二次創作小説(新・総合)

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ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-
日時: 2018/06/02 22:24
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=882.jpg

ストーリー

 「私、あなたの記憶を探すよ!」

 この物語クロニクルは、後に英雄と呼ばれる者たちが伝承となるまでの話。
 まだ「ポケタリア大陸」が「ユースティア大陸」と呼ばれていたとき、
 少年と少女が出会い、少女は少年のために旅に出る。

 この旅が、五人の英雄の伝承の始まりだとは、
 まだ誰も知る由もないのである。






はじめましての方ははじめまして!テールと申します!
当小説は二次小説(紙ほか)に投稿されている
「ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-」の外伝小説であり、
擬人化したポケモンたちの軍事・戦記ジャンルの物語です。
本編が行き詰ったらこっちを更新していく予定ですので、
まあ、期待せずにご覧ください。

作者的には「ポケモンでティアサガシリーズFEみたいなシリアスなストーリーをやりてー」みたいな感じで書いていきます。
ちなみに人がバンバン死にますし、主人公側も敵側も殺します。戦争ですので。
舞台は中世ファンタジーの世界です。
主人公側は「ギルド」を結成し、人々の依頼をこなす万屋です。
人々の思惑、陰謀。出会い、別れ。愛、友情、そして死・・・。
戦いは困難、激烈を極めるでしょう。
しかし決して諦めないでください。
苦難の先にはきっと明るく幸せな未来があるはず。
これから戦うすべての者達に捧げます。   

「――様、ご武運を!!」



順次更新していきます。

オリキャラ募集は終了しました、
皆様のご協力に心より感謝を申し上げます!

オリキャラさん
ルルミー様>>8>>19>>35>>46
シャドー様>>9>>14>>48>>65
mirura@様>>37>>57
ピコパ様>>59
花音様>>74


参考資料

登場人物>>2
専門用語>>3
武器種>>4
種族解説>>5
クラス解説>>6

番外編 クーちゃん☆メモ>>76




目次

序章   草原の少女     >>1
断章   災禍の時代     >>12
第一章  自由な風      >>13>>22>>25
第二章  囚われの神官    >>26>>29-31
第三章  恐怖の館      >>39-42>>45>>49
第四章  蒼炎の狐      >>51>>54>>62-64>>73
第五章  湖畔別荘殺人事件  >>81-83>>90
第六章  劇団「自由な風」  >>94>>96-98>>102-104
第七章  御令嬢には花束を  >>107-108>>111>>114-116>>119
第八章  可憐な機械人形   >>123-126>>129-130>>133
第九章  彼女のための旋律  >>134-135>>138-139
第十章  記憶の泉      >>140-141>>144-145>>149>>153
第十一章 海精の涙      >>154-155>>158-162
第十二章 Triumphant heroes >>165-166>>169-171>>174-176
第十三章 伝説の鉱石を求めて >>177>>183-185>>188
第十四章 神竜の巫女     >>189-190>>193-197>>200
第十五章 光と闇       >>201-203
間章   叙勲式       >>204
第十六章 鋼の女騎士     >>208>>210-213
第十七章 優しい人      >>214>>217-220
第十八章 姉弟        >>223

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.126 )
日時: 2018/04/13 21:00
名前: テール (ID: LAu9zylb)

メウィルの家を後にしたその帰り道、
とある装飾品を扱う店を凝視するプリムラ。

「なんだよ、気になるのか?」

レイはプリムラに尋ねた。

「・・・・はい、きれいだなと思いまして。
 私たちマギアナがいたころには、こうやって外をじっくりみることがなかったので。」
「ふーん。」

レイは興味があるのかないのかわからない返事をして、
並べてあるアクセサリーを見る。
昼の陽の光に照らされ、アクセサリーはキラキラと反射していた。

「おねえさん。」
「はいはーい。」

レイが呼ぶと、その店の店主であろう妙齢の女性が現れる。

「この花の形をした・・・」
「えっとですね・・・」




しばらくして、プリムラの下にレイが駆け寄った。

「・・・・ま、今回だけだからな。」

レイがそういうと、プリムラの髪を分け、何かを付けた。

「おー、かわいいじゃないか。」

ルドガーがそれを見て、にこりと笑った。
プリムラの前髪を分けて留められたそれは、金色の小さな花の形をした髪飾りであった。
プリムラはそれをそっと触る。

「それ、「プリムラ型の髪飾り」らしい。
 だ、大事にしろよ。お前だけの特別ってやつだよ。」
「・・・・。」

プリムラは無表情でレイを見ていた。
そして、目を細め、口を緩める。

「ありがとうございます、レイ。」
「だーっ!別にお前のためじゃねえよ!」

レイはその顔を見て顔を真っ赤に染めて怒鳴った。

「レイは素直じゃないなホント。」

ルドガーはその様子ににこりと笑った。




そこへ、マーリンとアリアドネが、現れる。

マーリンは珍しく白いフリルを付けた青い日傘を差し、
青いマーメイドドレスに身を包んでいた。
アリアドネは髪を二つに結わえ、そこへチェック柄の麦わら帽子と、
紫色のワンピースに身を包む、女の子らしい姿であった。

「あらん、ルドガーちゃんにレイちゃん。こんにちは。」
「お二人とも、お久しぶりです!」

二人はにこやかな笑顔でルドガーとレイに話しかける。

「あ、マーリンさんにアリアドネさん。」
「こんちは。」

ルドガーもレイも二人の挨拶に応じた。

「あらあら、そちらのかわいらしいお嬢さんは?」
「ああ、この子は「プリムラ」。
 いろいろあって俺たちが保護しているんです。」

ルドガーが説明すると、アリアドネが近づいてプリムラを見る。



しばしの沈黙の後、プリムラの頬を両手でつかむ。

師匠せんせい!この子めちゃくちゃかわいいです!持って帰りましょう!」
「はあ!?」

アリアドネの唐突の発言に、レイが驚く。
マーリンも呆れ顔で肩をすくめる。

「まーた始まったわね、アリアドネちゃんの病気。
 ダメよ、ご迷惑になるわ。」
「えぇー!?いいじゃないですか、超かわいいですもん!」

アリアドネがまるで子供のようにプリムラに抱き着く。

「せめて、この子のために一着服を作らせてください!」
「服をですか?」

プリムラが口を開く。

「はい!イメージが浮かんだんですよ~、きっと気に入ってくれます!」
「まあそれなら・・・二人とも。」

マーリンがルドガーとレイを見る。

「アリアドネちゃんはああなったら最後まで聞かないから、
 ちょっとうちまで付き合ってくれないかしら、時間ある?」
「ああ、俺達はこれから帰るところですし、時間はありますよ。」
「うふふ、ありがとう。」

マーリンは笑みをこぼした。







「ローレライの織物」の拠点・・・マーリンの店にやってきた三人は、
アリアドネが服を作り終えるのを待っていた。

プリムラはというと、アリアドネの採寸作業と、服の製作を手伝っていた。


ルドガーとレイは、店の中を見たり、マーリンと話をしたりしてアリアドネの作業が終わるのを待っていた。



「へえ~、あの子、プリムラちゃんはゴミ捨て場に捨ててあったのねん。」
「まあ、拾った本人がそう言ってたからな。」

マーリンとルドガーとレイは、プリムラについて事情を説明していた。
だが、正体がわかっても、まだまだ謎だらけの彼女。
なぜ、ゴミ捨て場にいたのか?
なぜ、今更この時代にいるのか?
いろいろ疑問があるが、ここで話していても埒が明かなかった。



「かーんせいですー!」

アリアドネが奥からプリムラと共に現れた。

プリムラは白いフリルをふんだんに取り入れたエプロン、同じくフリルがついた赤いワンピースを着ていた。

まるで、宮廷のメイドのような姿に、一同は感心する。

「ごわごわします。」

プリムラが一言。
アリアドネはニコニコ笑って写影機を取り出す。

「あとは撮影して終わりだから!ね?」
「はい。」

アリアドネはプリムラを連れて奥の部屋に入った。


「写影機・・・って?」
「像を結ぶためのレンズを埋め込んだ、写真を撮影するための装置よ。
 なんでも、雷族の学者さんが開発して、広めたのが起源・・・・って聞いたわね。」

へーっとルドガーは感心する。

「雷族はね、今じゃいろんな便利なものを開発してるって聞いたわ。
 大昔、「科学」の時代には雷族が大きく貢献していた、とかなんとか。
 難しいことはよくわからないけど、すごいわね。」

マーリンは笑顔で語る。
「ふーん」とレイは、奥の部屋を見る。


「おまたせしましたー!」

そこへアリアドネと、元の服に着替えたプリムラが戻ってくる。

「あら、着替えちゃったのね。」
「はい、動きにくかったので・・・またの機会に着させていただきます。」

プリムラはそういうと、着替えの入った紙袋をアリアドネから受け取り、
ルドガーとレイの目の前に立つ。



「アリアドネ、ありがとうな。」
「いえいえ、また服を作って待ってますよプリムラちゃん!」

アリアドネはそういうと、プリムラに再び抱き着いた。

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.127 )
日時: 2018/04/14 03:00
名前: mirura@ (ID: PY/2rZoc)

本当は100歳ぐらいで、見た目が18歳にしたかったんです。
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのあの所長みたいな。
実験のミスで結構若返っちゃった系のあれ。
まぁ、決まった事を変えることは出来ませんからね・・・

変えれるなら変えたいですぅ・・・・

ミラ「無理っぽくない?」


こんにちは!

ほああああプリムラ可愛い!!!
こんなに可愛い子が機械人形!?
人間でも良かったのにぃ!

と、なるほど可愛いキャラですね!

プリムラの目的凄いです・・・・
わあおってなりました!

続きが楽しみです!
更新、頑張って下さい!

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.128 )
日時: 2018/04/14 19:52
名前: テール (ID: LAu9zylb)

>>127 mirura@様
コメントありがとうございます!

同じような設定のキャラが本編にもいるし、
まだ年齢の描写がないんで、修正しておきます!

ちなみに、自分の中では「天才=変人」という固定概念を持っているので、
あんな感じのキャラになってしまいました。
深くお詫び申し上げます。

プリムラ基マギアナは「人に造られた存在」だったんで、
最近ニー●オート●タなるゲームをプレイしていて
「あ、よし、この話を組み込もう」と、愚かな考えでやっちゃった感あります。
かわいいありがとうございました!

(そういや描写をすっかり忘れてるマギアナの重要な設定があるような・・・?)


長くなってしまい申し訳ありませんでした!毎度励みになってます!

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.129 )
日時: 2018/04/14 20:55
名前: テール (ID: LAu9zylb)



次の日・・・


「・・・・・昨日も言ったけどな・・・」
「はい?」
「おれの横で寝るのはやめろ。」

プリムラは今日もレイの隣でレイと共に寝転がっていた。

我々機械人形マギアナに睡眠という概念は存在しません。」
「・・・・!」

レイはプリムラの言葉に驚き、起き上がる。

「じゃあ、夜はずっと何してんだよ?」
「マスターが起きるまで、マスターを見ています。」

プリムラは起き上がって淡々と答えた。

「・・・・・でも、さ。」

レイは顔を真っ赤にさせてベッドから降りて、
壁にかけていたマントを着込む。

「起きた時に顔が近いと、・・・・照れる・・・・からっ!」
「はあ、申し訳ありません。」

プリムラはベッドから降りて頭を下げる。

「本日は一日晴れますよ。朝霧が出ています。」
「今日は、遺跡探索隊の護衛だ、一緒に来るか?」

レイは依頼書をプリムラに渡した。

「はい。レイとご一緒なら、どこまでも。」

プリムラは目を細めて答えた。










「じゃじゃ馬ー、準備できたかー?」

レイはティルを大声で呼ぶ。
二階から大声の返事が返ってきた。

「ちょっと待ってー!まだ髪のセットがー!」
「早くしろよ!」
「うっさいわねー、黙って待ってなさいよ!!」

大声での喧嘩が始まり、それを聞いていたネイラが怒鳴った。

「あなたたち、ご近所迷惑だからやめなさい!!」




そして、ティルが降りてくる。
いつものヘアスタイル、いつもの服装。
いつも通りの恰好であった。
そして、少年も続けて降りて来た。

「ホント、そんなに時間がかかるなら、髪なんか切っちまえよ。」
「そうしたいのはやまやまなんだけどさ・・・」

ティルは困ったような顔で笑う。

「・・・?」

少年は首を傾げた。

「とりあえず、今日は遺跡探索隊の護衛よ。
 ちょーっと退屈かもしんないけど、頑張ろうね。」

ティルは少年の頭を撫でた。

「俺も同行するよ。」

そこへ、ルドガーがやってくる。

「ルドガーも?」
「ああ、その遺跡探索隊にメウィルが同行するって聞いたから、
 昨日の話の続きでも、と思ってね。」

ルドガーはそういいながら、弁当箱を持つ。

「遠足じゃねえんだから・・・」
「ま、昨日のお礼ってやつだよ。」

ルドガーは笑った。

















そして昼下がり、目的地の遺跡・・・
大陸の最西端にある、「ワンダ遺跡」。

この遺跡は機械人形オートマタの生産工場であったらしいが、
爆発事故により、工場は吹き飛んで、その後そのまま放置された。
それが風化により、木々などの植物が生え放題となったものである。
だが、歴史的遺物には変わりがなく、
風化しても未だに貴重な遺産が手つかずにあるのだ。

メウィルの説明に、目が点になるルドガーとティル。

「ここはまさにプリムラの故郷ともいえる場所ですね。」

メウィルはそういいながら、文献を読む。

「プリムラの故郷?」
「はい、大体の機械人形マギアナは、ここで生産されて、普及されていましたから。
 おそらくメイド型であるプリムラも、ここで生まれたんでしょう。」
「はい、確かに、私はここで生まれました。」

メウィルの推測に肯定するプリムラ。
メウィルはスキップしていて、気分が有頂天であった。

「メウィル、あんまりはしゃぐなよ、隊の人困ってるだろ」
「おっと失敬。」

そういうと、メウィルはメガネをかけ直す。


「メウィルはこういう・・・アウトドアとは無縁だと思ってたけど・・・」
「そうでもないですよ、フットワークは僕の3番目に得意分野ですし。」
「意外に根性あるんだなあ。」

ルドガーがそう笑うと、メウィルは「おっ」と声を出す。

「皆さん、あれを見てください。」

メウィルが指さす方向に、巨大な人型の何かがあった。
顔のようなもの、それを支える身体のような部分・・・・
一言でいえば、「巨人」であった。

「あれは、「キング型マギアナ」です。」

プリムラがそういって指をさした。

「その通り。人の形を成さず、主に要塞や巨大な生き物のような形をするマギアナ。
 主に戦争用の道具として造られた可能性があります。
 中には巨大な空飛ぶクジラのような形のマギアナもいたんですよ。」

メウィルは書物を読みながら解説する。

「あんなのが動いたら、ミットヴィルクングなんかすーぐぺちゃんこになっちゃうわね」

ティルが笑いながらそんなことを言う。
メウィルもそれには笑った。

「そうですね!・・・もっとも今は奴の「ソウルハート」が再稼働しなければ、動くことはありませんけどね。」
「「ソウルハート」?」

ティルが首をかしげると、プリムラが胸にあるブローチを指さす。

「これです。これは、我々機械人形マギアナにとっての魂そのものと言っても過言ではありません。
 これを失わない限り、私たちは稼働し続けることができます。」

「へー」と、一同はプリムラの胸にあるブローチを見る。
青と赤の石がまるで目のような形をかたどって、埋め込まれている。
金色の枠で収められたそれは、きらりと輝く。

「あ、それマギアナ達の「対消滅」のスイッチみたいなもんだから、
 迂闊に触らない方がいいよ」
「!!?」

メウィルの言葉に、ルドガーとティルとレイは驚いた顔で後ずさった。

「少し語弊がありますが、概ねその通りです。」

プリムラは無表情で頷いた。












「それにしても大きいわねえ。」

ティルは巨人の前に立っていた。
そして、巨人に触れようと、手を近づける。

「コラ、迂闊に触るな!」

そこへ隊員の「ニコル・バッパー」がティルに近づいて注意する。
ニコルは深緑色の髪、橙色の瞳をした青年であった。
皮のマントを羽織り、分厚い皮のグローブやブーツ、
革のベルトを巻き付けた一般的な冒険者のような服装であった。

「一応貴重文化財なんだから、もし触って形が崩れたりしたら大ごとだぞ!」
「あ、すみません・・・」
「意外に素直だなキミは。まあいい、こっちきてこっち。」

ニコルはティルを巨人から離れさせた。


「この巨人はね、「魔神ディアボロス」と対消滅させるために生み出されたらしいんだ。」
「へえー、魔神ディアボロスってあんなに大きいの?」

ニコルはうーんと顎に手をそえて考える。

「正直分からん。」
「なんじゃそりゃ」
「だが、現に巨人が生まれたんだから、それ相応のサイズなんだろうね。」

ニコルは笑いながらティルの肩をたたく。
ティルは手を顎に添えてうーんと唸る。

「さっきさ、あの巨人・・・心臓みたいな鼓動の音を出してた気がするんだよね。
 気のせいかしら・・・・?」

ティルはもう一度巨人を見る。

植物が巻き付き、風化しているそれは、動き出す気配もなく
そこに佇んでいた。

「いやー、まさか、ね。」


Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.130 )
日時: 2018/04/15 21:14
名前: テール (ID: LAu9zylb)


ティルは皆の元へ戻ると、
皆が昼食の準備をしているのが見えた。

「ティル、はやくはやく!」

ルドガーが手を振ってティルを呼ぶ。
人数分の弁当を作っていたのか、全員に弁当がいきわたっていた。

「プリムラは食べないの?」

弁当にを手に取り、ティルはプリムラに尋ねる。
プリムラは弁当を渡されるが、手を付けないで皆の様子を見ていた。

「私たちは食事を必要としませんので。」
「お腹が減らないの?」

ティルは弁当の中身をたらいあげながら質問した。
口に弁当の中身を詰め込んで、まるでリスのように頬を膨らませている。

「行儀が悪いなお前は・・・」
「空腹にはなりません、我々にとって、食事は一種の趣味になりますので。」

プリムラは淡々と答えた。

「流石というかなんというか・・・」

ルドガーもはははと笑った。




そこへ、地鳴りにも似た地響きが一行を襲った。

「な、なんだ!?」

レイは周りを見る。

「あ、あれを見てください!巨人が・・・・動いています!」

メウィルがそう叫んで巨人のいた場所を指さす。
一行はそれを見ると、確かに巨人の頭についている目が光り、
重々しい足取りで一歩踏み出そうとしていたのだ。

「な、なんで急に!?」
「わかりません・・・プリムラ、何かご存知ですか?」

メウィルはプリムラに尋ねるが、プリムラは首を横に振る。

「私と同じく、何らかの力が働いて起動したんだと思われます。」
「そ、そんなことより、あいつを止めないと・・・この先は村がいくつかあるんだ!」

レイは慌てて立ち上がる。

「どうやって!?」
「わかんねえけど、魔術でもなんでもぶっぱなしゃいいだろ!」

レイはそう叫ぶと、巨人に近づく。

「メウィル、あなたは探索隊に避難するよう呼びかけて!」
「・・・・わ、わかりました!」

ティルはレイを追いかける。
プリムラもティルに続いた。

「メウィル、ごめん、あとはお願いする!」
「あ、ちょ、ルドガー!?」

ルドガーも斧を持って走り去ってしまった。








レイは、近くの崖に上り、巨人の頭近くまで来ている。

「カンナカムイ!」

レイは巨人の頭に向かって、黒い雷を放った。
巨人にそれが命中するが、巨人の歩みは止まらなかった。

「プリムラ、あの巨人に語り掛けられない?」
「試してみます。」

プリムラは瞳を閉じ、胸の前で手を組む。
何か甲高い音が発せられ、巨人もピピピと音を発する。



「・・・・魔神を滅する?」

プリムラがそうつぶやく。

「どうしたの?」
「彼は魔神ディアボロスの下へ向かっているようです。」

プリムラがそういうと、ティルは慌てる。

「ディアボロスなんか、今は地中の中に埋まってるのよ!?」
「ですが、反応を辿っている模様です。
 キング型マギアナは、目的を遂行するためだけに生み出されましたので。」
「ほんっと、面倒なんだから!」

ティルはそういうと、剣を抜いて、巨人に向かって走り出した。

「喰らえぇぇーーっ!!」

ティルは居合い斬りで巨人の足を狙う。
しかし、ガキンという音が鳴っただけで、歩みを止めることはなかった。

「か、かったぁー!手がしびれたわよ・・・」
「俺も!」

ルドガーは、手に持った投げ斧・・・フランシスカを巨人の足に向かって投げる。
だが、斧はやはり弾かれてしまう。

「どうにかなんないのか、あの鋼鉄のような巨人!」

ルドガーは足踏みをする。

「皆さん、巨人の足のつなぎ目を狙ってください。
 あそこは足を支える部分・・・斬られればバランスを崩してしまうでしょう。」

プリムラがそういって指をさす。

「足のつなぎ目・・・あそこか!」

ルドガーはそういうと、助走をつけて壁を蹴り、巨人の足のつなぎ目近くまで飛び上がる。

「うおりゃあぁぁぁーっ!!」

ルドガーは、足のつなぎ目を斧でたたき切った。
バリッという音と、火花が散り、巨人の動きが鈍くなる。

「やったか!?」
「まだよ、油断しないで!」

ティルはルドガーの手を引き、すたっと着地した。
巨人はルドガーに狙いを定めると、右腕を振り上げる。

「やばっ、潰される!?」
「いわんこっちゃない!」

ティルは再び居合い斬りで巨人の右腕をうまくはじいた。
金属が打ち合う音が鋭く響き、火花が散る。
巨人は体勢を立て直すと、再び前に歩み出した。

「私たちの事は眼中にないってことね・・・!」
「どうするんだ、こいつ・・・倒せるのか!?」





レイは地上を見下ろす。
ティルとルドガーが必死に足のつなぎ目を斬ろうと武器を当て続けているのがよく見える。

「やっぱりどんなに研がれた刃でも、鋼鉄は斬れないようですね。」

レイの隣までメウィルがやってくる。

「うおぉ!?」
「驚かないでください。僕の魔術と、君の魔術を合わせれば、
 多分巨人の足を止められる・・・かもしれません。」

メウィルは魔導書を取り出す。

「僕のこの、「業雷ヘイルスパーク」で・・・」
「そんな魔導書見たことないぞ、なんだそれ・・・・?」

レイの疑問にメウィルはにこりと笑う。

「僕が改造しました、一度限り、超強力な雷を放てますよ。」
「便利なもんを作るな・・・」

レイは感心しつつ、魔導書を開く。

「それじゃ、いきますよ!」

メウィルとレイは手を巨人の足のつなぎ目に向かってかざした。

「カンナカムイ!」「業雷ヘイルスパーク!」

地鳴りに近い轟音と共に、黒い雷と、凄まじい雷の束が巨人を襲い、命中する。
巨人はバランスを崩して、その場を横転した。


「やった!」
「成功だな・・・!」

メウィルは飛び跳ね、レイはぐっと拳を握りしめる。







「よし、巨人が倒れたわ!」

ティルは横転した巨人を見て拳を握りしめた。

「・・・・!皆さん、戦闘態勢に入ってください。」

プリムラがそう叫ぶと、胸のブローチを槍に変化させた。

「え、何・・・!?」

ティルが巨人の方を見ると、上半身を起こして、腕を振り回した。
巨人の腕は、周りの岩壁を破壊する。

「きゃあっ!」
「くっ、なんてやつだ・・・!」

「あのマギアナのソウルハートを破壊しない限り、動きは止まりません!」

プリムラは槍で巨人の腕を受け流しつつ、二人に叫ぶ。


「おい、無事か!?」

そこへレイとメウィルが降りてくる。

「こっちはなんとか・・・!」
「だがあの猛攻をどうにかして、ソウルハートを壊さないと!」


「定まりました、あのマギアナのソウルハートは、胸に埋め込まれています。」

プリムラがそういうと、皆もそれを確認する。
確かに、胸に青と赤の石が光っているのが見えた。

「しかしどうやってあれに近づく!?」

巨人はなおも暴れている。
近づいて壊すことは不可能である。


「レイ、あなたは魔導書が扱えますね?」
「な、どうしたんだよ突然!?」

プリムラはレイの手を握る。

「マギアナは、自らを武器に変えることも可能です。
 私がレイの魔導書となり、あなたと共に戦います。」

プリムラはそういうと、レイの腕を強く握り、身体が発光する。

「うおぉ!?」
「これは・・・!?」

レイとティルがプリムラを見て驚く。
光がどんどん小さくなり、レイの手元には、金色の目が模られた表紙が特徴の、
プリムラの服と同じ色の魔導書がレイの手に乗っていた。

「それは、「機巧の魔導書フルールカノン」だね。」

メウィルが感心しながら魔導書を見る。

「強力な極太光線を放つことができる魔導書だよ。
 これなら、あの巨人を倒すことが可能だね。」
「じゃ、じゃあこれで!」

レイはそういうと、魔導書を開き空中に浮かせて、手を本に当てる。
魔法陣がレイの足元から広がり、周りが赤色に光る。
レイは、手を巨人に向かってかざした。

「フルールカノン!」


レイの腕から極太の光線を放たれる。
巨人を周囲の岩壁ごと破壊し、凄まじい威力で目の前を猛スピードで駆け巡る。
一行はあまりの眩しさに目をつむる。



やがて、光は消える。

「きょ、巨人は・・・!?」

ルドガーは目を開け、周囲を見渡す。
極太の光線が駆け巡った跡が遺されており、巨人は跡形もなく吹き飛ばされ、粉々に砕けていた。

レイはふうっと息を吐く。

「やっ、た・・・!?」

ティルはそういうと、メウィルは飛び跳ねて喜ぶ。

「やったぞレイ!僕らの勝利だ!!」
「レイ!よくやった!」

ルドガーがレイの肩をたたく。

レイはその場に倒れた。

「・・・・レイ?」

ティルはレイに近づき、身体を揺さぶる。




「レイッ!!」


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