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東方刃暁録-sword morn record -
作者: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ  (総ページ数: 38ページ)
関連タグ: 東方 
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10~ 20~ 30~

*10*



『いただきます』

と、皆で声を合わせた。

暁「口に合えばいいのだが」

暁が前置きするが、誰一人として聞いちゃいない。

まぁいいか、と暁も食べ始め、うむ、いつも通りの味だ、と納得する。

レミリア「咲夜、咲夜! これ美味しいわ!」

咲夜「そうですね、お嬢様。」

どうやら中々好評なようだ。

皆の食事はみるみる減っていき、

『ごちそうさまでした』

食べ終わってしまった。

暁 「お粗末様でした」

暁は答える。

いつもの食事当番である咲夜が聞く。

咲夜「夕霧。味噌汁のだしは何使ったの? 鰹出汁?」

暁 「だしの素だが?」

咲夜 「だしの素?」

暁 「だしの素」

咲夜の頭の上には、クエスチョンマークがいくつも浮いている。

暁はおののくように言う。

暁 「ま……まさか、だしの素を知ら……ない?」

咲夜「はい…」

なんでもないように答える咲夜。

暁 「ちょっと待て」

と、一度台所へダッシュし、あっという間に戻ってきた暁。

手に握られているのは、だしの素の入ったビンだ。

暁 「これを知らないか?」

咲夜 「知らない…ですが」

暁 「いいか、よく聞け咲夜。これはな、だしの素という、人間のたどり着いた境地とも言うべきものだ。おそらくこれは、人間が生まれてから最大の発明、いや、至高の発明と言っていいだろう」

あまりの剣幕に若干ひいている咲夜を置き去りにし、暁は続ける。

暁 「これを知らないのは人間、いや、世界に申し訳がたたん!」

ふぅ、とようやく暁は止まり、落ち着きを取り戻した。

暁 「しかし、まさか知らないとはな。外にこれが落ちてたもんだから、普通にあるものだと思ったが」

からからとビンを振る。

その発言に驚いたのは咲夜だ。

咲夜 「ちょっと! 落ちてた物食べさしたの!?」

暁「いや、落ちていたのは空ビンだが?」

『??』

一同全く理解できない。

暁 「そういえば、言ってなかったか」

そう言うと暁は、ビンの中身を別の容器の中に詰め替えた。

暁 「これを持っててくれ」

と、詰めたほうの瓶を近くにいたパチュリーに渡し、空のだしの素の瓶だけが手元に残った。

暁 「此処におわすは、人類の至高、だしの素の空ビン。これに軽く手をかざして、一度振るだけで」

すると、空だったビンの中身いっぱいにだしの素が現れている。

もちろん、パチュリーが持っているビンも元々入っている分が元の通りのこっている。

暁 「と、まぁこの通りだ」

『おお〜』

と咲夜とパチュリーの二人が拍手を送る。

パチュリー 「それは能力?」

暁 「『出現』能力だ」

パチュリー 「『出現』?」

暁「そうだ。咲夜たちはどんな能力なんだ?」

咲夜 「私は時間を操る程度の能力、お嬢様は運命を操る程度の能力よ」

暁「むっ…こちらでは能力定義の仕方が違うのか」

ん〜と唸る暁。

暁 「因みにパチュリーは」

パチュリー「火水木金土日月を操る程度の能力よ」

なるほど、と相槌を打ちながら、悩む。

暁 「そうだな、こちらの定義で言うとすれば、無から有を作り出す程度の能力、と言ったところか」

パチュリー 「ところでどうやってだしの素をだしたのよ」

うむ、と暁は説明を始める。

暁 「だしの素の空ビン。これの中身はおそらくだしの素だった。つまり、今は中身が『無』い。能力で『有』る状態に変えたんだ」

とってもわかりにくい説明だ。

パチュリー 「空の醤油ビンの中にお酒を出現させるようなことはできない。そういうことね」

パチュリーが補足して説明する。

レミリア 「へ〜。便利な能力だねぇ」

パチュリー 「私は美味しければ何でもいいわ」

そんな平和な朝の時間は過ぎていく。

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