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貴女と言う名の花を
作者: 彼方  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ: 恋愛 
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10~ 20~ 30~

*6*

「エキナセア、エキナセア……っと」
朝食も終わり、アイビーも出て行かせたので、エキナセアの花言葉を調べてみることにした。
しばらく索引を見て探していると……、見つけた。紫っぽい桃色の細長い花びらの花で、中心が丸く盛り上がっている。間違いない。これが「エキナセア」だ。
花言葉は「優しさ」「深い愛」「あなたの痛みを癒します」。
……分からない。やっぱり、分からない。

とりあえずアイビーを呼んで訊くことにした。
呼び鈴を鳴らし、アイビーが跪いたところで尋ねた。
「アイビー。窓の外に置いてある花あったでしょう?あれ、何のために置いてあるんだと思う?」
「ええと……僕の考えでもよろしいですか?」
おずおずとアイビーが尋ねてきたので、肯定した。
「どなたかがたまたま置かれていったとは考え難いです。ということは、恐らくこの花は何らかの意思を伝えようとしているのでございましょう。そして、ここに置かれていったいうことは、お嬢様に何かお伝えしたいことがあるのではないでしょうか?」
「え?私に?何のために?……第一、私に知人なんていないわ」
アイビーの言葉を聞いて、ますます訳がわからなくなった。
この屋敷宛ならまだ分かる。アイビー宛でもまだ分かる。でも私?何故?

アイビーは少し言い淀んだ。
「そう、ですね……。お嬢様がご存知ではなくても、相手の方がご存知である可能性もなくはないので……」
「私が知らないのに相手が知ってる?何、それどういうことなの?」
するとアイビーは言葉を探しながら言った。
「例えば……、どなたかが、お嬢様が窓の中で佇んでいるのを見かけた、と、そのような状況でしょうか」
「つまり、私が知らないうちに私を見かけた人がいる、とそういうこと?」
アイビーは肯定した。
「ふうん……。そんなこともあるものなのね」
「恐らく、ですが。この屋敷の中の者がお嬢様にお伝えしたいことがあれば、直接申し上げるか、私に言伝を頼まれるでしょう。なので、この花を置かれたのは、お嬢様はご存知ではない方が何らかの意思をお伝えしたいと置かれたものなのではないでしょうか」

私に何か伝えたいこと、か。
「……もういいわ。ありがとう」
「お役に立てたようで幸いでございます。では、失礼いたします」
アイビーは一礼して去っていった。

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