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この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
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10~ 20~ 30~ 40~

*8*

 可憐なる可愛らしい少女らしくない、素早い動きで魔物の背後に回る。
「“ヘッドスナイプ”!」
 “ヘッドスナイプ”――頭を使う攻撃を封じる銃撃。頭突きとかの直接攻撃は勿論、“キュア”とかも封じるといわれている技だ。
 ……‘ガンナー’……なのか。
「グルアアア……」
 四人の攻撃により、かなり魔物の動きが鈍くなった。
 俺はにやりと笑い、槍を構えて魔物へと突進していく。
「いっくぞ〜!」
 槍をブゥンと振り回し、最近覚えた技を繰り出す。
「“ロングスラスト”ッ!!」
「グルアアアア! グルアア……グル……ル……」
 魔物の荒かった息が、花が枯れていくように、徐々に静まっていった。
「やった……」
 俺は、呆然としたように呟きながら、自身の持つ槍を見る。――それは、確かに血で汚れていた。
 続いて、倒れていく魔物を見る。
 息が荒くなっている四人の仲間。
 倒れていく魔物。
 血塗れの、俺の槍――。
「やったあ〜!!」
 倒した。倒したんだ。
 手を上げたり跳ねたりして、俺は勝負に勝ったのだと喜んだ。
「……パパ……?」
 不意に、少女の声が聞こえた。
「……え」
「……パパ……パパに会えるなんて……」
 きゅ――。
 少女が懐かしむように、照れるように、俺のズボンのすそをつかんだ。

・ 遺跡―グラズヘイム― ? ・

「パ、パパ……!?」
「え……。あ……!」
 ハッとして、少女は俺の顔を見つめる。
「……ごめんなさい。間違えた……」
 いやいや、自分の親の顔と赤の他人の顔を間違えんなよ! と思った。色々自問自答、心の中でつっこんでいるうちに、少女の異変に気がついた。
「痛い――」
 頭を両手で抱え、冷たく硬い板の床に座り込んでいたのだ。だが、座るといっても腰を下ろすのとは違い、へたりと倒れ込むように座っていた。
 頭痛がするのか、頭を抱えて涙目になる少女。
「大丈夫か?」
「……うん……治まった。平気よ」
 そういえば、この子の名前はなんというのだろうか?
 俺は不思議に思い、聞いてみた。
「なあ、きみの名前はなんていうんだ?」
 少女は俺を見つめ、両手を下ろすと、口を開いていった。
「……フレドリカ・アーヴィング……」
 なにか、変だ。そう直感した。
 さきほどの戦いでの彼女の瞳は、意思がこもっていたように感じた。なにかを目指すような、「やらなきゃ」というような、そんな瞳だった。
 だが今は――違う。女の子らしい瞳といえばそれまでだが、とても意思がこもっていた瞳とはまるで違う。
 ぼんやりとしていた。
 どうしてだろう? と思ったが、その理由はすぐに分かった。
「……それしか、思い出せない」
「え……!?」
「名前は思い出せたけど、それ以外が思い出せないの」
 記憶喪失……!?
 俺が驚いて声を失っていると、それを見かねた青年がこっちにやってきた。
 メディックだといった、銀髪の青年だ。
 それと同時に、また少女――フレドリカが座り込む。
「っ……!」
「どうした、頭痛か?」
 「ふむ」と青年は訝しそうに呟く。
「妙だな……。なあ、この子はきみの連れじゃないのか?」
 ふるふると首を横に振る。
「残念ながら、違うんだよなあ……」
「……そして、記憶喪失か」
「そうみたいで――ん?」
 フレドリカが立ち直り、俺をじっと見つめていたことに気がついた。
「どうした?」
「知ってる……気がするの」
「え?」
 フレドリカは意思がこもっているような瞳を向け、俺に向かっていった。
「私、貴方を知ってる気がする……。私は昔、貴方と一緒に――っ!!」
 突然頭痛が走ったのか、フレドリカは再び座り込む。
「連れではないのに知っている、か……」
 それを見て、青年が呟いた。
「ああ、そうだ」
 さっきの呟きが嘘のように話を切り替え、青年がお辞儀をした。
「戦いに巻き込んですまなかった。しかし、おかげで助かった。……ありがとう」
「……ああ、うん」
「あの魔物はラクダの亜種だろうが、凶暴さは恐ろしいぐらいだ。この遺跡に何匹もいたら……ここは、相当な危険な場所になるだろうな」
 確かに、とうなずく。
 あの魔物は強かった。尻尾攻撃も突進も半端じゃなかったと思う。
 だけど、フレドリカのおかげで――。
「ありがとうな」
「え……?」
 痛そうにしていたフレドリカが、不思議そうに俺を見やる。
「ありがとう、だよ」
「あ……。ええ……」
 沈黙を守っていた彼女が、青年を見やり急に口を開いた。
「……貴方たちは……何者なの?」
「これは……失礼したな。僕らのことを説明しないと」
 青年は一つ咳をすると、なにかの木製カードを取り出した――。

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