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恋乃手紙
作者: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU  (総ページ数: 61ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*44*

「つーかーれーたー!」
私といっしょに帰っている麗子が叫ぶ。
テニス部は今日、急に走りになり、みんなヘトヘトだ。
つーか、麗子、最後尾だったくせに。

「あんま、叫ぶなよー。いっしょにいるあたしが恥ずい。」
私は麗子に釘を刺す。
「いいじゃん、別に。」
ストレスはっさんーと麗子。
どうせ「発散」の漢字も浮かんでないんだろうな、こいつの頭には。

もう秋だから、夕方も暗くなってきている。

だから、麗子の白い肌は、ますます、わずかな光に映え、白い陶器のように輝く。
汗だらけのはずなのに、麗子は花の匂いがする。



『しかもねー、麗子さ、フったんじゃなくて、有季にフラれたんだって。』



そんなことを、匂わせない、麗子の態度。

「あ」
麗子の声。

校門には、有季が立っていた。

「有季、まだ帰んないのー?」
一応私は話しかける。

「え?……あ、ちょっと…」
有季は、少し、しどろもどろである。
「先生たちに、たむろっているって勘違いされるよ。早く帰った方がいいんじゃない?」
「いや、ちょっと。あ、待ってよ、澄怜。」
私が麗子と帰ろうとすると、有季が呼び止める。
「ごめん、有季。あたし、塾があって急いでるの。」
用事があるなら早く済ませたら?夜暗いしー、と私は言う。
「あ、ごめん。じゃあ、明日な。」
「バイバイー」
なんか気まずいが。

「麗子、行こ。」
「うん。」





あとから思うと、あのとき、有季は相当落ち着いてなかった、と思う。


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