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*5*
巨大生物を片付けた翌日、ムンナ王女はルナティックソルジャーを集めた。
「これで全員かしら?」
最後にネオンが席に着き、ムンナはモニターをスクロールさせた。
「さてと。みんなには明日の特殊任務について説明するわ」
モニターに映し出される画像は2つ。
左に映る1つは、昨日俺がイタルータに教えてもらった、ルーンを意図的に暴走させている疑いのある株式会社。
右に映るもう1つは、学院の校舎のような写真だった。
「みんな左はともかく、右はどこかわかるわよね?」
誰も声を出さない。出さなくてもわかるのだ。
有名なこの校舎。ここは、ルミリア魔導学院という名のルーン専門学校なのだ。
ルーンを操り力を増幅させる魔術。小学校等でもまず学習するが、ここはもっと専門的、学問的分野への就職を目指す中高生の学院だ。
一般からはとても人気の高い学院である。
「で、左の写真はLBSという名で活動している株式会社よ。表向きは機械などを扱っているんだけど、裏ではルーンを暴走させている悪質な組織よ。」
サーチ能力を使ったのよ!と隣でリーナがニッコリ微笑んだ。
「さて、なぜ魔導学院と悪質組織を並べたかというと、明日この学院は組織に社会見学に行くのよ」
……その時、ルナティックソルジャー全員が思った。
なんてことをしてくれるんだ、と。
「もちろん、私達はLBSが学院を誘導したと考えてるの。機械会社と魔導学院なんて、なんの接点もないもの。……で、ルーンを暴走させている組織が学院を来るように仕向けた、ということはどういうことかわかるわよね?」
メンバーの目が変わる。
「恐らく食人植物を生徒に仕向けて、将来邪魔になるであろう魔術師を始末しようと考えてると思うの。そこで貴方達は組織内に忍びこんで、生徒の護衛、食人植物の殲滅をお願いしたいの。いいわね?」
メンバーは無言でうなずいた。
その後、流石にルナティックソルジャー全員で建物に忍びこむのはリスクが高いと判断し、特攻隊、コンピュータでのシステムハッキング担当の2つのグループに分かれることになった。
俺は特攻隊だ。
「また一緒だねー、ライデン!」
どうやらネオンも同じ部隊らしい。
他のメンバーは、イタルータとツバキだった。
4人で挑むことに抵抗も感じるが、潜入にはこれが最適だろう。
「では、今日は解散。明日に備えてゆっくり休んでね」
ムンナの声で、メンバーはバラバラと部屋から出ていった。
「ねーねーライデン、後で私と稽古しようよ。明日に備えて、ね。」
「……構わねえよ。」
「わーい!」
ネオンに連れられ、俺は稽古場へ向かった。
明日は特殊任務。俺は無駄に興奮していた。
▼
???side
「……くだらないね」
>社会見学<と表紙に書かれたしおりを眺める。
イベントの日付は見事に明日。
株式会社なんかに行って何になるというんだろうか。
二人の男女が俺に近付いてくる。
「ん、行きたくなさそうな顔してるね」
「……めんどくさいのか?」
「その通りだよ。わざわざ列に並んで歩くものほどめんどくさいものはないし。」
第一動くのが嫌いだ、と言うのは根本的なところなので控えておく。
「まぁ、きっとそれなりに成果はあるよ。社会見学に行くくらいなんだからね」
「……そうなんだけどさー。」
ぶっきらぼうに返し、鞄を手に取る。
背負った魔力を宿した剣は、淡く白い光を放っていた。
???side
蒼く光を放つ矛を構え、とある建物に足を踏み入れた。
玄関口だけやたらガードが厳しかったが、ワイヤーを使えば一気に別の建物から侵入できる。
今までのところよりガードが薄い。これは簡単だ。
長い廊下を歩き階段を登り、繰り返していくうちに、やたら大型の機械で溢れかえっている階に辿り着いた。
「おいおいにーちゃん、どうやってここまで入ってきたんだぁ?」
スーツ姿、中年の男共が近寄ってくる。
「玄関で受付してたはずだが……お前みたいなやつは聞いてねぇぞ」
「お前不法侵入者だな!?」
「なんだってんだこのガキ……」
「まぁまぁ落ち着けよ」
男達の後ろから、他の奴等よりも若そうな男が僕の前に立つ。
「君ねぇ、来るなら最初から手続きを通してもらわないと。わかったならさっさと帰りな、なんもいいことないからさ」
男は僕の首元のマフラーを掴んで威圧する。
……しているつもりなんだろう。
「……どうしたんだい?ほら、早く……」
「これに触らないでもらえるかな」
男の手を弾き、背負った矛を構える。
「いないんなら君達にもう興味はない。皆殺しだ」
「なっ……!」
男は動揺を隠さない。
「……スピア・フローズン」
冷気を纏った矛を振り降ろした。
▼
「ひっ……!」
僕を威圧した若い男はその場に座りこんだ。
「後は君だけだよ、みんな先に逝っちゃったからね」
氷を宿した矛はピキピキと音をたてる。
冷気は手に伝わる。持ち主でない者が使えば凍傷になるレベルだ。
「ま……待て!俺は組織の幹部だぞ!俺を殺せば、上の奴等が黙っちゃいないぞ!」
「知ったことじゃないね」
矛を男の前に突き付ける。
「ま…………まさか……いや、その目、間違いない……お前は……」
「さよなら、地獄で会おうね」
僕の視界には赤が映った。