二次創作小説(新・総合)

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題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編)
日時: 2019/10/12 17:08
名前: 燈火  ◆UJcOcbdIPw (ID: xJUVU4Zw)

 どうもよろしくお願いします。既に完結した漫画や1作品で完結しているゲームなど視覚的効果を中心とした作品を対象に淡々と展開を追って文章を付け加えていくスタイルで小説を執筆していこうと思い立ち、このスレを立ち上げた次第です。

 パクリと思うかもしれませんがよろしくお願いします。
 基本的には、1つの作品を練習曲エチュードという単位にして、その作品の区切りのいいと思った部分までを完結として、物語を書いていきたいと思います。

 ~目録インデックス

練習曲エチュードNo1 ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
序幕プロローグ誕生バース

>>1

第1章「少年期編」第1話「サンタローズにて」

>>4 >>6 >>7 >>8 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16
 
第1章「少年期編」第2話「凋落城レヌール亡霊レブナント

>>17 >>18 >>19 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26


 ~他情報インフォメーション

>>2 >>20

 ~お客様カスタマー

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注意アテンション
・公序良俗にもとる表現が対象とする作品によっては入るかもしれません。ご了承願います。できる限り軽めにはする所存です。
・ステマや荒しは徹底的な無視を願います。発見次第最優先で削除依頼します。
・誤字脱字、文章のミスなどのご指摘は大歓迎です。ドシドシお願いします。



――――トリップを忘れたので変更しました(苦笑

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.17 )
日時: 2019/02/15 18:07
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)

 第1章「少年期編」第2話「凋落城レヌール亡霊レブナント

 鮮血が舞う。魔物の血だ。宙を舞う赤い水滴の塊が空を覆い醜悪な夕焼けを表す。逢魔が時という言葉がある国に行ったことがある。太古の昔、魔物との戦いで戦火に飲まれたさいに生まれた言葉だそうだ。赤々と燃え上がる炎が天まで焦がし、不吉な夕日を思わせたかそう呼ばれているらしい。
 魔の根源と逢う時、世界は朱く染まる。魔族は血肉舞う鉄錆びた絶望を好む。赤が堆積した果てに黒が生まれるからこそ、更に夜を愛す。そんな話を鷹揚に語った老人の姿を思い出す。アベルは場所の中でそれを眺めている。パパスの言いつけだ。心身を休ませることも戦士の務めだと教わった。
 無駄な疲労は只管ひたすらに集中力と視野を狭め力も奪う。適度に休息を取り希望に触れることで体力と気力は充実する。そして何より遠くから考えながら俯瞰ふかんすることは、成長の大きな一助となるのだ。

「ねぇ、サンチョ。お父さんはさっきなんで攻撃にわざと当たりに行ったの?」
「パパス殿にとってみれば、ここに生息する魔物の攻撃は無力に近いですからな。逆に相手の一撃を受け、無駄だということをモンスターに植え付けたかったのでしょう。結果、敵方の動きが目に見えて鈍り、逃げる物も現れたでしょう?」

 アベルの質問にサンチョは朴訥ぼくとつとした調子で応じる。強者には選択肢が多いということか。そうアベルは解釈した。自分がやれば間違いなく、大怪我をしていただろう。人体急所に命中していれば、死ぬ可能性さえある。
 モンスターにも動物的な学習能力と恐怖心があるがゆえにできる策だろう。と、さらにサンチョは補足。動物的な種の保存を優先させる本能がある魔物や、人間のように知性を持った魔族には通用するが、機械などの無機物や精神を失った幽霊ないしゾンビ系には通じない戦法でもあるらしい。機械系は機械系、幽霊には幽霊の対処法も教えてくれるだろうか。サンチョ曰くこの辺は、ほぼ全てが動物的な精神を持つ魔物ばかりなので、すぐに提示することはできないだろうとのことだ。

「うっ、気持ち悪い。アベルはいつもこういうの見てきたの?」
「えっと、うん、そうだけど……」

 目を背け口を押えながら言うビアンカに、アベルは少し困惑しながら答える。自分はパパスによって惨殺されたモンスターの遺体を気持ち悪いと感じたことがない。横にいるストレアの表情にも曇りが見えるし、それは普通ではないようだ。モンスター自体が不浄な存在だから嫌悪しているのだろうか。

「サンチョ、僕おかしいのかな?」
「うむ……まぁ、確かに坊ちゃまの生い立ちは普通とは違いますな。しかし、私はそれが悪いことではないと思います。確かに死は一般的に忌避きひされます。しかし我々と魔は結局一部を除いては共存しえない。坊ちゃまは人に優しく、魔に厳しくあれる稀有けうなお方です」
 
 怖かった。嫌われてしまうのではないかと思って。しかし自分でどう切り出せば良いのか分からず、結局はサンチョに頼ってしまう。助けられ教えを乞う。自分の力で達成できることが何一つない状況に、内心アベルは忸怩じくじたる思いだった。対してサンチョは忌憚きたんない意見を口にする。 
 しかしアベルには彼の言っている言葉がよく理解できない。それは結局ただの差別主義ではないのか。それに答えになっていないように感じる。言い分からすれば一部とは、共存できるということらしいし、本当にそうならば魔と人の融和も可能なように見えてしまう。それなのに魔を排斥はいせきすることが才能なのだろうか。
 
「うー、良く分からないよ。僕は別に魔物の死を見るのが好きなわけでもないよ……」

 本当に分からない。そもそも魔物の死体に恐怖は感じなくても、彼らの絶望に死に際の表情に胸を締め付けられることはあるのだ。それこそ普通分からないのではないかと思う。普通の人間にとって、恐怖と駆除の対象でしかない魔物に共感さえしていることがあるように感じる。こんなことを考えるのは久しぶりだ。

「アベル君、君が良ければ私のところで暮らすというのはどうかしらね?」

 ふいにストレアが口を出す。アベルを憐れに思ったのだろう。

「うーん、僕、お父さんと離れるのは嫌だよ。母さんに会う旅に一緒に行かないのも嫌だ」
「パパス殿も君も死んで母親を見つけられない未来だってあるかもしれないんだよ?」

 アベルの胸中を曝け出した言葉。それは子供に強く表れる離れたくない心が透いて見える。対してストレアが提供するのは両者が討ち死にする厳しい未来だ。たった数人で強大な魔の軍勢に挑む。それは現実的に考えれば余りに達成困難なことだ。不可能と言ってもいいだろう。父の我儘のために子供が殺されるなど母親として許せない。

「お父さん死んじゃうの?」
「可能性の話さ」

 目を潤ませながらアベルは言う。どうやら本気で心配しているようだ。ストレアは努めて冷静な口調で切り返す。

「だったら僕はお父さんについていくよ。だって、お父さんが可能性なんかに殺されるわけないんだから」

 安心したような口調でアベルは一言。ストレアはそれに茫然ぼうぜんとした。父親を信じ切っているだろうその目。それは言葉で動かせるものではない強い意志が宿っていた。自分が口を出すようなことではないと口を紡ぐ。

「アルカパの町が見えてきましたな」

 峻厳な山々に囲まれて隠れていたアルカパの一部が眼前に見えてきた。10回近くあるだろう巨大な建物だ。アベルは町についたのちに知るそれは、ビアンカの父と母が経営者を務めるアルカパ最大の目玉である有名宿「風見鶏の宿」だった。サンチョは馬に鞭をうち速度を上げる。

 

題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.18 )
日時: 2019/02/15 18:11
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)

 1時間程度馬を走らせると、町の門が姿を現す。赤い鎧を着こんだ壮年の番兵がパパ巣たち一行を確認。すぐに門扉を開いた。

「これは、パパス殿ではないか! なんと帰っていたのですな。さぁ、お通りください!」
「あぁ、しばらくの間世話になるかもしれん。宜しくな」

 どうやら知人らしい。パパスの功績と顔の広さをかんがみればさほど不思議ではないが、やはり尊敬する人物が周りからも評価されているのを見ると嬉しい。短い会話をかわすと、パパスはサンチョに目配せする。真っ直ぐに歩き、巨大な宿の前へと到着する。
 どうやらここがビアンカたちの家らしい。数世代続く町の名物なのだそうだ。宿場町として栄えたアルカパ歳代の収入源であり、職を失った者たちの受け皿にもなっている。しかし名義上の宿主であるダンカンという人物が生来の病弱で、最近の経営は以前ほどの盛栄せいえいはないとも教わった。
 馬屋に馬車を係留し、宿に入る。内装は飾り気がなく素朴だが、フローリングは光沢を放っていてよく手入れされているのがわかる。少ないながら飾られている装飾品は統一感があって美しい。さすがは老舗しにせといった様相だ。

女将おかみ様、ビアンカお嬢様、お帰りなさいませ。そしてパパス殿はお久しぶりです! お薬は手に入ったのですね」
 
 ストレアに案内されながら、スタッフルームと書かれた案内板のある部屋へと入っていく。一室には休憩中らしい1人の若者がいた。赤いバジュに身を包んだ赤ら顔の男だ。彼は一向に気づくと椅子から立ち上がりパパスたちに近づいてくる。

「えぇ、これで主人の病も良くなるはずです」

 女将と呼ばれたストレアは毅然とした口調で応じる。そして夫であるダンカンのいる部屋へと歩き出す。
 
「どれ私もダンカンをみまうことにしよう。暇なら外をビアンカちゃんと一緒に散策でもしてきてはどうだ? 狭い町だが少しの間世話になるからな」
「アベル坊ちゃま、アストラ殿の目を盗んで外に出る、などということはくれぐれもよしてくださいよ。それと悪漢に絡んだりするのも……」

 羽を伸ばせるときは羽を伸ばしておけと、パパスは言外に告げる。ビアンカを道案内として指名したのは子供同士で気が合うだろうということが一つ。それ以上に放浪生活の末、まともな同年代の友人がいないアベルを危惧してのことだろう。サンチョはといえば、先刻のことから心配事を漏らす。まさかとは思うが気が気ではないのだろう。

「サンチョ叔父さん、そんなこと私がさせないわよ。行きましょうアベル」

 ビアンカ自身も堪えていたに違いない。アベルが死にかけたのは父の養生ようじょうに必要な薬の調達が遅れていたからだ。それ自分より小さい子供が死んだりしたら一生もののトラウマになっていただろう。ビアンカの目は真剣だった。その表情を見たアベルは少し頬を引きつらす。
 
 アベルは彼女に手を引かれながら町の中を案内された。最初は吟遊詩人からレヌール城という凋落ちょうらくし、幽霊の巣窟そうくつとなった場所——アルカパの北部――の話を聞かされた。そのレヌール城は銀の採掘所と精錬技術を持ち、銀食器やティーセットを主製品としていたことを商人だったらしい老人に聞かされたり。
 酒場に行って子供にはまだ早いと言われ、そそくさとその場を後にした。武器屋や防具やなども回っているとあっという間に時間は過ぎていく。日も傾き辺りも少し暗くなり始めている。そろそろ宿屋に戻っても良いころだろう。そう思っていると、突然なにかの鳴き声が聞こえた。

「何だろう、今の声?」
「んー? 猫、みたいな声だったけど。あっちは確か悪ガキ兄弟の住んでる家の方よね」

 好奇心につられて2人は其方の方へと歩き出す。そう遠くもないはずだ。隘路あいろを抜けて行くと、池の中央にある離れ小島に子供2人と猫のような動物が1匹。子供たちはその動物を蹴ったり、棒で突いたりしていた。2人は止めようと思い、桟橋さんばしを渡り、子供たちの元まで進む。

「ほらほら、もっと泣けよ。弱いって罪だよなぁ、アハハハ」

 少し背の高い子供が猫のような動物の頭を掴み投げ飛ばす。本来なら宙返りして簡単に、着地するのだろう。しかし受けた痛みが強いせいでそれもできず、呻き声をあげながら地面に叩きつけられる。その光景を見てビアンカは舌を打つ。
 
「やめなさいよ、可哀そうでしょう!」
「可哀そう? 何言ってんだよ? たかが猫だろ?」

 殴りかかりたい衝動を深呼吸でビアンカは鎮める。目の前の子供たちが、常識や想像力の欠如した者たちだというのは痛いほど理解しているのだ。子供から許されるだろうと、人の家のものを壊したりするのは日常茶飯事。この小さな町ではかなり有名だ。

「このクソガキどもが……」

 しかし手を挙げることは制せても、口をついて出る言葉は止められなかった。

「ちょっ、マジで怒るなよ! まぁ、そうだなぁ、虐めるのも実際飽きてきたし欲しいなら、あげても良いけどさ」

 少年は身の危険を感じたのか、少したじろぐ。

「そうだ、レヌール城のお化けを退治してきたらくれてやるよ」
「あはは、それマジかよ? 無理じゃねぇ?」

 もう1人の子供が交換条件を提示する。レヌール城に住む亡霊。近隣の土地であるアルカパでは有名な話だ。いやでも町の外に出ることになる。その時点で飲み込めない条件に感じられた。勇み足でその場を離れるビアンカに引っ張られながら、アベルも彼女についていく。そして子供たちが見えなくなってから、ビアンカに問う。

「本当に行く気?」
「…………行けるわけないじゃない。レヌール城とか、サンタローズとアルカパなんかよりずっと距離があるんだから」

 ビアンカの返答はとても嘘っぽく感じられた。手を握っていなければ1人でどこかに行ってしまう気がして、アベルは彼女の手を強く握った。「痛いじゃない!」と怒られて項垂うなだれる。

 

  



 

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.19 )
日時: 2019/02/15 19:04
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)

 ビアンカの父であるダンカンの病は持病の発作ほっさではなく、ただの風邪だったららしい。風見鶏の宿にしばらく居住しアルカパに滞在する予定――アルカパでもパパスは有名なので、アルカパの人たちに帰還の挨拶などをするため――だ。1週間程度と見積もっているらしい。

「サンチョ、お父さんは?」
「どうやら、風邪のようですな……」

 が、結果としてはこの様だ。父パパスはダンカンと付きっ切りだったせいもあってか、ただ運が悪かったのか風邪を引いてしまった。いかに強い父でも病気には勝てない。アベルもパパスが病気にかかるのを見るのはこれが初めてではない。何よりアベル自身もパパスと旅した2年間で何回も風邪などにはかかった。

「坊主、すまんな。わしのが伝線したみてぇだ」

 病弱という割には恰幅の良い、髭面の男が頭を下げる。サンチョは頭をふるう。

「そう気を落とさず。人が病に罹るのは自然のことわりなれば。誰もダンカン殿を叱りはしませんよ」
「しかし、パパスは息子を少しでも鍛えたいと……」

 ダンカンはサンチョの優しさに当惑して、言い淀む。

「アベル坊ちゃまを鍛えることは私にもできます。最も私の場合は武術は旦那様と比べるべくもないので、座学が中心ですが」

 それに対してサンチョは少し茶目っ気のある笑顔で受け返す。

「サンチョが教師さんなの?」
「えぇ、旦那様からもそう指示されています。最も算術や筆記、基本戦術のような体を動かさないお勉強が中心ですが」

 体を動かすことが好きな自分としてはなかなかに苦しいことだ。アベルは深い溜息を吐く。算術については全く分からないし、字を書くのも難しそうだ。基本戦術くらいしか興味がわかない。強くなるにあたって計算などが役に立つとは思えない。
 モンスターの知識や武器の使い方などは覚えないといけないとサンタローズの一軒で学んだ。しかし道具の値段を現す数字さえ読めれば算術は必要ないだろうし、自分の名前と年齢、性別くらいを書ければ文字に関しても十分だろう。

「坊ちゃま。ある国では強さとは強かさなのだそうですよ。知識があるほど、賢い立ち回りができるのです」

 アベルの考えを見透かしたようにサンチョがたしなめる。単純な剣や魔法の力とそれらに関する知識だけでは、近い将来躓つまづく。それを嫌というほど理解しているのだろう。魔物と戦うにあたって、人間社会で苦労していては心労が多いばかりで、心に余裕もなくなり戦いも雑になる。何より高度な戦闘には高度な計算も必要になるし、魔法と文章を書くことは少なからぬ関係がある。魔術師と呼ばれる者たちなどは、その魔法のロジックを強固なものにするために、魔法を習得するとその方程式を文字にするのだ。そんな話をサンチョは語る。

「……強くなるって大変なんだね」
「えぇ、そうでなければ、世の中強い人で溢れていますよ。あっ、強い人ばかりならそういう言葉自体がなくなるのでしょうか?」

 この先多くの苦労があるのだろうなと悟ったアベル。そんな彼に対してサンチョは呆けて見せる。その余裕に満ちた態度は頼り甲斐があって、それでいて包容力を感じた。そんな2人の様子を眺めていたダンカンは、自分は邪魔だと判断したのかその場を後にする。

「では、早速、読み書きの勉強を始めましょう」

 サンチョはそう言って、ふところから書類を出す。薄めの本だ。おそらく初心者ようなのだろう。一部の文字はアベルにも読めるものだった。

「ねぇ、サンチョさん! そのお勉強、私も一緒に参加して良い?」

 

 

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.20 )
日時: 2019/02/16 03:19
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)

―――――――オリジナル用語集

 魔素:魔族の力の根源。魔力に近いものだが、よりどす黒い要素を持っているらしい。魔族全般が体内に貯蓄していて、絶命時にこれは大気中に放出される。それを浴びることにより、人間たちは自らのレベルを上げることができる。

 加護:神に愛された証。美声の加護や炎熱の加護など多数の加護が確認されている。同じ加護でも才能や熟練度で、効果の程度や範囲が違う。中には、複数の加護を備える者もいる。パパスの妻であるマーサは複数の加護を高レベルで保持していたようだ。

 武器屋デッケン:サンタローズ唯一の武器屋。ベンとセルカというサンタローズにおける最高クラスの戦力が経営している店。

 風見鶏の宿:宿場町として名のあるアルカパで宿屋を束ねる世界的にも有名な宿屋。常に世界の宿やランキングベスト3に入っているようだ。

 随時更新

 

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.21 )
日時: 2019/02/19 14:32
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: aMCX1RlF)

「ねぇ、サンチョさん! そのお勉強、私も一緒に参加して良い?」

 少し高めの凛とした声が響く。ビアンカだ。どうやらダンカンと入れ違いに部屋に入ったらしい。

「おや、勉強熱心なことはいいことですな。勿論よろしいですとも」

 サンチョは昨日の一幕を知らない。単純にサンチョに勉強を教えてほしいと思ったようだ。しかしアベルは不安を感じた。子供たちとかわした契約は、町の外、つまりは魔物のテリトリーへと足を運ばなければならない。ビアンカは魔物と戦う術を得るために彼の指導を受けるつもりだ。そう確信できた。

「ではビアンカ嬢、どの程度の読み書きができるか教えていただけますかな?」
「第1言語と自分の名前を第2言語で書けるくらいだあわ」

 サンチョの質問にビアンカは素直に答える。内心はそんなことより魔物との戦い方を教えてくれと痛哭を叫んでいるが、そんなことを言って打ち切りになっては元も子もない。恐らく魔物と戦いたいなどという本心を言っては、彼は全力で拒否するだろう。

「成程。分かりました。となると最初のうちは読み書きは退屈でしょうな……」

 何事も基礎固めは大事だ、そう言いながら、サンチョは参考書を開く。そして第1言語の項目を開き、大きめの紙に書きだす。その時間はビアンカにとって本当に退屈な時間だった。当然だ。第1言語の書き方、発音、書き順。全てビアンカは理解している。
 40分程度が経過してアベルが身動みじろぎはじめる。どうやら集中力が切れたようだ。それをサンチョは察し本を閉じた。そして柏手を打ち、10分程度の休憩を挟む。あと1時間半も過ぎれば、正午を知らせる金がなるだろう。


 
 


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