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Ghost-Soldier【完結】
作者: レンクル01  (総ページ数: 58ページ)
関連タグ: ファンタジー シリアス 血描写 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*38*

  ライデンside

巨大な植物が巻き付いたまま崩れていく建物を、俺達は離れた荒野で見ていた。

誰も声を発せず、この距離では届かないか、または身体が正常に動いていないのか、崩れる建物の音も聞こえない。
嫌な静寂が辺りを包んだ。

「……ホントに、あの中に……」
「……レイドの大馬鹿ッ!!」

アイリとフィギールがやっと声を出した。

「レイドの身体にヒートがあったことは不幸と言うべきか、幸運と言うべきか……幸福という選択肢はないな。」

ミクロもやりきれないような顔をする。

「……ですが、なくしたのはレイドだけじゃありませんよ。ツバキ……あの子だって、どうなったのかすらまだ俺達にはわかっていません」

冷静に何をすべきか考えるシン。

「……なんで、こんなことになっちゃったのかなぁ」

ジンの表情からは、いつものおちゃらけた雰囲気はなかった。

「結局この組織を倒したところで何も変わらなかった。ううん……変わったけど、また新しい問題が出てきたんだね。」

ネオンも状況を確認する。
……こういうときだけ、ネオンは兵士の目をしている。

「……ともかく、セルフィンザに戻ろう。報告も兼ねて、もう一度考えないと……」

俺が立ち上がろうとしたそのときだった。



「あはっ、あはははっ」

突然辺りに響いた小さな笑い声は、あいつにそっくりな声だった。
やはり生きてた。建物を出たときにはいなかったが、あいつは自分のヒートを使って結界を開いたんだ。

「アハハハハハハハハハハハハッッ!」

狂気じみた笑い声と共に俺達の間を閃光が駆け抜ける。

「危ねっ!」

ジンが軽く声をあげたが、全員がその閃光を回避したようだ。

「やぁやぁ皆さんお久しぶりですー!ってあれ?今朝会ったっけ?会ってたね!度忘れしてたよあははっ!」

いつもと同じような笑みを浮かべてはいるが、口調が違った。声の高低の幅は激しく、このようなおちゃらけたしゃべり方をすることはほとんどない。

「イタルータ……!」
「あれあれ?あれあれあれあれ?セイシュンどうしたの?すっごく顔色悪いよぉ?風邪引いたのー?」
「ふざけんな!!お前がセイシュンを操ってたんだろ!?」

感情に任せてイタルータに怒鳴るが、イタルータは少し肩をすくめただけだった。

「えー?操る?そんなのどうやって?あーもしかして禁術としてそれが使えるの知ってたとか?そうだったんだー!もうちょっと警戒しておくべきだった?あははは!」

勝手に全部話しているが、イタルータが話していくうちにどんどん彼の笑みは歪んでいっている。

「そうだよー、俺がセイシュンを操ってたんだ……理由?理由なんて簡単さ……」

イタルータはゆっくりと目を開く。




その目は果てしなく黒い闇が何重にも重なっていて、元の赤い色が不気味に輝いていた。




「殺すためだったんだよねー!ライデンを!!」
「やっぱりお前だったのか……!」

ジンが身を乗り出してイタルータを睨みつける。

「あれ?俺の殺気に気付いてたんだねー、そんな気はしてたけどー、俺の仮面の中から感付くなんてすごいよ!誇っていいよ!」
「そんなことはどうでもいい!!何故ライデンを狙っているんだ!!」

ヤジータも声をあげる。

「理由?理由ねぇー……フフフッ、殺すことばっかりに集中してたから忘れちゃった!って信じてもらえるかなぁ……?」
「し、信じられるわけないだろ!?」

理不尽だろ、と俺も反論する。

「うーん、勝負に勝ったら教える、とかでもいいんだよー?」
「……ひとつだけ教えろ……」

セイシュンがまだ動かしにくい身体を引きずってイタルータを見上げる。

「どうしたの?動きづらくない?かなり魔力消費したから……」
「お前は……」






「どうしてイタルータなんだ……?」
「ええ?」

イタルータは目を見開く。
俺も、質問の意味がよくわからなかった。

「なにそれ?なんの話?俺はイタルータで、それ以外の何者でもないよー?」
「……違う」

セイシュンは目を伏せる。

「お前は……昔はイタルータなんかじゃなかった……











そうだろ?『アイリス』」







「あはっ……あははははははははっ!」

イタルータは再び笑い出した。

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