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*11*
第四章*勿忘草*
南向きの大きな窓。そこに置いてあるのは、シラーとほおずき。それに寄り添うように、窓を挟んで置いてあるのは、エキナセアと__、
「何なのかしら、この花」
淡い青色の可愛らしい花が、らせん状にまいた茎にたくさんつき、下から上へと咲いているものだった。中心が黄色く色付いていて、色は空のような色だ。
「お目覚めですか。お嬢様」
呼び鈴を鳴らすと、やっぱりアイビーはすぐに現れた。
「ええ。朝食を用意して頂戴」
「かしこまりました」
一礼して出て行こうとするアイビーに問いを投げ掛ける。
「アイビー。窓の外にある青い小さい花あるでしょう?あれ、何の花なの?」
「勿忘草でございます」
アイビーは恭しくこたえた。
「そう。ありがとう」
「いえ。では失礼いたします」
勿忘草、か。
勿忘草なら私も知っている。花言葉も、それの由来の伝説も。前に何かの本で読んだのだ。
確か、二人の恋人が、岸辺に咲くこの花を見つけ、彼が彼女のためにその花を摘もうとした。でも、誤って川の流れに飲まれてしまう。彼は最後の力を尽くして花を岸に投げ、彼女に「私を忘れないで」という言葉を残して死んでしまう__。そんな伝説が残っている花だったような。
花言葉は確か__、
「真実の愛」
半信半疑……、「本当なの?ちょっと信じられないわ」という言葉に返しているのだから……そう、例えば、「本当ですよ。私は貴女を愛していますから」……とか、そんな感じだろうか。
……何故?会ったことも無いのに。言葉を交わしたことも無いのに。__もしかするとこれは、前に私が想像した通り、「一目惚れ」されてるの?……それは絶対ないと打ち消したはずだ。
……だったら何故?
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