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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*86*
………あの時の子は絶対レリクだった………――――
意識がもうろうとしながら、クリスは9年前を思い出していた。
―9年前―
『うう…。ひっぐ…。どうしてみんな私を避けるの……?私何もしてないのに……ッ!』
クリスが6歳のときだった。
彼女は泣きながら花が生い茂る草原にしゃがみ込んでいた。
すると、後ろからザッと草を踏む音がした。
『……泣いてるの?』
ただ、そうつぶやいた薄い金髪に褐色の肌を持つ同い年ぐらいの少年。
少年は、怪我でもしたのか上半身に包帯を巻いてあった。
『……だ…っれ……?』
ただそれしか言えなかったクリスの隣に少年は座り込む。
そんな少年にいつの間にかクリスも泣き止んでいた。
『…事情があって名前は言えない。……けど、これあげる』
『…わあ…!キレイ…!』
少年は首飾りをクリスに掛けると満足そうに笑った。
クリスは黄金のピラミッド型の首飾りを見つめていた。
『でも…いいの?こんなきれいなもの貰って…』
『…いいんだ。僕が持っててもどうしようもないから。……それに、君にはずっと笑っててほしいから……』
レリクはそう言ってクリスの手に自分の手を重ねる。
クリスは頬を赤らめながら目線を下に向けた。
『ありがとう…!ずっと大事にするね!』
『うん。そうしてくれた方がうれしいな。……じゃあ、僕はもう行くね』
そう言って少年は立ち上がった。
少年につられてクリスも立ち上がる。
『わ、私、神宮クリス!あなたは?また…会えるよね?』
『…ごめんね。名前はまだ言えない。……待ってて。もう少し大きくなったら絶対に迎えに行くから……』
『うん…!待ってる!首飾りと一緒に!』
『ありがとう。クリス』
満面の笑みを浮かべたクリスを見てうれしそうに少年も笑った。
そして、子供ながらの指切りをした。
+++
(……あれからだったなぁ……。パンにゃにあったのは……)
ゆっくりとクリスは目を開けた。
「……レリク……ッ!?」
クリスの目に映ったのは、血まみれになって倒れるレリクに、それを見下げる源次郎だった。