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終焉の秘宝ラグナロク【完結!】
作者: 鳩麦白夜  (総ページ数: 39ページ)
関連タグ: エジプト 
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「……なぜこの国を滅ぼす?なんでリリアを殺した?」
「…理由はないぜ。あの女については俺を拒絶したからだ。」
「そうか」


 アイシスは真っ白な空間に飛ばされていた。
 だが、彼女にとってそんなことどうでもよかった。目の前にいる窃盗王を倒す。それだけだった。
 そして彼女は千年槍で窃盗王に襲い掛かる。
 窃盗王は邪神の力で触れることなくアイシスの攻撃を回避した。


「……どっかのおとぎ話でならオレとお前はここで戦うんだろうが…。それはもうないぜ」
「どういうことだ!?」


 アイシスは再び槍を構える。
 すると、窃盗王は邪神特有の鋭い黒い爪を自らの胸に突き刺した。
 その旨からはどくどくと赤黒い血が流れる。


「オマエ…!?何を…!!」
「洞窟であったように嘘の死じゃないぜ。俺はもう死ぬ…。だが、この国と共にな!」
「!?今までお前が何をしたと思ってる!?今更死ぬなんて勝手すぎるだろうが!!」
「……オレが唯一愛した女を不本意とはいえ殺したんだ。……俺はこの世界に価値は見いだせない…」


 ただ、窃盗王は悲しそうにそういうと、その姿をフッと消した。


「……待て…ッ!」


 アイシスは窃盗王を追おうとした瞬間、シャボン玉がわれるようにパチン、と場所は崩された洞窟に戻っていた。


「ここは……!?」


 アイシスは思わず目を疑った。崩されていたのは洞窟だけではない。国が。世界が。すべて終わったように地獄絵図と化していた。


「アギト!カイザー!みんな!無事なのか!?…!!」


 歩き出した瞬間、ゴオっと紫色の炎が天を貫く様に立ち上った。
 それを見た瞬間、アイシスは悟った。



―――――……止めなければ。



「……導け。バルバトス」


 そうつぶやくと、彼女は一瞬で天空といっていい高い場所にたどり着いた。
 そして、そのオーラで感じ取っていた。これを止めたら自分は……。
 だが、後悔や恐怖はなぜかなかった。


「……今そっちに行ってやるよ。リリア…。一人は…悲しいもんな…」


 パチン、と、千年槍で大きな紫色の炎を突き刺す。
 かあああ、とアイシスは光の炎に包まれていった。


「……じゃあな!みんな!」


 屈託のない笑みを浮かべたアイシスはその光の中へ消えて行った。
 そして、間髪入れずに千年槍を外へぶん投げた。





―――――――………せめて、千年槍だけはアギトのもとへ…

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