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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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Episode17 『あい -LovE-』
 9月12日(水)12:42/綿原 言音


 言い終えた後、そっと藍くんから離れる。すると、藍くんの顔色が明らかにおかしくなっていた。

 驚愕と、恐怖と、不安と、そんな複雑な表情で頭を抱える藍くん。

「あ、あぁ……。あぁああぁああ……」

 きっと、全てを思い出しているのだろう。あの事件のことを。あんなの、忘れてた方がいいのに。でも、あれはあたしたちの大切な出会いだから。

「…………。……言音、ちゃん?」

 恐る恐る、といった風に聞いてくる藍くん。あたしはそれに、「うん」と短く答えた。


 9月12日(水)12:42/秋笠 藍


 思い出した。あの時の事。 それと、彼女のことを。

 どうして、忘れていたのだろうか。どうして、この娘のことを、知らないなんて。

「…………。……言音、ちゃん?」

 一ヶ月程度一緒に軟禁されていた、懐かしいその名前を、久しぶりに呼んだ。

「うん」

 笑顔を浮かべながら、言音ちゃんは答えた。確かに、この声はあの時のあの娘の声だった。

「思い出してくれた? 警察があたしたちを見つけてくれる直前に、藍くんが言ってくれたこと」

 俺が……。いっそ死んだ方がマシだとさえ思ったあの最後の日に、俺が言ったこと……。

『“生きて帰れたら、どこかへデートにでも行こうね”』

 ――そうだ。あの時俺は、確かにそんなことを。

「あの時って、どういうこと?」

 隣にいる叶葉が、割り込むようにして聞いてきた。
俺はそれに、簡単な説明をして答える。

「……東郷?」

 何故だか叶葉は、あいつの名前に強く反応していた。そして、腕を組んで、目を瞑って考え事をし始めた。

「ねえ、藍くん。あの時言ってくれたことは、嘘じゃないよね? 好きだって、ちゃんと言ってくれたもんね」

 言った。の、だと思う。俺の記憶は確かにあの頃はこの娘が好きだったのだと教えてくれた。しかし、今と昔は違う。

 俺は正直に、今思っていることを打ち明けた。昔は確かにそうだったが、今はそうじゃないと。

 言音ちゃんも、少し思いをめぐらせるような仕草をしてから、ハキハキとした声で、

「そう……、わかった。じゃあ藍くん。――あたしを殺してくれないかな?」

 と言った。


 9月12日(水)12:45/綿原 言音


 藍くんに彼女がいた。許せない。でも殺せなかった。

 なんで?

 ――藍くんが庇ったから。

 そりゃあ、5年も経てば心変わりもあるだろうけど……。

 ああムカつく。殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい。

 でもそれだと藍くんが悲しむんだろうなぁ……。それは嫌だなぁ。優しい藍くんなら、ここがいくら夢とはいえ、絶対泣いちゃうくらいにはショック受けちゃうよね。

 仕方ないから、あたしは最初の目標だけ果たそうかなぁ。

 藍くんが庇うんだから、信用してもいい、かな。裏切ってたら現実で殺すけどね。

 とりあえずは、あたしを殺してもらおーっと。

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