完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

東方刃暁録-sword morn record -
作者: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ  (総ページ数: 38ページ)
関連タグ: 東方 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~

*4*

第3章-姿-

皆が寝静まった頃、美鈴は刀が保管されている所に来た。

目的は、鑑賞。

美鈴自身も刀には興味があったらしく、

布に包まれた刀をとろうとした瞬間…


美鈴「――!?」


刀から手が飛び出した。

悲鳴にならない悲鳴を上げる美鈴。

しばらくすると、ズルズルとゆっくり刀から左手、頭、体と順々に姿を現してくる。

その姿はリン〇の貞〇に酷似していて、その恐怖は言葉では表わせない。

美鈴はガタガタと震えながら、それを見ていることしかできない。

いや、見ていたくはないが、目を逸らすこともできない。

刀から出てきた男らしき物体は、底冷えするような声で言った。


「喰っても……いいのか……?」


紅魔館に、ようやく音になった、美鈴の悲鳴が響き渡った。

暁「いや、すまなかった。若干悪ノリし過ぎたようだ」

暁は謝る。

周りには、パチュリー、小悪魔、レミリア、咲夜、美鈴の5人がいる。

レミリア「その件についてはもういいわ。美鈴の自業自得だもの。それより、貴方はいったい誰?」

と、レミリアが問う。

暁 「俺は」

言葉を切り、ふと気付いたような目でレミリアの方を見つめている。

何かを思い出そうとしている様子だ。

レミリア「?」

レミリアはすっかり疑問顔である。

そして、暁は思い出したようにポンっと手を叩くと言った。

暁「レミリア・スカーレットか!」

その言葉には、咲夜が反応した。

首に突き付けられたナイフ。

咲夜 「貴方、何者!」

暁 「?」

と、素で返す暁。

咲夜「とぼけないで。あなたには疑問な点が多すぎる」

暁 「俺としては、500年前の吸血鬼が生きている事のほうが疑問なのだが」

考え込む仕草を見せる暁。

まるで、突き付けられている物などないように振る舞っている。

暁「なるほど、人の生血だな。たしかそれが生命の源だったはず…」

暁が右手を胸に当て、横になぐように腕を振ると、赤い光と共に咲夜の拾った赤い刀が現れた。

暁 「こいつに見覚えはないか?」

レミリアに刀を渡す。

赤い刀など見たことはない。

だが、造りをよく見ればそれは、

レミリア「まさか、鬼切丸?」

暁「ご名答。俺はこいつの付喪神。今は暁と名乗っているので、そう呼んでほしい」

レミリア 「咲夜、いいわ。座ってちょうだい」

レミリアのそれに従う咲夜。

咲夜「なんでお嬢様様の事知ってるんですか?」

咲夜は口を挟んだ。

暁「伝承にはないがな、一回海に落ちてな、さまよってたら見知らぬ城についてな。そこでたしか吸血鬼に拾われて…我が国に帰してもらった。」

暁「四百年も経って、道具の頃の顔見知りに会えるとは思わなかったが」

実は、幻想卿にはあと二人顔見知りがいるのだが、今はまだ暁は知らない。

暁 「こちらの質問もよろしいかな?」

暁 「ここは何処だ?」

レミリア「此処は幻想卿、博霊大結界の内側、そこの紅魔館よ」

紅魔館の主、レミリアが答える。

暁「素晴らしい場所だな。真っ赤な造り、センスがある」

誉められたことで、少し得意顔のレミリア。

暁「此処を見るだけでわかる。ここは笑いが絶えないのだな」

羨ましそうに言う暁。

陰陽師の存在もここにはないようだ。

テレビやパソコンなど、文明の利器は見当たらないが、それでも充実した日々なのだろう。

暁「良ければ此処に居候させてはもらえないだろうか? 迷い込んだようで住処も無く、さすがに野宿というのも少々遠慮願いたいものなのだが」

レミリア 「私たちにその理由はないわよ」

暁「レミリアにはないが、そこのお譲さんにはあるぞ」

そういい、暁は咲夜の方を向く。

紅魔館の主、レミリアに向かい言う。

暁 「実はな、そこのお譲さんが、嫌がる俺を無理矢理ひん剥いてな、頭の先からけつの穴まで見られてしまったんだ。これは責任とってもらわねば……」

よよよ……、と泣き崩れるふりをする暁。

レミリア 「あら、咲夜。あなた実は鬼畜だったのね」

冷たい視線が三つ、咲夜に突き刺さる。

なんのことだかは、咲夜にはわからなかったが、レミリア、パチュリーにそんな目で見られてしまっては、何も言えなかった。

レミリア「ふう、じゃあ仕方ないはね。認めるわ」

暁 「すまない。代わりに料理などの家事を手伝わせてもらう」

暁は一人一人顔を覚えるように見た。

レミリア「他にも妖精メイドがたくさんいるけど、ゆっくり覚えていってちょうだい」

そう言い終えると、大きなあくびを一つ

レミリア「ふぁ。咲夜、もう眠いから私寝るわ」

咲夜 「わかりました。えーと」

暁「暁。呼び捨てでかまわない」

レミリア 「では、暁。今日は部屋が用意できないから、咲夜の部屋で休んでくれるかしら?」

咲夜 「お嬢様!?」

暁 「あぁ、了解した」

驚く咲夜を二人とも軽くスルーし、話を終えた。

静まる部屋に残された咲夜と暁。

咲夜「暁さん」

暁 「暁でいいぞ。さんはいらない。こちら咲夜と呼ばせてもらうが」

咲夜 「あ、はい。それで」

暁 「あぁ、部屋のことは気にしなくていいぞ。端っこで刀の中で寝れば済む」

咲夜 「いや、そうじゃなくて!どういう事ですか、私が襲ったみたいなこと言って!」

暁 「ひん剥いたろ?」

咲夜「剥いてません!」

暁 「見たろ?」

咲夜「見てません!」

ん〜と腕を組み、顎に手を当てる。

暁「あの時だ。白い髪の女の子、確か妖夢と言ったか。そいつと共謀して。目釘抜けにくかっただろ?」

咲夜「はい」

暁 「柄、外れにくかったろ?」

咲夜「はい」

暁 「見たろう」

咲夜「?」

暁 「茎」

暁 「見たね」

暁 「ほれ、俺の言うとおりではないか」

咲夜「?」

暁 「刀にとって茎はけつの穴みたいなもんだ。目釘が抜けにくかったのも、俺が抵抗してたからだ。何一つ嘘はついてないな」

咲夜 「うっ…」

言葉につまる咲夜は、反撃を試みる。

咲夜 「だからって、あんな言いかたないじゃないですか…」

暁 「すまん。それについては謝る。自分を知られて普通に接する者などいなかったからな……」

だが予想とは違い素直に謝られ、罪悪感がわいてしまう。

咲夜「い、いいです…別に。もう気にしてないですから。ほら、もう夜も遅いですし、寝たほうがいいですよ?」

暁 「そうだな。そうさせてもらおう」

そして、部屋まで先導を始めた咲夜。

咲夜には後ろに目が付いてなかったので、やっぱり暁の黒い笑顔には気付けなかった。

3 < 4 > 5