二次創作小説(新・総合)
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- 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編)
- 日時: 2019/10/12 17:08
- 名前: 燈火 ◆UJcOcbdIPw (ID: xJUVU4Zw)
どうもよろしくお願いします。既に完結した漫画や1作品で完結しているゲームなど視覚的効果を中心とした作品を対象に淡々と展開を追って文章を付け加えていくスタイルで小説を執筆していこうと思い立ち、このスレを立ち上げた次第です。
パクリと思うかもしれませんがよろしくお願いします。
基本的には、1つの作品を練習曲という単位にして、その作品の区切りのいいと思った部分までを完結として、物語を書いていきたいと思います。
~目録~
練習曲No1 ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
序幕「誕生」
>>1
第1章「少年期編」第1話「サンタローズにて」
>>4 >>6 >>7 >>8 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16
第1章「少年期編」第2話「凋落城の亡霊」
>>17 >>18 >>19 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26
~他情報~
>>2 >>20
~お客様~
0名
~注意~
・公序良俗に悖る表現が対象とする作品によっては入るかもしれません。ご了承願います。できる限り軽めにはする所存です。
・ステマや荒しは徹底的な無視を願います。発見次第最優先で削除依頼します。
・誤字脱字、文章のミスなどのご指摘は大歓迎です。ドシドシお願いします。
――――トリップを忘れたので変更しました(苦笑
- Re: 題本のあるエチュード ( No.1 )
- 日時: 2019/01/07 18:50
- 名前: 燈火 ◆flGHwFrcyA (ID: aMCX1RlF)
第1練習曲 ドラゴンクエスト5 天空の花嫁 序幕「誕生」
世界の北東部、峻厳なる山々に囲まれた一角にその城塞国家グランバニアはあった。周囲を森に囲まれた天然の要塞に囲われ、広大で透き通った水質の湖を北部に有す。まさに慈母のごとく民たちを包み込むその大国は、代々より賢君や猛将を輩出し今日まで大渦なく成り立ってきた。そんな大国の王室にて物語は始まりを告げる。
「パパス王……お気持ちは分かりますが。少し落ち着いってお座りになってはいかがですかな?」
大臣と思しき禿頭の恰幅の良い男と、神官と思しき紫の法衣を羽織った白髪しらがの男が並ぶ。彼らの眼前で筋骨隆々とした体に銀色の鎧を着こみ、その上に国の紋章が入った深紅のマントを羽織った男が歩き回っている。堀の深い精悍な顔には焦燥感が滲む。時折立ち止まりまるで獣の王者のように逆巻く黒髪を掻きむしり溜息を吐く。
そんな落ち着きのない彼に大臣と思しき人物が咳払いをしながら具申。パパスと呼ばれた人物は立ち止まり一呼吸を置く。そして自分に言い聞かす。自分はこの大国を背負って立つ王だ。そしてこれから一児の父となる身でもある。できることがないからと状況だからといって焦りを全面に出すなど王として失格であると、と。いまだ鼓動は高鳴るが、大臣の言うことは至極真っ当。上に立つ者は厳しい時ほど冷静さが求められる。心の中に浮かぶ小波さざなみを無理矢理押し込みパパスは王座に座り込む。
「うっ、うむ! そうだな」
「パパス様! パパス様っ! お産まれになりました!」
「そっ、そうか!」
座り込み15分程度したころ。分娩室からの伝令役として茶髪の太った40絡みの男が降りてくる。瞬間立ち上がらりパパスは2階へと走り出す。
「パパス様、おめでとうございます! 本当に可愛いたまのような男の子で!」
助産師の歓声を聞きながら、王妃の部屋を抜け颯爽と分娩室へと進む。そこには大きなベッドに横たわる自分の妻がいた。白く美しい顔には憔悴しょうすいが浮かんでいる。パパスは彼女の手を握った。
「貴方……」
安心したのだろう。妻は薄く品のいい唇を動かし吐息を漏らす。
「良くやったな! おうおう、このように元気に泣いて。早速だが、この子に名前をつけないといけないな。うーん」
そして赤子を抱いた助産師に子を抱いて欲しいと言われ子を抱く。逞しい腕で壊してしまわないように優しく。無邪気に笑う赤子に相好を崩しながら、パパスは悩む。妻の心配ばかりしていたせいで、生まれ来る我が子の名を全く考えていなかった。唸りながら脳内の引き出しを開けていく。自らの記憶と向き合い、この幼子に臨む名を探す。
「よし、浮かんだぞ! トンヌラというのはどうだ」
結果、胸中に浮かんだ名前。それは遠い過去、牢獄の町と呼ばれていた魔物により築かれた人間収容所を、勇者とともに救った人物の名。グランバニア領近くにあった町で❝力の出る種❞についての研究をしていた人物だったと伝わっている。
「まぁ、素敵な名前! 勇ましくて賢そうで。でもね、私も考えていたのです。アベルというのはどうかしら?」
マーサもその人物については知るところで、パパスの提案を褒めて目を細めた。実際、トンヌラという人物は彼女の評す通りの人物だったのだろう。城内図書館にある「城塞都市の英雄」という小説の主人公モチーフにもされている。そんな残影を心の瞳で追いながら、強い口調で彼女はつなげた。それは彼女なりのワガママ。普段の優しさが幾分消えた真剣な眼差しからは、彼女の強いこだわりが見て取れる。
「アベルか……どうも、パッとしない名だな。しかし、お前が気に入っているのなら、その名前にしよう!」
パパスはマーサの意を汲んで、自分の案を切り捨て彼女の意見を迎合。
「神に授かった我らの息子よ! 今日からお前の名はアベルだ!」
そしてパパスは授かりし新たなる命を日出ひいづる方へと掲げ、真剣な眼差しで宣言する。マーサにはそれが新たなる家族の繋がりの誕生に思えてむせび泣く。
「まぁ、貴方ったら……うっ、ごほんごほん!」
しかしその情動が体に応えてえづく。
「おいっ! どうした、大丈夫か!?」
そして彼女は気を失う。父パパスの荒げた声に反応したアベルは大声で泣き出す。その小さな体のどこから出るのかという大音量は、悲痛に響く。
助産師及び医師や神父の必死の介護の果て、マーサは一命を取り留めた。しかし1ヵ月もしないうちに悲劇は襲う。彼女の故郷を魔物の群れが襲ったという情報が、瀕死の兵士によってグランバニア城にもたらされたのだ。伝令の者は治療も虚しく3日後に命を引き取った。
「マーサはどこだ、か……奴らめ。さすがに目敏いな」
「王パパスよ。マーサ様の護衛、私にお任せください!」
命を賭して伝えられた情報を無駄にはできない。パパス自身彼女に特別な力があり、魔族がそれを忌避していることは分かっていた。駆け落ちということになっているが、実はマーサの出身地エルヘブンのお長に匿ってくれと頼まれている。彼は軍幹部及び側近たちを集めすぐに会議を開く。結果、この国最強の騎士❝神剣のドラグニア❞が彼女を護衛することが決定された。だが、彼は妻を護りきることはできなかった。
モシャスという魔法がある。一度見た生物に姿を変換するという特殊な効果の魔法だ。高い力量の持ち主は、相手の力量や思考まで模倣できるらしい。魔族の間者は商人を殺害し入れ替わり内部に潜入。そしてマーサ専属のメイドと接触し遺体を残さぬように処理しすり替わったのだ。
「くそっ! やられた……この俺が魔族の気配に気付けんとは。王パパスよ、申し訳ない!」
「違うドラグニア。無能なのは俺だ……モシャスの使い手たる間者を想定できていなかった」
想定できたところで、それほど高度な変異呪文ならば検査魔法の網もすり抜けるだろう。ただ相手が予想以上に狡猾で本気だったというだけである。ドラグニアもそうパパスをなだめるが、彼はそれに答えない。
程なくして、彼は弟であるオジロンに王位継承の義を行わせ退位。従者として教育係だったサンチョと我が子を連れ妻を取り戻す旅へと。
「王パパスよ、俺も……俺も連れて行ってくれ! 絶対に役に立つ!」
「駄目だ。お前がいなくなっては、強大な魔物に国が襲われたとき戦える者が居なくなってしまう。短い旅ならばともかく、恐らくは長い戦いになる」
自分が警護した女性をみすみす奪われた自責の念もあるのだろう。パパスたちにドラグニアがすがる。それをパパスは強い口調で断った。瞳に映る瞋恚の炎を察しドラグニアは口を紡ぐ。自らが王と定め忠誠を誓った人物は堅い意志の持ち主だ。彼は絶対に自らとサンチョの2人で事をなすと覚悟しているのだろう。自らの心に住む偉大なる王と共に歩み続けたかった気持ちを彼は抑え、敬礼する。
「……王パパスよ。分かりました。サンチョ殿、どうか王をよろしくお願いします」
そして従者サンチョに主を託す。主が命を護ることを心に誓いながら。
「分かりました。とはいっても我らが王は私より遥かに強いですがね……」
お道化てみせるサンチョに頼もしさを感じ、彼とパパスなら大丈夫だとドラグニアは思う。
「お前ら、もう俺は王ではないぞ?」
旅立つ。うそぶきながら。愛する故郷を。振り返らず強い足取りで。そんな先代王の後姿を見つめながらドラグニアは呟く。
「たとえ権利はオジロン殿に移ったとて、俺の中の王は貴方だ。だから……だから、絶対生きてマーサ様を連れて帰ってきてください」
頬を熱い涙がつたう。
- Re: 題本のあるエチュード ( No.2 )
- 日時: 2019/02/15 18:13
- 名前: 燈火 ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)
―――――――キャラクタ紹介
アベル 本編の主人公。パパスとマーサの息子。父親の偉大なる剣の才能及びマーサの人を引き付ける魅力を備える。真面目で初心なところがある。女性にもてる。
パパス グランバニアの王だった経歴を持つ。2mを上回る巨体。絶対な剣の腕と並の魔法使いを大きく上回る魔法の腕前も持つ。実直で知的だが情に厚い人物。剛力の加護を持つ。
マーサ エルヘブンの賢者長の娘で次期賢者長と目される。グランバニア王妃でもある。卓抜した魔法の技術や魔力量、さらには魔族が恐れる異能(解魔の加護の上位互換)を備える。気配り上手で甘え上手。爆裂と炎熱の加護も持つ。
サンチョ ふくよかな体つきのパパスの教育係だった人物でパパスの旅のお供でもある。面倒見がよく嘘が下手な気のいい人物。教養はあり戦闘の心得もある。
ドラグニア オリジナルキャラクタ。グランバニア王国最強の剣士。神剣の異名を持つ。パパスとは同世代。忠誠心の強い堅物。剣の達人ではあるがヒャド系呪文に関してはトップクラス。評決の加護を持つ。
ゼクトール オリジナルキャラクタ。サラボナのすぐ北にある小さな町の出身。次男坊。隻眼の美男子。槍術と体術に優れ、回復魔法や爆発系魔法に優れる。気さくで冷静な判断力のある男。パパスに憧憬を抱く。
ティアゼン Vの船長に勝手に名をつけた。ぜくとーるの元上司。寡黙で穏やかな性格。女性は穏やかな人物が好き。巨大なフレイルを振り回し戦う戦士だった経歴を持つ。
ルドマン サラボナという町の町長を歴にしている一族の出。伝説の勇者の仲間であった人物の血を引く。豪快さと慧眼を併せ持った人物。
デボラ ルドマンの義理の娘。孤児院出身。フローラとは血縁で姉。黒髪の東洋系美人。鉄扇を使った武術と長い脚を使った体術を使う。気が強く横柄に見えるが知性は高い。魔法は攻撃系の魔法に高い素養を持つ。
フローラ ルドマンの義理の娘。デボラと同じ孤児院出身で妹に当たる。たおやかな青髪のおしとやかな女性。すこし天然なところがあるようだ。良く気づき良く尽くす。僧院に身を置いていたためか回復術に優れる。
ナハト ビスタの経営者に勝手に名をつけた。昔は船乗りとして鳴らしたようだ。
リガルド サンタローズの番兵の1人。美声の加護を持つと思われる人物。武術も相応のものを持つ。
ヨシュア リガルドと同じサンタローズの番兵。番兵になるための試験を3回落ちて、塞いでいたところをパパスに師事を受けた。実は槍術に関してはラインハット地方でもトップクラスの腕。
ラチェット サンタローズの宿酒場に努める最高齢者。齢90を数え飄々とした態度は、長寿の加護を得ているためらしい。あと30年は生きるだろうといわれている。子煩悩で冗談がうまい男。
ベン サンタローズの武器屋『デッケン』の店主。リガルドの先代の番兵で、「鉄拳」の異名をとる。豪快で短気な性格。美人の店員は実は妻。
エルシア サンタローズ教会のシスター筆頭。軽い魔素を取り除くことができる解魔の加護を持つ。豊満な体をもち男性にもてる。おっとりしているようでクレバーな人物。
ビアンカ 隣町のアルカパで宿屋を経営しているダンカンの娘。勝ち気で世話好きな性格。金髪の似合うすらっとした体つきの美人。炎系の攻撃魔法に強烈なブーストをかける炎熱の加護を持つ。
ストレア ビアンカの母。艶美な印象と怜悧さを併せ持つ美女。知的だが豪快なようだ。夫が持病を幾つか持っているのもあってか、宿のリーダーは彼女のようだ。バギ系呪文とホイミ系呪文の熟達者。ナイフ格闘術の心得も。
セルカ ベンの妻。昔は一流の剣士(二刀流)として鳴らしていた。ラインハット城に勤めていた時期もあるようだ。ベンと同い年らしい。
アストラ サンタローズ門を守る兵士。
*随時更新
- Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.4 )
- 日時: 2019/02/15 18:06
- 名前: 燈火 ◆flGHwFrcyA (ID: xJUVU4Zw)
第1練習曲 ドラゴンクエスト5 天空の花嫁 第1話「サンタローズにて」
眩暈がするほど広くまぶしい部屋。奢侈の限りを尽くした調度品の数々が回りを覆っている。赤貧生活といって差し支えない贅沢を廃した父親との旅の中では到底ありえないような光景の中、自分と思しき赤子は父パパスの腕に抱かれていた。
自分との未来を祝う喜びに満ち溢れていた空間が、高級なベッドに横たわっていた美しい女性の喊声によって絶望へと転落していく。そこで彼は目を覚ます。その先の絶望を見るのが怖くて。
「おう、アベル。目が覚めたようだな」
周りは夢に見た部屋とは比べ物にならないほど狭かった。普段止まっている宿屋などとは比べ物にならないほど広い場所ではあるのだが、頭に浮かんでいた風景がそう感じさせない。内装も質素なもので、洋服箪笥が北部中央に1棹と四つ足のテーブルが1卓。親子2人で眠るには狭く、飾り気のないベッドが1台。そして幾つかの給水用樽があるていどだ。隣室にトイレやシャワールームが備え付けられているが、それも貧弱に感じる。父の挨拶に目を擦りながらアベルと呼ばれた少年は訥々とつぶやく。
「お早う父さん。なんだか変な夢を見たよ……僕が赤ん坊でお城の中にいて」
王城になど入ったこともないはずなのに。そうだ。自分は物心ついた時から、パパスとともに放浪の旅をしていて、それ以降は城になど入った覚えはない。遠目から眺めることはあったが、窓の奥の様子など確認しようもないほどの距離からだ。父は度々、招かれることもあったが、アベルはその旅に牛車の中や安宿で待たされた。
「なに? 夢を見た? 赤ん坊の時の夢でどこかのお城みたいだったと? わっはっは、寝ぼけているな。眠気覚ましに外に行って、風に当たってきたらどうだ? 父さんはここにいるから、気を付けて行ってくるんだぞ」
パパスの表情にわずかなあいだ翳りのようなものが表れる。しかし彼はお道化た様子でアベルを煙に巻く。彼自身いづれは話すべきだと思ってはいる。しかし今の息子は幼すぎだ。そのような経緯を話しても反応に困るし、呑み込めまい。もう少し成長してからが良いと判断したのだろう。アベルは父の反応に少しの違和感を覚えたが、思い過ごしだと頭を振るう。
「もう、こんな狭い船の中なんだから危ないことなんてないよ父さん。そもそも、僕、父さんと冒険して色々経験してるんだよ?」
危険なことは沢山あった。パパスは呻吟を漏らす。こと旅は自らの妻でありアベルにとっての母マーサを取り戻す旅だ。しかし一国の王妃を魔族から奪還するという危険極まる血濡れの戦いでもある。彼は旅路の中で確信している。
息子アベルが大いなる異能をマーサから受け継いでいること。そして今は小さいアベルの力とはマーサが有していた異能は桁違いに膨大であることも。膨大で熟達した妻の異能は、魔族にとって猛毒だ。彼女を中心に人間脳たちが納める各国が連携を取り合えば、畏怖すべき魔の眷属が壊滅に追い込まれるほどに。
「ふむ、そうだな。俺もお前を子供扱いしすぎか……まぁ、楽しんで来い」
アベルの青く澄んだ瞳は妻マーサを思わせる不思議な魅力がある。そんなことを思いながら、出生の秘密をアベルに教えるのは思ったより早くしても良さそうだと胸中でつぶやく。アベルは駆け出し、部屋の南部に設けられた扉を開いた。少し潮の香りを感じる心地よい風が頬を撫で、パパスの逆巻く黒髪を靡かせた。
「元気なものだな。さっきまで不安がっていたのに」
離れていく息子の背中を見守りながら、パパスはテーブルに置かれていた葡萄酒でのどを潤す。