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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~

*16*

 風の吹いている河原。
 そこに、自分を含めた三人が座っていた。
 夕焼けが迫る夏の街で、友人が立ち上がって自分達に背を向け、水面に向かって両手を広げて、何かを話している。
 内容はあまり聞き取れない。
 その顔がはっきりとこちらを見据え、笑って、でも悲しそうに、何かを呟いた。
 刹那、柔らかい橙色の光を照らし出していた太陽は堕ち、暗い闇が街に覆い被さった。
 今まで目の前に立っていた友人の顔が、闇に覆われて消える。
「キリ!!」
 そう叫び、悠人は気付いた。
 ここは河原ではなく、自分の部屋のベッドの上だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁー……」
 悪夢だ。
 街は闇に覆われ、その闇に親友までもが呑まれる。
「…………」
 悠人はぎゅっと拳を握りしめ、まだ暗い薄暗い朝焼けの街を太陽が昇るまで見つめていた。

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