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*26*
「窃盗王…!?何をふざけたことを…!」
「………」
カイザーが憎しみのこもった目で窃盗王を睨む。
次の瞬間、ギルバートは何も言わず無表情に窃盗王に殴りかかる。
うまくよけた窃盗王がいた地には大きな穴が開いた。
「おいおい…。人の話は最後まで聞くもんだぜ?」
「オレは長い話が嫌いなんでね。アンタはさっさと拘束されてくれや」
「落ち着くんだ。ギルバート。ここは神聖なる大広間だ」
見据えるように対峙するギルバートと窃盗王に喝を入れるようにウェザードは杖でギルバートを押さえた。
彼の言葉にギルバートも落ち着いたのか頭を掻いた。
「そんなに返してほしいなら返してやるよ!…まあ、汚ねえ死体だけだけどな!!」
ドサッと粗末に窃盗王は先代国王の死体(今でいうならばミイラ)をアギトとリリアの前に放り投げた。
「なんて罰当たりな人なの!?この人は死んだといっても先代国王よ!?」
「君には礼儀というものから教えていかないとだめみたいだね!」
ユールとホルスは怒りをにじませながら武器を片手に一歩踏み出していた。
そんな2人に立ちはだかるようにアイシスは窃盗王を睨んだ。
「…おい。それは汚ねえ死体なんかじゃない。正真正銘ミイラなんだよ!ちゃんとした名称で呼びやがれ!!」
「それ今言うことじゃなくね!?」
「…さすが風来坊…」
ビシッと窃盗王に指差すアイシスにリュウは思わず突っ込みを入れる。
リュナは頭を抱えて呆れている。
「…お師匠様…。どうしますか?」
「まだ待つんだ。」
イリアはだれにも気づかれないようにそっとウェザーズに耳打ちする。
彼の返答を聞くと、イリアは小さく頷いた。
「…で、窃盗王さんよ。ここに何しに来たってんだ?まさか、戦争でもやる気じゃないだろうな?そんなことしたらアンタここで死ぬぜ?」
ははは、と軽い笑みを浮かべて窃盗王に挑発するように言うユウラに窃盗王は嘲笑しながら叫んだ。
「はははははは!!戦争!?そんなのどうだっていい!!俺様は自由に生きたいだけだ!…まあ、今回は……」
「…!?貴様、視界にリリア様を入れるな!下賤者!!」
突如、リリアを視界に入れる窃盗王。その視線に気が付いたカヤルは唸るように彼に言い放った。
だが、窃盗王はそんな彼女のことなど全く聞き入れずに目を見開いた。
「今回は御妃様のリリア様を奪いに来たんだよお!!」
「……!!」
「リリア!!」
「リリア様!!?」
ゴオッと突風が来たかと思った瞬間、いつの間にかリリアは窃盗王の腕の中にいた。
「…あなたは一体何を…!?」
「おっと、今は眠ってもらうぜ」
「あ……」
「貴様あああああああああ!!リリア様を放せ!!」
手刀を受け、気絶してしまったリリアに激昂したカヤルは双剣で窃盗王に切りかかろうとした。
だが、次の瞬間、外から、つまり街からすさまじい爆発音が響き渡った。
わーわー!と、つんざすすような民衆の悲鳴が響き渡る。
「……いいのかよ!?この女だけ助けようとしたらお前の国の人間が死ぬことになるんだぜ!?」
「……貴様……ッ!」
狂気的な笑みを大きく浮かべる窃盗王にアギトは立ち上がりながら睨んだ。