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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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Episode13 『図書室 -LibrarY-』
 9月12日(水)12:20/秋笠 藍


 教室に置いてあった弁当を無事確保し、何事もなく昼食を終えた俺たちは、廊下をただただ歩いていた。

 理由は、あづ――叶葉が願いを叶えたいから、すなわち誰かを殺したいと思ったからだ。

「もうここまでくれば好戦的な人しか残ってないでしょ。だから、歩いてれば会えるんじゃない?」

 と、そんな楽観的なことを言いながら校舎内を徘徊する。やっぱり人が減っているせいか、なかなか出会うことは出来ない。

「ねぇ、そういえば。藍には何かないの? 願い事」

 叶葉がこっちを向いて尋ねてきた。……そういえば、まったく考えていなかった。

 それをそのまま伝えると、叶葉は少し嬉しそうにほほえんだ。

「そう。じゃあ、私が願いをかなえてもいいわね」

 そう言うと、叶葉は歩調を速めて再び誰かを探し始めた。



 ガタン、と何処からか物音が聞こえた。それはすぐ近くの図書室からだった。

「……誰かいるかも。行ってみましょ」

 扉を開け、音の根源を探してみるが、なかなか見つからない。そもそもこの学校の図書室はだだっ広いから、すぐには見つからないのもうなずける。

 しかしその数分後、その少女はいきなり姿を現した。

「うっ、うわぁあああああっ!!」

 そう叫び声を上げて俺に向かってくる彼女。そのナイフの先端は確実に俺を狙っていた。

「藍ッ!」

 叶葉が俺の名を呼ぶ。すぐに駆けつけてくれるだろうが、断然に彼女の方が早い。

 ――どうする? このまま死ぬか?

 まただ。またあの声。俺の声だ。

 答えは決まっている。……死にたくない。

 ――殺してでも?

 ああ、そうするしか方法はない。


 すっと、身体の自由が利かなくなる。不思議な感覚だが、もう慣れてしまった。

 手元には、いつものあの拳銃。俺はその銃を彼女に向けると、容赦なく発砲した。

 弾は彼女の鳩尾のあたりに当たった。「う、ぐ……っ」とうめき声を上げる彼女にとどめを刺すべく、俺は今の“意思”に従って長テーブルの向かいで倒れている彼女の方へ歩いた。

 彼女を見下せるくらいまで近づくと、その脳天に銃口を突きつけた。

「……もう、いやだよぅ……。殺すのも殺されるのも、痛いのも……」

 最後まで聞かず、俺の指は引き金を引いた。乾いた音が静かな図書室内にこだまする。それは人の命を奪う音だ。

 身体が返ってくる。自分の“意思”で動かせるように戻ったのだ。そうなった途端、さっきまで受け入れていた状況を拒絶し始める。

 赤いリボンをつけた一年生の彼女はもう動かない。また、俺が殺した……?

「……さあ、もう行きましょ。早くしないと、一時間経っちゃう」

 そうか。昼食をとっていた分、一時間の感覚が鈍っていたが、もうそんな時間だ。急がないと、叶葉は死んでしまう。

 自分に悩んでいる暇はない。そう、思い込んで俺は叶葉と一緒に図書室を後にした。

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