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Ghost-Soldier【完結】
作者: レンクル01  (総ページ数: 58ページ)
関連タグ: ファンタジー シリアス 血描写 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*9*

  ライデンside

「……な、なんだ!?」

盾にしようと構えていた右腕を恐る恐る降ろし、目の前の光景に目を見開いていた。

辺り一帯の赤い食人植物が、一時的に遠くまで吹き飛ばされていたのだ。
まだ枯れてはいないようで徐々に起き上がるが、3人がかりで押さえつけていた数を一撃で……

「風神鉈・トルネード」

静まり返った館内に、一言の声が響いた。

「この施設……怪しいと思ったら、やっぱり食人植物の製作に関わっていたんだな?」

俺の目の前に立つ少年は、白く光る鉈を構えながら呟いた。
頭頂部に大きなハネ毛のある赤髪の少年だった。華奢で声も若く、年はそこまでいっていないような気がする。
ゆっくりと俺の方に振り向く。冷たい光を宿す黄色の瞳だった。キルゴッド人の特徴だ。

「流石は僕らの学年の首席様だよ。」

ふいに綺麗な声が響いた。赤髪の少年とは違う声だ。声のした方を向く。長く薄い茶髪を三つ編みにし、少し異質な青い髪を持つ少年だ。イタルータ達と同じ赤い目をしている。

「……人間、いる。あまり近付きたくない。」

また別の方から、やや若く低い声がした。少女の声だ。
薄い金髪で、二つ結びのおさげのように見えるものは、なにやらくねくねと動いていた。
黒い目は、こことは違う異大陸人の特徴である。家系ごとに違う動物の部位……少女は折れた猫耳を持っていた。

「あ、あの……あなた方は……」

ツバキが遠慮がちに3人に問う。
茶髪の青年がそれに答える。

「僕らはルミリア魔導学院の生徒です。社会見学に来たんですが教師が途中でいなくなりまして。騙されたんですよね」

騙された、という割にはにこやかな笑顔だ。

「食人植物の製造を手伝っているような悪質組織。よければ、僕らも制圧を手伝いますよ」

茶髪の青年の一言で、俺達3人は目を見開き、赤髪の少年は静かに頷き、猫耳の少女は「フン」と鼻を鳴らした。

「ほんとにいいんですか?」

イタルータは茶髪の青年に声をかける。

「はい、もちろんです。あ、僕アイリ。アイリ・レーシーっていいます」

アイリと名乗った青年はペコリと頭を下げた。

「俺はイタルータ・ティア=スカーレット。本名を名乗るなんて久々だな」

イタルータはニコリと笑った。

ツバキは猫耳の少女に近付く。

「初めまして、私はツバキ・アヤカシ。よければあなたの名前も」

猫耳の少女は不機嫌な顔をしているが、ぶっきらぼうに

「フィギール・イングニクス。あまり寄るな、人間キライ」

そう答えた。

「……そう、フィギールさんよろしくね」

ツバキはめげずにニッコリと笑った。

「っと、どうやら食人植物さんたち起きたみたいだね」

イタルータの言葉で辺りを見回すと、食人植物達はいつのまにか側に来ていた。

「じゃあここは、俺とアイリで引き受けるね。いいよねアイリ?」
「うん、それでいいよ」

いつのまにか敬語をとったアイリは、懐からハープを取り出した。

「それが君の魔武器?」
「……まぁ、そんなところかな」

イタルータも拳銃を取り出した。

「フィギールとツバキ、そして赤い君とライデンは、すぐに指令室へ向かって!」
「はい!」
「……」

ツバキとフィギールはいち早く、階段めざして走り出した。

「俺達も行くぞ。お前名前は?」
「……ヤジータ。ヤジータ・デッドライン」
「……俺は、ライデン・ヴィエラヒルデ。よろしくな。」
「ああ」

俺はヤジータと駆け出した。










「いってらっしゃい!」

甲高いネオンの声は、何故か俺の頭に直接響いたようだった。

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