完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~

*71*

私は、ハサミを刺そうと、勢いよくハサミを前にやった。
しかし、その時に刺した感触はなかった。なぜなら、その時には、赤坂はすでに倒れて、息をしていなかったのだ。
「え、え?」
流石の私も、これは混乱。
なんで? あれ? 私、サシテナカッタヨネ。
ハサミを見つめる。 少しずつの積み重なりで赤みがかかってしまった刃にも、まだ生々しい血はついてはいなかった。
……やばい。 なんで、いきなり死んじゃったの?
「やってくれますねぇ、葵さん。 僕としたことが、失敗だなぁ」
は?私はなにもしてないし!そんな反論もできずに、寿樹さんの言葉は続く。
「本来はね、貴方が殺る予定だったんです。 だけど、光のせいで、一秒のズレでした。 あなたに殺された赤坂さんが、今ここにいるんですよ」
は? 言っている意味が分からない。一秒のズレってなに、本来ってなに?
「あ、わかりませんか? えー、つまりはね、これは『物語』なんですよ。 あなたの人生、僕の人生、光の人生。 他にも沢山の人生は、全て物語の台本によって動いていたんです」
うわ、ヤバイ。 なんか、物語とか台本とか言い出した。 マジで狂ってるね。
もし、その話の通りだったら、私と一斗のあの出会い、私と光のあの出会い、全て赤坂は知っていて、全て寿樹さんは知っていた?物語ってことは。私は、一斗を鉛筆で刺したのも全て物語?
だけど、信じられる気もする。確かに、赤坂は私が刺す前に死んだ。ってことはさ、私が誰に殺されるか、

この前にいる人はわかっている……わけ?
「あ、やっと分かりましたね。 因みに、貴方は私に殺される。 台本通りなら、ね」
ははは、と寿樹さんは高笑いした。
「でも、変わるかもしれない。 赤坂みたいに、葵さんも一秒のズレで、なんの怪我なく死ぬかもしれない」
やばい、やばいやばいやばいやばいやばい。
怖い。 本当にこれはやばい。
「ちなみに、私の死ぬ時間は?」
「零時です。 ロマンチックですよね、零時ぴったり」
どこがだよ。 人が死ぬ時間が零時とか、こえぇよ。
私は、そう思いながら時計を確認した。
いまは、十時。 あと、二時間後に私は死ぬのだ。
「台本を改竄する方法は?」
「今回は、特別ですよ、教えてあげます。 私の妻、日子が持っています。 それをとって、書き換えればいいのでは?」
「……今は、どこにいるの?」
「そうですね。 今は……病院にいると思いますが。 私にはわかりませんね」
寿樹さんは、微笑む。
きっと、日子さんは見つけられない。でも、見つけなきゃいけない。
寿樹さんは、部屋のドアを開けた。 明るい光が差し込む。
これはきっと、行って来いという意味。
「……」
私は、部屋を出た。

【第十話 END】

70 < 71 > 72