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作者: aya ◆jn0pAfc8mM (総ページ数: 23ページ)
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7話 凛の不思議な秘密について
僕はいつも通り、書店に向かう。
使用人を信用していない訳ではないが、見逃しているのがないとも限らない。
くまなく探すと、良さそうな本が見つかる。
2冊の魔術書だった。
どっちも面白そうだ。
でも、2冊買うとお金がなあ……
僕はあくまで親戚であり、使用人がそこまで優しくしてくれる訳でもなく、
お小遣いがたくさんもらえる訳でもなかった。
とすると、やはりどちらか買うべき、なのだろうが。
これ、どっちも最後の1冊じゃないか。
帰ったりしたら、売り切れてるかも。
僕はずっと迷っていた。
「どん」
「うわあぁあぁ?」
後ろから少し押されて、僕はバランスを崩す。
本来ならこんな事はないのだが、衝撃緩和の能力は無意識じゃ発動しない。
本を読んで集中していた僕には、無理な事だった。
「どうしたんだ、亮二?」
「いや、ちょっとこの2冊を買いたくて」
「はい」
出されたのは、一万円札。
「えっと」
「礼だ。あの悪魔どもに襲われた時の」
断っても押し付けられそうなのでありがたく受け取り、おつりを返す。
「何か、おごってもらってばっかりだね」
「なら、バイトでもして返したらどうだ」
「バイトって……中学生なんだけど、僕」
「私、少し話し相手がいなくてな。家で私と話してるだけで時給750円。
どうだ?」
へえ……
うわあ、凄いやりたい。
「いいの、それで?」
「いいぞ」
「やります」
中学生は色々と、お金がかかるものなのだ。
それは、結構魅力的ではあった。
どこからそんなお金が湧くのかは謎だが。
「で、だな」
なんだかんだで、凛の家に通ってしまった。
これをヒモとか言うのだろうか。
……家に行く緊張はあまりない。
凛の話は、僕が知りえない真実がたくさん混じっていた。
それを聞きたくなるのだ。
「媒体って言うのは、世界中の力を集めている。
なぜその力が切れないか、分かるか?」
「たくさんあるから……?」
「それもある。しかし、無限ではない。
亮二、7年前の奇跡で何が起きたか覚えているな。
詳細はどこにも書かれていないが、光と言っても
かなり短いはずだ」
書かれていないのは、誰も僕の話を信用しなかったからだろう。
「うん、一瞬だった」
一瞬で、僕の両親が消えた。
幻のように長く感じたあの時、
光の向こうに巨人が手を伸ばす影が見えた。
その先に、1人の女の子がいたはずだった。
「詳細は後でいくらでも聞けるとして、
一瞬で、そんな大きな力を世界に分散させられるか?」
「無理、だね」
「そして、急速に整った魔術の環境。
これはかなり疑問に思っている人がいるようだが、
間違えなく、奇跡を分かっていたものがいた。
そして、政治なども大きく関わっていた、
そんな立場にいたのは明らかだ」
「そうかも。って、それヤバいんじゃ」
そんな人がいたら、知ったらダメな感じに立ち入ってる気がするんだけど。
「一番の救いは、それが何物か、て言う事は
分かってるって事だけど……あ、もう秘密」
くすりと笑う凛に、どこか既視感がある。
真実を明かしてくれそうにないので、僕は諦める前に、僕が見つけた本を出す。
「で、これは何?」
両親や、他の科学者達が共同で研究していた内容。
よく分からない仕組みで人間の体を作り、
そこに遺伝子を組み込んで好きな人間が出来る。
読んで理解出来たのはそんなものだった。
「何で亮二が、これを持っているんだ……?」
愕然とした凛の表情に、僕は凛に真実を話させる事が出来ると、
少しほっとする。
しかし、そこで彼女の呟いた真実は、思いがけない事だった。
「私は、人に作られた人間なんだよ、亮二……」
「え、凛?」
「亮二の両親に作られた、人間だ」
そして凛は、青い顔で溜め息を吐く。
「聞くか?」
「そりゃ、もちろん」
僕はとにかく、真実が知りたいのだ。