く。
「キャメロン・バーン・シビル!!」
「スリザリン!!!」
「チャペスギー・ゴーグ・ウラル!!」
「レイブンクロー!!!」
「デーン・キバター・バイナー!!」
「ハッフルパフ!!!」
「デルボビア・アイーダ・アリーナ!!」
「グリフィンドール!!!」
「ディアルギー・スパコット・スリランナ!!」
「スリザリン!!!」
「デューハメン・ロギング・アリオナ!!」
「レイブンクロー!!!」
「エダンテ・オールド・キリエフ!!」
「レイブンクロー!!!」
「エルリック・ヒューズ・グレイシア!!」
「グリフィンドール!!!」
「エバンズ・J・リリー!!」
ここまで組み分けは進んできた。けど赤毛の女の子に私は目が釘付けられた。
可愛い可憐な女の子だが、勇気がある、そんな目をしていた。
「グリフィンドール!!!」
帽子は高らかに宣言した。
それからまた組み分けは進み、ついにスラーの番になった。
「ルドヴァン・アン・スライネ!!」
彼女は緊張している様子が見て取れた。
組み分け帽子は少し考えた後、口を開いた。
「ハッフルパフ!!!」
彼女は安心したのか、ホッと胸を撫で下ろすと、私の方を見て柔らかに笑った。
私を笑顔を返し、手招きする。
スラーは小走りで私に近づき、隣に座った。
「ハアイ!レイニー!同じ寮で嬉しいわ!」
「わ、私もよスラー!7年間よ、よろしくね!」
つかの間の再会のようなものを喜び、ハイタッチをした。
「ルーピン・ジョン・リーマス!!」
次に出てきた男の子は汽車であったリーマスだった。よく見てみると、たくさんの傷が体にあった。どれも古傷だが、痛々しかった。
「グリフィンドール!!!」
リーマスは安心した顔を見せ、彼は段から降り、姿を見ることはできなくなった。
スラーと私は、少しの間話していたが、彼が出た瞬間話は止まった。
「ペティグリュー・ピーター!!」
あのとき友達になったピーターだった。
彼は恐る恐る帽子を被った。
私とスラーはどこの寮に入るかハラハラしていたが、全く決まらない。
5分経っただろうか。そのとき組み分け帽子が口を開いた。
「グリフィンドール!!!」
彼は驚いていたが、すぐにテーブルに向かった。
「ポッター・フリーモント・ジェームズ!!」
次の子はくしゃくしゃの癖毛の男の子だった。自信満々で胸を張って歩いている。
組み分け帽子はかぶらされた瞬間に、
「グリフィンドール!!!」と叫んだ。
意識が引き戻されたのか、もう一度組み分けに集中する。
「クワーム・ギデロイ・アドリエンヌ!!」
「レイブンクロー!!!」
続く二人もレイブンクローだった。
「Qのイニシャルだからキューズね」と誰かが言った気がした。
「レベッグバー・ブレス・キュリエル!!」
次はエルだ。
「ハッフルパフ!!!」
そう言われた瞬間、スラーと顔を見合わせてやったね、と言い合った。エルがこちらに向かってくる。空いていた向かい側の席に座った。
「エル!あなたもハッフルパフなのね!同じ寮で嬉しいわ!」
「やあ、レイニー、スラー。僕も嬉しいよ。7年間よろしくね。」
「あ、あとはノアだけね、同じ寮になれるといいんだけれど…。」
「本当にそうだよね。僕ら三人が同じなんだから彼も同じでいてもらわなくちゃ!」
三人同じ意見でクスリと笑った。
ただただノアの番が来るのを待った。
次がノアだ、と思ったとき、ある少年が呼ばれた。
「スネイプ・トビアス・セブルス!!」
その少年は、油っぽい黒髪だった。長髪で、肩までの長さがあった。
「スリザリン!!!」
帽子はそう叫んだ。彼とは仲良くなれそうな気がしたのだが、寮が違ければそれほど接点はない。
さあ次はノアの番だ。
「ノア・ギルバート・ストロング!!」
「ハッフルパフ!!」
その瞬間、私たちはハイタッチをした。
すぐに彼がこちらへ来た。エルの隣に座る。
「ノア、君もハッフルパフになったんだね!7年間よろしく!」
エルが興奮しながら言う。
「エル、僕も嬉しいよ!レイニー、スラー、エル、7年間よろしく!」
私たちは順に握手した。
組み分けは、最後のゼファー・ドロレス・アーニーがレイブンクローになって終わった。
ダンブルドア校長の話が始まるらしく、大広間はしんと静かになった。
「新入生の諸君!ホグワーツを気に入ってくれたじゃろうか?組み分けが終わったことじゃ、祝いの宴を開こうではないか!
しかしその前に、二点お知らせがある。
マダムフーチからじゃ。新学期が始まる前に学校所有の箒が二本、行方が分からなくなっている、ということじゃ。心当たりがあるものはすぐに知らせるように。
二点目は、管理人のミスターフィルチからじゃ。最近夜な夜な出回っている生徒が多いと聞く。規則はしっかり守るのじゃぞ。
では、ホグワーツの校歌を歌ってから始めよう。さんはい!」
『ホグワーツ ホグワーツ
ホグホグ ワツワツ ホグワーツ
教えて どうぞ 僕たちに
老いても ハゲても 青二才でも
頭にゃ何とか詰め込める
おもしろいものを詰め込める
今はからっぽ 空気詰め
死んだハエやら がらくた詰め
教えて 価値のホグワーツ
ホグワーツあるものを 教えて
忘れてしまったものを
ベストをつくせば
あとはお任せ
学べよ脳みそ
腐るまで』
様々なメロディが流れ始める。みんなが好きに歌い始める。自分もなんとか歌ったが、声が小さすぎて聞こえなかった。
最後に歌っていた人が歌い終わると、
「では宴の始まりじゃ!飲め飲め食え食え!」
その合図で、みんなは一斉に食べ物へ飛びかかった。
一つ疑問があったことを思い出し、ノアに聞く。
「そういえば、わ、私の次に呼ばれた、ブラック、さん?はなんであんなに騒がれていたの?」
「あ、ああ、イギリスでは純血は貴族のようなものなんだ。なかでも正当な純血とされているのが聖28一族さ。そのなかでも、ほぼ全ての聖28一族の血が入っている、魔法界の王族とされているのがブラック家さ。けどブラック家は純血主義の一族だから、純血主義の魔法使いや魔女は殆ど入らないグリフィンドールに彼が入ったから驚いたんだよ。」
「な、なるほど、じゃあ、あのブラックさんは純血主義じゃないってことかしら?」
「多分そうかもしれないね。けどそのせいでスリザリンの雰囲気は険悪さ。」
そう言ってノアはスリザリンのテーブルを指差す。確かに食事こそしているが、全く話していない。一部の生徒がちらほら話しているだけだろう。
「まあ、そんな暗い話は置いといて。三人に聞くよ。ホグワーツに入って、一番楽しみな教科はなんだい?」
ノアはいきなり話題を転換したが、他の二人はさっきの会話を聞いていなかったようで、普通に食いついてきた。
「私は呪文学よ!やっぱり魔法使いといえば杖を使って魔法を使うことじゃない?」
「そうだなぁ、僕は飛行術かな、スラーみたいに魔法使いといえば箒に乗るイメージがあるからね。」
「え、ええと、わ、たしは、魔法薬学かしら、小さい頃に作った薬をお母さんに褒めてもらったことが記憶に残っているから。」
「みんなの言っていることももっともだね!」
「僕は変身学かな、いつかは動物もどきの習得したいんだ。」
そんなこんなで、あっという間に宴が終わり、寮に行くことになった。
五年生の監督生が先陣を切る。
「新一年生はこっち!ついてきて!二年生は六年生の監督生に!それ以外は各自戻って!」
監督生についていく。玄関ホールに続く大理石の階段を一番下まで下り、左に曲がったところにあるドアを開けると、石段があった。石段を下りると明々と松明に照らされた広い石の廊下にたどり着いた。果物皿の絵の前を通り過ぎ、廊下の右手にある石造りのくぼみに、大きな樽が山積みになっているところに来た。
「この山積みになった樽の、2列目の真ん中にある下から2つ目の樽を「ヘルガ・ハッフルパフ」と発音するのと同じリズムで叩くと、樽が開くようになっている。ハッフルパフ生以外の侵入を防ぐため、間違った樽を叩いたり叩く回数を間違えたりすると、別の樽の蓋が勢いよく開き、侵入者が酢でずぶぬれになる仕組みがあるから気を付けて。
今お手本を見せるから。」
そうすると、監督生は樽をコンコン、コンと叩いた。すると、樽が開いて談話室が見えた。
「ここまでよく頑張ったね。寮の部屋は寮監の先生がアルファベット順に決めているよ。看板があるから探して。もしわからなかったら上級生に聞いて。男女で部屋は分かれているけど、男子は女子の部屋には行けないよ。女子は男子の部屋に行けるけど頻繁にはいかないこと。あまりないけど、何か問題があったらいつでも言って。監督生の部屋は一番奥だから。さあ、もう疲れただろう?早くお休み。明日からもう授業が始まるからね。それじゃ、解散。」
解散したため、四人で一回集まる。談話室はとても暖かな場所で、名前通り、談話にはぴったりだ。
「それじゃあ寝てしまおうか、まず部屋を探さなきゃね。」
「ええ、そうね。それじゃあみんな、お休み。」
「「「おやすみ。」」」
部屋割りの看板を見てみたが、生憎スラーとは同じ部屋になることができなかった。しかし、他の三人ともとても良い人たちで少し安心した。部屋に入ると自分の荷物が置いてあった。荷物から杖を取り出し、枕元に置く。次に、教科書を取り出し、明日に備えた。万全の準備が整ったため、パジャマに着替える。歯磨きをして、シャワーを浴び、布団に潜った。
1日だけでこんなに驚くことや笑うことがあって中々にボリューミーな1日になった。
今日1日を振り返りながら瞼を閉じる。
そうしてすぐに私は意識を手放した。