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Episode2 『興味 -InteresT-』
9月11日(火)23:35/藤貴 杁夜
気が付くと何でも出来ていた僕は、物理的に可能でも倫理的に“出来ない”モノに憧れを抱くようになっていた。
――いつからか、“人殺し”に興味を持ちはじめていたのだ。
そんな僕は、奇妙な夢を見ていた。
舞台は我が学舎、坂城高校のグラウンド。
アイテムは僕の利き手である右手に握られたシースナイフ(鞘ないんだけど。じゃあ何ナイフ?)。
……組み合わせとしてどうかしている。
夢とはいえ、包丁じゃない刃物を触ったのは初めてだ。ちょっとはしゃいでしまいたくなる。
とりあえず、近くに当たって危ない物もないし、適当にナイフを振ってみた。ひゅん、ひゅんと空気を切る、鼓膜を刺激する音が心地よい。――ちょっと楽しいぞ、これ。
こうなるとナイフで何か切ってみたくなる。辺りを見回すと、屋外バスケットコートの方に何かが落ちているのが見えた。近づいてみると、それはバスケットボールだった。回収し忘れたのだろうか?
それを拾い上げると、僕は特に力も入れずに、ボールに向かってナイフを降り下ろした。サクッとボールの中にナイフの刀身が埋まっていく。それを抜くと、間の抜けた音がバスケットボールの亀裂から漏れ出てきた。
「……さっきまでなら勢いよく弾んだだろうボールは、一気にただのゴムの塊に成り下がったのだった」
なんとなくナレーションっぽいものをつけてみる。やっぱり楽しい。しかしもうこのボールの成れの果てには興味が無い。少し距離のある茂みのほうに投げ捨てた。
もっと何かを切りたいと思った。どうせここは僕の夢だ。なら、何をしたっていいだろう。
それに、このナイフはとても切れ味が良い。良すぎる。
そんなナイフで切りたいモノ。そう、例えば、にん――
『エー、坂城高校ノ生徒ノ皆サン。コンバンハ』
「っ!?」
突然、直接脳に“声”が響いてきた。不吉な声だと、直感的に思う。
『ワタシハ“神ノ使い”。マア、コノ<<ゲーム>>ノ“ゲームマスター”トデモ思ッテオイテ下サイ』
……ゲーム? 僕の夢じゃなくて?
『オメデトウゴザイマス。アナタ方ハ神ニ選バレタノデス。――アナタ方ニハ、コレカラ神ノ命ニ従イ“殺シ合イ”ヲシテモライマス』
全身の力が抜けていくのを感じた。握力を失った手から開放されたナイフは重力に従い真下に下降していく。
さくっ、と音もなしにナイフは地面に突き刺さった。さすがの切れ味だ。足に刺さらなくてよかった。
自分の身体でさえ、がくん と膝から前に崩れ折れてそのまま膝と両手をつき、四つん這いの体勢になる。
『アナタ方坂城高校ノ全校生徒472名ノ内、11名ガ無事ニ現実ニ還レ、更ニソノ中カラタッタ一人ダケ、願イヲ叶エラレル権利ガ与エラレマス』
つまり、この学校の生徒全員でたった十枠、更にもうひとつ別格の一枠を奪い合えと?
そんなのむちゃくちゃだ。勝率たったの二%だぜ?
『“コレハ壮大ナ暇潰シ。神ノ退屈シノギデアル!”』
ゲームマスターの“声”がより一層大きくなる。
『サァ、アナタ方の道ハタダヒトツ! “神ヲ退屈サセルナ。殺セ。殺セ。殺セッ!!”』
“そう、例えば、人間とか”
――――マジで?