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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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10~ 20~ 30~

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Episode24 『邂逅 -EncounteR-』
 9月12日(水)14:21/藤貴 杁夜


 例の神サマが言ってた、僕たち次第で誰かを傷つける。その意味を僕はようやく理解した。

「寄越せっ! その銃!!」

「いやよっ。わたしが先に見つけたのにぃっ!」

 一年生の女子と、二年生の男子が取っ組み合って一丁の拳銃を奪い合っていた。武器がないおかげでただのケンカのようだが、お互いさっきまでの殺し合いのせいで制服に血が付いているから、なかなかに凄惨たるものだった。

 漁夫の利を狙いたいものだったが、生憎女生徒の方が放してくれそうもなかったので、踵を返してその場を離れた。ずっとここにいれば、巻き込まれかねないし、探したほうが早そうだ。



 そう言って、また歩き出すこと数分。階段の前で、ようやく銃を見つけることができた。ホッとする一方、まだ時間の余裕があるので、少しいたずら心が働いてしまった。

 僕は制服の内ポケットにそれを隠すと、さもまだ見つけてない風を装いながら、歩き始めた。

 さて、保険は出来たし、僕はもう一丁探してみようかな。




 9月12日(水)14:30/秋笠 藍


 見つからない。校舎のあらゆるところを探したはずだ。さすがに教室内は見てないけれど、叶葉のがわかりやすい場所にあったから、それはないだろうとふんで、見なかったのだ。

「ないわね……。どうするの? 死ぬ?」

「絶対ごめんだ」

 俺は大分あせり始めていた。早く見つけないと、このままじゃ。――仕方ない、奪ってでも手に入れないと。

 そう思っていたときだ。

「あ、あれっ」

 叶葉が叫んだ。指差す方向を見ると、そこには拳銃が。そして、それに向かって歩いてくる人影。

 あわてて、走ってそれを取りに向かった。とられてたまるか。

「動くなっ! 動いたら撃つぞ!!」

 今まさに拳銃を手にしようとしているところだったが、いきなりの大声に本当に止まってしまう。

 見ると、青いネクタイをした先輩であろう男子生徒が、俺たちに向かって拳銃を突きつけていた。

 ……え、拳銃!? どうしてここで? 他人に向けてるってことは見つけたやつじゃないのか? でもだったらどうして持っている?

 俺はそのままで硬直しているが、叶葉は何かを悟ったかのようにため息をつきながら、ホールドアップをした。

 先輩は銃口を向けたまま俺の方まで歩いてくると、俺のこめかみに銃口を当てたまま、目の前の拾おうとしていた拳銃を手に取った。

「じゃあこれは貰ってくから。サヨウナラ」

 引き金を今にも引こうとしているのが気配でわかる。……ヤバい、これは死ぬ。ここで死んだら、どうなるんだ?




「なーんてね」




 え?

 銃口が離れ、俺の目の前にさっきの拳銃が差し出された。思いがけないけれど、とりあえずそれを受け取って体勢を整えた。

「……藤貴先輩、なんのつもりですか?」

「いや、暇つぶし。てかどうしたの? これ、彼氏? 侑馬はもういいわけ?」

 話が全然読めない。誰? 叶葉の知り合いなのか?

 それに、また侑馬って名前……。

「叶葉……知り合い?」

「藍はただ協力関係にあるだけです。この人は、元彼……いえ、“本当の”彼氏の親友」

 彼氏、居たんだ。

「ふぅん。……ん? 藍? ……ああ、あんたがアイちゃん?」

「はぁっ!?」

 値踏みをされるような視線の最中、先輩はなかなか呼ばれたくない呼称で、俺を呼んだ。

「さっきの放送で聞いた時はすっかり女の子かと思ってたよ。ごめんね? アイちゃん」



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