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無表情な美人転入生と僕の話
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*16*

8話 信と森さんの仲はやっと進展しそうな感じ?

『お願いします、亮二くん!』

泣きそうな声で、電話の向こうから懇願して来た森さん。

開口一番そんな事を言って来るのは、彼女にしては珍しい。

「ど、どうしたの?」

『えっと、あのー、そのー、あっちょっと凛ちゃん』

がちゃがちゃっと雑音が混ざり。

『私だ』

凛に変わったようだ。

「どうしたの?」

『どうやら彼女、信とやらに告白をしたいらしい』

噴き出した。

「……やっと?」

そう言うのが精一杯だった。

だってそりゃ、森さんから信への片思い、それは周知の事実。

早く告白してしまえ……という視線ばかりが、2人には向いていた。

唯一気付いていないのは、信くらいのものだ。

もっとも、信がどう思っているのか、僕は知らないけれど。

『と言う訳で、私は彼女を落ち着かせるために、

亮二は連絡役に抜擢されたらしい』

勝手にですか。

「別に構いはしないけど、今日信、用事あったりしないの?」

『大丈夫のようだ。色々情報網があるって言っている』

「そりゃ、だろうね」

市の情報に詳しいのは、市議の何とかとか、

県の何とかに親戚がいるから、らしい。

もしかしたら、僕の知らないどこかで、森さんの情報網は

張り巡らされているかもしれない。

『で、公園に来てほしいとの事だ』

「分かった」

一応、話を聞いてから信を呼び出すべきだろう。

僕は手早く支度を整え、炎天下に踏み出した。


「と言う訳なんだよ、信」

携帯の向こうの信に呼びかける。

僕は信を呼び出すために、この事について洗いざらいすべて吐いた。

『でも、委員長が……な』

森さんと信は幼馴染み。幼稚園の頃から一緒らしいから、

少しくらい恋愛に発展する事もあるかもしれない。

けれど信は、それをどう思っているのだろう?

前にそれを聞いた時と、答えは変わっているのだろうか。

それだけ聞きたくて、僕は事情をすべて説明し、言った。

「で、返事は決められそう?」

『……まあ、な。前と変わらずだけど……』

前、そう言えば信は。

小学生の頃からかわれていた信を助けた帰りに、

委員長に告白されたらどうする? とふざけて聞いた時、

信は少し悩んで、こう言った。

「そりゃ、嬉しいぜ。もちろん、断る理由なんてない。

でも、そう言われちゃうと俺、分かんねえんだよ。

それは幼馴染みとしての感情なのか、恋愛なのか」

その時は分からなかったけれど、今は何となく分かる。

「じゃあ一応、受けるんだよね告白」

『教えるかよ。バレバレでも秘密にするぜ』

何だよそれ。

まあ、知ったらつまらないだろう。

「じゃあ、頑張れ」

『……変わったな、亮二』

「え、何が」

『お前の感情欠如、なくなってるぞ』

「マジか」

思い返すと……そう言えば、笑ったこともあった。

つい最近だけ。

確かに変わってる……まあ、いい。

「じゃあ、変わった記念に信のおごりでカラオケ行くか」

『いやいやいや! それはないだろ!』

少し、静かになる。

『今、外出た。また後でな』

「そうだね、また後で」

と言って、僕は電話を切る。

まあ、頑張れ。

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