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終焉の秘宝ラグナロク【完結!】
作者: 鳩麦白夜  (総ページ数: 39ページ)
関連タグ: エジプト 
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10~ 20~ 30~

*34*

「ご…めんなさい・・・。みんな…」
「しゃべるなリリア!ウェザーズ、イリア、治療してやってくれ!」
「もう…いいの」


 アイシスはウェザーズとイリアを呼んだ。
 駆け寄ろうとした魔術師師弟だったが、それはリリア本人によって制止される。
 そんな彼女にみんなの目は見開かれた。


「…御妃様…。いえ、リリア。君はもしかして…」
「ずっと…。黙っていて申し訳ありません…カイザーお兄様…」
「!?どういうことだ!?」


 静かにリリアの隣に座るカイザーにリリアは彼の持っていた首飾りの欠片をスッと受け取る。
 そんな彼らにアギトは思わず叫んでいた。


「……私は正式な王族の両親だったから姫という地位を得ました……。けど、カイザーお兄様のお母さまは一般市民という身分からお兄様はヴィーナスから追放されるように……ノアールの神官になりました…」
「…ということはカイザーとは腹違いの兄妹…。どうして御妃様だけが知っていたのですか…?」


 ふと、イリアは不思議そうな目でリリアを見つめる。


「私とお兄様は私が7歳の時に政略結婚をしにノワールに来るまで見たことはありませんでした…。ですが、以前にお父様から聞いたことがありました……」
「……じゃあ、その首飾りは…」


 アイシスがつぶやくと、リリアは小さく頷いた。
 

「ええ…。お父様の形見の首飾りを割って、私たち兄妹に渡したのだと、父さまが……」
「すまない、リリア!私は今まで気づかずに…!」
「カイザー・・・・・・」


 ガクンと項垂れて静かに泣くカイザーにアギトは何も言えなかった。


「いいのです…。最後に…分かり合えたからよかった……」
「最後だなんて言うな!リリア!」
「ごめ…んなさい……。でも、今まで幸せでした…。ありがとう…」


 そう、リリアは微笑むと、力が抜け、そのまま動かなくなった。


「リリア―ーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 アギトは泣き叫びながらリリアの亡骸を抱きしめる。
 すると、アイシスの姿は次の瞬間、一瞬にして消えた。


「…アイシス!?」
「いったいどこに!?」


 突然の出来事にイリアとウェザーズはあたりを見渡す。
 すると、ガラガラという破壊音が洞窟の中でこだまする。


「…王よ!洞窟が崩れていきます…!」
「……分かってる…!」


 カイザーの言葉にアギトは立ち上がる。
 リリアは光となって消えていた。


「……アイシスはきっとバルバトスに連れていかれたんだ…。窃盗王を止めさせるために!!」


 アギトは凛々しく言い放つと、4人は出口に向かって走り出した。

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