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ヤシノキ町物語 第一話
作者: アルセ  (総ページ数: 109ページ)
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*9*

 ○同・ダイニングキッチン

  天ぷらを食べるジョージとジュンコ・・・だが、・・・

モモ「(怪訝そうに)・・・(ジッ)」
  と、皿を見つめている。



 モモは悩んでいた。この得体の知れない未知なるタベモノを食すべき
か、食さぬべきかを・・・・・・。



ジュンコ「ン!美味しい〜!!・・・モモも、食べてみて」

モモ「(躊躇して)・・・」

ジュンコ「(察して)大丈夫よ。見た目はこんなんだけど味は・・・ねっ」

  恐る恐る、天ぷらを口の中へ運ぶモモ。

モモ「(パクッ)美味し〜い・・・!アタシ、こんなの食べたの初めて」

ジュンコ「でしょう?アナタ、美味しいって・・・」
   
  腕を組んで、考え込むジョージ。

ジュンコ「アナタ・・・どうしたの?」

ジョージ「(数秒経ってから)そうか!油の温度を、もう少し高くすれば良かったんだ!」
   
  突拍子もない声に、驚くジュンコとモモ。

ジュンコ「な、何が・・・?」

ジョージ「いやね、皮が少しパサついているのが気になってね・・・、どうしてかな?って考えてたんだ。そうか、そうか・・・」
   と、満足そうにウンウン頷く。

モモ「本当にお医者様?」

ジュンコ「(頷いて)正真正銘の内科医よ。でも、そういうところが素敵なのよね」
   と、ウットリした目でジョージを見つめる。

ジョージ「ン?失敬だな、君達は。ワタクシ、灰花ジョージはですよ。立派な内科の医師免許を持っており尚且つ一流の(英単語で)料理人でもあるん・・・」

モモ・ジョージ「(ジュンコを見て)?!?!」
  と、顔をひきつらせる。

ジュンコ「(キョトン)?二人共・・・どうしたの?」

ジョージ「ジュンちゃん・・・」

モモ「叔母さん・・・」

ジョージ・モモ「後ろ・・・」

ジュンコ「エ?」
  と、後ろを振り返る・・・と、若い女性看護師A・Sが・・・背後霊のように立っていた。

ジュンコ「(平然と)ショウコちゃん。入る時はノックをしてって、いつも言っているでしょう」

ショウコ「(オドオドして)す、すみません。一応、ちゃんと声をかけたつもりなんですが・・・あのぉ〜・・・そのぉ〜・・・」

ジュンコ「そんな蚊細い声じゃ聞こえないわよ」

モモ「誰?」

ジョージ「ウチの看護師さん。有栖川ショウコさんっていうんだ」

ジュンコ「それで何か御用?」

ショウコ「あの、入院患者の橋本さんが・・・頭痛がひどいそうです」

ジョージ「(立ち上がり)よし、診てみよう!」

ショウコ「あ、あの・・・そ、それが・・・言付けがありまして・・」
   と、口籠る。

ジョージ「(イライラして)は、早く言いなさい」

ショウコ「(ジョージを見て)・・・言えませんっ!」

ジョージ「(ガクッ)・・・」
  と、こけそうになる。


ジュンコ「ショウコちゃん。橋本さんが何て言っていたの?」

ショウコ「・・・ジュンコ先生に診てもらいたいっ!と、言っていました」

ジョージ「(項垂れて)・・・」

ショウコ「それから、糖尿病で入院している牧原さんが・・・お昼は、玉葱の御味噌汁よりチーズがたっぷり入ったオニオンスープが飲みたいっ!って、言っていました」

ジュンコ「全くもう・・・血糖値を下げるために入院しているのに・・・仕方ないわね」
   と、立ち上がる。

ショウコ「でも、ジョージ先生のでなきゃ一口も飲まないっ!とも、言っていました」

ジョージ・ジュンコ「ハアぁ〜??(と、お互いの顔を見合わせ)・・・」

ショウコ「(ばつが悪そうに)す、すみません!」
  と、バタバタと部屋を出て行く。

ジュンコ「(一息つき)それじゃ・・・(元気良く)お仕事始めますか!」

ジョージ「君は橋本さんで」

ジュンコ「アナタは牧原さんね」

ジョージ「ハハハ、人には得意なものと不得意なものがあるからね・・・」
   と、ジュンコと一緒に部屋を出て行く。

モモ「はぁ〜、すっごいポジティブな夫婦・・・。それにあの看護師さん・・・何となくメルヘンの国から来ましたって感じの人だし・・・(ショウコを思い浮かべ)あの人と上手くやっていけれるかな・・・?あれ?アタシ、何か忘れているような・・・」
  と、腕を組んで・・・考え込む。

モモ「(ポンッ)スーツケースだ!」







  









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