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*7*
嘘か? 真か?
――そもそも、人なのか?
――俺はよく見る為に近づいた、そのとき。
ガシューン!
「うわお!?」
ピオーン! ピオーン! ピオーン!
カプセルの側にあった青く光るガラス棒が赤く光り、不思議なサイレン音が鳴り響いた。
気づけば、カプセルも同時に動き始めていたらしく、俺はとっさにカプセルから飛び降りる。
ブシューッ!
同時に、カプセルの隣から煙がでてきた。
そして、カプセルの入り口が開き、金髪の少女が落ちてきた。
「うわっと……!」
俺は慌てて少女を抱きとめる。
そのあと、徐々に少女のまぶたが開いていった。
瞳は青色なんだな〜、と思っていると、少女が小さく口を開き、かぼそくも女の子らしい声で俺に話しかけた。
「貴方は……?」
俺が少女に話しかけようとした――そのとき。
ガッシャーン!
突然、上に建築された青い壁が割れ、衝撃音が鳴り響いた。
「うわあああああっ!!」
俺はとっさに、少女を抱きながら数歩移動する。
「――ぐはっ!」
叫んで落ちてきた少年は、少女と同じような金髪碧眼の容姿だった。ただ、やはり男らしく、髪はバサバサとした短髪だった。
錬金術師と呼ばれているクラス――‘アルケミスト’の印であろうかと思う茶色のロングマントが見え、ああ、この子はアルケミストだなと直感的に推測する。
その少年は、落ちた直後頭をさすった。
――痛そうだなあ。
「アーサー!」
「へえ」
なるほど、叫んで落ちてきた少年の名前はアーサーというのか。
――叫んだ主を探すと、銀髪の青年が見えた。
おそらく、この青年が叫んだのだろう。
少年は、その青年に「油断したぜ〜……」と返事を返している。
「冒険者!?」
「ふえ……?」
青年についてきた赤髪の女性が、俺と少女を見て驚くようにいった。
それを聞いて少年が顔を上げ、不思議そうにこっちを見る。
――って、冒険者?
確かに冒険者としての力量はあるとはいわれたけど、俺はハイランダーっていう一族なのになあ……。
ガシャ……!
「――ん?」
突如、どこかから壁が割れるような音が鳴った。
「また来るぞ!」
ガシャンッ!!
壁が割れた破壊音と共に、ラクダと思われる魔物が割れた場所からでてきた。
――が、それは後ろからだった。
それを見て、俺や少女だけでなく三人組も声を上げる。
「外敵が、ここまで這入りこんでるなんて……」
魔物を見て、少女が訝(いぶかし)しそうに呟いた。
そして、少女はそのまま歩き始める。
「え!?」
俺は驚き、少女を見据えながら口を開いた。
「ちょ、お前!」
叫んでも、少女はうんともすんともいわない。
しかも、俺のほうをちらりと見ようともしない。
「…………」
俺のいうことに耳は貸さないようで、無視して歩き続け、とうとう少女は魔物の前に立った。
そして、まるで宇宙服のような白色のユニフォームを脱ぎ捨て、黒い銃を持ち射撃した。
「ガオ〜!」
一度、魔物は苦しいように回った。
――が。
「グルアア〜!」
やはり、獲物を取り逃がすことは嫌なようで、回っただけですぐに戻ってきた。
魔物を見やり、次に青年が俺を見やる。
「なんだ、お前は……!?」
そして、驚愕して叫んだ。
「話はあとよ」
痛みが抜け、少年がこっちを見て状況を判断した――と同時に、赤髪の女性が魔物に警戒しながら俺たちに告ぐ。
「――来るわよ!」
「――その身に刻め」 「術式の出番か!」
女性は重そうな剣を持ち、構えの姿勢をとった。それに続いて、二人の男性――少年と青年が武器を構える。
「……面倒だな。だけど――」
俺はためいきを吐くように呟く。
「ここに進入した魔物は――」
反対に、少女は意思を強く持ち、魔物をまっすぐに見据えた。
「――やってやる!」 「――排除する!」
ほとんど同時に声を出し、二人は槍と銃という、それぞれの武器を構えた。
ラクダの魔物が咆哮を上げる。
「行くぞっ!!」
みんなが魔物を睨みつける。
――戦闘が今、始まった。
・ 遺跡―グラズヘイム― ? ・
「――そこのお前!」
魔物を前にして、銀髪の青年が俺に叫んできた。
「ん?」
「今更だが――」
「グルアアアア!」
魔物の咆哮、直後の突進攻撃を青年はかわす。
ザシュッ!
それに自身での剣攻撃をプラスして、青年は再び――そして、ようやく――俺を見やった。
「――僕たちに手を貸してくれ!」
――そんなの、当たり前だろ! と、ツッコミ当然に心の中で呟く。
「当たり前だろ! 戦闘中で喧嘩なんてできないからな!」
「すまない!」
再び、身震いするような咆哮が上がった。
そして、来たのは突進――ではなく。
ブルウッ!
なんと、ラクダにしては巨大な尻尾を、勢いよく振り回してきた。
「え――」
アルケミストの少年が、不意をついた攻撃に驚愕する。
――このままでは、当たってしまう!
「アーサーッ!」
銀髪の青年が叫ぶが、尻尾は勢いを止めない。
「うわあ――」
ボコッ
「……え? あ、ラクーナ……!?」
「まったく、あんたって奴は……」
呆れたようにためいきを吐き、女性は盾を振り回して魔物を追い払う。
「――そこのちょっと変わった服装の青年さん!」
そして、俺を見て叫んだ。ちょっと変わった服装というのは、俺が着ているハイランダーの民族衣装のことだろう。
「言い忘れてたけど……私のクラスは‘パラディン’。だから、みんなの防御なら任せて!」
可愛くウインクして、女性は戻ってきた魔物に注意を向けた。
「“キュア”」
ホワアと優しい白魔法の光が――とかのファンタジーマジックではなく、絆創膏(ばんそうこう)を少年の怪我をしたところに貼った青年が、女性に続いて俺を見やる。
「見ての通り、僕は‘メディック’だ。回復が必要なら指示を頼む」
「わ、分かった! じゃあ俺に“キュア”を――」
「どうみても今は必要ないだろう」
ためいきを吐いた青年が、魔物に向け剣を振るう。
「俺の術式で、焼き尽くしてやるぜ!!」
回復してもらった少年が、元気よく魔物に向け叫んだ。見れば、もう少年は立っている。青年の技術力が高いのだろう。
少年は、やはりアルケミストだった。ロングマントと同じ、その証の一つである魔法篭手(マジックグローブ)を装備して、魔物に向けていたのだ。
「おりゃあ! “火の術式”!」
少年の術式により、魔物が一歩引いた。
その魔物を変わらない一心で見つめていた少女が、銃を向け口を開いた。
「――敵は、排除する!」