完結小説図書館
作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
関連タグ:
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~ 160~ 170~ 180~ 190~
*6*
ここで、ぼくたちの看板娘(?)クロワッサンのことを少し話しておこうかな。
まず、彼は容姿がとても可愛い。
多分ぼくより1日に可愛いと言われる回数は多いだろう。
そのため、彼がレジ係をすると、売り上げがうなぎのぼりになる。
彼のすごいところは、その愛らしい笑顔で人の心を癒すことができるということだ。
以前、ぼくたちのお店にクレーマーが来た。
なんでもその人の子供がぼくたちのお菓子を食べすぎて虫歯になったらしい。
何もぼくたちのせいではないと思うのに、その人はぼくたちを攻めた。
場の空気が険悪になりかけたそのとき、彼が微笑み、クレーマーの女の人にキスをした。
するとどうだろうか、その人はたちまち骨抜き状態になり、穏やかな顔になったかと思ったら、先ほどまで批判してばかりいた、ぼくたちのお店のお菓子をたくさん買って帰っていった。
それから、もうひとつ彼の特徴をあげるとすれば、彼は大変に無口だということだろう。
無口と言われる人は大勢いるけれど、ぼくは彼ほど口数が少ない人にあったことはない。
だからこそ、話し始めたときの影響力は大きく、人を惹きつける効果があるのだろうか。
彼のすごいところは自分の感情を言葉ではなく、表情や動作で全てを現すことだ。
基本彼は温厚で怒ることはあまりないが、怒ったら凄まじい鉄拳と蹴りが目に見えない速度で飛んでくる。
以前彼を十数回に渡って痴漢をした男性客が、空高く吹き飛ばされる光景を見たことがある。
もしかすると彼はぼくたちの常連の注文先であるプロレスジムと何か関係があるかもしれない。
そして彼は「男」であることに誇りを持ちつつもその容姿のため誤解を解かないままのほうが楽だからという理由で、「美少女」という性別に甘んじている。
ちなみに彼が男だと気付いた人は今だかつてひとりもいない。
もしばれたらどうなるのだろうか。
1億分の1の確率だったとしても彼が男だとバレてしまえば、確実にお客さんが減少するかもしれない。
けれどそのことをおじいちゃんに話したら「減るどころか増える一方じゃよ。男でこんなに可愛かったらギャップがすごいじゃろう。ほっほっほ」と、言ってまるで問題にしていない。
はあ…バレたらどうする気なんだろう。