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【完結】「秘密」〜奔走注意報!となりの生徒会!〜
作者: すずの  (総ページ数: 39ページ)
関連タグ: 推理 恋愛 生徒会 
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「えっと確か――部室から出ようとする橘涼を瀬戸美桜が必死に止めていた」
「その時押田俊は?」
「抱きしめてでも止めた」
「その理由も、愛華ちゃんと河岸が考えている三角関係じゃ説明するのは難しい。もし瀬戸美桜が追いかけようとしているのが男だったら、押田俊が必死に止めるのもなんとなくわかる気がするけど、橘涼は女だ。押田俊の行動の原因はある条件の元でしか出現しない感情によって、であり、もし橘涼と瀬戸美桜が普通の女友達ならば、その感情は出現しない。回りくどい言い方をしたけど、つまり――嫉妬とか恐怖心だと思う」
 河岸と私は驚きのあまり、同時に顔を見合わせた。
「押田は瀬戸美桜を引きとめようとした……だけど、瀬戸美桜が引きとめようとしたのは、橘涼だった……押田が瀬戸美桜を引きとめたのは、橘涼に嫉妬したから。橘涼と瀬戸美桜は恋愛関係だった……?」
「普通、相手が女なら男は嫉妬しない……だけど、この場合なら有り得るっていうことか」
「つまり、押田は瀬戸美桜と橘涼が恋愛関係であるということを知っていた」
「僕が言いたいのはそういうことだ」
「ちょっと待ってよ! でも、やっぱりそんな突拍子もないこと……」
「愛華ちゃん、それについては――」
惣志郎は二人についてびっしりまとめてあるA4の紙を私達に見せる。
「河岸から既に貰っていた資料と、新しくさっき貰った資料とを織り交ぜて説明するよ。まずは、これを見て欲しい。新聞部のみんながかき集めてくれた瀬戸美桜と橘涼についての調査結果だ」
 やっぱり、一人さっさと帰った理由は新聞部員と会うためだったのか。
「新聞部員が、ぜひ生徒会のために力を貸したいって言ってくれてね。お言葉に甘えて、随分と調べてもらったよ。瀬戸美桜は中学生の時、荒くれ者のヤンキーだったらしい。髪を染める、マニキュアを塗る、化粧、制服の着崩し。今の彼女から想像出来ないくらいの不良だったそうだ。ちなみに男関係は最悪。とっかえひっかえして女の子の反感を常に買っていたらしい。だけど、中学三年生から態度は徐々に大人しくなった。男との絡みがなくなり、髪を黒に染め直し、化粧もやめた。制服もきちんと着るようになった。そして、今までの彼女が嘘のように感じられる程の改心を見せた時期と、橘涼とつるみだした時期がほぼ一致しているらしい。ちなみに彼女達は三年生になって初めてクラスが一緒になったみたいだ。それまで、瀬戸美桜と橘涼が二人で話しているなんて見受けられなかった。彼女達に何があったかはわからないけど、橘涼の出現により、瀬戸美桜は無事この天宮に進学する事が出来たと言ってもおかしくはないとかなんとか。僕はこの事実を確認するために、とある人物を尋ねた。その時に、録音させて貰ったテープがある。テープにしたのは、もちろんダビングをしないという意思があってのことだ。もちろん、許可はとってあるよ」
惣志郎はそう言いながら、古いテープレコーダーを取り出し、再生ボタンを押した。
――あなたは橘涼と瀬戸美桜が付き合っているという事実を、知っていますか。
――……はい、知っています。
――どこで、知りましたか。
――僕が、実際に本人から聞いたからです。
――どんなことを、聞いたんですか。
――本人から……「もう美桜に手を出すな。近づくな」ということを。

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