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作者: aya ◆jn0pAfc8mM (総ページ数: 23ページ)
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*15*
凛の話は珍しく、ぐちゃぐちゃで要領を得なかった。
それだけ動揺しているのだろう。
僕はなんとか理解出来た話を聞き返した。
「えっとつまり、僕の両親が、その、何とかって言う人間を作り出せたんだよね。
そしたら神様っぽい誰かさんがしゃしゃり出て来て、これ作られたら不老不死とかが
いっぱい増えて、自分より強いのが出て来ちゃうから、凛を隠して、
科学者や研究資料を消して……」
続きも整理する。
「でも凛は、ここにいた澄野凛を見つけて、助けたくなって、
そしたらいつの間にかアメリカにいた、でいいんだよね?」
「ああ……そう言う事だ」
「あの悪魔達は、凛の力を追っかけて、
澄野凛の両親とかを倒していった、って事だよね……?」
「……そうだ、合っている」
作られた人間である凛……いや、本当は名前のない人間。
両親がいる澄野凛。
それは別人だったのだ。
しかし、澄野凛が悲しんでいるさまを見て、
凛は助けに行ったら、まあここだった、と言う訳らしい。
「でも遺伝子の埋め込みは半分失敗して、
私は感情が希薄になったのだ」
と凛は言う。
にわかには、信じられない。
でも、その、凛を隠したやつが人間じゃなければ、その神様みたいなやつなら、
色々な説明がつく。
一瞬で整った魔術環境は、そいつが作った。
光も、そいつが作った。
僕の両親も、そいつが奪った。
あの力が、能力しかなかった僕に、魔術を与えたのだ。
僕はまだ震え続けている凛に、声をかける。
「大丈夫、凛?」
「……誰にも、知られたくなかったんだ。
こんなの、知られたら、絶対離れられてしまいそうで……」
「凛……大丈夫だよ、僕はちゃんと、ここにいるじゃないか」
別に僕はそれを知ったところで、軽蔑の気もなかった。
なので、本心を言う。
凛がその言葉で落ち着いてくれるのかは謎だったが、
「本当か!」
「あ、もちろん」
突然目を輝かされたので、少しびくっとしてしまう。
いつもとは違い、かなり年相応な表情だった。
と、ぎゅー。
「えーっと?」
「ありがとう、亮二……」
抱きつかれたようだ。
…………え、えーっと。
こう言う時、どうすればいいのだろうか。
焦って、とりあえず凛の頭を撫でてみた。
なんか抱きつく力が強くなってしまった。
頭の中であわあわしながら、でもまんざらでもないので、
結局僕は頭を撫で続けてみた。
「す、すまんな、取り乱して」
「いや、別にいいけど」
と、凛は俯いて、言った。
「すまない、私のせいで」
それが取り乱した謝罪じゃないのが、雰囲気で分かった。
話の中で、凛は言っていた。
僕の兄である正治は、凛を守り、昏睡状態なのだと。
魔術でずっと起きていない事は知っていたけれど、
凛を守るためだなんて始めて聞き、驚いた。
それでもまあ、お人好しで凛の話ばっかりしていた兄ちゃんの事だ。
「兄ちゃんも気にしてないよ、きっと」
「正治には、何十万回も謝ったから大丈夫だ。
でも亮二に秘密にしていたのが、気になっていてな」
「別に、いいよ。僕も気にしてないし」
「……よかった」
落ち着いたようなので、そう言えば、と僕は質問してみる。
「凛って、正治の真似してその口調なんだよね?」
「んな、な……どこでそれを聞いたんだよっ……」
「え、兄ちゃんから」
「おのれ正治、起きたら10連発で殴ってやる」
「前、1発あったよね」
「ああ、11連発か」
「で、どうなの?」
「まあ、そうなんだが」
「じゃあ殴るのよろしくね、凛」
「任せておけ」
可哀想な兄ちゃん。弟が、兄ちゃんの言っていた悪口を流したばっかりに。
頑張って耐えてね。
無責任な事を心の中で思いながら、僕たちは今度はもっと、
無駄な話を始めた。