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Ghost-Soldier【完結】
作者: レンクル01  (総ページ数: 58ページ)
関連タグ: ファンタジー シリアス 血描写 
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*11*

  ライデンside

随分と階段を登った。
常浴衣姿のツバキは少々動きづらそうだ。

「そこの和服の子、私がおぶってあげるよ」
「そ、そんな、大丈夫ですよ!」

オレンジ髪がツバキに話しかける。

「あ、私ツバキっていいます。あなたは?」
「私か?私はミカン・ライトニングだ。」
「ミカンさんですか!ミカさん、でいいですか?」
「もちろん、なんとでも呼んでくれ」

ミカンとツバキは笑顔で話している。
……どうやら気があっているようだ。

「あ、そういえばお前は?」

俺は無言で走っている猫耳女性に声をかける。

「ん?ああ、ミクロ・ニャエンテという。異大陸出身だ」
「見りゃ分かるよ」

ミクロは短く会話を終わらせると、ふいに前を見つめた。

「どうやらまたたくさん食人植物が来そうだな」
「……え。」

またもや警報音と共に食人植物が降りてくる。

「またか。よし、やるぞ!」

俺はサーベルを抜こうと構える。





だが。


「……え、どういうことなんですかこれ……」

ツバキの動揺した声が聞こえる。
俺もまだ状況が把握できなかった。

目の前の食人植物は、次々と倒れ始め黒ずむ。
一斉に枯れ始めたのだ。

「こんなこともあるのか。」

ミクロは興味深く近くに寄り、薬品などを流して観察する。

「不思議ですねぇ。」
「……そ、そうですね……」

ミカンは何事もなさそうに、ツバキは脅えていた。




ガラッ……



そして俺達よりも数メートル離れた場所の天井がずれ、大きな音を立てて崩れ落ちた。

「うわっ」

少しだけ近くにいたミクロは反射的に後ろに跳ぶ。

「な、なんだ……何が起こってるんだ?」

ヤジータも呟く。俺は動揺を隠せなかった。


そして崩れた天井から、一人の青年が落ちてきた。

いや、降りてきた。

青紫の髪を持ち、ボロボロの紺のコートとマフラーを身に付けた青年だ。手には大きな矛を持っている。
彼は瓦礫の上に器用に着地し、俺を一瞬だけ見た。またイタルータやツバキと同じ、赤い目だ。しかしその目に光は宿っていない。生きた人形のようだ。
青年はそのまま目を反らし、どこかへと向かおうとした。




「……セイシュン……」
「え?」

俺は反射的に声を出す。

「……ねぇっ……セイシュンでしょ!?そうなんでしょ!」

普段全く声を荒げず、敬語口調のツバキがそう叫んだ。
青年はツバキを一目も見ずに歩き続ける。

「な……なんで答えてくれないの?もう私のこと忘れちゃったの……!?」

ツバキの言葉に反応したように、青年の脚が止まる。

「覚えてるんでしょ……!?私は忘れたこと一度もないよ!イタルータと3人で遊んだことも、私が怖い夢を見たときに慰めてくれたことも、あなたが連れていかれちゃった日も!」

ツバキは懸命に叫び続けるが、ついに青年は窓に飛び出した。
ワイヤーを使って降りていったようだ。

「……おい!何があった!」
「ヤジータ、大丈夫か」
「……ククク、面白くなってきたなぁ……」
「あ、天井が!」

下の階を受け持っていた4人が登ってきた。

「お、おいツバキ、何で座りこんでるんだよ」
「……そんな、なんで……」

イタルータの声は放心状態のツバキには届かない。

「……とりあえず、脱出しよう。」
「はーい!」








……俺は、気付かなかった。
あまりにも自然すぎて、気付かなかったのだ。

いつのまにか、俺の隣にネオンがいたことに。

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