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東方刃暁録-sword morn record -
作者: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ  (総ページ数: 38ページ)
関連タグ: 東方 
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10~ 20~ 30~

*3*

第2章-運命?-

「あら?」

一人の女がそれを見つけた。

メイド服を身に着け、左手には買い物袋を持っている。

此処は幻想郷、

そして、霧の湖。

そこに4つの死体。

殺した者の姿は無く、血の海の真ん中に一振りの刀が刺さっている。

その刀身を引き抜くと、紅魔館に持って帰った。

持って帰らなければいけないような気がした。

とりあえず持ち帰ったまではよかったが、どう扱っていいのかわからない。

本来ならば鞘に収めて置いておけばいいのかもしれないが、鞘が無いのだ。

困った。

なのでパチュリー様に助けを求めることにした。

咲夜「パチュリー様、」

パチュリー「あら、どうしたの?咲夜?」

咲夜「これを、拾ったんですが…」

そういって深紅に染まった刀を見せる。

咲夜「どう扱えば宜しいのか…」

パチュリー「そうねぇ。私たちの中に日本刀扱える人はいないわね。
      それにどうして拾ってきたの?」

咲夜「いえ、何だか拾わなければいけない気がしたので。」

パチュリー「完全で瀟洒な貴方がねぇ、まあいいわ、白玉楼に行って妖夢に見てもらえばいいんじゃない?レミィには言っておくから。」

咲夜は日本刀は置いておくだけではダメだ、という話を聞いたことがあった。

この際、保管の仕方から手入れの仕方まで、一切合切覚えたほうがいいかもしれない。

でも今日はもう遅いから、明日にすることね。今日のところは、この布にでも包んで置いておくといいわ」

懐から手品のようにサッと大きなやわらかい布を取り出す。

これならば、刀身を傷つけることも無さそうだ。

パチュリーに礼を言うと、咲夜は布を受け取り日本刀を包み、それを両手に大事に抱え自らの部屋に向かって廊下を歩きだした。

美鈴「咲夜さん、それどうしたんですか?」

興味津々で刀を見つめる美鈴。

咲夜「美鈴、門番の仕事は?」

にっこりと笑いながら、ナイフをかざす咲夜。

美鈴「待ってください!お嬢様から休みを頂いたので。」

咲夜「……そう。じゃお休み。」

ナイフを下しながらあくびをする咲夜。

美鈴「はい、おやすみなさい。」

翌朝、日本刀を両手にしっかり抱え、紅魔館の玄関に来ていた。

咲夜「それではお嬢様、行ってきます」

レミリア 「はい、気を付けていってらっしゃい」

日本刀の重さは二3キロほどで、油断していると落としてしまうかもしれない。



少女移動中……


白玉楼への長い階段の途中に妖夢を見つけた。

咲夜「妖夢」

妖夢「あれ、咲夜さんどうしたんですか?」

咲夜「実は、これを拾って……」

そう言いながら布を取り出し、日本刀をみせる。

咲夜 「保管の仕方がわからなくて、聞きに来たの。ついでに、手入れの仕方も」

妖夢 「そうですか。少し貸してもらっていいですか?」

妖夢は咲夜から日本刀を受け取ると、何度か角度を変えて最後に光に透かし地金の波紋を調べ、返した。

「素晴らしい刀です」

と、妖夢は誉める。

咲夜「そうなの?」

妖夢 「ええ。持っている能力は別として、刀の格としては私の楼観剣にも劣らないでしょう。大した業物です」

咲夜は驚いた。

たまたま拾っただけの刀に、それだけの価値があると言われたのだ。

驚きもするだろう。

妖夢 「では、中にどうぞ」

妖夢に導かれ、咲夜は部屋に入っていった。

妖夢「まず、手入れの道具ですが、目釘抜、打ち粉、油、油塗紙に、拭い紙が二種類、あとは木槌です」

妖夢が一つ一つ見せていく。

妖夢 「うちに予備がありましたから、こちらは差し上げます」

咲夜 「ありがとう」

妖夢 「ただ、しっかりと道具の手入れも忘れないでください。汚れたものでやってしまうと、刀を傷つけてしまいますから」

そう言うと、背中に掛けている楼観剣を取り、手本を見せるように手順を始める。

妖夢 「始めに、目釘抜で目釘を抜きます」

と、妖夢が目釘を抜く。

咲夜も妖夢に習い、抜こうとするが、何故か抵抗が強い。

それでも、力を入れるとなんとか抜けた。

妖夢 「次に鞘から抜き、左手でこのように握り、右手の拳で手首を軽く打ちます」

妖夢は自分の小さな頃を思い出したのだろうか、小さく苦笑し、続ける。

咲夜は軽く手首を打ってみるが、柄がゆるむ気配が無い。

手首を打つ強さは段々上がっていくが、一向に抜けず遂に全力で打った瞬間。

――キュイン

刃は小気味いい音を立てて抜け、しばらくの空白。

妖夢「みょん!?」

咲夜 「!!」

グサッと咲夜と妖夢の間に刺さり、妖夢は変な声を出し、咲夜は両手をついた。

咲夜「ご、ごめんなさい」


その後、拭いを行い、柄にいれ目釘を打って、作業を終えた。



抜くときとは違い、目釘も柄もするりと入りしっかりと固定された。

銘は鬼切丸というらしい。

そっと名を呼んでみるとリィンと刀が鳴いたような気がした。

咲夜はしっかりと布を巻き、立ち上がった。

咲夜 「今日はありがとう。助かったわ」

妖夢 「いえ、刀を扱うものが増えるのは、嬉しいことですから」

喋れる仲間が増えるのは嬉しいです、と妖夢は続ける。

妖夢 「今日形も見ましたので、鞘も用意しておきます。二三日したらまた来てください」

咲夜 「何から何までごめんなさい」

妖夢はそれに笑みで答えた。


互いに手を振り合うと、咲夜は紅魔館に帰っていった。


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