ダーク・ファンタジー小説

ストラグル タブー サクリファイス
日時: 2017/07/03 00:05
名前: 狂yuki
参照: http://www.z-z.jp/?earth-love

主要登場人物
柊 拓徒(ひいらぎ たくと):両親を侵略者に殺された過去を持つ15歳。そのため、仲間の死を許さない。ファッションセンスがないのがコンプレックス。階級は少尉。
十文字 麗子(じゅうもんじ れいこ):とても堅実な24歳の女性。拓徒を我が子のように可愛がり、ときに厳しく接する。階級は中佐。
南 勇児(みなみ ゆうじ):お調子者だが拓徒からは信頼されている。14歳。階級は少尉。
クローリー・レイン:拓徒が密かに憧れるファッションリーダーの上官。25歳。ルックスもいいのでモテる。階級は大佐。
桜庭 凛音(さくらば りんね)寡黙だが密かに拓徒に好意をよせる14歳。階級は中尉。
鬼宮原 飛鳥(おにみやはら あすか):少し天然な麗子と正反対で、拓徒をしっかり導こうとする。名家、鬼宮原家に生まれたエリート少女。17歳。階級は大尉。
宝倉 天奏(たからのくら あまね):旧日本の本家の令嬢。常に気丈に振る舞うが、拓徒には、少しだけ気を許したような態度を取る。



セラフィム
地球を突如襲った謎の侵略者。古代生物のような見た目に反して、脅威の能力を持つ。


   プロローグ
    ゲンシ

地球が、宇宙からの侵略者達によって破壊されはじめた。

侵略者は圧倒的な力を持っていた。人間は抗う術を知らずに逃げ惑うだけだった。世界中の主要都市は全て破壊された。


しかし


1987年、人類の抵抗が始まった。
人類は、人型超戦闘兵器「メシア」を開発。
そしてついに、人類の希望の砦「地球死守軍」が動き出した。
絶対的侵略者に反旗を翻す時が来た。


ー世界の中で侵略を免れた都市、名古屋。
そこに、地球死守軍の拠点のひとつがあった。


そこへ、セラフィムが襲来した。亀型のセラフィム。
司令が実動部隊に指示を出す。
「実動部隊、緊急配備!敵は時速10キロメートルの超低速型!しかし配備が遅延すれば
確実にメインタワーが破壊される!準備を急げ!」
その指示は軍施設全体に響き渡った。
整備員達が最終確認を終えた頃だ。

そして、拓徒達もこの指示を聞いていた。

「……よし。行くぞ」
「………待て。カレー全部…」
「黙れ行くぞ。カレーなら明日食わせてやる」
お調子者の勇児を連れ、運命の戦場へと向かう。

続く

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Re: ストラグル タブー サクリファイス ( No.69 )
日時: 2017/08/04 13:06
名前: 狂yuki

2000年8月1日 大規模拠点破壊作戦決行日 午前6:00


名古屋基地第1格納庫
スサノオ、黒帝、海神などの機体が並ぶ中、一際目立つ、XENON-1の巨体。
三本の主砲に加えて、無理のない程度に重火器が装備されている。

眺めているだけで押し潰されそうになるような威圧感。

自機のもとに向かう。恐らく、こんな時間から準備をする者はMA部隊にはいないだろうし、
仮にいるとしても隊長だけだろう。

と思っていると、
「...あれ、お前どうしたんだ。早いな」
「ん?拓徒か」
そこには天奏がいた。昨日の夜はしゃぎまくっていたのに、早寝した自分より早くここにいるとは。
「大丈夫なのか?昨日の...」
「ん?...ああ、気にするな。私は全くあれらには関わってない」
しらばっくれやがったな、と思ったが、まあ黙っておく。
「隊長達はまだ来ないみたいだぞ?」
「そう、か」
「...でも、お前、何だかんだ言ってこういうところはちゃんとしてるよな」
「『こういうところは』?...納得いかないが、まあいいとしよう」
「はは...」

そうこうしていると、隊長の恵が他の隊員を引き連れてやって来た。
「おっと、お前達は朝御飯を先に済まして、先に来てたのか。待たせたな」
「いえ、タイミングは各自指定とあったので...」
拓徒は律儀に答える。



............



「よし、全員揃ったな」
『は!』
一糸乱れぬ返事。恵が最終確認をする。
「本作戦は、本日正午より開始する。各方面からの増援部隊は、
近辺に配置された別部隊が足止めするが、それでも防ぎきれない可能性がある。充分注意せよ」
『了解!』

最終確認を終え、各々戦歩兵器に乗り込む。

エンジン、リミッター、武装、外部状況モニターの動作を確認し、出撃口までの移動列に並ぶ。
その姿はまるで人間の兵士そのものである。



『MA部隊、準備はいいな?』
『は!』「は!」

そして、今


出撃する。




..............................



旧渋谷付近 第4陽動隊待機地点



『ッたくよォ。何で俺達日本軍がアメ公なんざのお手伝いしなきゃならねぇんだよ』
『そう愚痴るな、山城。連合軍の連中に見せつけてやれるいい機会じゃないか』

GH部隊の山城と厚木。拓徒を勝手に師匠呼ばわりしている連中だ。


『それにしても、先に待機しておくように言われちゃいるが、奴等全く攻撃してくる気配がねぇな』
『......そう言えばそうだな。...嫌な予感がするが...』
嵐の前の静けさ、というやつか。



旧渋谷


『MA部隊、これより総員、上空2000フィートまで上昇する!』
スサノオ六機が、猛スピードで上昇する。

凄まじいGがかかる。


「......。上から見たら、小さいな...。しかも、すぐ横にいるXENON-1がデカいから、余計そう見える」


XENON-1は、轟音を立てながら、スサノオや黒帝に囲まれて聳えている。


一方その頃、基地にいるキョウコ司令の許には、ある部隊から報告がかかって来ていた。
『司令!大変です!旧渋谷近辺を包囲する拠点にいたセラフィムは我々の行動を感知して、更にその外周にある拠点から増援を引き連れて此方に向かっている模様です!』
「何ですって!?」

それはただ事ではなかった。
まさか、完全な包囲網突破作戦だった筈なのに、それを看破された挙句、更に大規模な包囲網を許してしまうとは。


続く

Re: ストラグル タブー サクリファイス ( No.70 )
日時: 2017/08/06 15:44
名前: 狂yuki
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=586.jpg

セラフィムの動きは、MA部隊にも伝えられた。

『くそ!セラフィムどもが我々の動きを予測して...!?』
恵が思わず呟く。
だが、共にバリケード部隊として配備されているMG部隊の面々はかなりお気楽だった。
『へッ。俺達が負けるわけがねぇ。例え奴等が作戦を練ろうが、俺達にはXENON-1があるんだぜ』
それは一種の傲りとも取れる発言...いや、完全な傲りそのものだった。

だが、こうなってしまった以上、今ここで作戦変更をしても上手くいく可能性は低い。
既に隊列や陣形を決めてしまった以上、後戻りは出来ない。隊列・陣形はそのままで、可能な限り対処するしかあるまい。


陽動部隊がセラフィムを引き連れてやって来るのを待機するだけ。その手筈だったのに、
このままでは陽動部隊が全滅し、セラフィム達だけでやって来る可能性がある。
そして恐らく、そうなってしまうと勝てない可能性がある。陽動部隊が引き連れてくるであろうと予測されていたよりもセラフィムの数は多い。



..............................



絶望的な空気が渦巻く中、ついに動きがあった。
『バリケード部隊に告ぎます。ただいま旧渋谷方面に向かい当初予測の3倍のセラフィムが侵攻中です』
「...来たか」
『MA部隊総員!気を引き締めてかかれ!』
『了解!』「了解!」

モニターには、レーダーで捕捉されたセラフィムやXENON-1の状態、味方機の信号などが表示される。
このモニターが、敵が絶望的に多いことの証であり、仲間が生きている証だ。
人類の希望がそこにある証だ。

恵が叫ぶ。

『セラフィムからの攻撃、第一波到達!第二波の弾幕は更に強くなるだろう!バリケード部隊!前進せよ!』

それに合わせて、後方援護部隊の宍戸隊長が叫ぶ。

『バリケード部隊が前進している間に後方からセラフィムを撃ち尽くせ!味方誤射に気を付けろ!少しでもXENON-1の主砲発射に貢献せよ!』

『ここで負けるわけにはいかないんだからさ!』
小野田 文が言う。
『そうだ!我々には守るべきものがある!』
天奏が続ける。
『私達は最強の七機!絶対勝てる七福神!』
魔弥だ。
『数だけで圧倒される私達じゃないって思い知らせてやる!』
そして雨音。
『皆!首取り競争もいいけど、絶対生き残んなさいよ!昨日の枕投げの恨み、いつか晴らすんだから!』
飛鳥。昨日は枕投げをしていたらしい。
『よし!お前達のモニターに移る味方部隊は、たった六機だ。だがな、それは最強の六機だ。決して負けない、不沈の六機だ!恐れることなく進め!』
恵が最後の仕上げの言葉を言う。
『了解!』「了解!」


............


「ついに...始まったのか」

モニターには沢山の敵。

それを後方部隊は、2000フィートという高度から狙撃していく。
ライフルを「散弾」にしている機体もある。

バリケード部隊も黙ってばかりではない。

「うぉぉおおおおお!」
『でゃああああああ!』

飛鳥と拓徒で、XENON-1めがけて飛んでいったレーザーを弾き、
機体を素早く翻して反撃する。

『ナイスコンビネーションだ、お前達』
恵が誉める。
「ありがとうございます!」


序盤に汎用型チャフを散布しておいたおかげで、レーザーの命中精度は少し落ちている。
だが、高度を下げれば確実に黙視出来るため、命中確率は格段と高くなる。

ここで死ぬかもしれない。だが、戦場で死を恐れることは無意味だ。

そうこうしているうちに、セラフィムは次第に中心に集まっていっていた。

「へ...好都合じゃないか。このまま中央に集まれば、一気に殲滅出来る」
『......いや、これはおかしい』
恵が珍しく不安げに言う。
「......え?」
『主に迎撃型、大砲型、主砲型が中央に集まり、その周りを重量級装甲型が包囲。まるで上空攻撃部隊を完全防護しているようだ!』
「......はっ!まさか...!」
確実にその「まさか」だろう。奴等は中央に上空攻撃部隊を集中させ、地上部隊は装甲型の遊び相手にでもするつもりなのだ。冗談じゃない。
「...くそ...完全にしてやられたのか!」
拓徒達は青ざめた。


続く

Re: ストラグル タブー サクリファイス ( No.71 )
日時: 2017/08/10 22:13
名前: 狂yuki

ー名古屋基地


「司令、どう致しますか?」
「......仕方ない。中央に対空攻撃に長けた固体が集まったということは、それだけXENON-1の攻撃のチャンスが増えたということよ。レーザー攻撃さえ耐え抜けば、あとは問題ないわ。
後方バリケード部隊はフォーメーション維持して。突撃部隊と前方バリケード部隊は全機散開して」
『了解!』


「アデル少尉。艦砲の状況は?」
「第三榊艦隊全滅、淀・皇・フランクリン連合艦隊は只今海洋型目標Pと交戦中です」
「...そう簡単に突破させてくれそうにはないわね」
そこに、ウィークハンガーがやって来る。
「我々の部隊がここまで苦戦するというのは最早異例の事態と言わざるを得ませんな」
それに対して
「全く歯が立ちませんよ、我々のメシアでは」
それにキョウコは呆れる。
「お二人とも大国生まれ大国育ちとは思い難い程弱気ですね」
「逆にそこまで強気でいられる理由が解りませんな、キョウコ司令。我々の連合軍でさえ歯が立っていないというのに」
「...言葉を返すようですがウィークハンガー将軍。XENON-1を開発したのは我々です。確かにXENON計画を立案したのはアメリカ・イギリスですが、
結果的に依頼を快諾したのはカミシロではないですか」
「むぅ...」
見かねて、ラニノフが止める。
「お二人とも。今はそのような些事に気を取られている場合ではありませんよ」
対してキョウコは
「失礼。つい」
と、冷静に返すが、ウィークハンガーはまだブツブツ言っていた。
そこへ突然ー
「司令!XENON-1の制御系統に異常が発生しました!」
「何ですって!?...詳細を!」
そこには、赤文字で「danger」の表記。明らかに正常ではない。
「強制遠隔射出よ!」
「駄目です!外部からのコントロール不可能です!」
「そんな!」
凄まじい総合職と破壊力。だからこそ、味方である分には頼もしいのだが、それはつまり敵に回すと恐ろしいということでもある。


続く

Re: ストラグル タブー サクリファイス ( No.72 )
日時: 2017/08/12 20:13
名前: 狂yuki

『おい!本部から入電だ!XENON-1が制御不能に陥った!』

恵の声。

無線越しでもその緊張感は嫌という程伝わってくる。最悪の事態だ。

『...XENON-1が...!?』

『お、終わりだ...俺達は終わりだ...』

絶望の声。
それも無線越しに聞こえてくる。

「ぐ...!あんなのが暴走したら俺達の部隊も全滅してしまう...!」

だが、そこで拓徒は思い出す。

「...!そうか!XENON-1は確か、レーザーを充填している時と発射している時は無防備に...」

その隙を狙って攻撃すれば、何とか制止出来る。...と思ったのだが、そこでふと思った。
中にいるパイロットは大丈夫なのかと。
作戦上必要ないのもあって!パイロットと面識は持っていなかったが、よくよく考えればパイロットの状態の確認も無しに攻撃するのは危険だ。
そこで、最も至近距離にいる拓徒がコンタクトを取ってみる。

「おい、XENON-1、番号A-0聞こえるか」
『...............』
「聞こえるか」
『...............』

ノイズが混ざっているからか、何も聞こえない。だが、
少しずつ、モニターに、鮮明な映像が映る。

それを見て、拓徒は絶句する。

「...............ッ!?」


そこにいたのは、


凛音。桜庭 凛音。死んだ筈の女が、

そこにいたのだ。

「...!お前...生きてたのか!?凛音!!!」

『...認識...コード...被験体No.901』
「え...?」
『メモリー内データ占有率76%』
「な...、何を言って...」

と、そこでキョウコからの通信。
『柊。ソレは凛音じゃない、凛音のクローンよ』
「な...に...クローン...!?」
『桜庭 凛音の体を基に、彼女の運動能力や記憶を殆どそのまま受け継がせてある。XENON-1の運用のために、彼女の遺体から生成したクローンよ』
軽々と言う。
「...それなら...俺の記憶も...」
『あるわ』
「..............じゃあ...!」
『無理よ』
「...え?」
『助けようって思ったでしょ、今。でもそれは無理よ』
「な、何でですか!」
『最早救う手段がないのよ。外部からの操作を受け付けないんだから』
「...そんな...!」


続く

Re: ストラグル タブー サクリファイス ( No.73 )
日時: 2017/08/16 18:38
名前: 狂yuki
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=595.jpg

バリケード部隊が地上のレーザーセラフィムを順当に始末している。心なしか、その数は少しだけ減ったように見える。
装甲型による要塞陣形も崩れた様子だ。少しの隙間から大勢の戦歩兵器が突入している。
だから、下の戦いはじきに終わるだろう。だが...




...クローンだろうが何だろうが、そんなことはどうだっていい。せっかく凛音がそこにいるって言うのに、助けないわけにはいかない。
もう自分の能力不足のために誰かを殺したくない。

「凛音!目を覚ませ凛音!お前がクローンだっていい!目を覚ませぇぇぇ!」

だがXENON-1も凛音も、拓徒などには見向きもせず、制御不能なまま降下している。

「...くそッ!」

絶望的。これでは、拠点破壊どころではない。味方にまで甚大な被害が及ぼされるだろう。

『...まずい...このままでは...』

このままでは...の後に何が続くのかは、安易に予想がつく。

『隊長!』

『来るな!武装解除コードを入力してくる!お前達はそこにいろ!』

恵は武装解除システムを作動させるつもりだ。
そうか。拓徒は思い出した。XENON-1には武装解除システムが付いている。
コードを入力すれば、XENON-1は強制的に機能を停止させられる。

だがそれも、効くかどうかは分からない。
外部からの操作は一切受け付けないと言っていたからだ。

「...」

『ぐっ...隊長とは言え、一人では...!』

既にXENON-1は暴走を始めていた。

レーザーや予備装備で無数の敵味方が蒸発していく。まるでそんなものなど初めから存在していなかったかのように。
無尽蔵に高火力レーザーが撃ち込まれ、ついにはセラフィムの拠点が破壊される。

だが、喜べない。任務はほぼ完遂したことになるが、それによって更に凶悪な事態が発生してしまっている。


「...............ぐっ...!」

拓徒は歯を食い縛った。

いつも誰かを殺すのは自分の弱さだ。自分がしっかりしていれば、これまでどれだけの命が救われてきたことだろう。

「...............隊長!俺も行きます!」
『拓徒!?』
『お...おい!柊!』

味方が呼び止める。声が呼び止める。だが無理だ。もう誰も殺してはならない。自分の能力不足なんかのために。
そして、ごめんだ。誰かを殺した分際で、悲劇の主人公を気取って自己満足するのは。

「う、ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

『やめろ!死ぬ気か馬鹿!』

天奏が叫ぶ。知ったことではない、自分のために人が死ぬくらいなら、せめて最後は誰かを救ってから...。


『...柊!?来るなと言った筈だ!』

恵の悲痛な声。その恵の機体は既に大破に近い程の損傷を負っていた。バリケード部隊のうちの数機が援護しているが、どれも満身創痍だ。

「隊長!無茶です!こんな大型兵器を相手に!」

『ならお前だけは生き残れ!』

「......!?」

『お前は...私より遥かに才能がある!こんなところで死ぬな!』

「な、何を......!!」

『逃げろと言うのが分からないのか!』

「......ぅ!」

『今まで何人、お前のために死んでいった!?そしてそれがただの悲劇だと、まだ思っているのか?...甘えるな馬鹿!お前は......お前のために散った皆の意思を継ぐ......それだけに専念しろ!お前を信じた皆のために!』

「......!!」

『......私の過去の話...皆の過去の話...お前が、伝説として語り継いでやってくれ...』

「...な...?」

『私は、お前がこの世界の希望だと思ってる。...だから、その<希望>にお願いしたい。...私達のような思いを、後世にさせないように...お前が...いつか...!そして...語り継いでくれ!私や、私が尊敬する英霊達の過去の物語を!』

そして、

『バリケード部隊。御苦労だった。今がチャンスだ』

「隊長!」

『さあ行け』

「隊長!」

『...地上のセラフィム...さっきの攻撃で大分片付いたようだぞ。...味方も随分殺されたが、な』

「隊長ーーーーーーーーッ!!!!!!」



..............................




「くそ...コードを入力しているのに...!」

<認証エラー>

「...!何故だ!」

正式なコードを入力しているのに、認証エラーとなる。

あまりの事態に恵は焦る。

「...く...、こんなことに...!」


だが、そこで恵は気付いた。

XENON-1の動きに。

初めはレーザーの命中精度ひとつとってもそれ程高くはなかったのに、
今では的確に、しかも戦歩兵器だけを狙い撃ちしている。

「...............!そうか!...や、奴は...セラフィムに寄生されて...!」

それは恐ろしいことだった。

制御不能なら、まだどちらの味方というわけでもないから少しだけ安心要素がある。
だが、寄生されたということは完全なる敵ということだ。
勿論、武装解除コードなど受け付けないわけだ。

だが...

「この中には、拓徒の大切な仲間が...いる。...仲間や家族を失う悲しさを知っていて、それらに未だ打ち勝てないひ弱な私が、それを嘲笑うことは出来ない。せめて...」

このパイロットを救ってやらねば。

「...してやられたというわけか...!セラフィムどもが...!!...............ふ...ふふ.........私も本当に終わりということだな......」

恵の目が物憂げになる。

「......皆...今...行くからね......」

そして、恵の戦歩兵器が、何とか残った右腕で背部の小型爆弾を取り出す。


「......砲頭だけを狙えば、本体......少なくともコックピットだけは無事な筈だ......」

そう言い、砲頭があるXENON-1の正面へと向かう。

爆弾を抱えて。武装は最早この爆弾と、まだ何とか残されているこの命だけ。

だが、それだけで充分だ。後は、地獄で懺悔するのみ。


「......ぅぁぁぁぁああああああッッ!!ぁぁぁぁああああッ!!」



..............................



一瞬にして、決死の、突撃...............


勇猛果敢な戦士を乗せた戦歩兵器の姿はそこにはなかった。

敵味方関係なく焼き払う煉獄の怪物......その口は煙を吐いていた。


「......あ......ぁあ.........」

拓徒は絶句した。目の前の光景に。


『XENON-1が...落ちていく...』


何が起こったのかを明白に理解出来ていない戦士達が、心そこに在らずといった様子でその様子を眺める。


いや、何が起こったのかは知っている。だが、認められない。下手をすれば軍規違反になりかねない危険行為だった。そこまでして、恵は...隊長は、自分を守った。
その事実だけが胸に突き刺さる。まるで氷柱ように冷たく鋭く、胸に突き刺さる。

続く

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