Une promesse 作者/千代

【 trois 】



a qui chose est l'a cote de vous?

(彼方の隣は、誰のものですか?)

Est-ce que c'est ce qui n'est pas pardonne que je suis la...?

(其処に私が居るのは、許されない事ですか…?)

* * *

彼の左手の薬指。

其処に嵌っているそれは……何ですか?

「ち……千早、それ 何?」

指差しながら恐る恐る聞いてみる。

本当は、答えなんて聞きたくなかったけど。

[ お洒落だよ ]って言って欲しかったのだけれど。

私は心の中で、密かに答を知っていたのかも知れない。

「嗚呼、これ? ―――婚約指輪」


胸が大きく音を立てた。

[婚約指輪]―――これが意味するものは、きっと唯一つ。

「それって……結婚する相手が居る……って事?」

彼は苦笑した。

「まあ、そんな所。 親が勝手に決めたんだよ」

気まずそうにしている彼を見て、私は少しがっかりした。

―――別に、彼に婚約者が居たからって訳じゃない。

確かにそれもショックだったけど……。

「ねえ、千早」

え? と此方を見る彼。

私は一番聞きたい事を聞こうとした。

「千早はあの日の……」

声が震えて、それ以上彼には聞こえなかったらしい。

彼は不思議そうに首を傾げた。

「え? あの日の……何だって?」

自分でも涙が込み上げて来るのが判った。

でも、人前で泣くのは嫌いだ。

自分に[落ち着け]と言い聞かせて、彼の顔を見た。

「じゃあ、学校だから。 ……又会えると良いね」

そう言って、私は彼に背を向けた。

走り出して数秒後に、じわっと涙が溢れて来た。

きっと、彼は私なんて如何も思ってない。

だから……

私は又自分に言い聞かせる様に呟いた。


「千早はきっと、『あの日の約束』なんて憶えてないんだよ……」