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作者: 桜 (総ページ数: 28ページ)
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第三章 「城へ」
山の頂上に来たとき、何でここに来たんだろう、と激しく後悔した。
山の頂上、静かな闇の中で灯った一つの篝火。その先に居たのは-----
「久しぶりだな、雪音。」
「ほんとに!、何年ぶり?。」
「阿呆。ついこの前あったばかりだ。」
「あ、そうだっけ?。」
元仕事仲間の有路ノ国の隠密「紗枝」と「勉」。二人がのんきにしゃべっている間に後ろへ----っと思ったが、すぐに無駄だと思い知らされる。
「おっと、こっちはこっちでふさいであっから。」
「めちゃくちゃ探したんだよ!?、何で逃げるのさ!。」
後ろには、領主の側近「萌」と「肇」がニコニコ笑っている。
「・・・・っ。」
もう逃げ場所はない、か。
まあ、つれてかれて城へ行くっていっても、待っているのは処刑で、首がはねるだけだ。総司さんのいないこの世の中に、未練はない。
「さて、いっしょに来てもらおうか。」
未練はないはずなのに、何でこんなに胸が痛むんだろう。
*** *** *** *** ***
なぜ、彼らが自分の居る場所がわかったか、いま思いつく。
一緒だったからだ。四年も一緒に仕事をしてきたから。
夜が明けてきたのか、山向こうが白ずんでくる。月はいつの間にかどこかへ消え、星明りは薄くなり始めた。
手と腕を一緒に縄にかけられ、四人に囲まれて歩く。
見える先は、大きな城。領主のものだ。
「ねぇ。」
「ん?、なんだ?。」
問いかけに素直に答えてくれたのは肇だった。
雪音を探す掲示板とあった、もう一つの手配書。
「なんで、総司さんの首を捜してるの・・・?。」
少しの沈黙の後、はぁ、と紗枝がため息をついた。
「総司様の首が、無くなったの。埋葬しようとした日に。」
ふぇっ!?、と間の抜けた大きな声で驚き、あわてて四人に鼻と口を押さえつけられる。声をふさぐのはいいが、このままじゃ呼吸が停止してしまうことも考えてほしい。
「なぜか、誰の仕業かわからない。あの、蒼路ノ国の領主----葵の息子、「誠司」の仕業かと思ったけど、彼は葵のことが大嫌いで、総司の首を隠す動機もなかったから、一回捕まえて釈放したわ。」
「・・・・・・私、もう一人考え付く人が居るんだけど。」
「ああ、一緒にお仕事してた和樹(カズキ)でしょ?。あの子も調べたけど何もなかった。」
「・・・・じゃあ、誰が。」
「だから、わからないって。ほら、ついたよ。」
ゆっくりと足を止めると、大きな門扉が立ちはだかる。勉が、下のほうを鍵で開けて、小さい扉が開いた。
「入れ。」
小さく促されると、意を決して、雪音は、中に入った。
また、四人に囲まれて奥に進む。そして-------
ふすま越しから誰かが居るとわかる部屋の前に座らされた。それと同時に、縄も解かれる。逃げようとは、しなかった。
「大紀様。雪音をお連れいたしました。」
「入ってくれ。」
ふすまを開けられる。
「あまり変わらないな。」
「この前あったばかりですからね。」
元主、大紀が、座っていた。
「お久しぶりでございます。領主様。」
「ほんとにな。」
「私はいつ首をはねられるのでしょうか?。」
長く沈黙が流れる。率直に聞きすぎたのだろうか。まあ、これからはねられるのだし少し無礼をなしてもいいだろう。
「・・・・・・・・・・・は?。」
とぼけた返事が返ってきた。
なにっ、と顔を上げる。
「おまえ、斬首されるのか?。」
「え?、領主様がそのために探したんじゃないんですか?私のこと。」
「いや、ぜんぜん違うから。なにその勘違い。」
ぽかんと口を開けて、呆けていると、勉にがちゃん、と口を閉められる。
「話を聞け。それと口。あけるなよ。みっともないぞ。」
「う、うん。」
もう一回、大紀様のほうを見上げる。今度は何か真剣な表情で見つめられていた。
「総司の首が無くなったのは知っているか?。」
「はい。存じております。」
「何も知らないか?。」
「はい。存じてません。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・もう帰っても?。」
「駄目だ。よし、雪音。ここで一緒に総司を探そう!。」
「ふぇ!?。」
----探せ、ならわかるが、探そうって・・・・
また城を抜け出す気か。
「よし、決定だ!。明日からまたがんばってくれ!。」
「ちょっ、まっ――――!!!。」
そのあと、今度は四人にわーい!と担がれ部屋に連れて行かれたのは皆さんは想像できたであろう。
こうして、総司さんを探そう作戦が、出来上がった。