完結小説図書館
<< 小説一覧に戻る
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*70*
「そうですか。 わかってくださいますか。 それはありがたい」
そういった寿樹さん。その笑みは……もう完全に狂っていた。
彼は、一斗の元へと歩いて行く。靴の音が妙に大きく響く。
「では、さようなら」
狂った笑みのまま、寿樹さんは、一斗を蹴ったり殴ったり、床に叩きつけたりした。もう、それはとても惨酷に。
だけど、とても綺麗だった。寿樹さんの、白いタキシードは、一斗の赤で綺麗に染め上げられていく。
綺麗、綺麗。 私は、自分の共犯者のものであっても、血をみるのは好きだ。とても綺麗だから。
あの時……そうはじめて、一斗の血をみた日。思えば、たった三日前のことだった。あの日、私は中学時代のあの感触を思い出してしまった。また、人を殺したい、そんな感情が胸の底から湧き上がってきた。だけど、私はそれを堪えた。だって、私は霞だから。
霞は、絶対にそんなことはしない。私は、世間のアイドルでなくてはいけないのだ。
そう思ったけど、もう限界だ。
こんな綺麗な赤をみたら。
「あ? どーした、その目は? なんかいーてぇのか? あぁ?」
赤坂が私の一斗を見つめる視線に気づき、私に問いかける。
そんなの、無視無視。
「……」
私は、ニコリと微笑む。多分、私の笑みも寿樹さんと同じ。きっと、狂ってる。
私は、さっき赤坂に渡そうとしたハサミを、赤坂に向けた。もちろん、渡すためじゃなくて、刺すためだ。
「?」
赤坂は、なにが起こるのかわかっていなかった。
PR