完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

無表情な美人転入生と僕の話
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 23ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~

*4*

3話 美人転入生(澄野凛)を助けようと頑張ってみました

外に出ると、春だというのに冷たい風が吹き付ける。

退屈な授業が終わり、やっと帰る事が出来るようになった訳だ。

「なんだよ、寒そうにして」

「君が1番変なんだよ」

信は半袖短パン、僕は制服(冬服)を着ている。

別に制服は強制ではないが、夏にでもならなければ皆制服を着て来る。

それなのに。

「これで寒くないとか、おかしいよ」

「暑いじゃねえか」

と言う事らしい。

ありえないが、まあ人には人の感じ方があるだろう。

信は途中まで一緒の道を通るので、そこまで話す事にする。

「で、あの転入生はどうなんだ?」

「どうって……なんか、賢いっぽい」

「え、どこの学校出身なんだ?」

「いや……秘密だよ」

別に口止めをされていた訳ではない。

しかし、信は、僕の兄ちゃんのいる学校を知っている。

凛の出身がアメリカの学校だと言えば、「すごい縁だな! くっそ羨ましい」

と訳の分からない事を言いまくるだろう。

囃されるのを避けると言う同じような理由で、名前呼びは止める。

「っちぇ。いいじゃねえか、俺らの間に秘密はなしだぜ?」

「澄野さんの出身学校は、君と僕の間に関係ないだろう」

「……そりゃ、どうしても知りたい訳じゃないけど」

なんてくだらない事を言っていたら、不意に頭の中に地図が浮かんで来た。

「……500m先、B級の魔術使用を確認」

「え? あ、いつもの能力か?」

僕には魔術と別に、能力がある。

魔術が使われた時、使用された魔術のランクと、その場所、使用人物を感知できる力だ。

特にB級以上で卒業前の人が使用した魔術は、無意識に声に出す事があった。

この能力を知っているのは、信と森さんくらいだ。

だから、信は別に気にしていないようす。

「それくらい見逃してやれよ、厳しくやる必要もないだろ?

風紀委員とは言え、さ。どうせ被害はないんだろ?」

信には、この能力の詳細も教えていた。

被害があったり、それが不発に終わった場合、口に出していればそれを漏らさず言う。

なので、今回は特に危険もなかった訳だ。

……今がそんな状況なら、本当にそんな悠長に出来るなら。

僕は今のように、魔術使用者を意図的に口に出さなかったりしない。

僕は、

「早く帰ろうぜ」

と笑う信を無視して、神経を集中させる。

さっきのB級魔術は、人を死に至らしめる魔術だ。

難易度の区分ではCくらいだが、被害の状況がB級に当たるから、結構怖い。

相手は、誰だ?

と、幻術を発見する。

魔術と幻術は微妙に違うので、僕は意識しないと感知できない。

……幻術も、ランクはある。

「520m先、A級の幻術使用を確認。適用範囲は約10km。

使用者は不明、継続してD級の魔術使用」

Aか。なかなかじゃないかな。

ちょっと詳細を見て、自分を龍に見せる幻術だと、分かる。

でも、継続的に低級の魔術使用って……?

更に詳細を見る。

これは召還獣や悪魔、魔獣の類が、体を保つ為に使っている魔術だ。

「おーい、亮二?」

「っ、510m先、S級の魔術使用確認……」

ランクが上になる魔術は、難易度や被害範囲で基準を満たしているものだ。

S級の被害基準は、確か、『ひょっとしたら世界を滅ぼしそうなやつ』じゃなかったっけ?

いや、違うかも。

……でもこの範囲は、小さい。

難易度はAになりそうなくらいだ。

とすると、この魔術は、元々範囲の広かった魔術を、圧縮しているのだ。

それ、かなりの力量がないとキツいんだっけか……?

ああ、そんな悠長な暇はなさそうだ。

今頃僕はそう思う。頭の中で、魔術の応酬は激しさを極めてきている。

「信、ちょっと楽しそうな魔術戦があるんだが、行くか?」

「え、まあ」

僕は信を後ろに、走った。

3 < 4 > 5