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*34*
「ご…めんなさい・・・。みんな…」
「しゃべるなリリア!ウェザーズ、イリア、治療してやってくれ!」
「もう…いいの」
アイシスはウェザーズとイリアを呼んだ。
駆け寄ろうとした魔術師師弟だったが、それはリリア本人によって制止される。
そんな彼女にみんなの目は見開かれた。
「…御妃様…。いえ、リリア。君はもしかして…」
「ずっと…。黙っていて申し訳ありません…カイザーお兄様…」
「!?どういうことだ!?」
静かにリリアの隣に座るカイザーにリリアは彼の持っていた首飾りの欠片をスッと受け取る。
そんな彼らにアギトは思わず叫んでいた。
「……私は正式な王族の両親だったから姫という地位を得ました……。けど、カイザーお兄様のお母さまは一般市民という身分からお兄様はヴィーナスから追放されるように……ノアールの神官になりました…」
「…ということはカイザーとは腹違いの兄妹…。どうして御妃様だけが知っていたのですか…?」
ふと、イリアは不思議そうな目でリリアを見つめる。
「私とお兄様は私が7歳の時に政略結婚をしにノワールに来るまで見たことはありませんでした…。ですが、以前にお父様から聞いたことがありました……」
「……じゃあ、その首飾りは…」
アイシスがつぶやくと、リリアは小さく頷いた。
「ええ…。お父様の形見の首飾りを割って、私たち兄妹に渡したのだと、父さまが……」
「すまない、リリア!私は今まで気づかずに…!」
「カイザー・・・・・・」
ガクンと項垂れて静かに泣くカイザーにアギトは何も言えなかった。
「いいのです…。最後に…分かり合えたからよかった……」
「最後だなんて言うな!リリア!」
「ごめ…んなさい……。でも、今まで幸せでした…。ありがとう…」
そう、リリアは微笑むと、力が抜け、そのまま動かなくなった。
「リリア―ーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
アギトは泣き叫びながらリリアの亡骸を抱きしめる。
すると、アイシスの姿は次の瞬間、一瞬にして消えた。
「…アイシス!?」
「いったいどこに!?」
突然の出来事にイリアとウェザーズはあたりを見渡す。
すると、ガラガラという破壊音が洞窟の中でこだまする。
「…王よ!洞窟が崩れていきます…!」
「……分かってる…!」
カイザーの言葉にアギトは立ち上がる。
リリアは光となって消えていた。
「……アイシスはきっとバルバトスに連れていかれたんだ…。窃盗王を止めさせるために!!」
アギトは凛々しく言い放つと、4人は出口に向かって走り出した。