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*35*
「……なぜこの国を滅ぼす?なんでリリアを殺した?」
「…理由はないぜ。あの女については俺を拒絶したからだ。」
「そうか」
アイシスは真っ白な空間に飛ばされていた。
だが、彼女にとってそんなことどうでもよかった。目の前にいる窃盗王を倒す。それだけだった。
そして彼女は千年槍で窃盗王に襲い掛かる。
窃盗王は邪神の力で触れることなくアイシスの攻撃を回避した。
「……どっかのおとぎ話でならオレとお前はここで戦うんだろうが…。それはもうないぜ」
「どういうことだ!?」
アイシスは再び槍を構える。
すると、窃盗王は邪神特有の鋭い黒い爪を自らの胸に突き刺した。
その旨からはどくどくと赤黒い血が流れる。
「オマエ…!?何を…!!」
「洞窟であったように嘘の死じゃないぜ。俺はもう死ぬ…。だが、この国と共にな!」
「!?今までお前が何をしたと思ってる!?今更死ぬなんて勝手すぎるだろうが!!」
「……オレが唯一愛した女を不本意とはいえ殺したんだ。……俺はこの世界に価値は見いだせない…」
ただ、窃盗王は悲しそうにそういうと、その姿をフッと消した。
「……待て…ッ!」
アイシスは窃盗王を追おうとした瞬間、シャボン玉がわれるようにパチン、と場所は崩された洞窟に戻っていた。
「ここは……!?」
アイシスは思わず目を疑った。崩されていたのは洞窟だけではない。国が。世界が。すべて終わったように地獄絵図と化していた。
「アギト!カイザー!みんな!無事なのか!?…!!」
歩き出した瞬間、ゴオっと紫色の炎が天を貫く様に立ち上った。
それを見た瞬間、アイシスは悟った。
―――――……止めなければ。
「……導け。バルバトス」
そうつぶやくと、彼女は一瞬で天空といっていい高い場所にたどり着いた。
そして、そのオーラで感じ取っていた。これを止めたら自分は……。
だが、後悔や恐怖はなぜかなかった。
「……今そっちに行ってやるよ。リリア…。一人は…悲しいもんな…」
パチン、と、千年槍で大きな紫色の炎を突き刺す。
かあああ、とアイシスは光の炎に包まれていった。
「……じゃあな!みんな!」
屈託のない笑みを浮かべたアイシスはその光の中へ消えて行った。
そして、間髪入れずに千年槍を外へぶん投げた。
―――――――………せめて、千年槍だけはアギトのもとへ…