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Episode24 『邂逅 -EncounteR-』
9月12日(水)14:21/藤貴 杁夜
例の神サマが言ってた、僕たち次第で誰かを傷つける。その意味を僕はようやく理解した。
「寄越せっ! その銃!!」
「いやよっ。わたしが先に見つけたのにぃっ!」
一年生の女子と、二年生の男子が取っ組み合って一丁の拳銃を奪い合っていた。武器がないおかげでただのケンカのようだが、お互いさっきまでの殺し合いのせいで制服に血が付いているから、なかなかに凄惨たるものだった。
漁夫の利を狙いたいものだったが、生憎女生徒の方が放してくれそうもなかったので、踵を返してその場を離れた。ずっとここにいれば、巻き込まれかねないし、探したほうが早そうだ。
そう言って、また歩き出すこと数分。階段の前で、ようやく銃を見つけることができた。ホッとする一方、まだ時間の余裕があるので、少しいたずら心が働いてしまった。
僕は制服の内ポケットにそれを隠すと、さもまだ見つけてない風を装いながら、歩き始めた。
さて、保険は出来たし、僕はもう一丁探してみようかな。
9月12日(水)14:30/秋笠 藍
見つからない。校舎のあらゆるところを探したはずだ。さすがに教室内は見てないけれど、叶葉のがわかりやすい場所にあったから、それはないだろうとふんで、見なかったのだ。
「ないわね……。どうするの? 死ぬ?」
「絶対ごめんだ」
俺は大分あせり始めていた。早く見つけないと、このままじゃ。――仕方ない、奪ってでも手に入れないと。
そう思っていたときだ。
「あ、あれっ」
叶葉が叫んだ。指差す方向を見ると、そこには拳銃が。そして、それに向かって歩いてくる人影。
あわてて、走ってそれを取りに向かった。とられてたまるか。
「動くなっ! 動いたら撃つぞ!!」
今まさに拳銃を手にしようとしているところだったが、いきなりの大声に本当に止まってしまう。
見ると、青いネクタイをした先輩であろう男子生徒が、俺たちに向かって拳銃を突きつけていた。
……え、拳銃!? どうしてここで? 他人に向けてるってことは見つけたやつじゃないのか? でもだったらどうして持っている?
俺はそのままで硬直しているが、叶葉は何かを悟ったかのようにため息をつきながら、ホールドアップをした。
先輩は銃口を向けたまま俺の方まで歩いてくると、俺のこめかみに銃口を当てたまま、目の前の拾おうとしていた拳銃を手に取った。
「じゃあこれは貰ってくから。サヨウナラ」
引き金を今にも引こうとしているのが気配でわかる。……ヤバい、これは死ぬ。ここで死んだら、どうなるんだ?
「なーんてね」
え?
銃口が離れ、俺の目の前にさっきの拳銃が差し出された。思いがけないけれど、とりあえずそれを受け取って体勢を整えた。
「……藤貴先輩、なんのつもりですか?」
「いや、暇つぶし。てかどうしたの? これ、彼氏? 侑馬はもういいわけ?」
話が全然読めない。誰? 叶葉の知り合いなのか?
それに、また侑馬って名前……。
「叶葉……知り合い?」
「藍はただ協力関係にあるだけです。この人は、元彼……いえ、“本当の”彼氏の親友」
彼氏、居たんだ。
「ふぅん。……ん? 藍? ……ああ、あんたがアイちゃん?」
「はぁっ!?」
値踏みをされるような視線の最中、先輩はなかなか呼ばれたくない呼称で、俺を呼んだ。
「さっきの放送で聞いた時はすっかり女の子かと思ってたよ。ごめんね? アイちゃん」