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*紹介文/目次*
人生初ライトノベルにして、いきなり長篇です。
初心者ですが厨弐病(邪気眼系の中二病はこう表記した方がそれっぽいと思っているw)をこじらせて書き上げてしまいました!
ジャンルは厨弐病による厨弐病のための厨弐病な剣と魔法の異世界ファンタジーとなっています。魔王、堕天使、七つの大罪、竜、騎士、といったベタな内容で、私の思い描く彼等を綴りました(天使や悪魔の設定は失○園など、キ○スト教関連の伝承で気に入った説を取り入れ、アレンジしています)
拙い出来で初歩的なミスも多いことでしょうが、計十二万字程度の完結までお付き合い頂ける酔狂なお方がいれば幸いです(※12/30 二十の罪で完結しました)
アドバイス、意見などお待ちしています。
あらすじ:行方不明となった眷属のベルゼブブを捜し、地獄より弟ミカエルの支配する現世へと舞い戻った魔王ルシファーが女騎士イヴと出会ったり、悪魔を使役する指環の使い手・ソロモン王権者や、堕天使となる以前より因縁の宿敵である竜族と戦いを繰り広げるお話。
登場人物
・ルシファー:七つの大罪に於ける“傲慢(スペルビア)”を象徴せし魔王。通常時は銀髪に黒衣の美青年。“天界大戰”を引き起こし、弟のミカエルと激闘の末、地獄へと堕とされた。本気を出すと背や両腕脚より計十二枚の翼が現出し、紫の魔力光を纏う。魔力で周辺の物質を引き寄せて武器を生成するが、真の得物は悪魔による魂喰いの伝承を具現化した魔王剣カルタグラ。相手の心をカルタグラで斬って概念を否定し、存在ごと消し去る“グラディウス・レクイエム”や、前方に魔力を集束して放つ光線上の稲妻“天の雷”など破格の奥義を持つ。
・ベルゼブブ:七つの大罪に於ける“暴食(グラ)”を象徴せし地獄宰相/大元帥。蝿に似た触角と羽を有する幼女の姿をしている。何かと背伸びしがちで一人称は「吾輩」。討ち果たした者の首、として多数の髑髏をぶら下げているが、重いので偽物を用いている。通称・蒼き彗星。空中戦では無敵を誇るものの、子供っぽい性格とドジなことが災いしがち。天界にいた頃よりルシファーの側近で「ご主人様」と慕っている。
・アモン:ルシファーの盟友。“屠竜戰役”こと竜族の征討を観戦していた折にルシファーの圧倒的な強さに惚れ込み、天界大戰に際しては義勇軍を率いて加勢した。見た目は渋い老女。戦いに特化するあまり、両腕は猛禽の如き翼と化し、指が刃状となってしまった。愛する人の手を握ることすら叶わなくなっても、誰を恨むこともなしに潔く今を楽しむ。奥義は怒濤の高速突きを連発する“ディメント・インクルシオ”と、両手より爆炎を噴出しながら最高速度で貫く“煉獄の業火を纏いし一閃(パガトリクナス・ツォライケンス)”。さらに、リミッターを解除することで、他の武器へと上腕を変化できる。
・隻眼王ソロモン:七十二柱の悪魔を召喚、使役できる“王権者の指環”を継承せし男。左眼を対価として世界と契約、普段は包帯を巻いて隠している。力こそが野望を実現するとし、幼い子供であろうと被験体として扱う等、その為には手段を選ばない。
・イヴ:ヒロインの女騎士。英雄と讃えられた亡き父ローランに憧れ、彼の遺剣を愛用する。戦場で拾った自分を我が子として愛し、騎士としての心構えと剣技を授けたローランが悪魔に殺されたと聞いて復讐を誓い、人一倍の努力を重ね十八歳の若さで隊長となった。美人ではあるものの、女というだけで正当な評価をされないことを嫌い、言動は男勝り。
・アザミ:ヒロイン。長い黒髪の似合う十五歳の美少女だが、ソロモンと天使方による実験で半人半竜の身にされている。一人称は「ぼく」。薄幸な境遇から、心を閉ざしてしまっている。
・ミカエル:。四大天使の筆頭格。ルシファーの弟で“天界大戰”における活躍により、兄の後任として第二代大天使長となった。金髪に黒縁メガネという出で立ちで、常に微笑を絶やさない。神の力があるという武器“鞘より出でし剣”を駆使する。
・ガブリエル:四大天使の紅一点。スタイル抜群、男を魅了する美貌と思わせぶりな言動で、大人の女性に憧れるベルゼブブから嫉妬されている。“必中必殺”の弓矢を所有。狡猾で、ルシファー謀叛の黒幕であると噂される。
・大鎌のアリオト:“異端狩り”の暗殺者。フードの下は小柄な美少女だが、一人称「アリオト」で無表情、寡黙という不思議ちゃん。“Ad augusta perangusta(狭き道によって高みに)”の詠唱と共に、無数の分身を生み出す“幻影の処刑人”を発動できる。
※)追記:>>047で、あとがき及びシリーズ他作品の展開について少し触れています(ネタバレ含む)
>>048で、参考文献、最後に>>049で、ご意見に対するコメントを一部ですが、書かせていただきました。
10~ 20~ 30~ 40~
*8*
† 四の罪 “時空を超えた邂逅” (後)
「――この谷はお気に召しましたかな?」
奇妙な滞在者を迎えて2日目の夜更け。ワイングラス片手に、朱色の月光に照らし出された小川を眺めている男の背に、長老は話しかける。
「美しき地だ。都市とは異なり、自然と共に歩む姿が此処には在る。生活のみならず心も満たされた人民は、争うことも無く、手を取り合い暮らす……此れが貴様の理想郷だったとはな」
「村の者はみな、家族ゆえ」
向き直ろうともしないルシファーに、屈託無く返す長老。
「……あの小娘も家族、か?」
「彼女はアザミ。わしらを家族と思ってくれておれば嬉しいんじゃが……いや、両親の代わりになんて簡単になれても困るか。ホッホッホ」
「左様であろうな。俺も両親等いない。無論、親代わりと思った相手も……な」
「奇遇じゃな。わしも親なしでのう」
「気が合うとでも云う気か。人間に肩入れするは勝手だが、過信せぬ方が身の為であろうよ」
長老の脇を通りながら、魔王は去り際に言い残してゆく。
「肩入れ、のう…………」
人影の消えた河原に、独り言が溶けていった。
「まったく、あいつは人に恥かかせないと気が済まない病気か何かなの……汚れてばっちいし、ゴロゴロ転がしやがって有り得ないんですけどー」
風呂に浸かりながらイヴは不満を垂れている。
「なんか今日のイヴさん怖い……おっぱいはいつも通り大きいけど」
「ずっと独り言いってるし、帰って来た時なんか泥臭かったんだけど」
「えー、まあいつも干物くさいしねー」
普段なら地獄耳の彼女も、浴場に居合わせた村の女たちが自分を話題にしていようと反応する気配も無く、呆然としていた。
「ちょっと、イヴさんやたらぼーっとしていると思ったらのぼせてる!?」
「干物女さーん、しっかりして下さーい。本当に干からびちゃいますよー」
担ぎ出されて自室まで運ばれる女騎士。
「はぁ、私ったら何してんのかしらね…………」
人々が部屋を後にすると、独りでに溜息を吐き、天井を見上げる。彼女の父ローランもまた、騎士であった。国の為、人民の為、剣を振るい、いつしか英雄と呼ばれるに至る。なれど三年前、彼は突如として世を去った。弱冠十六の一人娘イヴが、彼の愛剣を継承することとなる。武勇に於いて天下無双を誇ったローランを破れる者などいないとして、悪魔の仕業によって命を落としたという噂が絶えない。
「――私が……悪魔なんて倒してみせる。それがお父様の復讐のため、人々の安寧のため、神の敵を裁くため…………」
いつの間にか、剣を握り締めていた。
(あの男、いったい…………)
信じ難きかの力を彼女は思い返す。
「お父様……あれから三年、脇目も振らずに腕を磨いてきた私には何が足りないのです?」
答えは理解らない。ただ、一つ断言できることがあるとすれば、あの黒衣の青年と自分との間には圧倒的な壁が存在する、という事実(こと)だ。
「まだ……! まだだわ。この程度じゃ奴には掠り傷一つ負わせられない」
気が付くと、誰もいなくなった後の鍛錬所へと、彼女の足は向かっていた。ただ一人で剣を握る年若い女。この齢なら普通は親元にて庇護(まも)られているだろう。誰かを好きになり、ときめきに胸を躍らせて日々を送っているかも知れない。だがしかし、斯様に過ごす日常がイヴには存在しなかった。父は既に亡く、母からも離れ、騎士として暮らしている。そして今、自身より悠に強き者を相手とするに相成った。正体不明の敵がいて、己はそれと戦う騎士たる身である。ただ、それだけのことだ。
(そう、あいつは成敗すべき危険人物。あんなに恥をかかされたんだから必ず見返してやるわ……)
戸惑いを振り払うかのように、一回、また一回と、虚空を白刃で斬り裂く。
「ハァ、ハァ……まだ! まだよっ! こんなんじゃ次あいつに遇ったとしても、また……また私は、何もできない!」
実力差を痛感しているがゆえに、込み上げる焦り。石室の窓から覗く紅に染まった三日月が、慰める者などいない無力な自分を恰も嘲笑しているかの如く、彼女の瞳には映っていた。