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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 144ページ)
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*113*
星野くんはなぜか水着に着替えないで服を着たまま海に入って泳ぎ始めました。
「あれ?水着に着替えないんですか」
「ぼくは服を着たまま入るのが好きなんです」
ラブリは変だなと思いながらも、気にしないことにしました。
海から上がると星野くんはやっぱりずぶ濡れで着替えないといけない状態でした。
「ぼく、濡れちゃったので、着替えてきますね。そのあと、少し散歩してきますので、お食事は先に食べていてください」
星野くんは淡々と言って、ホテルに戻っていきました。
それから2時間後。
星野くんはいつもと同じ白のシャツに灰色のズボン、首にはヘッドホンという格好でみんなの前に姿を見せました。
「着替えたんですね」
ラブリはあまり気にせず、それだけ言って料理を食べ始めました。
この日の夕食はバイキングでしたので、みんなそれぞれ好きな料理を取ってきて食べています。王子はオムライスとケーキ、メープルちゃんはウィンナーとウィンナーコーヒー、ラブリは沖縄の郷土料理であるニンジンシリシリー(にんじんの野菜炒め)、星野くんはいちものようにカレーライスを食べていましたが、どうもあまり嬉しくなさそうです。そんな様子を見て、メープルちゃんはますます心配になってきました。
(星野くん、どうしたのでしょうか?本当に心配です・・・)
そう思いながら、星野くんの後ろの席に目を向けると、数人の観光客らしき子どもと大人ひとりが楽しそうに会話をしながら、料理を食べていました。
最初はメープルちゃんも家族連れかなと思ったのですが、それにしては妙に変なのです。後ろの人たちは子どもが3人(3人とも男の子)ひとりは大人の男の人です。
メープルちゃんはなぜかその家族連れが気になったのでもっとよく姿を見ようと思いましたが、ラブリが邪魔をして、うまく顔が確認できません。
そのときです。
不意に男の人が背中合わせの星野くんに声をかけてきました。
「きみ、さっきから何も話してないけど、悲しいことでもあったのかね?」
「別に悲しくはありませんよ」
「そうかね。音を聞いたところ食べているのはカレーかシチューだね」
「カレーです」
「きみはカレーが好きなのかね?」
「ええ、好きですよ」
ぶっきらぼうに答えて食事に戻ろうとした星野くんは、相手のたずねた質問にハッとしました。
「私は前、このホテルに来たとき、同じやり取りをしたことがあるのだよ」
「ぼくもあります」
「そうかね」
「ええ、ぼく、久しぶりにあなたの声を聞きました」
「どうしてだろう?きみの声には聞き覚えがある。きみ、名前は?」
「ぼくの名前は、星野です。星野天使ですよ。モンブランさん」
「冗談だろう?」
「モンブランさん、ぼくは本気ですよ!」
初めて聞く、心から嬉しそうな星野くんの嬉しそうな声に、ラブリと王子は何事かとお互いの顔を見つめあいました。
すると、星野くんと背中合わせに座っている男の人が突然、ぴょーんといすから飛び上がりました。
「実に素晴らしい!感激だよ!きょうは最高の日だ!ハッハッハッハ!
このやりとりをするのは、実に久しぶりだね、星野くん!」