完結小説図書館
<< 小説一覧に戻る
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*29*
第九章-勘違い。擦違い。-
咲夜「あ!」
それは、暁が来てから一週間経ったある日のこと。
何時も通りに家事をこなしていた時だ。
突然奇声を挙げた咲夜に、
暁「どうした!」
少し離れた場所にいた暁が駆け付けた。
咲夜 「妖夢と約束忘れてた……」
暁 「あ?」
盛大なため息を吐いて、
暁 「そんなことか。驚かせるな」
呆れたように言う。
咲夜 「そんなことじゃない! 約束はもう三日も過ぎてるし」
暁 「なら早く行ってこい」
咲夜「無理。お嬢様のお使いで今から人里に行かなきゃいけないの」
む、と短く唸り思い出したように言う。
暁 「そういえば、約束とは俺の鞘の話だったか?」
咲夜 「そうだけど、何で知ってるの?」
暁 「意識があったから聞こえてるに決まってる。まぁ俺のための鞘だ。俺が取りにいこう」
本来俺に鞘は必要ないのだが、好意は受け取っておくものだな、と付け加える。
咲夜 「鞘いらないの?」
暁 「ああ、人間体が鞘みたいなものだからな。通常はいらん」
それから気付いたように、
暁 「咲夜の部屋で寝るためには便利か」
未だに咲夜の部屋で寝ている暁は言うのだった。
咲夜 「いや、出ていきなさいよ」
暁 「良いではないか、何をするでもなし、寝ているだけなのだから。それとも疾しいことでもあるのか?」
咲夜 「ないけど――」
暁 「ならいいな」
十分に言葉を接がせず、被せるようにして発し、
暁 「居候の身では、部屋を用意してもらうのも恐縮してしまうのだ」
と、畳み掛けた。
そう言われてしまえば、咲夜には断れないのだ。
お人よしさを完全に利用されている咲夜だった。
PR