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*59*
「ねぇ、葵さん。 【招待状】知ってるかな?」
俺は、葵さんに優しく聞いてみた。
霞に関係ある人物なら届いているはずなのだ。
「なんで、それを?」
取り乱すこともなく、静かに振り向いた葵。
「いや、届いたからね」
苦笑いしながら言った。
彼女も、知っていたのか。なら、俺と同じ被害者だな。少し、安心した。
びゅう、と風が吹く。葵の青い腰までもある長い髪が靡いた。俺の黒髪も優しく揺れた気がした。
「俺も、もらったからさ」
「墨で塗られた名前の人に?」
「そうだよ」
葵の顔が少し暗くなる。やはり、俺と同じ様にヤバイことを書かれていたのだろう。
「なぁ、いかないか?」
「どこに?」
「パーティーに決まってるだろ」
「そーだね。 行こう」
「スケジュールは大丈夫か?」
「私は大丈夫。 貴方は?」
「誰かさんのせいで、入院して退院したばかり」
俺のちょっとした皮肉に、葵は罰が悪そうに苦笑いした。
「じゃあ、大丈夫ね」
「そーだよ。 夜に、芸能プロダクションにきて」
「わかったわ……ばいばい」
葵は、さっきとは打って変わり、ふつうに歩いていった。
(さて、パーティーか。俺も、準備しよっと)
俺は、家路についた。
いつの間にか、そらには白い月が浮かんでいた。
【END 第九話】
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