Une promesse 作者/千代

【 un 】



Veuillez apprendre a Dieu.

(神様、如何か教えて下さい。)

Est-ce que sa distance est proche a moi?

(私と彼の距離は、近いですか?)

* * *

    私に今居場所は在りますか

    私を今必要としていますか

    私は今何処に居るのですか

    私を誰か救ってくれますか


「―― ん ……」

目を開けると、カーテンの隙間から覗く朝日が眩しく光っていた。

私はベッドから飛び降り、学校へ行く支度を始めた。


私 ―― 相良 華南は、14歳の中学2年生。

小さな身体に不釣合いなブロンズのロングヘアを軽く遊ばせて。

制服は何時もブカブカ。

おまけに青い瞳も充血と来ている。


でも身長は仕方が無いと割り切っているし、目もこんなに赤いのは朝だけだ。

髪の毛だって切るつもりなんて無い。


私はこれまたブカブカのコートを羽織ると、飴玉を2つ持って 玄関を飛び出した。

*     *     *     *     *     *

何時もの時刻のバスに乗り込んで、一番後ろの席に座る。

通学路を挟む民家を眺めながら、私は飴玉を1つ口に放り込んだ。

苺の甘い風味が、口一杯に広がっていく。

窓の外を流れて行く家は、木造ばっかりだ。

帰国子女の私には、不慣れな光景。

7歳に母の母国・フランスへ旅立って約2年。

帰って来た時は、文化の違いに本当に困った。


そんな思い出話を心で呟いていると、ポンッと肩を叩かれた。

「華南、お早う」  

そう言って隣に腰を下ろすのは、九重 和束。

クラスメイトで、一番の仲良し。

「もうすっかり冬だね-…」

手に呼気を吹き掛ける彼女を見つめ、私は苦笑した。

「和束って……何か面白いね」

「……え? 何で?」

不思議がる顔を見て、余計に面白くなる。

……と 言うより、心が軽くなった感じだ。

文句を言う彼女を半ば無視し、窓の外を見ていた。

そしてふと ――― 懐かしい後姿を目に留めた。

駅に着くと同時に、私はバスから急いで降りた。

「え!? 華南、まだ2駅在るよ-ッ!?」

そんな和束の叫び声を背に、私は彼の後姿を追った。