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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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*32*
話を聞くところによると、かをりは部長に
退部するよう言われたらしい。かをりも
部長といると気まずいようで、それを
了承したらしい。「だからバレー部の助っ人を
辞めて、バレー部に部員として入ろうと思うの」
僕は口の中で消えていった飴の味を感じながら
笑った。「いいと思うよ」かをりは頷くと、
俯いた。しばらくして、かをりは瞳を僕に向けた。
「水沢くんに謝らないといけないことがあるの」
そう言ったかをりの瞳は左右に揺れており、
動揺の色が見て取れた。「あたし、水沢くんが
あたしを好きになるかどうか、賭けてたの」
僕は2回ほど瞬きをした後、問いかけた。
「どういうこと?」あまりにも激突でどういうことか
分からなかったが、問いかけた後で気付いた。
あの時、かをりが見せた悪女のような笑みは
こういうからくりがあったんだな、と。
「ごめんなさい。徳光先輩と、平野くんと
賭けてたの」胸が痛めつけられたように
ズキッとした。頭ではそのことを
受け止めていたが、感情が追いつかなかった。
「もういいよ」僕は放心状態のまま部室の
扉に手をかけた。すると、かをりは僕の
右手を掴んだ。「でも、今は本当に好きなの。
ねえ、お願い。あたしを信じて」
かをりの目には涙が溢れていた。それを見て、
頬がカッと熱くなった。ふざけるな、と
喉元まできていた言葉をそっと呑み込んで、
僕は「ごめん。ちょっと放っておいて」と
ぎこちなく笑った。
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