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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 144ページ)
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*119*
ふたりは、記憶を取り戻した星野くんに海で何があったのかをたずねてみました。
「星野くん、海で何があったの?」
「ぼくはすべてのことを忘れようと思っただけです。そしたらめまいが起きて記憶を一時的に失くしてしまったんだと思います」
星野くんがそこまで話したとき、彼を探しに行ったみんなが戻ってきました。
「星野くん・・・・!」
「みなさん、心配かけて本当にすみません」
「謝らなくてもいいよー。ぼくたち友達だもん!友達を助けるのが友達でしょ?」
「・・・・・わかりました。みなさんに迷惑をかけたおわびといってなんですが、ぼくが海に恐れをもっているわけを教えましょう」
星野くんはそれだけいうと、立ち上がって、自分の服に手をかけました。
「な、何するの星野くん!?」
星野くんはそれには答えず、服を脱ぎ始めました。
上半身裸になった星野くんを見て、みんな息をのみました。
メープルちゃんの目には大粒の涙が浮かんでいます。
「これが、ぼくが絶対に水着に着替えず、今まで服を脱いだ姿を見せたくなかったわけです」
星野くんの白い体にはいたるところに青あざだらけで見ているのも痛々しいほどでした。
「これはぼくが今までに受けた虐待やいじめで受けた傷、それと自分で傷つけたあとです。別に気にしないでください。たいしたことないんですから」
マロンくんは思わず大声で言いました。
「たいしたことない?!十分にたいしたことあるよ!どうしていままでだまっていたの?ぼくたち、友達でしょ!?ひとりで抱え込まないで、ぼくたちに相談すれば、いくらでも協力したのに!!」
「ぼくは天使です。人の助けを借りるわけにはいかないんです。それにぼくは虐待に耐えられるような精神力を身つけないといけないんです。そうすればたくさんの人を救えますから」
「星野くん!いい加減それやめてよ!きみは天使なんかじゃない!きみは人間なんだよ!?ひとりの人間が自分の身を犠牲にして他の人のためにすべてを捧げていいの?きみの幸せはどうなるの?」
「ぼくにははじめから幸せなんて文字は似合わないんです。ぼくには不幸が似合うんです。ぼくが不幸になることで、みなさんが幸せになる。それでいいじゃないですか」
なんともいえない悲しそうな星野くんの表情。声は冷静そのものともいえますし、感情がこもっていないように感じます。
「ぼくは天使なんです。だから不幸をぜんぶ吸い取って、みなさんを幸せにしてあげるんです。それがぼくの使命なんです」
パアン!
マロンくんが、あのマロンくんが星野くんの頬を思いっきり張ったのです。
「痛くありません。ぼくはどんな痛みにでも耐えられますから、ストレスがあるなら、ぼくをいじめてください。いくらいじめられても平気です」
淡々と恐ろしげな言葉を相変わらず無表情で語る星野くん。
「星野くんのバカ!」
「ぼくはバカじゃありません。天使です」
「バカだよ。きみは大バカだよ!イカレてるよ!きみは天使なんかじゃない・・・・」
「「マロンくん、やめて(ください)!!」」
王子とラブリが止めたときにはもう遅かったのです。
「きみは堕天使だよ!!」