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*9*
ふと、アイビーの声で引き戻された。
「え?……何よ、アイビー。切羽詰まっちゃって」
するとアイビーは、僅かに安堵の色を見せた。
「いえ。お嬢様が焦点の定まらない瞳で窓を見つめられ、僕にも全く気が付かれないので、何事かと。動揺してしまい、申し訳ございません」
そう言ってアイビーは丁重に頭を下げた。そして、すぐ微笑みを取り戻した。
「ところでお嬢様、お茶にでもいたしますか?」
出来た人だ。先ほどの動揺などまるでなかったかのように振る舞っている。
「そうね。そうするわ」
「ローズティーでよろしいですか?」
「ええ。それにマカロンをつけて頂戴」
「かしこまりました」
ふと、あることを思った。
もしも、私が今日死んだとして、果たしてアイビーは悲しんでくれるのだろうか。私は悲しまれるほど、価値のある人間なのだろうか、と。
「ねえ、アイビー。もしも、私が死んだとしたら、貴方は悲しい?」
訊いてから、アイビーは
「もちろんでございます。お嬢様」
と微笑みながら言うのだろう、と思った。
__しかし、アイビーの反応は予想外だった。
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