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*10*
『いただきます』
と、皆で声を合わせた。
暁「口に合えばいいのだが」
暁が前置きするが、誰一人として聞いちゃいない。
まぁいいか、と暁も食べ始め、うむ、いつも通りの味だ、と納得する。
レミリア「咲夜、咲夜! これ美味しいわ!」
咲夜「そうですね、お嬢様。」
どうやら中々好評なようだ。
皆の食事はみるみる減っていき、
『ごちそうさまでした』
食べ終わってしまった。
暁 「お粗末様でした」
暁は答える。
いつもの食事当番である咲夜が聞く。
咲夜「夕霧。味噌汁のだしは何使ったの? 鰹出汁?」
暁 「だしの素だが?」
咲夜 「だしの素?」
暁 「だしの素」
咲夜の頭の上には、クエスチョンマークがいくつも浮いている。
暁はおののくように言う。
暁 「ま……まさか、だしの素を知ら……ない?」
咲夜「はい…」
なんでもないように答える咲夜。
暁 「ちょっと待て」
と、一度台所へダッシュし、あっという間に戻ってきた暁。
手に握られているのは、だしの素の入ったビンだ。
暁 「これを知らないか?」
咲夜 「知らない…ですが」
暁 「いいか、よく聞け咲夜。これはな、だしの素という、人間のたどり着いた境地とも言うべきものだ。おそらくこれは、人間が生まれてから最大の発明、いや、至高の発明と言っていいだろう」
あまりの剣幕に若干ひいている咲夜を置き去りにし、暁は続ける。
暁 「これを知らないのは人間、いや、世界に申し訳がたたん!」
ふぅ、とようやく暁は止まり、落ち着きを取り戻した。
暁 「しかし、まさか知らないとはな。外にこれが落ちてたもんだから、普通にあるものだと思ったが」
からからとビンを振る。
その発言に驚いたのは咲夜だ。
咲夜 「ちょっと! 落ちてた物食べさしたの!?」
暁「いや、落ちていたのは空ビンだが?」
『??』
一同全く理解できない。
暁 「そういえば、言ってなかったか」
そう言うと暁は、ビンの中身を別の容器の中に詰め替えた。
暁 「これを持っててくれ」
と、詰めたほうの瓶を近くにいたパチュリーに渡し、空のだしの素の瓶だけが手元に残った。
暁 「此処におわすは、人類の至高、だしの素の空ビン。これに軽く手をかざして、一度振るだけで」
すると、空だったビンの中身いっぱいにだしの素が現れている。
もちろん、パチュリーが持っているビンも元々入っている分が元の通りのこっている。
暁 「と、まぁこの通りだ」
『おお〜』
と咲夜とパチュリーの二人が拍手を送る。
パチュリー 「それは能力?」
暁 「『出現』能力だ」
パチュリー 「『出現』?」
暁「そうだ。咲夜たちはどんな能力なんだ?」
咲夜 「私は時間を操る程度の能力、お嬢様は運命を操る程度の能力よ」
暁「むっ…こちらでは能力定義の仕方が違うのか」
ん〜と唸る暁。
暁 「因みにパチュリーは」
パチュリー「火水木金土日月を操る程度の能力よ」
なるほど、と相槌を打ちながら、悩む。
暁 「そうだな、こちらの定義で言うとすれば、無から有を作り出す程度の能力、と言ったところか」
パチュリー 「ところでどうやってだしの素をだしたのよ」
うむ、と暁は説明を始める。
暁 「だしの素の空ビン。これの中身はおそらくだしの素だった。つまり、今は中身が『無』い。能力で『有』る状態に変えたんだ」
とってもわかりにくい説明だ。
パチュリー 「空の醤油ビンの中にお酒を出現させるようなことはできない。そういうことね」
パチュリーが補足して説明する。
レミリア 「へ〜。便利な能力だねぇ」
パチュリー 「私は美味しければ何でもいいわ」
そんな平和な朝の時間は過ぎていく。