Une promesse 作者/千代

【 deux 】
Votre bon vieux dos.
(懐かしい君の背中。)
Mais mon bras n'arrive pas sur votre epaule et.
(でも、私の腕は君の肩には届かなくて。)
* * *
息を切らせながら、私は彼の背中を追い掛けて行く。
勘違いかも知れない……けど。
如何しても確かめたいんだ。
彼は、バス停に止まっていた。
きっと、バスに乗るんだろう。
追いつく――― そう思った時。
バスが後ろから颯爽とやって来て、扉を開けた。
彼が乗り込む。
一番後ろの座席では、和束が何か叫んでいる。
……此処で諦めちゃいけない。
「待ってよ……千早ッ!!!」
私は彼の名前を、これ以上無い位大声で叫んだ。
彼の方がビクリとして、此方を向く。
「え……華南?」
漸く顔を此方に向け、明らかに驚いている彼。
相変わらずの童顔に、私は呟いた。
「変わってないなぁ……」
バスが行ってしまった後、彼は私の真ん前に来ると 私の顔をまじまじと覗き込んだ。
彼の瞳に、顔をほんのり赤らめている私が映っている。
「お前……本当変わってね-なッ!」
彼はそう言って、私に向かってピースをした。
――― 左手の薬指を見せ付ける様に。

PR
小説大会受賞作品
スポンサード リンク