完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

貴女と言う名の花を
作者: 彼方  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ: 恋愛 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~

*9*

ふと、アイビーの声で引き戻された。
「え?……何よ、アイビー。切羽詰まっちゃって」
するとアイビーは、僅かに安堵の色を見せた。
「いえ。お嬢様が焦点の定まらない瞳で窓を見つめられ、僕にも全く気が付かれないので、何事かと。動揺してしまい、申し訳ございません」
そう言ってアイビーは丁重に頭を下げた。そして、すぐ微笑みを取り戻した。
「ところでお嬢様、お茶にでもいたしますか?」
出来た人だ。先ほどの動揺などまるでなかったかのように振る舞っている。
「そうね。そうするわ」
「ローズティーでよろしいですか?」
「ええ。それにマカロンをつけて頂戴」
「かしこまりました」

ふと、あることを思った。
もしも、私が今日死んだとして、果たしてアイビーは悲しんでくれるのだろうか。私は悲しまれるほど、価値のある人間なのだろうか、と。
「ねえ、アイビー。もしも、私が死んだとしたら、貴方は悲しい?」
訊いてから、アイビーは
「もちろんでございます。お嬢様」
と微笑みながら言うのだろう、と思った。

__しかし、アイビーの反応は予想外だった。

8 < 9 > 10