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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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やはり俺の嫌な予感は的中した。
奴は3人がかりでも、一筋縄ではいかない強敵だった。
ハニーの怪力をスピードで封じ込め、星野のボクシングを防御で無効化、さらには生まれ持った関節の柔らかさを駆使して、メープルの必殺技、パロ=スペシャルを破り、3人の焦りに目をつけ、精神を揺さぶってくる巧みな心理作戦と話術。
普段は滅多に人の実力を認めない俺の目から見ても、奴の実力は確かなものだった。
試合開始してから、15分が過ぎようというころ、奴が不意に休憩を取ろうと言い出し、その隙を見て、俺は星野たちに大好物であるカレーパン、ウィンナー、ケーキを食べさせた。
当然のことながら、3人の人力は10倍に増加し、3人の合計で10万という、あのクソガキと互角の人力を発揮した。
「な、なんということでしょう!こ、この私が苦戦を強いられるとは!」
急激なパワーアップに、奴は動揺の色を隠せない。
だが、ここで3人の弱点が露わになった。
それは体力のなさだ。
3人とも幼いが故に体力がなく、消耗も激しく、長時間闘い続けることができない。
真っ先にメープルが体力を酷使しすぎて気絶。次はハニーで、最終的には星野だけがリングに残った。
「私はこうなることは、初めから予想していましたよ。では、残ったあなたを思う存分痛めつけてあげましょう!」
代わってやりたいが、代わることもできない。
リングへタオルを投入しようかと考えたが、以前のフロイの件があるため、ここはぐっと堪え、星野の試合を見守った。
だが、試合を見れば見るほど、俺の心の奥は、凄まじい怒りの感情で沸き立ってくるのがわかる。
敵の攻撃に一方的に痛めつけられるが、星野は痛みを感じない体質のために、何度も何度も血みどろになりながらも、立ち上がってくる。
だが、あのクソガキは武士の情けもなく、完全に失神して動けなくなるほど、奴を痛めつけ、なおかつ試合が決まり、担架に乗せられたあいつを罵った。
その態度に、俺は怒りを通り越して憤りを感じていた。
大きく息を吸い込み、無の状態を自分の心の中に生み出す。
穏やかな池を思い浮かべ、冷静に俺は怒りを蓄積し始めた。
まず、ジャドウが敗れ、爆死したこと。
ロディとカーネルが舐められたこと。
メープルとハニーを痛めつけられたこと。
そして何より、俺の弟的存在である星野を罵倒し、見下し、完全失神させたこと…ひとつ、ひとつの怒りをゆっくりと穏やかに放出する。
例えるならば、今の俺は赤い炎ではなく、青く激しく穏やかな炎だ。赤より青の方が火力が何倍も強い。
俺は静かに瞑想のために閉じていた目を見開いて、クソガキを睨み、口を開いた。
「明日はこの俺が、あの3人の敵をとる。俺と闘え!」
それだけ言って、俺は試合場を後にした。